共著→嘲笑う闇夜/裁くのは誰か?/依頼人は三度襲われる/ダブル

ビル・プロンジーニの略歴&著作リスト

プロンジーニの仲間たち(共著の相手)の略歴はこのページの下部にあります


ビル・プロンジーニ 合作の感想
嘲笑う闇夜
プロンジーニ&バリー・N・マルツバーク(Barry N.Malzberg) 文芸春秋社
文庫初版
2002年5月10日
あらすじ  田舎町で凶行を重ねる"切り裂き魔"。犯人には犯行時の記憶がなく、自分が殺人鬼だと自覚していないという。恐怖に覆われた町で戦慄する男たちがいた―切り裂き魔はおれではないのか?疑心暗鬼と狂気が暴走する中で展開される、反則ぎりぎり、極限のフーダニット。

 
感想  マルツバークとプロンジーニの合作だから、普通の結末はあり得ないと思いつつ読んだのですが・・・やっぱりでした(笑)。掟破りというか、何というか・・・読後に大笑いしました。この二人は楽しんで書いたのでしょうね。私は非常に楽しめたけれど、読者の評価は真っ二つに割れそうな気がします。
 人口300人の田舎町ブラッドストーンで女性ばかりを狙う連続殺人事件が起こる。町を訪れた精神分析医は『犯人は精神分裂症で犯行時の記憶が無い可能性がある。自分が連続殺人犯だと知らずにいる可能性がある』と考える。で、登場人物はというと地元紙の記者、警部補、治安官、元俳優で今は博打打・・・と怪しいヤツばかり。自分が犯人ではないのかと思い込む4人だがいったい誰が真犯人なのか?・・・というストーリーです。プロンジーニの共作は目まぐるしく場面展開する作品が多いのですが、この作品が最たるものでしょう。兎に角、場面がコロコロ変わり読者は引き摺り廻されます。最初から最後まで引き摺り回された挙句、最後のオチを読んだ貴方がどんな顔をされるのか見てみたいっ。プロンジーニの『名無しの探偵シリーズ』がダメだって方にお勧めしたいです。ただし、B級の匂いがプンプンですので(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



裁くのは誰か?
(ACTS OF MERCY)
プロンジーニ&バリー・N・マルツバーク(Barry N.Malzberg) 東京創元社 文庫
初版1992年7月31日
あらすじ クレアは怯えていた。合衆国大統領として任期終盤を迎えた夫ニコラス。だが、ここへきて支持率が急落、党内には深刻な亀裂が生じていた。「いまにも悲劇が起こりそうな、そんな感じがするんです」という秘書の言葉にも、高まる不安を抑えることができない…。やがて合衆国大統領の身辺を襲った連続殺人。強烈なサスペンスのうちに驚天動地の真相を仕掛ける、掟破りの傑作長編。

 
感想  実はプロンジーニの著作は、探偵が主人公のヤツしか読んだ事が無かったんですよね。だから本作の結末には非常に驚きました。こんなジャンルの著作があるとはっ?!。本当に掟破りです(笑)。読後に喜んで踊るか(?)、怒って本を投げ捨てるかどちらかに評価が分かれそうです。管理人は喜んで踊りました。
 物語の主人公は合衆国大統領のニコラス。失言や暴言で支持率は急降下。党内で、二期目は別の候補者を立てようとする動きが出ているが、ニコラスは大統領を辞めるつもりはさらさら無い。そんな中、大統領の側近の中で裏切り者を殺そうとする暗殺者が動き始め・・・というストーリーです。一人称で現れる犯人ですが、自分の事を「われわれ」と名乗るんですよね。だから犯人は複数犯だと思いながら読み進むと・・・これから先は感想を書けません。ただ一言、付け加えるならプロンジーニのファンにこれを読んで驚いて欲しい、何の前知識も持たずに読んで欲しい、それだけです。しかし、この作家は巧いですね。名無しの探偵シリーズでも驚く手法を採っていたブロンジーニだけど、共著になるとジャンルが変わるとは思いもしなかった!。
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依頼人は三度襲われる
(TWOSPOT)
B・プロンジーニ&コリン・ウィルコックスの共著 文芸春秋社 文庫
初版1980年3月25日
あらすじ  すべての事件はカストロ首相がアメリカを公式訪問する日から始まった。サンフランシスコ市警のヘイスティング警部と”名無し”の私立探偵がコンビを組んで、ナバ渓谷のあるワイナリーで起こった不思議な内輪もめ殺人事件に関わりあう。死体のそばに落ちていた[TWOSPOT]と書かれたメモは果たして何を意味するのか?・・・。コリン・ウィルコックス著のシリーズ主人公ヘイスティング警部と”名無しの探偵”の共演。『名無しの探偵』シリーズ第5作。(作中で『暴発』の事件から五ヵ月後という記述があります。なので、探偵のこの時点での年齢は50歳)

 
感想  読みながらワクワクしました。だって、名無しの探偵とウィルコックスの描くヘイスティングス警部との共演ですよ。楽しめないはずが無いんですが♪。共作『ダブル』の読後にも思ったけれど、プロンジーニは共作を書くのを純粋に楽しんでいますね。そして分担して書くのは難しいだろうに、いとも軽々とやってのける。凄いですね(笑)。それに、ラストのエピローグの部分だけは、名無しとヘイスティング警部と半分づつ一人称で書いてあって微笑ましい。ラストの一人称をウィルコックスに譲ったのは、先輩を立てたのかもですね。
 最初は金持ちの家族の内輪もめで始まるのですが、ここでカストロ首相のアメリカ訪問が絡んできて、物語は意外な方向へ・・・というストーリーです。物語は4部構成で組み立てられています。第一部&三部は名無しの探偵の一人称で、第二部&四部はヘイスティング警部の一人称で描かれています。これ、巧いなぁと思ったのは起承転結の「起と転」を探偵に語らせた事。物語が違和感なく始まっているんですよね。探偵のパートではいつものようにコツコツと調査を続ける探偵の姿が描かれているのですが、ヘイスティング警部が現れた所からは警察による大掛かりな調査が始まり、この対比が面白い。
管理人はこれまでに、名無しの探偵が出てくる共作を2作品読んだ事になるのですが、本作の勝利という感じがします。何故かというと、プロンジーニとウィルコックスは作風が似ている気がするんですよね。特に描写や一人称特有の主人公のぼやき部分が似通っていて、一部から二部へと変わる瞬間さえも違和感は全くなし!です。(訳を一人で訳されている所為もあるでしょうが。宮脇孝雄氏)。
 この作品の中で名無しの探偵が『ビル』と呼ばれている事が判明します。そしてヘイスティング警部とエバハートと名無しはポーカー仲間なのだそうな。うぷぷぷ。
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ダブル
(DOUBLE)
ビル・プロンジーニ&マーシャ・マラー(Marcia Muller) 徳間書店 文庫
初版1989年3月15日
あらすじ  サンディエゴで開かれた大会に全米の探偵たちが大集合。"名無し"の探偵も、彼を父親のように慕う女探偵シャロン・マコーンも参加したが、何と会場となったホテルで墜死事件が発生した。目撃した"名無し"はシャロンとコンビを組んでさっそく事件の究明に乗りだした。だが、新たな事件が次々と起こり、危険な罠が二人を待ち受けていた。危機一髪の窮地を脱せるか…。

 
感想  非常に愉しめました!。本作はマーシャ・マラーの代表作『シャロン・マコーン シリーズ』の探偵マコーンとビル・プロンジーニの代表作『名無しの探偵シリーズ』の”名無し”の共演です。楽しめない筈が無いんですがね。
本作では名無しが”ウルフ”なる呼び名で呼ばれます。本作はウルフとマコーンの一人称で物語りは進んでいきます。これが楽しいのですよね。1章づつ交代で書いたのでしょうが息が合っていて、さすがご夫婦になる仲だと感動でした。それに、ウルフが作中で『ボストンに一人知っている探偵がいる』と言うシーンがあるのですよね。ボストンの探偵?ひょっとしてスペンサーかな?と私は喜び(ロバート・P・パーカーの著作の探偵)、マコーンはキンジー・ミルホーン(スー・グラプトンの著作に出てくる女性探偵)と知り合いだという記述があったりで(他にも色々あるんですよ)探偵小説ファンには涎が出る展開が続きます。プロンジーニのファンへのサービスも一杯です。過去に名無しが関係した事件についての記述も多いのでニヤニヤ出来ますよ。
物語の展開も勿論、楽しんだのですがそれ以上に共著の醍醐味を味わった気がします。
 本作は両作家を知らない方でも充分に楽しめる内容ですが、出来るなら両者の著作を1作づつ読んでからの方が二倍楽しめると思います。でも本作は絶版の上、希少なのでB・プロンジーニ&M・マラーを未読の方がわざわざ捜されては読まないでしょうね???(笑)。
(追記・・・両者の著作は殆どが絶版、または品切れです。今ならまだ古本で入手可能なので一度、手に取ってみて下さいませ)

探偵シャロン・マコーンの簡単なプロフがこのページの下部にあります

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ビル・プロンジーニのお仲間(合作作家)の略歴
バリー・N・マルツバーグ(Barry N.Malzberg)
 1939年生まれ。文学青年であると同時にSFファンであった彼は1967年にデビュー、中編「最終戦争(1968)」でネヴェラ賞候補となって以来、SF界で恐るべき多作ぶりを発揮。また普通小説やポルノにまで手を染め、デビュー以後七年間の間に長編70冊、短編200作を超える作品を発表した。(日本でも翻訳され上梓されていたのだが2004年末現在、生き残っている著作は無い模様・・・)
 ビル・プロンジーニとの出会いはマルツバーグのデビュー前。スコット・メレディス文芸版権会社に勤めていたマルツバーグは、仕事で一日に長編5冊、短編18作を読破する生活を送っていたさなか、やはりデビュー以前のプロンジーニから送られて来た短編に出会い、ここから二人の交流が始まったらしい。
合作を始めた切っ掛けをプロンジーニのインタビューから抜粋↓。
『ヨーロッパにいる時にマルツバーグが自分の売れない短編を送ってきた。俺が書き直せたら共作にしようって事で、俺は結末を書き直し、それを売った。他の短編でも同じような事をした。それから、一人で書けそうに無い小説を書く事になった。THE RUNNING BEASTSの事だ。それで彼と話して合作しないかと提案した。一緒にプロットを考えて、彼がニュージャージーで第一稿を書き、俺がサンフランシスコで第二稿を書いた』

コリン・ウィルコックス(Colin Wilcox)
 1924年、デトロイト生まれ。アンティオク カレッジに学ぶ。離婚した夫人との間に生まれた二人の息子を引き取り、サンフランシスコ市内在住。デビューは1967年。ヘイスティング警部シリーズで人気が出る。(管理人はこのシリーズを未読なので、読了後に書き直します)
その他の感想や詳しい略歴はコリン・ウィルコックス感想ページ
マーシャ・マラー(Marcia Muller)
 1944年、ミシガン州デトロイト生まれ。ミシガン大学でジャーナリズムを専攻し修士号を取得。ロス・マクドナルドの作品を読んだのがきっかけでミステリーの創作を始める。77年にシャロン・マコーンが主人公の『人形の夜』を発表。93年にシェイマス賞の巨匠賞、94年に『影の中の狼』でアンソニー賞を受賞し、サラ・パレツキー、スー・グラフトンと合わせて女性私立探偵小説御三家として高い評価を得ている。ビル・プロンジーニの奥様。マーシャ・マラー公式サイト

おまけ・・・探偵シャロン・マコーン シリーズのマコーンのプロフィール

サンディエゴ生まれ。ショショーニ・インディアンの血が八分の一混じったスコットランド=アイルランド系の女性私立探偵。サンディエゴの百貨店で警備係りに就いてから、カリフォルニア大学バークリー校で社会学を学ぶ。私立探偵許可証を取得してから、サンフランシスコのオールソウルズ法律相談所の調査員として働くかたわら、個人の依頼も引き受ける。77年の『人形の夜(EDWIN OF THE IRON SHOES)で初登場。
その他の感想や詳しい略歴はマーシャ・マラー感想ページ





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絶版本!ビル・プロンジーニ著『パニック』を投票で復刊! 検索等で訪れて下さった方&プロンジーニのファンの方へお願いです。プロンジーニの著作でどうしても入手出来ない本があります。TBS出版会から出版された『パニック』という初期作品なのですが、復刊ドットコムで投票して頂けませんでしょうか?。復刊ドットコムのバナーをクリックして頂けると直接『パニック』の投票画面へ飛びます。