マーシャ・マラー 作家略歴&著作の感想 |
---|
作家名 | マーシャ・マラー(Marcia Muller) |
生年月日 | 1944年 |
生誕地 | ミシガン州デトロイト |
処女作 | 『人形の夜(EDWIN OF THE IRON SHOES)』 |
デビュー年 | 1977年 |
公式サイト | http://www.marciamuller.com/index.html |
タロットは死の匂い (ASK THE CARDS A QUESTION) |
徳間文庫 | 初版1991年8月15日 |
あらすじ | 私のアパートの隣人モリーが何者かに絞殺された。しかも三階に住むタロット占い師のアニヤがそれを予言していたという。私は調査を開始したが、モリーの別居中の夫や占い師のお告げを狂信する食料品店の店主など胡散臭い人物がゾロゾロ・・・。チョコレート中毒で鳥恐怖症、八分の一インディアンの女探偵シャロン・マコーンがLAを東奔西走して調査を行う。
|
|
感想 | 本作も非常に地味です(笑)。プロットが特別凝っているワケでもないし、昔懐かしい(?)探偵小説といった感じです。この『シャロン・マコーン』シリーズをここまで三作品読んだのですが、このシリーズは謎解きを愉しむというよりは、主人公と脇役たちの人物造詣を愉しむ・・・そんな感じです。
![]() ![]() |
チェシャ猫は見ていた (THE CHESHIRE CAT'S EYE) |
徳間文庫 | 初版1991年10月15日 |
あらすじ | サンフランシスコに数多く存在する古風なヴィクトリアン・ハウス。その一つの中で私(シャロン・マコーン)の友人が何者かに殺害された。死体には赤いペンキがベッタリ・・・。ハウスの保存運動をめぐる確執か、それとも?。唯一の手掛かり<チェシャ猫の眼>を求めて、私は事件の解決ののりだす。が、<猫>を手にした者たちは次々と謎の死を遂げていく。
|
|
感想 | 非常に地味な作品です。同時期に発表されたスー・グラプトンやサラ・パレツキーの女探偵シリーズが日本でも人気を博しているのに、マコーンものが受けなかったのはこの地味さが原因じゃないかという気がします。私個人としては主人公の目覚しい活躍や派手なストーリー展開の無いマコーンシリーズの方が好みなのですが、一般受けはしないのかもですね。 ストーリーはごく単純です。仕事が出来る女だとはお世辞にも言えない普通の女性が、淡々と仕事をこなして行き、コツコツと調査活動をし、真相に辿りつくという純正(?)探偵小説です。この作品の面白さは主人公のキャラクターにある気がします。死体も出てくるし殺人事件の犯人を追うというストーリーのわりには、ホノボノしているのですよね。主人公の性格の良さ、人当たりの良さ、登場人物の愛嬌が面白くて読み進むといった雰囲気です。 ![]() ![]() |
ダブル (DOUBLE) |
ビル・プロンジーニ&マーシャ・マラー | 徳間書店 文庫 初版1989年3月15日 |
あらすじ | サンディエゴで開かれた大会に全米の探偵たちが大集合。"名無し"の探偵も、彼を父親のように慕う女探偵シャロン・マコーンも参加したが、何と会場となったホテルで墜死事件が発生した。目撃した"名無し"はシャロンとコンビを組んでさっそく事件の究明に乗りだした。だが、新たな事件が次々と起こり、危険な罠が二人を待ち受けていた。危機一髪の窮地を脱せるか…。
|
|
感想 | 非常に愉しめました!。本作はマーシャ・マラーの代表作『シャロン・マコーン シリーズ』の探偵マコーンとビル・プロンジーニの代表作『名無しの探偵シリーズ』の”名無し”の共演です。楽しめない筈が無いんですがね。 本作では名無しが”ウルフ”なる呼び名で呼ばれます。本作はウルフとマコーンの一人称で物語りは進んでいきます。これが楽しいのですよね。1章づつ交代で書いたのでしょうが息が合っていて、さすがご夫婦になる仲だと感動でした。それに、ウルフが作中で『ボストンに一人知っている探偵がいる』と言うシーンがあるのですよね。ボストンの探偵?ひょっとしてスペンサーかな?と私は喜び(ロバート・P・パーカーの著作の探偵)、マコーンはキンジー・ミルホーン(スー・グラプトンの著作に出てくる女性探偵)と知り合いだという記述があったりで(他にも色々あるんですよ)探偵小説ファンには涎が出る展開が続きます。プロンジーニのファンへのサービスも一杯です。過去に名無しが関係した事件についての記述も多いのでニヤニヤ出来ますよ。 物語の展開も勿論、楽しんだのですがそれ以上に共著の醍醐味を味わった気がします。 本作は両作家を知らない方でも充分に楽しめる内容ですが、出来るなら両者の著作を1作づつ読んでからの方が二倍楽しめると思います。でも本作は絶版の上、希少なのでB・プロンジーニ&M・マラーを未読の方がわざわざ捜されては読まないでしょうね???(笑)。 (追記・・・両者の著作は殆どが絶版、または品切れです。今ならまだ古本で入手可能なので一度、手に取ってみて下さいませ) 探偵シャロン・マコーンの簡単なプロフがこのページの上部にあります ![]() ![]() |
沈黙の叫び (LISTEN TO THE SILENCE) |
講談社 文庫 | 初版2004年3月15日 |
あらすじ | サンフランシスコの私立探偵シャロン・マコーンは、父の死をきっかけに自分が養子だったことを知ってしまう。ショックを受けた彼女だったが、自分のルーツを確かめようと母方の一族であるアメリカ先住民ショショニ族の保留地を訪ねる。しかし、彼女の生い立ちには現在の犯罪につながる事件が隠されていた!?
|
|
感想 | のっけから驚きました。なんと雇われ探偵だったマコーンが独立し、会社の社長になっているではないですか?!。共同経営だけど参加している別の事業もあるし、立派な恋人も出来ているし、部下にも仕事にも恵まれているし、小型飛行機まで持っていて乗り回している。読んでいて、マコーンの変化に驚きはしたけれど、充分に楽しめる出来だったので問題はなかったんですけどね。ただ、どうしてマコーンにこんな変化が訪れたのか知りたいですね(笑)。きっと、未訳である9作品を読めば分かるのでしょうけど・・・。 で、感想ですが驚愕でした。というのも、本作が今まで数冊読んだシャロン・マコーン シリーズの中で一番面白かったからなんですよね(笑)。これだけ長い間書き続けられている作品が尻上がりに良いっていうのは稀なんじゃないでしょうか?。こうなると『奇妙な相続人』以降の未訳作品が気になりますね。どこかの版元さんが邦訳してくれないもんでしょうか?。 今までインディアンの血がちょっとだけ混じっているアイルランド系アメリカ人だったマコーンが、実は違ったという事から物語りは進んでいくのだけれど、こういうオチにしようと作者が処女作から考えていたのだとしたら凄いです。自分はいったい何者なのかと探っていくマコーンは、今までの作品にはない温かみというか人間臭さがあって非常に読み易い。ほんと、これ良い出来です。過去のマコーン シリーズを読んでつまらなかったと仰る方にもう一度、チャレンジして欲しい作品ですね。 ![]() ![]() |