ヘイスティングス警部シリーズ 女友達は影に怯える/暗殺者は四時に訪れる

コリン・ウィルコックス 合作 依頼人は三度襲われる

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コリン・ウィルコックス(Collin Wilcox)作家略歴&著作の感想
    
作家名 コリン・ウィルコックス(Collin Wilcox)
生年月日 1924年
没年月日1996年
生誕地  アメリカ デトロイト生まれ
処女作  サンフランシスコの新聞記者を主人公にした作品らしいが題名が不明
デビュー年 1967年
公式サイト


作家略歴

 1924年、デトロイト生まれ。アンティオク カレッジに学ぶ。空軍勤務を終えた1949年からサンフランシスコに住み、学校教師、ランプ商など様々な職業を経て、1967年から小説を書き始める。離婚した夫人との間に生まれた二人の息子を引き取っていた。1996年没。
 1969年から『ヘイスティングス警部シリーズ』をスタートさせフルタイムの作家となる。

管理人より・・・亡くなられてだいぶ月日が経つので、データが集まりません(汗)。後で書き足していきたいと思っています。


女友達は影に怯える
(AFTERSHOCK)
文芸春秋社 文庫 初版1980年11月25日
あらすじ  大金持ちの老婦人が殺された。夫はまだ35才、愛人もいる・・・。初動捜査に奔走するサンフランシスコ市警のヘイスティングス警部。彼を執拗に脅迫する男がいた。男の魔手は今、恋人のアンに伸びようとしている。アンの身辺を気遣いつつ殺人事件の解決に取り組むヘイスティングス。

 
感想 前作の『容疑者は雨に消える』から四ヵ月後が描かれています。
大金持ちの老婦人がガレージ内で殺された。一見、強盗殺人に見えるが不審な点も多い。老婦人の行動を詳しく知っている人物じゃないと行えないような犯行だし、老婦人には莫大な資産がある。35歳下の夫、その愛人、老婦人の娘夫婦、ゲイの息子・・・それぞれが怪しく見える。こつこつと捜査を続けるヘイスティングスだが、捜査に集中出来ない事態に陥る。恋人アンが何者かに狙われているのだ・・・というストーリーです。 本作も非常に地味です。ストーリーの本筋である老婦人殺しの真犯人探しと、ヘイスティングス警部と恋人アンを狙う何者かは何が狙いなのかという二本の謎が同時進行で描かれていくのですが、どちらも分かり易い内容なので犯人はすぐ分かってしまう。謎解きを楽しむという要素は薄いです。自分でも、なんでこのシリーズが好きなのか良く分かりません(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



暗殺者は四時に訪れる
(SWALLOW'S FALL)
文芸春秋社 文庫 初版1983年5月25日
あらすじ  市内で強盗に殺されたうらぶれた初老の女のバックに、日本人実業家の訪米を伝える新聞記事が入っていた。捜査を進めるヘイスティングスとフリードマンの前に、強力なテロリストや失意のパイロットが登場する。飛行機を使った恐るべきテロが計画されているらしい・・・。

 
感想 久々で面白い本に出逢いました♪。ラスト50pは手に汗握る展開で読み終わるのが勿体無いほどです。ジャンルは何になるんだろうなぁ?。警察官が主人公だけれど警察物というよりは航空サスペンス、それもタイムリミット物に近い感じです。
 路上で強盗に撃ち殺された女性。単純な強殺にしてはおかしな点が多いので調査を進めるヘイスティングス警部補は、殺人事件に革命集団『5.10』が関与している事を知る。単純な強盗殺人だと思われた事件は大掛かりなテロの幕開けだったのだ。狙われているのは日本の実業家で、彼は政界に打って出ようとするほどの大物だ。この実業家が革命集団に狙われている事は確実なのだが、確証がないので手の打ち様の無い捜査陣。で、この実業家が帰国しようとするその一時間前に、近くの空港でリア・ジェット機が何者かに奪われ…というストーリーです。正直言って最初の100pくらいは非常に退屈でした。この作品を読む直前に読了したシリーズ第一作があまりにも駄作だったので、またかよっ!と怒ろうかと思ったのですが、途中から展開が変わり航空機サスペンス物へ変身するじゃないですか?!。革命集団の一員が、ある落ちぶれた航空パイロットに接触している事をしったヘイスティングス警部補がテロに気がついた時点からハラハラドキドキで大満足♪でした。この作家の作風は地味だけれど人物造詣と情景描写が巧いので、ストーリーさえ良ければ安心して読めるのですよね。
 読んでいて面白いなぁと思ったのは、狙われている実業家が日本人、狙われる航空機はJAL、事件の鍵を握る若い男も日本人で、日本づくしだった事なのですが、あとがきを読んで謎が解けました。なんとこの作品は週間文春に1982年10月21日号から二十五回にわたって連載されていたものを文庫化したのだそうです。なので、日本の読者向けに書かれた作品なのだそうな。ビル・プロンジーニが『小説新潮』に『名無しの探偵シリーズ』を書き下ろし連載していた時期とほぼ同時期なので、この当時は欧米の売れっ子作家に連載を依頼するのが流行りだったのかもですね。
 本作は警察小説が苦手な方にもお勧めですし、航空機サスペンスがお好きな方に特にお勧めですが、くれぐれも、ヘイスティングス警部補の登場作である『ロンリーハンター (ヘイスティングス第一の事件)』を先に読まないで下さいっ。このシリーズは途中から読まれる事をお勧めします!。   作家名INDEXホームへ戻る



注・・・管理人はヘイスティングス警部シリーズをこの合作で知りました(プロンジーニのファンなので)。
なのでプロンジーニの感想になっていますね(汗。後に読み返して書き直します。

依頼人は三度襲われる
(TWOSPOT)
B・プロンジーニ&コリン・ウィルコックスの共著 文芸春秋社 文庫
初版1980年3月25日
あらすじ  すべての事件はカストロ首相がアメリカを公式訪問する日から始まった。サンフランシスコ市警のヘイスティング警部と”名無し”の私立探偵がコンビを組んで、ナバ渓谷のあるワイナリーで起こった不思議な内輪もめ殺人事件に関わりあう。死体のそばに落ちていた[TWOSPOT]と書かれたメモは果たして何を意味するのか?・・・。コリン・ウィルコックス著のシリーズ主人公ヘイスティング警部と”名無しの探偵”の共演。『名無しの探偵&ヘイスティングス警部の共演。(作中でプロンジーニ『暴発』の事件から五ヵ月後という記述があります。なので、探偵のこの時点での年齢は50歳)

 
感想  読みながらワクワクしました。だって、名無しの探偵とウィルコックスの描くヘイスティングス警部との共演ですよ。楽しめないはずが無いんですが♪。共作『ダブル』の読後にも思ったけれど、プロンジーニは共作を書くのを純粋に楽しんでいますね。そして分担して書くのは難しいだろうに、いとも軽々とやってのける。凄いですね(笑)。それに、ラストのエピローグの部分だけは、名無しとヘイスティング警部と半分づつ一人称で書いてあって微笑ましい。ラストの一人称をウィルコックスに譲ったのは、先輩を立てたのかもですね。
 最初は金持ちの家族の内輪もめで始まるのですが、ここでカストロ首相のアメリカ訪問が絡んできて、物語は意外な方向へ・・・というストーリーです。物語は4部構成で組み立てられています。第一部&三部は名無しの探偵の一人称で、第二部&四部はヘイスティング警部の一人称で描かれています。これ、巧いなぁと思ったのは起承転結の「起と転」を探偵に語らせた事。物語が違和感なく始まっているんですよね。探偵のパートではいつものようにコツコツと調査を続ける探偵の姿が描かれているのですが、ヘイスティング警部が現れた所からは警察による大掛かりな調査が始まり、この対比が面白い。
管理人はこれまでに、名無しの探偵が出てくる共作を2作品読んだ事になるのですが、本作の勝利という感じがします。何故かというと、プロンジーニとウィルコックスは作風が似ている気がするんですよね。特に描写や一人称特有の主人公のぼやき部分が似通っていて、一部から二部へと変わる瞬間さえも違和感は全くなし!です。(訳を一人で訳されている所為もあるのでしょうが。訳は宮脇孝雄氏)。
 この作品の中で名無しの探偵が『ビル』と呼ばれている事が判明します。そしてヘイスティング警部とエバハートと名無しの探偵はポーカー仲間なのだそうな。うぷぷぷ。



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