ご近所で有名マグマ
マグマは完全室内飼いだった。この当時、猫を閉じ込めて飼う人など殆どいなかったのだが、どうしても外に出す気にはなれなかった。
マグマが来たこの年にアメリカで猫の感染症である”猫エイズ”が発見されNEWSでじゃんじゃん流れていたし、他にも恐ろしい病気が沢山ある事を知っていたからだ。 車に轢かれる事もあるだろうし、ご近所に迷惑を掛けずに飼う事+猫を死なせない事=室内飼いしか思いつかなかった。
で・・・ある日。
猫の餌を買いにショッピングセンターに行ったら、ふとお散歩ヒモが目に付いた。価格も500円くらいで安いし、試しに買って帰った。 早速、嫌がるマグマの首輪に装着しベランダに出てみた。マグマは『ん?いつもは出ちゃダメって言われるのに今日は良いのかな?』と遠慮気味に辺りを検査して回る。おシッポは興奮で三倍に膨らんでいたが帰りたい素振りは見せない。 私は30分ほどヒモの先を握って付いて回った。こちらは飽きてきたのだが、マグマは帰りたいと言わぬので無理やり連れ戻しこの日のお散歩は終了。
で・・・翌日。
昨日のお散歩ヒモ成功に気を良くした私は、マグマにヒモを装着し、玄関から外に出てみた。またまたおシッポが三倍になるマグマ。 だが、ヒモの事は全く気にならないようで、そこら辺で匂いを嗅ぎまわり明らかに愉しんでいるご様子だ。 この日も30分ほど、愉しんでいるマグマに付き合い玄関前をうろうろしたが、何時までも帰ると言わぬので強制的にお散歩を切り上げた。

で・・・その後・・・。
忙しさにかまけてマグマのお散歩の事を数日忘れていた。で、ふとマグマを見ると玄関のドアの前に座り込んでいる。顔をドアに向けて時折、こちらを振り返り何か言いたそうだ。 もしや?と思いお散歩ヒモを出してくると、『やっと気付いたのかよっ。ぼけっ』という顔で立ち上がり、おシッポをふりふりするマグマ・・・。
こいつ・・・催促していたのだ。
これ以降、マグマの紐付き散歩は日課になり、ご近所の人に名が売れるマグマ。恥ずかしいので日が暮れてからお散歩をしたいのだが、強情なマグマは自分が行きたいと思ったら梃子でもドアの前から動かない。 ドアの前から一歩も動かないマグマを見ると家族は『ほらっ。マグちゃんが連れて行けって言いよるよ!。可哀想やろ!行って来なさい』とマグマの援護をする・・・。
不思議な事にこの座り込み催促は私がいない時はしなかったらしい。私が帰宅すると『よっこらしょ』と立ち上がりドアに向かうのだ。お散歩のお供は私と決めていたマグマちゃん。他の家族がお供をすると5分で連れ帰られるので相手を選んでいたのだ。 このお散歩はマグマが完全に視力を失うまで続いた・・・。
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