マグマ 初夜
「猫がトイレを上手に使ったよ」と家族に報告すると「誰か飼い主がいて探してたらどうする?可哀想やろ。放してやり」と言う。 「三、四日も公園を彷徨っていたのなら飼い主が居てもロクな飼い主じゃない、我が家で飼うんだ!」と宣言し猫にいりこ(煮干)と牛乳を与えるとがつがつと食べる。 よほどお腹がすいていたようだ。だが、この牛乳が後で悲劇を生むとはこの時は分らなかった。
何時もなら「すぐさま外に出せ!」と叫ぶ父上も猫を見て見ぬふりをしている。
猫も出たがる素振りは無く、もう何年もここに居るような顔をしている。 で、無事に深夜を向かえ眠りに付いた後、家族全員が酷い目にあった。猫は家に迎えてもらえた事がとても嬉しかったのだろうと思うのだが、夜中の間、一睡もせず、家族全員の体の上に乗り”もみもみ””にゃーにゃー”攻撃を続けたのだ。 家族全員が朝の三時、四時にやっと疲れて眠りに付いたような状態だった。
で・・・翌朝。起き上がると猫が居ない。慌てて家中を探すが居ないのだ。母に「猫は?どこに行ったと?!」と聞くと「あんなうるさい猫は飼えんよ。外に出したよ」と言う。 慌てて外に出て辺りを見回すと、近くの田んぼの中にぽつんと座り込んでいる。あんなに寂しそうな後姿は一生忘れられないくらい哀愁が漂っていた。嬉しくて、みんなに乗って回ったのに追い出され意気消沈していたのだろう。
「おーーいっ。ねこっ」と叫ぶと「ん?」という顔つきで後ろを振り返り、びっくりした顔をした瞬間、走ってこちらに向かってくる。この猫はこれ以降、呼んでも出てくる事など一度も無かった事を考えると、この時はよほど不安だったのだろう。 この走りがこの猫の運命を変えたのだ。この時、呼んでも来てくれなかったなら、家族の反対を押し切って「飼うっ!」という事は出来なかったかもしれない。母は一度外に出した猫を抱いて戻った私を見て観念したようだった。そしてこの日から正式に我が家の五人目の家族になった。
この後、母上は諦めが悪く、町内のネットワークを活用し「猫が迷い込んでいます。どなたか飼い主さんはいらっしゃいませんか?」と飼い主を探して回った。だが「私の家にも勝手に入り込んできたよ」や「家にも入り込んできたけど、追い出したよ」という複数の不法侵入の犯歴を入手しただけで終った。 猫は別に私の家を選んだ訳ではなく、何度もアタックを繰り返した挙句、我が家でやっと成功したのだと知って家族で大笑いした。

そして、数ヵ月後・・・捨てられていたのはマグマ以外にも数匹いたことを知った。その時点で母には内緒で探し回った。だが、姿さえ見ることは無かった。マグマは17年生きたが、他の兄弟たちは幾つまで生き長らえたのだろうか?。
猫は野生動物ではない。人の助けがないと生きて行けないのだよね。何故捨てる?。
マグマと兄弟たちは既に一歳近くになって捨てられていた。そこまで大きくして何故捨てるんだろう?。捨てるくらいなら避妊すべきだ。捨てられた子で家庭に入り込める子は数パーセントしかいないだろう。捨てた時点で殺すつもりも同然なのに・・・。
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