マグマ 急速に老いる
 目が見えなくなってきた頃から急速に老いたマグマ。ある日マグマを見ていると脚を上げて首筋辺りを掻こうとしているのに、その足が空振りして体に届いていない所を見てしまった。自分の体を掻く事も出来なくなったのかとショックを受けた。そして歩く度に、足音をさせるようになったのだよね。フローリングの床を歩く度に爪が床に当たる音が「ちゃっちゃっちゃっ」とする。医者に聞くと筋力が衰えると爪の出し入れが出来なくなるのだそうだ。今までマグマにブラッシングなどしてあげてもさっさと逃げて行かれていたのだが、体を自分で掻けないのだからひょっとして気持ちが良いかもとマグマにブラシをかけてみた。すると・・・足をふみふみするんだよね。で、ブラッシングを終了しようとすると「止めないで」という素振りをする。この日からマグマのブラッシングは日課になった。毎日、夜の10時からNEWSを見るのが私の日課だったので、そのテレビを見ている一時間ずっとマグマの体をブラシで掻いてあげていた。



 いつも座布団の上で寝ているマグマにブラシを当てようとすると最初『どきっ』と驚いていた。当然だよね。目が見えていないのだからいきなり体に触られれば驚くだろう。で、ブラッシング前やマグマに手を触れる前に自分の手を寝ているマグマの鼻先に差し出し「今から触るよ」と教えるようにしてみた。マグマは寝ていても指の匂いが分かるのか私の手を嗅いだら『あっ。今からブラシだ』と起き上がり正座して手をふみふみし始める。そして、ブラッシングを楽しみにするようになった頃から、マグマが私の自室にやって来るようになった。夜の11時を過ぎた頃から、何か用事があるのか『ぶにゃぶにゃっ』と不思議な泣き声を上げながら私を呼びに来る様になった。(酷い時は一晩に4、5回やって来た)餌をねだる時もあれば、単にかまって欲しいだけの時もある。この”来訪”は夜中の三時とか明け方の五時とか時間はバラバラで、この頃私は常に寝不足だった。でもどんなに熟睡していてもマグマの声で目覚めていたんだよね。未だに自室で寝ているとマグマが歩いてくる爪の音が聞こえる時がある。




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