1986年11月。夕方5時頃だったと思う。お使いに行こうとした妹が外に出ようとした時、母と妹の悲鳴が上がった。
その時、私は夕方のNEWS番組にかじり付いていた。テレビでは三原山の噴火の様子が伝えられていて、真っ赤なマグマが流れ出す様子が映されていたのだ。
ニュースキャスターの『マグマが!マグマが!』という叫び声に重なって母と妹が叫んでいるので「なんだろう?」とキッチンに向かうと私の足元には大きな黒猫がいた。
この闖入者は、まるで自分の家に帰って来たように大きく屈伸運動をし、立っている私の足元をすり抜けテレビの前にずうずうしく座り込む。
今まで私が座っていた座布団の上に上がっているのだ。
とても美しい毛並みで、人にも家にも慣れているのできっと飼い猫だろうと思った。
体が非常に大きな猫だ。おしっぽが長く、毛も少し長めでペルシャ猫のように顔が大きい。想像では一歳前後くらいだろうか。
母は私が「飼おうよ」と言い出すのを恐れて「早く外に出せ」と叫んでいる。
だがこんなチャンスをみすみす見逃しはしない。それから一時間ほど触りまくり、母の怒りが頂点に達した頃、猫を外に出そうとするが出て行かない。
|  |