マグマとの出会い
1986年11月。夕方5時頃だったと思う。お使いに行こうとした妹が外に出ようとした時、母と妹の悲鳴が上がった。
その時、私は夕方のNEWS番組にかじり付いていた。テレビでは三原山の噴火の様子が伝えられていて、真っ赤なマグマが流れ出す様子が映されていたのだ。 ニュースキャスターの『マグマが!マグマが!』という叫び声に重なって母と妹が叫んでいるので「なんだろう?」とキッチンに向かうと私の足元には大きな黒猫がいた。
この闖入者は、まるで自分の家に帰って来たように大きく屈伸運動をし、立っている私の足元をすり抜けテレビの前にずうずうしく座り込む。 今まで私が座っていた座布団の上に上がっているのだ。
とても美しい毛並みで、人にも家にも慣れているのできっと飼い猫だろうと思った。 体が非常に大きな猫だ。おしっぽが長く、毛も少し長めでペルシャ猫のように顔が大きい。想像では一歳前後くらいだろうか。
母は私が「飼おうよ」と言い出すのを恐れて「早く外に出せ」と叫んでいる。 だがこんなチャンスをみすみす見逃しはしない。それから一時間ほど触りまくり、母の怒りが頂点に達した頃、猫を外に出そうとするが出て行かない。
玄関先で猫に「お家に帰りな」と話しかけていると四軒となりの若奥さんが通りかかり「あっ。猫ちゃん!ここに居たの?」と言う。私達が「この猫をご存知なんですか?」と聞くと奥さんは説明を始めた。
この黒猫は近くの公園に数日前に捨てられていたらしい。奥さんには三歳の子供さんがいて毎日、遊びに行かれていたそうなのだが、子供が猫を家に連れて帰ると泣き叫ぶので 止む無く家に連れ帰ったが、飼う事は出来ないと家から出したのだそうな。その家をおん出されて彷徨っていたらたまたま、我が家のドアが開いたので入り込んだのだろう。 捨て猫と聞きこれはチャンスだと、母の制止を無視し自室に連れ帰る。トイレを用意しようとダンボール箱に新聞紙を裂いていると、早速中に入り放尿。 これは間違いなく誰かが飼っていたのを捨てたのだろう。
で、怒りまくる母に「飼うよ!絶対に飼う!」と宣言し、猫は我が家での第一日目を迎える事になったのだ。

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