口笛ふいて殺人を犯罪エリート集団殺しこそ わが人生犯罪ショーへの招待殺しの方法教えます人肉料理殺人者にバラの花束殺意を秘めた天使(エンジェル)犯罪特製メニュー殺人者が追ってくるえっ、あの人が殺人者犯罪教室ABC

日本代表ミステリー選集 作家紹介&作品紹介


シリーズ紹介

この日本代表ミステリー選集と言う名のアンソロジーは角川文庫が全盛だった時代に発行されたものです。
当時第一線だった90人の作家によって戦後発表されたミステリーの中から短篇120編を選び、全12巻に編集されています。

   殺人事件の犯人探しやアリバイ崩し、トリックの興味のみに囚われることなく、犯罪者の微妙な心理・動機・超自然の奇異な出来事を扱った作品など、バラエティーに富んだ内容です。
子供の頃に集めた本ですが、今振り返って見ると超大御所作家ばかりの作品が収録されている、とても贅沢なアンソロジーです。本格推理作家から純文学作家、時代小説作家、SF作家まで幅広い有名作家が描いた推理小説は読み応えがあります。(勿論、このシリーズは絶版です)短篇の全てが、それぞれの作家の短編集に収められているのかは不明です。こんな面白いアンソロが何処かの古本屋に眠っているのかもと思い内容をご紹介致します。編集者である中島氏&権田氏のあとがきだけでも資料的な価値が高いですし、収められている作家の中には手に入れることも困難な作家が数多いのです。今はまだ(というかご存知の方が少ないのでしょうが)全巻揃えても4000円位で入手出来ます。急がれたし。




題名 口笛ふいて殺人を(日本代表ミステリー選集 1)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(夢の世界から日常的現実へ)
発行年 昭和50年9月30日  


収録作品題名
おーい でてこーい 星 新一 三十三年十月「宝石」に発表。人間の無関心な慣れに対する底知れぬ不気味が伝わってくる。
虚空の男 半村 良 四十二年十月SFマガジン臨時増刊号に発表。奇妙な男の蒸発をSF的手法で描く。
探偵小説 横溝 正史 二十一年十月「新青年」に発表。小説的作法問答の楽しさの後の意外性が効果的な作品。
ハムレット 久生 十蘭 二十一年十月「新青年」に発表。心理的推理に新境地を拓く。
杢平虹(モクヒラアーク) 邦光 史郎 三十八年九月、書き下ろして「極秘工場」に収録。実在の民間研究家から取材した。
青い群 河野 典生 三十八年十一月「オール読物」に発表。当時の若者風俗を材に描かれた作品。
ある脅迫 多岐川 恭 三十二年二月「宝石」に発表。主客顛倒する過程に奇妙な味が滲み出ている。
肌の告白 土屋 隆夫 短編集「肌の告白」(三十四年六月)の為に書き下ろした。犯罪発覚の手掛かりに工夫。
妻を深く眠らせる法 藤村 正太 四十九年三月、書き下ろしで単行本に収録。夫婦間の危機に乗じた邪悪な企図に愕然。
万葉翡翠 松本 清張 三十六年二月、「婦人公論」に発表。万葉考古学と犯罪を結び付けた作品。

日本代表ミステリー選集 作家略歴






題名 犯罪エリート集団(日本代表ミステリー選集 2)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説
発行年 昭和50年 9月30日  


収録作品題名
危険な斜面 松本 清張 三十四年二月、「オール読物」に発表。現実感に溢れたアリバイ崩しが強烈な魅力。
パリの罠 新章 文子 四十六年一月、「小説現代」に発表。海外旅行の影に進行する策謀を描いたサスペンス作品。
男か?熊か? 生島 治郎 三十九年十月発表。ストックトンの「女か虎か」をもじった題名で、不気味な恐怖を描く。
不思議な母 大下宇陀児 二十二年四月「ロック」に発表。夫を殺された妻の屈折した心理に焦点を当てた作品。
三十六人の乗客 有馬 頼義 三十一年十二月「オール読物」に発表。極限状況のスキーバス中で犯人を捜す刑事に視点を据えたサスペンス。
年輪 角田 喜久雄 三十八年十一月「宝石」に発表。五十年前の謎を解き解す手練は老巧。
電話の陰 川上 宗薫 四十九年五月「小説推理」に発表。浮気の待ち合わせの度にかけない筈の断りの伝言がある。不審な妨害者の正体は?。
動きまわる死体 海渡 英祐 四十六年十月「問題小説」に発表。型破りの刑事吉田茂警部補を主人公とする連作短篇の第一作。本格推理&独特のユーモア。
美しき殺意 平岩 弓枝 三十四年八月「面白倶楽部」に発表。美容整形につけこむ脅迫を扱って、窮境の心情を巧みに捉えた作品。
三角犯罪 陳  舜臣 四十五年一月「小説セブン」に発表。当時の社会風俗と得意の密室トリックを巧みに融合。

日本代表ミステリー選集 作家略歴





題名 殺しこそ わが人生(日本代表ミステリー選集 3)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 無し
発行年 昭和50年10月30日  


収録作品題名
遺書のある風景 梶山 季之 三十八年四月「別冊小説新潮」に発表。平凡な新聞記事の背後に潜む黒い事件を抉る。
生きていた死者 遠藤 周作 四十二年九月「宝石」に発表。受賞記念写真に写った死者の執念と、受賞者の女子学生の対比が印象的。
散歩する霊柩車 樹下 太郎 三十四年十二月「宝石」に発表。奇抜な着想に苦渋の味とおかしみが融合して短篇の楽しみが味わえる。
心霊殺人事件 坂口 安吾 二十九年十月「別冊小説新潮」に発表。心霊実験の詐術を看破する奇術師探偵の冴えが鮮やかに決まる。
幻想曲 木々 高太郎 二十七年十月「宝石」に発表。戦死した前夫の幻覚に悩む人への思慕を抱きながら、検事の直面した殺人の謎と人の心の不思議さに鋭いメスを入れる。
老人と犬 西東 登 四十七年二月「小説サンデー毎日」に発表。元将軍と貧しい寡婦との奇異な心中事件に秘められた要因を的確に捉えている。
文殊の罠 鷲尾 三郎 三十年一月「宝石」に発表。南米で巨大な資産を築いた日本人の遺産相続者の訴えから始まるが、地球の表と裏の対照を利用したトリックが奇抜。
ロープウェイの霊柩車 都筑 道夫 四十九年八月「スキーヤー」に発表。ユーモラスな味と大胆な状況設定が魅力。
弔鐘(ちょうしょう) 石原 慎太郎 三十八年六月「オール読物」に発表。不敗拳闘選手のリング上での死を追求し、ヒーローの陰の部分を抉り出している。
霧の向こうに 仁木 悦子 四十七年四月「別冊小説新潮」に発表。記憶を喪失した男の過去に秘められた犯罪の影を鮮やかに浮き彫りにする。

日本代表ミステリー選集 作家略歴






題名 犯罪ショーへの招待(日本代表ミステリー選集 4)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 中島 河太郎(推理作家のペンネーム由来記))
発行年 昭和51年10月30日  


収録作品題名
さらば厭わしきものよ 佐野 洋 昭和三十四年三月「宝石」に発表。題名はチャンドラーの題名をもじった。幸福な妻に仕掛けられたのは実に巧妙な罠だった。
恐山 渡辺 啓助 三十五年二月「宝石」に発表。遺産目当ての若妻をやさしく迎え入れる老人には恐るべき謀略が。
月ぞ悪魔 香山 滋 二十四年一月「別冊宝石」に発表。エキゾチックな南国を舞台に幻想味豊かに異常な愛欲の世界を描く。
寂しがりやのキング 生島 治郎 四十二年十月「別冊文芸春秋」に発表。片足の名探偵久須見が、溺死した女の謎を追って活躍する正統派ハードボイルド。
獅子 山村 正夫 三十二年十一月「宝石」に発表。古代ローマ帝国皇帝が放った刺客が狙った相手は意外にも・・・。
葎生の宿(むぐらふ) 小松 左京 四十八年十月九日号の「週刊小説」に発表。「そんな馬鹿な?!」道に迷って入り込んだ廃屋の怪奇。
妖鬼の呪言 岡田 鯱彦 二十四年「別冊宝石」に発表。霊感少女のお告げ通りに殺人が起こり、教授、その夫人、助教授、学生間の愛執を中軸に、検事対犯人の策略闘争に焦点をおいている。
粘土の犬 仁木 悦子 三十二年十一月「宝石」に発表。貯金欲しさの情婦殺し。現場には盲目の子しかいなかったのに。
驟雨(しゅうう) 三浦 哲郎 発表年不明。赤ちゃんの突然の死で暴露された平和そうな家庭の意外な実態を描く。
単位の情熱 森村 誠一 四十八年一月五日「週刊小説」に発表。社長令嬢の指輪紛失の責任を問われた女が無惨な死体に。ホテルマン体験を生かした作品。





題名 殺しの方法教えます(日本代表ミステリー選集 5)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(日本推理作家協会賞受賞作家とその作品)
発行年 昭和50年11月30日  


収録作品題名
外出した死体 結城 昌治 四十八年二月「オール読物」に発表。死体消失の謎を乾いた文体で描いたハードボイルド。
朝の来訪者 笹沢 佐保 四十七年十月「オール読物」に発表。情婦生活の女がやっとみつけた愛は死を招く愛だった。現代的な虚無感の漂うサスペンス。
暗い春 大薮 春彦 発表年不明。銃に魅了された青年が社会に背を向けて生きる決意をした時・・・。ニヒルな青年の肖像を鮮やかに描き出す。
奈落殺人事件 戸板 康二 三十五年四月「オール読物」に発表。劇場の地下で起きた殺人の裏には幸福を願う女の想いが。
六条執念 木々 高太郎 二十九年一月「別冊文芸春秋」に発表。年上の女の執念。それは生霊にも似た鬼気迫るものだった。
西村 寿行 四十九年十月「小説現代」に発表。妻を暴行した上、絞殺した憎い犯人を盲目の老犬が追い詰める。
赤い靴 山田 風太郎。 二十八年八月「講談倶楽部」に発表。無惨にも両足を切断されていた二人の妾。怪しく綴る金瓶梅の世界。
空巣専門 原田 康子 三十九年二月「別冊宝石」に発表。全くついていない。偶々、空巣に入った家が殺人現場とは。
巫女 朝山 蜻一 二十七年六月「別冊宝石」に発表。美しい巫女が残した書簡には死に至る凄惨なマゾの世界が描かれていた。
青い火花 黒岩 重吾 三十五年一月「宝石」に発表。事故と思われたキャバレーダンサーの死の真相は意外にも。
日焼けのあと 佐野 洋 三十八年一月「別冊文芸春秋」に発表。私が結婚に踏み切れないのは私が持つある暗い過去の為。暗い過去を持つ女の不安を見事に描く。



題名 人肉料理(日本代表ミステリー選集 6)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 中島 河太郎(江戸川乱歩賞受賞作家とその作品)
発行年 昭和50年11月30日  


収録作品題名
青い枯葉 黒岩 重吾 三十五年十二月「宝石」に発表。企業の犠牲となった孤独な女の復讐を描いている。
枝から枝へ 多岐川 恭 四十七年十月「小説宝石」に発表。悪女を描いた老練な構成が利いている。
吉備津の釜 日影 丈吉 三十四年一月「宝石」に発表。釜鳴り伝説を踏まえ、半信半疑の心理に浮かぶ連想が伏線となり、結末で老巧の持ち味を示す。
共食い ホロスコープ誘拐事件 小松 左京 四十八年九月「小説推理」に発表。誘拐事件の意外な結末が皮肉で面白い。
殺意の成立 三好 徹 三十七年八月「オール読物」に発表。死体処理のトリックを巧みに生かす。
長い暗い冬 曾野 綾子 三十九年二月「別冊宝石」に発表。日常的な世界に潜む狂気の不気味な恐怖を鋭く抉る。
私はだれでしょう 川辺 豊三 昭和二十七年、足柄左右太名義の本篇を「別冊宝石」に発表、新人賞第一位を得た。令嬢宛の無名氏の手紙から、投函者を推理する話はウィットに富む。
星盗人(ほしぬすっと) 藤本 義一 四十六年九月「別冊小説宝石」に発表。色と欲にからんだ宝石店員のもくろみが、女性心理の盲点に陥れられる話である。
沼垂の女(ぬつたりのおんな) 角田 喜久雄 二十九年十一月「別冊宝石」に発表。戦後の世相を背景に不可視世界に誘い込む叙述は素晴らしい。
横溝 正史 三十年五月「宝石」に発表。三百年前の伝説そのままの連続殺人の解決の鮮やかさと人間味溢れた結びが爽やかだ。

日本代表ミステリー選集 作家略歴






題名 殺人者にバラの花束(日本代表ミステリー選集 7)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 中島 河太郎(本格推理小説の系譜)
発行年 昭和51年 1月10日  


収録作品題名
ルパン殺人事件 野坂 昭如 四十六年七月「小説現代」に発表。戯作的な文体が独特の味をかもし出している。
視線 戸川 昌子 三十七年十二月「宝石」に発表。不倫の関係にある女性が相手の妻を殺すまでの心理的サスペンスを見事に盛り上げている。
防空壕 江戸川 乱歩 三十年七月「文芸」に発表。空襲体験の追憶に盛られたイメージは意外性よりも強烈な感動に溢れている。
飢渇の果て 南條 範夫 三十五年九月「宝石」に発表。色情に絡まる人間の相剋と意外な犯人を用意しながら、哀切な慕情を語る。
アカベ・伝説の島 西村 京太郎 四十六年六月「小説サンデー毎日」に発表。孤島の信仰習俗を背景に、殺人に対する島人の心理的解釈が斬新である。
ある決闘 水谷 準 二十六年四月「改造」に発表。決闘事件に絡む犯罪の底にある人間性を追及した老巧作。
加えて、消した 土屋 隆夫 四十六年十一月「別冊小説現代」に発表。死の真相に潜むトリックがユニーク。(本格物に秀作が多い作家)
赤い密室 鮎川 哲也 二十九年九月「探偵実話」に発表。興味豊かな二重密室の秀作。
跳びおりる 夏樹 静子 四十八年十二月「小説推理」に発表。女の黒い復讐を鮮やかに描いている。
瀬戸のうず潮 梶山 季之 三十八年四月〜六月「旅」に発表。目撃者の証言が犯罪を暴く過程が面白い。



題名 殺意を秘めた天使(エンジェル)(日本代表ミステリー選集 8)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(社会派推理小説の系譜)
発行年 昭和51年 1月10日  


収録作品題名
葡萄草文様の刺繍 松本 清張 四十二年二月「オール読物」に発表。巧みな小道具の使い方が実に効果的。
落し物あり 城山 三郎 発表年、不明。腕一本が道に転がっている出だしが不気味で、成長して行く少年の心理を追ってサスペンスを盛り上げている。
尾行者の証言 大谷 羊太郎 四十七年七月「小説サンデー毎日」に発表。変身ゲームを取り入れた悪の卍巴の策略も、現代犯罪風俗に裏打ちされている。
蔵を開く 香住 春吾 二十九年九月「宝石」に発表。手馴れた技巧でユーモアの底に秘められた無気味さが効果的。
発狂者 永瀬 三吾 三十年六月「宝石」に発表。三十年来の中国の洪水を背景に、窮迫者の犯罪誘発のプロセスを掘り下げている。
七人の犯罪者 星 新一 発表年不明。ユーモラスな筆致で不信の時代を描いている。
ネンゴ・ネンゴ 香山 滋 二十八年十一月「宝石」に発表。奇怪な鼠男の姿を鮮やかに浮き彫りにしている。
地図にない沼 佐賀 潜 四十四年三月「小説宝石」に発表。遺産相続の争いに乗じた法律家の巧妙な策略に唖然とさせられる。
指輪 有吉 佐和子 三十三年七月「小説新潮」に発表。遺品の指輪からの推理が空転するほど、悪を押し切る力の強さをまざまざと見せ付けている。
朱色(パーミリオン) 楠田 匡介 三十三年四月「宝石」に発表。やくざ殺しの明快な推理は巧妙な意外性で裏打ちされている。
奥さん こちら 山田 風太郎 三十六年八月「別冊週刊大衆」に発表。天意の復讐は皮肉に凄まじく、無類の効果を上げている。


日本代表ミステリー選集 作家略歴




題名 犯罪特製メニュー(日本代表ミステリー選集 9)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 中島 河太郎(怪奇現象小説の系譜)
発行年 昭和51年 3月10日  


収録作品題名
妊婦の宿 高木 彬光 二十四年五月「宝石」に発表。心理の盲点を突いた卓抜な構成力は古典的名作といえよう。神津恭之シリーズの一篇でお馴染みのメンバーが登場する。
その情報は暗号 筒井 康隆 初出不明。スパイ活動の非喜劇を鋭く衝いている。
江の島悲歌(エレジー) 斉藤 栄 四十六年十一月「小説サンデー毎日」に発表。強固なアリバイ崩しが小気味良い。
天狗 大坪 砂男 二十三年八月「宝石」に発表。秀抜な着想を緊密な文体で飾り、探偵文壇に清新な香気を吹き込む。
安房国の住広正(アワノクニノジュウヒロマサ) 大河内 常平 三十二年十二月「宝石」に発表。刀匠の名誉に賭けた執念が、異様な犯罪工作に絡んでいる。
クイーン牢獄 北 壮夫 四十年九月「オール読物」に発表。史上最大の怪盗ジバコに挑む小島の防衛は奇想と哄笑に溢れている。
かむなぎうた 日影 常吉 二十四年十二月「別冊宝石」に発表。幼児の追想のかもし出す妖気と清純さは類が無い。
赤い毒の花 水上 勉 三十七年三月「小説新潮」に発表。偽って交渉をもった者への激しい憤りが、突然変異の花のように鮮烈である。
霧鐘 中薗 英助 三十七年「別冊小説新潮」に発表。国際政治に潜む黒い謀略の影を北の果てを舞台に見事に浮き彫りにしている。
八月は魑魅と戯れ 赤江 瀑 四十九年七月「小説新潮」に発表。霊感力の有無に悩む少年が、呪われた人形師の死に直面する心理の屈折を見事に捉えている。
急行出雲 鮎川 哲也 三十五年八月「宝石」に発表。列車時刻表によるアリバイ崩しの逆手を行くアリバイ発見という新しい試みに挑戦した秀作。

日本代表ミステリー選集 作家略歴








題名 殺人者が追ってくる(日本代表ミステリー選集 10)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(ハードボイルド派の系譜)
発行年 昭和51年 3月10日  


収録作品題名
虚ろな天使 三好 徹 四十四年「小説エース」に発表。映画界の醜い裏側をハードボイルド・タッチで描いた”天使シリーズ”の佳篇。
電話 吉行 淳之介 三十二年十二月「宝石」に発表。過去を持つ男女の秘密の習性を、電話に結び付けた小味の利いた作品。
漕げよ マイケル 皆川 博子 四十九年一月「小説現代」に発表。受験戦争に追われる高校生の殺人と物憂い日常生活を乾いた目で鋭く凝視。
人形の家 草野 唯雄 四十七年六月「小説宝石」に発表。松井須磨子の謎に挑んだ受賞作家の経験した妖異から破滅まで、サスペンスに富んでいる。
失踪事件 加田 伶太郎 三十二年四月「小説新潮」に発表。平凡な大学生が旅行中失踪した事件に、学者探偵が鮮やかな分析で解決をもたらす。
歪みの結晶 笹沢 左保 三十七年七月「別冊小説新潮」に発表。死体発見の背後にある関係者の打算に眩まされない刑事の人間性を捉えている。
方壺園 陳 舜臣 三十七年五月「小説中央公論」に発表。天才詩人李賀の遺稿をめぐる密室殺人をロマン豊かに描く。
作並(さくなみ) 島田 一男 三十二年十二月「宝石」に発表。駆け落ちした男女に付き纏う、女按摩の執念を描いて凄じい。
波の音 城 昌幸 三十年四月「宝石」に発表。荒涼たる海辺の宿でかいま見た亡き妻にまつわる謎が、現実と非現実の間を揺れ動く。
誰かが寝室にいる 菊村 到 四十七年十二月「推理増刊」に発表。得意のサスペンス小説だが、結末に独特の捻りがきかされている。
おえん 水上 勉 三十六年三月「別冊週刊朝日」に発表。殺人犯の心情を理解する検事なればこそ、雪の部落に事件の決着を見届ける。



題名 えっ、あの人が殺人者(日本代表ミステリー選集 11)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(スパイ小説と現代小説の系譜)
発行年 昭和51年 3月30日  


収録作品題名
剥がされた仮面 森村 誠一 四十五年三月「小説宝石」に発表。不可能興味豊かな二重のアリバイ・トリックに挑戦したアリバイ崩しの力作。
犯罪の場 飛鳥 高 二十二年一月「宝石」に発表。力学的トリックによる殺人に隠れた敗戦の衝撃を覗かせている。
骨の色 戸川 昌子 三十九年十二月「小説新潮」に発表。義兄への不倫の愛のため姉を憎悪する、女のどす黒い執念を鮮やかに描いている。
ガラスの結晶 渡辺 淳一 四十五年十月「小説現代」に発表。胎児を堕ろさざるを得なかった女性の愛憎を鋭く掘り下げ、その凄絶な怨念を鮮烈に描いている。
黒い鳥 戸板 康二 三十七年六月「小説新潮」に発表。殺人を目撃した鳥の使い方に独特の工夫を凝らした異色のアリバイ崩しである。
キタタキ絶滅 石沢 英太郎 四十五年三月「推理界」に発表。絶滅寸前の鳥を守り抜こうとする混血児の気迫と記者根性が凄まじい。
石の塔 清水 一行 初出不明。子供の事故死、母親の自殺、バラバラ事件を通して現代人の(当時)”無関心”を掘り下げた秀作。
謀殺のカルテ 有馬 頼義 三十四年三月「オール読物」に発表。何者かに命を狙われている中年男の恐怖感を見事に描き出した佳篇である。
箱の中のあなた 山川 方夫 三十六年二月「「ヒッチコック・マガジン」に発表。内気で臆病な女の幸福は、裏切れない男の顔を見つめる事だった。凝縮された戦慄に女性心理の深渕を覗かせている。
殺意 高木 彬光 二十七年十一月「小説公園」に発表。法律の不備に乗じた殺人がさらに波紋を呼ぶ異色作。

日本代表ミステリー選集 作家略歴




題名 犯罪教室ABC(日本代表ミステリー選集 12)
編集者 中島 河太郎  権田 萬治  
版元 角川書店 文庫
解説 権田 萬治(SFミステリーの系譜)
発行年 昭和51年 3月30日  


収録作品題名
喘息療法 結城 昌治 三十七年十二月「オール読物」に発表。あいつさえいなければ。老夫婦が互いに殺意を抱き合った時。独特の黒いユーモアで描く。
死神に追われる男 新田 次郎 三十六年四月「講談倶楽部」に発表。死に場所を求めて彷徨う男が山中で遭遇した奇妙な体験。
陶貨 加納 一朗 四十二年二月「推理界」に発表。敗戦前夜に殺害した死体が二十数年後に発見された。犯人がその場所に惹き付けられた為、直面した驚愕を描く。
天使の墓場 五木 寛之 四十二年三月「別冊文芸春秋」に発表。墜落した米軍用機に潜む黒い秘密に挑戦する孤独な男の肖像を描く。
尊属殺人事件 和久 峻三 四十七年十一月「「別冊小説現代」に発表。義父の陵辱と虐待に耐えかねて殺害したヒロインをめぐって、法廷論争の背後にある意外性。
歯には歯を 大薮 春彦 三十四年十二月「宝石」臨時増刊号に発表。孤独な青年サラリーマンに巣くうどす黒いニヒリズムの爆発を描く。
親友記 天藤 真 三十六年十二月「宝石」に発表。無二の親友が死後、手紙で告白した恐るべき友情の真相に驚愕。
淋しい草原に 高城 高 三十三年六月「宝石」に発表。失われた兄の死体の謎を追うハードボイルド。
深夜の秘儀 小林 久三 四十九年十月「小説現代」に発表。映画監督殺しの犯人は?。華麗な世界に潜む醜い人間性を追及。
月と手袋 江戸川 乱歩 三十年四月「オール読物」に発表。完全犯罪のアリバイをめぐる、犯人と明智探偵の知恵比べ。



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