報復//報復ふたたび/心神喪失/いとけなく愛らしき者たちよ/

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ジリアン・ホフマン(Jilliane Hoffman) 作家略歴&作品紹介
作家名 ジリアン・ホフマン(Jilliane Hoffman)
生年月日 19??年
生誕地  アメリカ ロングアイランド
処女作  報復(RETRIBUTION)
デビュー年 2004年
公式サイト http://www.jillianehoffman.com/

作家略歴

アメリカ、ロングアイランド育ち。セントジョンズ大学ロースクール在学中からクイーンズやブルックリンの検事局で検察官としての修行を積み、卒業後はフロリダの検事局で検事補となる。専門はドメスティック・バイオレンス。その後、フロリダの法執行局に移り、ジャンニ・ヴェルサーチを射殺した連続殺人犯アンドリュー・クナカンの事件もFBIやCIAと組んで調査にあたった。現在は退職して夫と二人の子供と共にフロリダ州フォート・ローダーデイルに在住。
著者はジョン・グリシャム&トマス・ハリス&ジェイムズ・パタースンのファンなのだそうな。ご自身の著作はこの三人のスタイルを組み合わせたと語っている通り、ジャンルはリーガルサスペンス&サイコサスペンス&警察小説のミックスです。

管理人の個人的感想・・・パトリシア・コーンウェル ファンの方で近作に呆れている方も多いのでは無いでしょうか?。(私は『女警察署長ハマー』で激怒して以来、避けています)あの手のサスペンス作品を読みたい方にお勧めしたい作家です。

判る範囲で著作リスト Novels

Retribution (2004)『報復』
The Last Witness (2005)『報復ふたたび』
Plea of Insanity (2007)『心神喪失』
Pretty Little Things (2010)『いとけなく愛らしき者たちよ』


報復
(RETRIBUTION)

2004/12/2読了
ヴィレッジブックス(ソニーマガジンズ) 文庫初版2004年11月20日
あらすじ 太陽の街フロリダは、キューピッドに怯えていた――それは若い金髪美人ばかりを狙い、何日も被害者をいたぶったあげく、生きたまま心臓をえぐり出して殺す連続殺人鬼の名だ。
捜査は難航したものの、偶然、キューピッドが捕らえられる。やり手と評判の女性検事補、C・J・タウンゼントが担当することになったが、法廷で犯人の声を聞いた彼女は愕然とした。それは今なお悪夢の中で響く、12年前に自分を執拗にレイプした道化師のマスクの男の声だった!。 こいつを無罪放免にしてはならない――恐怖に震えながらも固く心に誓うC・Jだったが、次々と検察側に不利な事実が発覚しはじめ……。

 
感想  これが処女作にしては良い出来だし十分楽しめました。ジャンルは何になるんだろうなぁ。警察小説でもあるしリーガル物(法廷シーンあり)でもあるし、サイコサスペンスでもあるしミステリでもあるんですよね。パトリシア・コーンウェルが描く雰囲気に似ているかな。しかしコーンウェルより巧いです(笑)。
 冒頭からスピード感があります。主人公のC・Jが自宅で暴行されるシーンから始まるのですがその描写が怖い。C・Jは体を切り刻まれ強姦され死にかけます。異物を子宮に突っ込まれ子宮はズタズタ、出血を止める為に子宮を摘出されてしまい子供が産めない体にされてしまう。この事件のせいで恋人も予定していた就職先も友人も失くしてしまう。そして12年後、検事補になったC・Jの前に12年前の犯人が現れる。せっかく、立ち直りつつあった主人公はトラウマに悩まされ仕事も手につかなくなる。ココからがこの作家の巧さだと思うのですが、犯人が捕まっているのに怖いワケですよ(笑)。この男を無罪放免で外に出す訳にはいかない、絶対に死刑にするんだと主人公が奮闘するのですが、裁判は巧く行かないんですよね。この男が無罪で出てくるかも、出てくれば狙われる・・・これが恐怖なんですよね。この主人公の人物造詣も良かったんでしょうね。主人公がただガチガチに強い女性だったならこれほどの恐怖感は出せなかったのかも。そして色んな形で伏線が読者に提示されていますので、最後のどんでん返しを読んだ後に『なるほどぉ』と感心させて頂きました。こんな手を使う作家とは思わなかったので儲かった気分で読了致しました。惜しいのは最後のまとめ方かな。ちょっと急ぎすぎた感があるけど処女作だから許します♪。(本作の映画化権はワーナーブラザーズに売れているそうです)

追記・・・この『報復』を読んで面白かったという方にテス・ジェリッツェン(元、内科医)の『外科医』がお勧めです。報復と似たような雰囲気で、警察小説&サイコサスペンス&医学サスペンスのジャンルミックス作品です。このお話しの骨子も連続婦女暴行殺人犯を追うというものなのですが、『報復』よりも犯人が凶悪でドキドキ出来ます♪。詳しくはこちらへ作家名INDEXホームへ戻る



報復ふたたび
(LAST WITNESS)
ヴィレッジブックス(ソニーマガジンズ) 初版2005年11月10日
あらすじ  あれから3年。悪夢のようなキューピッド事件も人々の記憶から薄れつつあった。だがマイアミで事件の起こらぬ日はない。恋人ドミニクとの平穏な暮らしを手に入れた地方検事補C・Jは、その夜も事件発生の報せに叩き起こされた。現場へ急行した彼女を待っていたのは、キューピッド犯を逮捕したチャベスの凄惨な死体だった。まさかあの事件のせいで? 不安にかられるC・Jに追い討ちをかけるように、当時の関係者が次々と殺されてゆく。悪夢ははまだ終わっていなかったのだ! ふたたび追い詰められてゆくC・Jを襲うさらなる恐怖とは?

 
感想  最初、題名を見た時に『読者を舐めた題名だな。まてよ、仮題かな?』と思ったのですが、読んでみてこの題名にした意味が分かりました。この作品、面白いのですが、前作を読まれていない方には全く受け入れられないだろうといえる位、前作と深く関係があるのですよね。なので読んでみようと思われる方には、先に『報復』を読まれる事をお薦めします。
で、感想ですが書けません(笑)。というのも、ストーリーに関する事を書くと前作のネタバレに繋がってしまうし、この作品はこれで終わりじゃないのですよね。この作品の続きが次作で書かれる様なので次作を読んでから書きたいと思います。(管理人は、いくらシリーズ作品とはいえ、こういう作品みたいに一話読み切りじゃない作品は、どちらかというと苦手なのですが)。まぁ、新人作家なので許してやろう(偉そうな(笑))。
 



心神喪失
(PLEA OF INSANITY)
ヴィレッジブックス文庫上下巻 初版2008年11月20日
あらすじ  「たすけて…おねがい」―朝まだきころ、か細い声でかかってきた緊急通報。この一本の電話から、マイアミで活躍する若き女性検察官ジュリアの生活は激変した。それは閑静な住宅街で、母親と幼い三人の子どもに降りかかった悲劇を告げるものだった。重傷だった父親デヴィッドが犯人として逮捕されたことで、このむごたらしい事件は世の耳目をひき、検察側は花形検察官リックを中心に裁判に臨む。初の殺人事件で、補佐として大抜擢されたジュリアは、デヴィッドの心の闇に肉迫しようとするが…。

 
感想  処女作の『報復』と『報復ふたたび』を気に入っていらっしゃる方は本作を読まれてちょっと物足りないと思われるかもしれません。というのも、前の2作に比べると事件の描写を押さえ気味にしている、というか〜伏せるようにして物語は進んでいくのですよね。その事件の内容は裁判で読者の前に姿を現すんだけど、怖がりたい(?)読者の方には物足りないかもしれません。けど、アンドリュー・クラヴァンが描くような怖さを好まれる方にはお勧めだと思います。で、物語はと言うと・・・
駆け出しの女性検察官ジュリアは大抜擢され、世間の注目を集める大事件で検察官の補佐として裁判に臨むことになる。初の殺人事件の裁判で張り切るジュリアだが被告側の「心神喪失につき無罪を申し立てる」という主張に検察側は混乱。被告デヴィッドは妻と幼い子供3人を残忍に殺害した容疑で裁かれるのだが、もし心神喪失が認められなければ死刑以外 ありえない・・・という展開です。この主人公のジュリアは実は犯罪被害者でして、自分の母と父を惨殺されたと言う過去を持つんですよね。だもんで、この死刑か無罪かどちらかしかありえないという極限状態に置かれた被告を見る目が、他の人とはちょっと違うわけです。それも〜ある理由があってこそなんですが・・・この辺りが大変に巧いなと思わせます。この作家、前から思ってたんですが、伏線を張るのが巧いんですよね(笑)。そして、裁判シーンを描くのが巧いので、リーガル物に的を絞って欲しいなと思います。 作家名INDEXホームへ戻る



いとけなく愛らしき者たちよ
(Pretty Little Things)
ヴィレッジブックス文庫 初版2010年11月20日
あらすじ  レイニーは13歳の可憐な少女。インターネットで知り合った少年にデートに誘われた彼女は、ある放課後、約束の場所まで出かけていく。だが、レイニーの姿はそれきり消えてしまった。家出か、誘拐事件か?事件を担当することになったのはフロリダ法執行局のボビー・ディーズ特別捜査官。未成年者をめぐる事件の解決に多大な実績をあげているボビーだったが、それにはある特別な事情があった。一方、少女の家出問題を取材するテレビレポーターのもとにおぞましい油絵が送られてくる。ピカソ殺人事件と名づけられた一連の少女連続殺人事件…レイニーもまた犠牲者なのか・・・。

 
感想  なかなかに楽しめた作品です。報復シリーズの主人公C・Jよりも、本作の主人公ボビー・ディーズ特別捜査官の方が好感が持てるというのがその理由ですけど(笑)。ストーリーはシンプルでして・・・13歳の少女レイニーがある日突然失踪する。インターネットで知り合った少年とデートに出掛けたレイニーは、相手に連れ去られてしまったのだ。事件を担当する事になったボビー・ディーズ捜査官は事件性が高いと判断し捜査を始める。一方、少女の家出を取材するテレビレポーターの元に、殺人現場を描いた異様な油絵が送られて来る。そして、油絵に描かれた通りの惨殺された少女の遺体が発見され・・・という展開です。レイニーはこの絵を書いた殺人鬼に連れ去られ監禁されているのですよね。で、監禁されている少女はレイニー1人ではなく、複数人いるわけです。で、監禁されている少女たちは一人、また一人と殺害されて行くのですが〜この監禁されている少女たちの中に「ケイティ」という子がいるのですよね。実はボビー捜査官の愛娘ケイティも1年前から行方が分からなくなっており、事件なのかそれとも家出なのか分らないままなんですよね。だもんで、ボビーの娘と監禁されたケイティとは同一人物なのか?そしてレイニーとケイティは生きて救出されるのか?という二本立てで物語は進んで行きます。犯人がなぜ犯行を重ねたのかという犯行動機やクライマックスシーンがもうちょっと書き込まれていたらなと残念に思うけども〜平均点は十分に超えているスリラーですので、ホフマンに初めて挑戦される方にはお奨め作品です。


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