猫を完全室内飼いする事の意味

多頭飼い崩壊を見て考えた事


 管理人マダラは閑静な住宅街に一人住まいをしていた事がある。そこは新興住宅地で殆どの家が一戸建てだった。一戸建てに住めば犬を飼いたくなるのが普通なのかイヌを飼っていらっしゃる方が 殆どだった。その場所に住み始めてからすぐに、その周辺に猫が多い事に気がついた。気が付いたと言うか気付かされたのだがね。
 ある日、自室で本を読んでいたら家の中でガタッという音がする。一人で居るのに何の音だろうとびっくりし、音の出た方向を見ると茶白の美しい猫が室内に入り込んでいる。自分で網戸を開けて入り込んだらしい。網戸の外には良く似た三毛猫も座り込んでいて部屋の中に入ろうとしていたのにマダラが居るのを見て驚いている風だ。網戸を自分で開けて入れるという事は間違いなく飼い猫だろう。飼い猫なら網戸を開けるくらい簡単にこなすからね。で、逃げていく後姿を見て金玉が付いているのを確認し、去勢もしないで飼うなんてと憤慨し、その日は終わった。
で、後日、私は生後1週間の目の開いていない子猫を保護した友人に、その猫を押し付けられ、授乳し里親を探す事になったのだよね。子猫が来た初日に子猫をキャリーバックに入れて動物病院に行ったらご近所の方と鉢合わせをし『あら、猫を飼われるの?』と聞かれ、仕方なく井戸端会議となる。自分で猫を飼うつもりはない事 、保護している間でも絶対に外飼いはしないのでご迷惑を掛けることは無い事を説明すると安心した顔で話し始めたご近所の奥さん。『あのね、私の家の向かいの猫田さん(仮名)をご存知かしら?。あの家には猫が15匹くらいいるのよ。その猫の内、半分は外に出てくるの。ご近所で問題になっているのよね。庭にウンコされるでしょ。室内で飼っていたインコを獲られた人も居るの。●●さんのトコのチワワは15万円もしたのに猫に顔を引っ掛かれて大怪我をしてね、一月、病院に通ったけど今でも顔に傷があるのよ。私の家にも窓を開けて入ってきて夕飯に食べようと思っていた魚を盗られた事があるのよ。飼い主に文句を言って揉めるのも嫌だし猫田家の人と会話する人間は居ないのよ』と言う。15匹も飼い、そして去勢も避妊もしていないので鼠算で増えていると聞き、猫好きなマダラでもそれはマズイですね、と相槌を打ってその場は終わった。
それから数ヶ月、猫田家を観察していると沢山の猫が窓から出入りしているのが分かった。半野良化しているのだが、どの子も去勢&避妊をされていないようで春先にはお腹が大きいメスも二匹確認した。二匹が四匹づつ出産しても一シーズンで八匹増える計算だよ。これが俗に言う『多頭飼い崩壊』だったんだろう。猫は子供を産んでもすぐに発情期を向かえネズミが増えるように増えていくのだよね。避妊もしないくらいだからワクチンなど打つはずも無く、どの個体も鼻水を垂らし、くしゃみを連発し、目は目ヤニでグジュグジュだ。餌も十分に貰えて無い風で、近所中のゴミ袋を漁り、道路をゴミだらけにしている光景を何度も目にした。

 そしてある日。猫田さん宅のペルシャ猫がマダラの部屋のまん前の道路に倒れているのを発見した。慌てて駆け寄って猫を見ると口からは血の混じった涎が垂れている。毒餌を食べたのだと直感し、一度も挨拶もした事の無い猫田家に知らせに走った。猫田家の高校生のお嬢さんが走り出てきて、猫を家の中に連れ帰ったが、そのまま外出もしない。病院へ連れて行く気が無いのか、それとも既に絶命していたのか。
近所で猫を嫌っている家は多数あり(殆どの家が嫌っていた)、どこの家が毒餌を置いたのかは分からない。でも、猫が死んだのは飼い主の所為だ。これ以上、増えてはと強制的に排除される事は目に見えていたのに放っておいた飼い主の責任だ。
 その後、猫田家の三毛猫が子猫を三匹連れているのを目撃した。親猫は鼻水でグジュグジュだし、子猫も同じ状態で見ていると哀れになる。そして、猫に罪は無いのだから元気で大きくなると良いなと思っていた矢先に猫の悲鳴を聞いた。時刻は夜中の三時過ぎだった。慌てて窓を開けるがどの方向から聞こえてきたのかは分からない。そして子猫が鳴く声が聞こえた。あの三毛猫に何かあったのか?と不安になるが飼い主でもないのにノコノコ出て行く勇気も無い。
その二日後、猫田家の高校生のお嬢さんが懐中電灯を手に歩いているのに遭遇する。何をしているのかと問うと『三毛猫と子供全員がいなくなったので探している。今年になって三匹が行方不明になり、今度は三毛猫と子猫が消えた』と言う。やっぱりあの夜中の猫の悲鳴は三毛猫一家だったのだ。人馴れしていたので簡単に捕獲されたのだろうが、その猫達は一体何処へ行ったのか?。捨てられたのか?。それとも保健所送りか?。野良猫でも飼い猫でも勝手に捕獲して保健所送りになどする事は『違法』なのだが、私が見た光景が現実なんだろうな。

 この猫田家を見ていて猫を室内で飼う事の重要性を思い知らされた。人間に飼われ、人間の生活に慣れている飼い猫は簡単に他人の家の中に入り込む事を知ったからだ。たとえ猫好きな方でも自分の家に猫が勝手に入ってきて小鳥を獲れば猫を恨むだろう。猫が嫌いな方なら庭に侵入するだけで忌み嫌うだろう。完全な野良猫なら自分で網戸や窓を開けて家の中に侵入などしないのだから、近隣の方に嫌われる猫=飼い猫の可能性が高いのだ。

 インターネット上で、外飼いしていた猫が戻らなくなり探しているという方をよく見かけるのだが、それを見る度に猫田家を思い出す。猫が自分の意思で出て行き戻らなくなる事もあるだろうが、ご近所の方に強制的に排除された可能性もあるわけだよね。それだけじゃない。事故もあるし虐待もあるし、感染症の危険もある。ただ『完全室内飼い』をするだけで全てのマイナス面を排除出来るのに古い因習に縛られ『猫を外に出す』という飼い主に猫を飼う資格は無いと思っている。





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