感想 |
1984年、ダブリン郊外の森の中に遊びに行った12歳の仲良し3人組ピーター、ジェイミー、アダムは夜になっても自宅に戻らず、両親は警察に通報。ただちに捜索隊が森に入り大掛かりな捜索が行われたのだが、発見されたのはアダム少年一人で、彼はショック状態に陥っており記憶を喪失、彼の靴や衣服は血に染まっていた。捜索はその後も続けられたのだが、消えたジェイミーとピーターは行方不明のままとなる。そして20年後、アダムは警察官となりダブリンの殺人課に所属していた。アダムは事件後に名を変えロブ・ライアンと名乗っており、アダムの相棒の女性刑事キャシー・マドックスと両親以外で、アダムが20年前の少年少女失踪事件の生き残りだと知るものはいなかった。そして、ケイティ・デブリンという少女が失踪するという事件が起こる。少女は遺跡発掘現場で死体となって発見されたのだが、その場所はかつて少年少女たちが消えた森のあった場所なのだ。ロブは20年前の事件との関連性を疑い、自身が20年前の生き残りという事実を伏せ、捜査に当たることになる・・・というストーリーです。物語はいくつかの謎を追うという形で進んでいくのですが、まず一つはケイティを殺した犯人は誰か?ということ。そして、この犯人は20年前の事件にも関与していたのかという謎もあるんですよね。そんでもって、ロブとキャシーが追っている犯人が20年前の事件と同一犯だとしたら、ジェイミーとピーターは実際にはどうなったのか?という謎までが浮上することになるわけですよ。で、物語は一人称で綴られロブ(アダム)の視線で語られていくので、現在の事件を追っているはずなのに、過去の事件に苦しめられている主人公の辛さみたいなものが感じられて、奥行きのあるミステリとして仕上がっていると思います。が・・・この主人公が、絵に書いたように私の嫌いなタイプの人物なんですよね(笑)。自身の口の軽さや、自身の考えの足りなさから窮地に陥るんだけど、勝手な憶測で同僚を責めたりと身勝手な行動ばっか取るんですよね。そんでもって一人称で『ぼく』で語られているわけだから、主人公の目から見ている形で主人公の性格の悪さを見ることになるので、感情移入して読みたいんだけど、主人公が嫌いだから出来ないというジレンマが(笑)。ただし〜主人公が嫌いだからといって楽しめないということではありません。同僚のキャシーという女性が非常に魅力的な人物で、彼女一人の魅力で十二分に物語を楽しめると思います。それに脇も好いんですよね。さりげなく配された脇役がそれぞれに好い味を出しているので、また会いたいなと思わせてくれます。
余談・・・あとがきを読んで知ったのですが、シリーズ第二作は本作では脇役だったキャシーが主人公なんだそうです。語り手が変わるシリーズ物も面白いですよね。楽しみに待ちたいと思います。それと、ここ数作の集英社文庫の翻訳ミステリは趣味が良いですね。「静かなる天使の叫び」「氷姫」「ミネアポリス警察署殺人課シリーズ」も突出して好いですし〜本作もお勧め作です。
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