感想 |
実は・・・白状しますとトゥロー氏の作品は『推定無罪』しか読んだ事がなかったんですよね(汗。ワタクシはトゥロー氏よりもR・N・パタースン氏の描くリーガル物が好みなので、トゥロー作品を何となく避けてきたのですが、良質の法廷物を読みたくて本作を選んだのでした(笑)。で〜感想ですが。
この『死刑判決』、面白いのですが・・・法廷物の醍醐味である法廷シーンが少ないのですよね(笑)。なんせ、既に裁判は終わり、死刑執行を間近に控えた死刑囚が、今までの裁判中に数多く行ってきた自白を撤回し『おれは無実だ。再審を』と叫び出してからの物語なんですよね。で、現在と過去とが交互に読者の前で進んで行き、結末へと向かうという構成なんですよね。内容はというと、死刑囚が再審をと叫びだすのと時を同じくして『俺が真犯人だ』と言い出す男が現れ、1審判決を無効に出来るかどうかを争う〜といった展開です。リーガル物というよりは、トゥロー氏が法廷シーン以外でも力があるんだぞと読者に示した(?)作品だといえるのかもしれません。ストーリーも展開も人物造形も巧いなと言わざるをえない出来なんですが〜好き嫌いで聞かれたら返答に困る作品でした。なぜかというと・・・多分、きっと、トゥロー氏は死刑廃止論者なんじゃなかろうか?というのが字面から伝わってくるんですよね。で、読者であるワタクシはというと死刑やむなしだと思っているので、その思想の差が作品の感想に出るのかもしれません。
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