私立探偵ローレン・ローラノ シリーズ  狂気の愛/あなたの知らない私/愛しの失踪人/潔い死を/リゾートタウンの殺人

シリーズ外作品(単発物)ダニエル・スワン殺人事件




サンドラ スコペトーネ(Sandra Scoppettone)作家略歴&著作の感想
作家名 サンドラ スコペトーネ(Sandra Scoppettone)
生年月日 1936年
(誕生日は不明だが双子座だそうなので夏生まれ)
生誕地  ???
処女作  ???
(初期はヤングアダルト小説を共作していらしたらしいのですが、題名は不明)
デビュー年 ???年
公式サイト http://sandrascoppettone.com/


作家略歴


 この作家、とても愛想の無い方で、ご自身の生い立ち等を語られる事が少ないようです。サイトの自己紹介も『I'm a full time writer and have published nineteen novels, 5 for young adults and the rest are crime for adults. I've also published 2 books with Louise Fitzhugh ... the best known is Suzuki Beane. I used to live in New York City but since 1998 I've lived on the North Fork of Long Island』と書いてあるだけ(笑)。現在、判明している事は1936年生まれの双子座で、同性愛者で、作家のリンダ・クロフォードさんと一緒に住んでいらっしゃる・・・という事だけです。なので、情報を入手次第、追記します。

ですが、ブログはマメに更新されているようです。今、書いている作品についてや、他の作家についてのコメントなどがあって面白いですよ。

ジャック・アーリーという別名義での著作もあります。

狂気の愛
(EVERYTHING YOU HAVE IS MINE)
扶桑社 文庫 初版1992年9月30日
あらすじ  ローレン・ローラノは、グリニッチヴィレッジに住むレズビアンの私立探偵。ある日彼女はアーシュラという女性から、妹のレイクをレイプした犯人を探してほしいという依頼を受ける。その男は新聞かなにかの恋人募集広告で知り合って、ブラインドデイトした相手らしい。だが調査に取りかかった矢先、レイクは自殺に見せかけて殺されてしまう。レイプした男が口封じのため殺害したのだろうか?ローレンは友人の刑事とともに調査を進めるが…。私立探偵ローレン・ローラノシリーズ第一作。

 
感想  読んでいて、今までの探偵小説となんか違うなぁ〜という違和感を抱いていたのですが、理由が判明!。なんと、この小説、現在進行形で著されているのですよね(笑)。慣れれば、どうってことないのですが、ちょっと不思議な感じがします。
 私立探偵のローレンは、レイクという女性をレイプした犯人を探し出し、警察に突き出して欲しいという依頼を受け、調査を始めるが、調査を始めた途端にレイクは殺害されてしまう。二人の男に強姦され瀕死の目に遭ったという過去を持つローレンは、必死で調査を続けるのだが、レイプ犯=殺人犯なのかという疑惑が・・・というストーリーで、プロット自体はそう大したものじゃありません。が、なぜか面白いのですよね(笑)。主人公の女性探偵も登場人物も犯人も、全ての人が心に傷を抱えていて、ちょっと重いんだけど、重さを感じさせないのですよね。説明が難しいな。全体の印象はキンジー・ミルホーン物に近いなぁって(笑)。謎解きを楽しむというよりは、主人公と脇役の人物造詣で読むという作品です。

作中で、沢山の女性探偵の名前が出てきます。『シャロン・マコーン、キンジー・ミルホーン、V・I・ウォショースキー』など日本でもお馴染みの探偵小説の主人公名が出てくるので、ニヤニヤしたんだけど・・・知らない探偵名なんかもあって興味津々です〜(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



あなたの知らない私
(I'LL BE LEAVING YOU ALWAYS)
扶桑社 文庫 初版1994年9月30日
あらすじ  ローレンの幼なじみで、クリニッチヴィレッジに貴金属と家具の店を営むメグが殺された。自分のことを理解してくれていた親友の死に、ローレンはやむにやまれぬ気持ちで捜査に乗り出す。だが調べが進むにつれ、メグと子供たちの思わぬ不和や、「殺されたと聞いても驚かない」という二番目の夫の証言にぶち当たる。わたしは親友の真の姿を見ていなかったのではないか。思い悩むローレンの前に、隠されていたメグの世界が徐々にベールを脱いでゆく。私立探偵ローレン・ローラノ シリーズ、第二弾。

 
感想  この作品の後書きを翻訳家の柿沼瑛子さんが著されているのだが・・・作品に対しての言及は全くなく、アメリカでの「同性愛者が描く同性愛者向け(?)作品」の事ばかりを書いてあるのだよね。スコペトーネの本シリーズを読まれた方なら、お分かりいただけると思うのだけれど、このシリーズは同性愛者が書いた同性愛者向けという作品じゃない気がするんだけどな。たまたま、主人公が同性愛者なだけで、それが故に抱える苦悩なんてのは描かれているけれど、普通のミステリだと思います。
 女私立探偵ローレン・ローラノの幼馴染みのメグが殺される。強盗による仕業だと思われたが、調べを進めるローレンは、メグには隠された生活があったことを知る。犯人は?・・・という簡単なストーリーです(笑)。このシリーズを読んでいると、T・J・マグレガーの作品を思い出すのですよね。何となくですが、主人公像が似通っているのですよね。ミステリという形式は採っているけれど、ミステリ以外の部分を楽しむというところが原因で、両作家の作品が似て見えるのかもしれません。
謎解き重視の作品を読まれたい方にはお薦めしませんが、結構面白いですよ〜。 作家名INDEXホームへ戻る



愛しの失踪人
(MY SWEET UNTRANCEBLE YOU)
扶桑社 文庫 初版1995年3月30日
あらすじ  ローレンの事務所に、38年間も行方不明の母親を探してほしいという男の依頼人がやってきた。だがよく聞いてみると、母親は自動車事故で死んでいて、その死体を見つけてもらいたいのだという。わけがわからず不審な面持ちのローレンに、男が答える。「おやじがおふくろを殺したからさ」一方ローレンの家の前では、人気女優のシビル・シェパードが私立探偵ローレン・ローラノ役を演じる映画の撮影が行われていた…。ローレン・ローラノ シリーズ第三弾。

 
感想  今回も普通小説に近い(?)作品だったのですが〜、ストーリーとオチにちと不満が残ります(笑)。私はこの作品をミステリ、探偵小説と思って読んでいないので読み続けているのですが、謎解きを重視される方にはお勧め出来ません。 作家名INDEXホームへ戻る



潔い死を
(LET'S FACE THE MUSIC AND DIE)
扶桑社 文庫 初版1998年2月28日
あらすじ  友人エリッサのおば、ルーシーが殺害され、ローレンは事件の調査を依頼される。エリッサは莫大な財産を相続するため、疑いをかけられていた。早速ルーシーの一風変わった友人たちに話を聞くうちに、ルーシーの夫ハロルドが五年前に不審な死を遂げていたことや、遺言書の奇妙な点が判明し、どうにも怪しげな匂いがしてくる。一方ローレンの私生活は、高校生の頃にレイプされた男に再び執拗につけ狙われるなど、波乱続きだった…。ニューヨークの街を活写する、探偵ローレン・ローラノ シリーズ第四弾。

 
感想  ローレンの友人エリッサが、遺産目当てでおばを殺したと疑われ容疑者にされてしまう。エリッサから『真犯人を探して』と依頼を受けたローレンが捜査を始めると、5年前に死んだ叔父の死が今回の殺人事件の鍵を握るのではないかという疑いが出てくる。一方、ローレンの自宅に、レイプ犯から脅迫電話が掛かってくるようになり・・・というストーリーです。エリッサのおばを殺したのは誰か?という物語と同時進行で、ローレン自身が狙われ、危機に見舞われます。ローレンは学生時代に凶悪犯にレイプされ、瀕死の重傷を負ったという過去が有るのですが、その時の犯人が出所し、ローレンの居所を突き止め『お前を犯した上で殺してやる』と脅迫するのですよね。ローレンはパートナーであるキップとの関係が危うくなっていて、同居生活に危機が訪れているしで、本筋の謎解き以外の部分が面白い作品でした。 作家名INDEXホームへ戻る



リゾートタウンの殺人
(GONNA TAKE A HOMICIDAL JOURNEY)
扶桑社 文庫 初版1999年7月30日
あらすじ  友人たちがロングアイランドの小さな町に別荘を買ったというので、ローレンとキップも一緒に行くことになった。町に着いて早々、ビルという男性が首つり死体で発見されたとの報が。しかしビルのいとこの女性ジーンがローレンを訪ね、これは殺人に違いない、と捜査を依頼していく。この小さな町にビルに敵意をもつ人間がいたというのだ。捜査を開始していくうち、過去数年の間に不審な子どもの事故死、そして連続殺人が起きていたことが判明する…。探偵ローレン・ローラノ シリーズ第五弾。

 
感想  プロットというか謎解きに関して評するなら、この作品が一番面白いですね。このシリーズをはじめて読まれる方は、この作品から入ると読み易いかもです(笑)。
 友人ジェニー&ジルが郊外に家を買い自分たちで内装に手を入れるというので、手伝う為に一緒に行くローレン&キップ。だが、町に着いた早々、事件に巻き込まれる。ビルという男性が首吊り死体で発見されたのだが、その死は自殺ではなく他殺だと主張するビルのいとこジーンから犯人を捜してくれと調査の依頼を受けたのだ。休暇のつもりで来たのにと怒るキップをなだめつつ捜査を開始するローレンは、この小さな町で過去数年の間に幼い子供が事故死するという事件が続けて起こっている事を知る。そして女性を狙う連続殺人事件まで関係し・・・というストーリーです。自殺と片付けられた『不審死』を調べるうちに、長閑に見える田舎町が実はそうではないという事が分かってくるのですよね。町では女性がスカーフで絞め殺されるという事件が数件、起こっていたのだけれど、その事件の犯人は捕まっていない。その上、幼い子供の事故死も連続で起こっている。調べていくと、幼い子供達が死ぬ前に『大人のおじさん達に連れて行かれ、変な事をされた』と言っていた事がわかり、小さな町で不審死が続発していたことをローレンが知るのですよ。面白そうでしょ?(笑)。これ以上書くとネタバレに繋がるので止めますが、お薦めです。 作家名INDEXホームへ戻る


シリーズ外作品(単発)
ダニエル・スワン殺人事件
(INNOCENT BYSTANDERS)
扶桑社 文庫 初版1992年7月31日
あらすじ  1955年の夏、ニョーヨーク5番街にある自宅アパートの前で、精神科医マーティン・スワンの妻ダニエルが1人の女に撃たれた。女は射殺の瞬間ウインクし、謎のことばを口走る。それはダニエルの6歳になる娘、クリスティーナの眼前で起こった事件だった。銃を撃った女ヘディは、かつてマーティンの患者であり、狂気に満ちた銃弾は、幼い少女のみならず周囲の人間の人生をさまざまに狂わせてゆく…。

 
感想  私はこの作家の作品を(ローラノ シリーズ)惰性で読み続けてきたのですが、読むのを止めないで良かったと思います(笑)。というのも、この作品の出来が非常に良いからなんですが〜この作品は万人向きでは無いと思われます。最初から犯人が誰か分かっていて、犯人探しに重点を置かれていないので、謎解き重視で読まれない方向けです。
 夫マーティンとの離婚を考え始めていたダニエル・スワンは6歳の長女の眼前で撃ち殺される。犯人は精神科医である夫の元患者だ。捜査に当たる刑事ゾウは、母親を殺される場面を一部始終見てしまい心に傷を負った少女クリスティーナに感情移入する。彼自身、幼い頃に父親が首を吊って死んだ場面を目撃してしまい、その心の傷が癒えていないままだったのだ。夫も苦悩する。彼はダニエルに隠れ不倫関係を続けていたのだが、その彼女の事がマスコミに書き立てられ、世間はダニエルを殺したのは夫だと疑っている。そんな時、マーティンの前に犯人の元患者が現れ『あなたの為にダニエルを殺したのよ』と言われ・・・というストーリー展開です。捜査に当たる刑事、ダニエルの夫と二人の子供、両親、ダニエルの弟、犯人、犯人の家族など諸々の人々の運命がダニエル・スワン一人が殺された事によって変わって行く様子が描かれているのですが、哀しいと同時に美しい物語なのですよね。ダニエルが殺されてから後の25年間が描かれているのですが、犯人が分かっていながら読ませます。スコペトーネがこれほど巧い作家だったとは思いもしなかったので嬉しい驚きでした。



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