シャーリン・マクラム(Sharyn McCrumb)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | シャーリン・マクラム(Sharyn McCrumb) |
生年月日 | 1948年 |
生誕地 | 米国 |
処女作 | |
デビュー年 | 年 |
公式サイト | http://www.sharynmccrumb.com/ |
暗黒太陽の浮気娘 (Bimbos of the Death Sun) |
早川ミステリアス・プレス文庫 | 初版1989年7月10日 |
あらすじ | SFマニアのお祭り<ルビコン>開催中のホテルでゲストの人気ファンタジー作家が殺された。宇宙人やロボットに仮装したままのファンを相手に警察も頭を抱える中、新進作家オメガが考え付いた犯人捜しの奇策とは?。一筋縄ではいかない非論理的な難事件の顛末は・・・。MWA探偵作家クラブ最優秀ペイパーバック賞受賞作。
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感想 | 作中で人が死に、それを推理する人がいるのでミステリと呼べるんですが、普通の(?)ミステリ好きにはお薦めしにくい作品です。というのも〜物語の中で、犯人はだれかという問題よりも、登場するSFオタク連中の方が面白いんですよね(笑)。『暗黒太陽の浮気娘』という作品を書いた新人作家の主人公オメガが本の宣伝のためにイヤイヤ訪れたSF大会で殺人事件に遭遇し、事件に巻き込まれるといういたってシンプルなストーリーなんですが、その大会に来ている人物たちが揃って魅力的なんですよね。これは、きっとSFファンの方だったらワタクシの10倍も20倍も楽しめただろうなという内容の作品でした。オチも褒められたもんじゃないけど、楽しめました。真面目なミステリ(?)ファンは近寄られない方が良いかも(笑)。
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いつか還るときは (If Ever I Return, Pretty Peggy-O) |
早川ミステリアス・プレス文庫 | 初版1998年4月20日 |
あらすじ | かつてのスター歌手ペギー・マリヤンに差出人不明の絵葉書が届いた。死んだ恋人からの脅迫としか思えぬ内容に怯えた彼女は、スペンサー保安官に助けを求めた。折りしも女子高生が失踪する事件が起き、町は不穏な空気に包まれる。そしてペギーにふたたび不気味な葉書が・・・。
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感想 | 出版順に読んでおりませんで、シリーズ1作目を後から読むことになったわけですが、『丘をさまよう女』と全く違う雰囲気でちょっと驚きました(笑)。『丘を〜』の方は、保安官とその同僚が脱獄犯を追うという物語なんですが警察物という雰囲気からは遠い作品だったんですよね。ところが本作はれっきとした(?)警察物で、拍子抜けしました。といって面白くなかったというわけではないのですが(汗)。『丘を〜』のインパクトがあまりにも強過ぎたのが原因だと思われます。ミステリとして見るなら詰めが甘いなとか書き込みが足らんなとか注文をつけたくなるけども、この作家のかもし出す物悲しい雰囲気は好みです。想像ですけど・・・この作家はミステリを書こうとか書きたいとか思わずに書いているんだろうなと思います(笑)。
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丘をさまよう女 (SHE WALKS THESE HILLS) |
早川(ミステリアスプレス)文庫 | 初版1996年1月31日 |
あらすじ | 年老いた脱獄囚がアパラチア山脈近くの故郷へ向かっていた。保安官のスペンサー保安官助手新人のマーサらが追い始めるが、その矢先奇怪な事件が続発する。折りしも200年前の事件を調べるため若い男が山道に踏み入るが・・・。幾つもの運命が絡み合いやがて緊迫の結末へ。アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞最優秀長編賞を受賞した作品。
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感想 | エド・マクベイン編中編アンソロジー『罪の罪業』に収録された『復活の日』という中編を読んだのがこの作家との出逢いだったのですが、唸るというかオヌシ何者ぞっ?!と言いたいくらい良い出来だったんですよね。中編という中途半端なページ数は書き手も大変だろうに、この中編は600頁の長編に匹敵するくらいのインパクトがあり、他の作品を読んでみたくて手に取ったのが本作『丘をさまよう女』だったわけです。で、感想ですが読んで良かった〜としみじみ思える作品でした。不覚にもラスト30ページ辺りで涙ぐんでしまうほど物語に入り込みまして、ほんというならワタクシの書いたヤブレカブレ感想なんか読まんでから今すぐ古本で探しんしゃいっって言いたいほど引き込まれた作品でした。 で、物語はというと・・・。 物語の舞台はアパラチア山脈懐にあるテネシー州ウェイク郡。ウェイク郡の小さな町ハムリンで、30年以上前に殺人罪により執行猶予無しの無期懲役という事実上の死刑を宣告され、今はもう老人になったハイラム・ソーリー(ハーム)が故郷に帰ろうと脱獄する。高齢の上に現在の記憶を失くしてしまうという病気に侵されているハームに脅威を感じない保安官は気楽に構えていたが、新人のマーサ保安官助手は脱獄犯を捕まえたいと意気込んでいる。そしてハームが逃げ込んだアパラチア山脈で一人旅をはじめようという青年ジェレミー。彼は学位論文の中心となる、伝説の娘ケイティ(18世紀末にインディアンに両親を惨殺され自身も遠い場所まで拉致されたにもかかわらずインディアンの手から逃れ、一人故郷を目指し一月かけて故郷に帰った)の、アパラチア山脈での逃避行を追体験しようとしていたのだ。同時に地元ラジオ局では人気DJが興味本位で脱獄囚ホットラインを始めたものの、寄せられる情報から30年以上前の殺人事件そのものに疑問を覚え、はたしてハームは真犯人だったのか?動機は?と興味から調査を始める。ハーム、保安官事務所の面々、ハームの元妻、DJ、ジェレミーが交錯するとき、物語は・・・という展開です。 ワタクシの書いた粗筋では分かり難いでしょうが、作者は非常に巧者なので、いとも易々と物語を整理整頓して書かれています(笑)。粗筋なんか読まずにとりあえず読んでみる事をお薦めしたいです。それと、作者は米国人なのですが〜不思議なことに英国の古いミステリ風味なんですよね。作者が住んでいるアパラチア地方はスコットランドからの移民が多く、古い物語歌や風習などが残っている場所らしいので、そこで育った彼女だからこそアメリカっぽくない物語を描かれるのかもしれません。(この作品、シリーズの3作目でして1作と2作は未訳のままらしく・・・。この作家、日本で紹介されている作品が少ないようですが、勿体無いですよ。短編も長編も驚くほど巧いのになぁ〜) |