スティーグ・ラーソン(Stieg Larsson)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | スティーグ・ラーソン(Stieg Larsson) |
生年月日 | 1954年 |
没年月日 | 2004年 |
生誕地 | スウェーデン北部 |
処女作 | 『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』 |
デビュー年 | 2005年 |
公式サイト | http://www.stieglarsson.com/ |
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (Millennium 1. The Girl with the Dragon Tattoo) |
早川書房単行本上下巻 | 初版2008年12月10日 |
あらすじ | 月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表した。だが、名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れることになる。そんな彼の身元を大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルが密かに調べていた。背中にドラゴンのタトゥーを入れ、特異な風貌をした女性調査員リスベットの働きで、ヘンリックはミカエルが信頼に足る人物だと確信し、兄の孫娘ハリエットがおよそ40年前に失踪した事件の調査を彼に依頼する。ハリエットはヘンリックの一族が住む孤島で忽然と姿を消していた。ヘンリックは一族の誰かが殺したものと考えており、事件を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させる証拠資料を渡すという。ミカエルは信頼を受諾し、困難な調査を開始する。全世界で800万部を突破した『ミレニアム』三部作の第1部。
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感想 | 北欧産ミステリの質の良さに驚き、そんでもって魅了されているワタクシなので、スウェーデン発のミステリだと知っただけで本作を手にしたのですが〜期待は裏切られませんでした(万歳)。どうして、北欧産ミステリの質がこんなにも高いのか本当に不思議です。訳者さんの数が少ないのが原因で(?)必然的にあちらで売れている作品だけを邦訳することになるんだろうから、わたくし達日本人が手にした作品=優秀作って事になるのでしょうが・・・それにしても驚きです。北欧は読書人口が異様に多いそうなので、ひょっとしたら読み手の質も高いのかも?しれません。で、物語はというと・・・。 経済ジャーナリストで月刊誌『ミレニアム』の発行人でもあるミカエル・ブルムクヴィストは、経済界の大物ヴァンネルストレムの悪事をスクープし雑誌に掲載したのだが、名誉毀損で訴えられ有罪の判決を受けた。ミカエルは『ミレニアム』から距離を置き隠遁生活を送ろうとするのだが、そこで奇妙な依頼が舞い込んでくる。依頼主は引退した往年の実業家ヘンリック・ヴァンゲルで、ヴァンゲル家の評伝を書いて欲しいという。だが実は目的は別にあり・・・36年前、ヴァンゲル一族の住む島から忽然と姿を消した当時16歳のハリエットはどうなったのか?誰が殺したのか?という謎を解いてくれれば、宿敵ヴァンネルストレムの秘密を教えると言われ仕事を引き受けるミカエル・・・という展開です。正直言って冒頭の50ページ程度はちょっと退屈で、外れたかな?と焦ったんですが〜50ページ辺りからほとんど駆け抜けるような勢いで読み続けられるほど内容の濃い物語でした。作者が、女性や子供や人種差別を受けている人=要するに社会的弱者に対して暖かい目を向けているのが分かるような物語で、この作家が既にこの世にいないというのが本当に悔やまれる出来です。筋立ての良さ、ミカエルと副主人公(?)のリスベットのキャラの面白さ、結末の巧さ、作者からのメッセージが伝わることなどなど、褒めても褒めても褒めたりないくらい完成度の高い作品です。内容を書いちゃうとネタバレに繋がるのでこの程度で終わりますが、2009年に読んだ本の中で必ずやTOP3に入るだろうなという出来です。連続殺人鬼が出て来ずともミステリってのは成立するんだと再認識させてくれる作品ですので、血を見るのに飽きた方に特にお勧めです(笑)。 ![]() ![]() |
ミレニアム 2 火と戯れる女 (The Girl Who Played with Fire) |
早川書房ソフトカバー | 初版2009年4月10日 |
あらすじ | 背中にドラゴンのタトゥーを入れた女性調査員リスベットにたたきのめされた彼女の後見人ビュルマン弁護士は、復讐を誓っていた。ビュルマンはリスベットの過去を徹底的に洗い、彼女を心の底から憎む人物を探し出した。彼はその人物と連絡を取り、リスベットを拉致する計画が動き始める。その頃、月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルらは、重大な決断をしていた。ジャーナリストのダグとその恋人ミアが進める人身売買と強制売春の調査をもとに、特集号を刊行し、書籍を出版することを決定したのだ。ダグの調査では、背後にザラという謎の人物がいるようだった。旅行先から帰ってきたリスベットもダグの調査を知り、独自にザラを追い始めた。だがその矢先、彼女の拉致を図る者たちの襲撃を受けた!。『ミレニアム』三部作の第2部。
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感想 | スティーグ・ラーソンが3部作の全てを書き上げてから版元に持ち込んだという話を聞いて、どうして1部ずつ発表しなかったのかなぁ〜と疑問に思っていたのですが、2部の『ミレニアム2 火と戯れる女』を読んで、その意味が分かりました。この2部は、1部の続き物なんですよね。なので、作者は長い長い物語を便宜上3部に分けただけで、2部も1部同様に一話完結しません。なので〜本シリーズを読んでみたいと思われる方は、1部から読まれないと十分に楽しめないと思われます。で、物語の内容はというと・・・ 本作の主人公は前作にも登場したリスベット・サランデル。頭脳明晰で映像をそのまま記憶する能力を持ち、天才ハッカーでもあるのだが、なぜか中学校を中退で学歴はなし。その上、彼女は一人では生活できないと福祉局に判断され、後見人まで決められている。その彼女が前作で途方もない金額の金を手にし、スウェーデンに新居を買い新たな生活を始めようとするのだが、とある巡りあわせで3人連続射殺事件の犯人として追われることになる。殺された二人は雑誌社『ミレニアム』で人身売買の暴露本を発表しようとしていた記者とその彼女で、残る一人はリスベットの後見人・・・という展開です。 で、感想ですが・・・ 1部よりは(上巻部が)冗長に感じました。物語が複雑であることや登場人物それぞれの視点から物語が語られていくことがそう感じた原因ではなくて、1部ですでに完成していた人物造詣を再度、おさらいするかのように読まされたのが原因かなと思います。作者からすれば2部からシリーズに入られる読者でも読まれるようにとの配慮でしょうが、その部分がちょっと長く感じたのですが、巧さは1部同様ですので自信を持ってお勧めできます。けどね・・・。この物語は3部が上梓されてから一気読みするのも面白いかもしれません。一話完結しない物語なので、中途半端に終わるのがもどかしいって方は3部全てが揃うまで待つのも一興かと思われます。 ![]() ![]() |
ミレニアム 3・眠れる女と狂卓の騎士 (Luftslottet som sprangdes ) |
早川書房単行本(上下巻) | 初版2009年7月10日 |
あらすじ | 宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせたものの、自らも傷つき、瀕死の状態に陥ってしまった。現場に駆けつけたミカエルの手配で、リスベットとザラチェンコは病院に送られ、一命を取りとめる。だが、彼女の拉致を図っていた金髪の巨人ニーダマンは逃走してしまう。この事件は、公安警察の特別分析班の元班長グルベリに衝撃を与えた。特別分析班は、政府でも知る人の少ない秘密の組織で、ソ連のスパイだったザラチェンコの亡命を極秘裡に受け入れ、彼を匿ってきた。今回の事件がきっかけでそれが明るみに出れば、特別分析班は糾弾されることになるからだ。グルベリは班のメンバーを集め、秘密を守るための計画を立案する。その中には、リスベットの口を封じる卑劣な方策も含まれていた…三部作の最終篇。
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感想 | 前作の感想を曖昧にしたまま終わったのは、物語が完結しなかったせいなのですが、このミレニアム3は前作の直後から物語が始まります。というか〜2部と3部は便宜上分けてあるだけで、繋がった一つの物語なんですよね。なので、本作だけを読まれてもさっぱり意味が分からないかも・・・。なので、せめて2を読まれてから本作に突入されることをお勧めします。で、物語はというと・・・ ザラチェンコとリスベットは共に病院へ運ばれ一命を取り留めるが、現場に到着した刑事はリスベットは無実だというミカエルの主張をはなから信じない。駆けつけた刑事が無能だったばかりに、ザラチェンコの配下の凶悪犯ニーダーマンは警官を二名殺害、逃亡してしまう。一方、病院へ収容されたザラチェンコはリスベットに殺されかけた、自分は被害者で無罪だと主張。リスベットはさまざまな容疑を掛けられ病院で裁判を待つ身となる。そんな混迷の中、公安警察内の秘密組織が動き出す。ザラチェンコの犯罪が明らかになれば、秘密組織に関わった公安部の工作員たちも裁かれる事になるのは必至。ザラチェンコの口を塞ぎ、リスベットを再び精神病院へ送り込むため、工作活動が始まる。もちろん、ミカエルはリスベットを救うべく戦略を練る。彼はリスベットの無実を信じる数少ない人たちと手を組み、立ち上がるが・・・という展開です。物語を大雑把に語るなら3部はスパイスリラーというか冒険小説っぽい作品です。ミカエル率いる狂卓の騎士たちと公安警察の秘密組織との対決は、手に汗を握る展開で、後半で描写されるリスベットの公判シーンは見事というしかない上手さです。それと、この3部作は1作1作を読んでいるともうちょっとだなと思う場面もあったのですが、3部を読み終わり1部から3部までを振り返った時、瑕が無い作品だったなと改めて驚きました。1部や2部で書き込み不足だと感じた点が、3部で意表を付く形で扱われていて、この3部作は1部の段階から考え抜かれて著されており、全てが結末へと繋がっていたのだと解りました。作者がすでにこの世にいらっしゃらないという事が残念でなりません。 それと1部が出版されてから3部が出版されるまでの期間がわずか半年という、今までに無い短期間で読ませてくれた版元早川書房に拍手を贈りたいです。訳者さんも大変だっただろうと思います。ヘレンハルメ・美穂さん、岩澤雅利さん 感謝です。 |