荒野のホームズ/荒野のホームズ、西へ行く


スティーヴ・ホッケンスミス(Steve Hockensmith)作家略歴&著作の感想
作家名 スティーヴ・ホッケンスミス(Steve Hockensmith)
生年月日 1968年
生誕地  ケンタッキー州ルイヴィル
処女作 
デビュー年 2006年(長編デビュー年)
公式サイト

作家略歴

 1968年ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。ジャーナリストとして活躍した後、ミステリ作家に転身。2006年に『荒野のホームズ』で長篇デビュー 。
判る範囲で著作リスト
*Holmes On the Range Mystery(荒野のホームズ シリーズ)
1. Holmes on the Range (2006)『荒野のホームズ』
2. On the Wrong Track (2007)『荒野のホームズ、西へ行く』
3. The Black Dove (2008)
4. A Crack in the Lens (2009)


荒野のホームズ
(Holmes on the Range)
早川書房HPB1814 初版2008年7月10日
あらすじ  洪水で家も家族も失ったおれと兄貴のオールド・レッドは、いまでは西部の牧場を渡り歩く、雇われカウボーイの生活を送っている。だが、ある時めぐりあった一篇の物語『赤毛連盟』が兄貴を変えた。その日から兄貴は論理的推理を武器とする探偵を自認するようになったのだ。そして今、おれたちが雇われた牧場は、どこか怪しげだった。兄貴の探偵の血が騒ぐ。やがて牛の暴走に踏みにじられた死体が見つかると、兄貴の目がキラリと光った……かの名探偵の魂を宿した快男児が、西部の荒野を舞台にくりひろげる名推理。

 
感想  あまり期待せずに手に取った1冊だったのですが、なかなかに楽しめました(笑)。物語の何が良かったかというと、やっぱり発想の妙というか着眼点が良かった、これに尽きるんだと思います。1800年代末の西部のカウボーイがホームズ物の短編『赤毛連盟』に出会い、物語の楽しさを知り、探偵という職業の格好よさに憧れ、自身もホームズに倣って探偵ごっこを始めるという、パロディというかパスティーシュなんですが、一言でパスティーシュだと片付けられない味があります。物語の端端を検証するならもうちょっとだなという瑕も多いのですが、この瑕はただ単に長編を書き慣れていない若さからなのじゃないかなという気がします。ワタクシがホームズ物のファンだということもあるので身贔屓もあるでしょうが(笑)。で、物語はというと・・・
時代は1892年のアメリカ西部のモンタナ。洪水で家も土地も失った兄オールド・レッドと弟ビッグ・レッドは西部の牧場を渡り歩く雇われカウボーイ。だが、兄は1篇の短編小説に出会った事により運命を変えた。彼は教育を受けておらず文盲だったのだが、弟は家族で一人だけ教育を受けられたお陰で文字を読むことが出来たので、弟は兄へホームズの短編を読み聞かせていたのだ。繰り返し繰り返しホームズ物を学習してきた兄は探偵になりたいという夢を抱きつつカウボーイとして働き続けていたのだが、雇われた牧場で死体が見つかった事により彼ら素人探偵は事件を嗅ぎ回ることに・・・という展開です。物語は弟の語りで進んでいくんですが、この辺りもホームズ物そのままです。(弟がワトスン役で兄がホームズ役)多少、気になる点はありますが、楽しんで読める正統派(?)探偵小説として仕上がってますので、次作が楽しみです。 作家名INDEXホームへ戻る



 
荒野のホームズ、西へ行く
(On the Wrong Track)
早川書房HPB 初版2009年6月10日
あらすじ  仕事にあぶれたおれたち兄弟はふとしたきっかけで鉄道会社に雇われ、鉄道保安官の職に就くことに。荒野に出没する強盗団から列車の乗客と鉄道会社の財産を守るのだ。ところが、乗りこんだ急行列車にはワケありの乗客と怪しげな荷物が満載。はたせるかな、サンフランシスコ目指して列車が走り出したとたん、手荷物係が何者かに殺害された。もちろん、かの名探偵の魂を宿す兄貴のオールド・レッドが、この事件を見逃すはずもない。体調不良にもめげず、さっそく調査と謎解きに乗りだすが……痛快カウボーイ探偵が、愛馬を列車に乗り換えて大活躍。

 
感想 前作と比べると格段に良くなっているような気がします。それに、発想がいいですね(笑)。雇われカウボーイの兄弟がホームズとワトスンばりに謎を解いてゆく物語じゃ設定に無理がある、だもんでシリーズ化は難しかろうと思ってたんですが、本作では主人公の二人は鉄道会社に雇われ、そこで起こる謎に鉄道保安官として挑みます。時代は1800年代末ころなので、鉄道強盗が跋扈しているわけで、まさに西部劇とミステリの融合といった感じの作品に仕上がっています。この作者、きっと昔懐かしのパルプマガジンなんかを読み漁っていたんじゃないかなと思わせます。ですが、物語は正統派(?)探偵小説なので、本筋にはあまり触れられず感想はここいらで終わりますが〜そうだなぁ。お勧めするとしたらホームズファン、もしくはバカミスファンの方でしょうか。ワタクシは大変に気に入ってます。すでにシリーズは4作目まで書かれているそうなので、首を長くして邦訳を待ちたいと思います。



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