スティーヴ・ハミルトン(Steve Hamilton)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | スティーヴ・ハミルトン(Steve Hamilton) |
生年月日 | 1961年 |
生誕地 | アメリカ デトロイト |
処女作 | 『A Cold Day in Paradise (氷の闇を超えて)』 |
デビュー年 | 1998年 |
公式サイト | http://www.authorstevehamilton.com/ |
氷の闇を越えて (A Cold Day in Paradise) |
早川書房 文庫 | 初版2000年4月15日 |
あらすじ | わたしの心臓のそばには銃弾がある。14年前、警官時代にローズという男に撃たれたときのものだ。最近、私立探偵となったわたしの身辺で連続殺人が起き、自宅にローズと署名のある手紙が届いた。手紙には殺人は自分の犯行だとあった。刑務所にいるはずの男がなぜ?わたしは深い謎へと踏みこむが…探偵マクナイト登場。アメリカ探偵作家クラブ賞、アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作。私立探偵小説コンテスト最優秀作。
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感想 | 主人公のアレックス・マクナイトは元警官で、14年前にローズという男から勤務中に3発の銃弾を浴び、瀕死の重傷を負って退職したのだった。アレックスの心臓の横には、今も摘出されないままの銃弾が埋まっている。そんな彼はミシガン州のパラダイスという小さな町で、狩猟者相手に宿泊用の小屋を賃貸し生活を送っていた。が、弁護士アトリーの依頼で調査員の仕事を始めることになり、私立探偵の登録をする事になる。そして、数ヵ月後。二人の賭け屋が連続して惨殺されるのだが、自分が犯人だというローズという署名入りの手紙がアレックスに届く・・・という展開です。で、感想ですが〜ひさびさにこんなにシンプルな探偵小説を読んだなと思わせるほど、正統派コテコテの探偵物です。あとがきを読んでみて分かったのですが、この作品はPWA主催の私立探偵小説コンテストの最優秀賞作品なのだそうで、納得です(笑)。ストーリーも、退職した警官が連続殺人事件に巻き込まれるんだけど、その連続殺人犯はアレックスを撃った男と同じ名前を名乗っていて、刑務所にいるはずのローズが犯人なのか?それとも?という至ってシンプルな内容で、新人作家にしてはやるなという印象です。変に書き込み過ぎてないところが好いのかもしれません。ラストが次作につながるような終わり方なので、好き嫌いは分かれると思いますが、ワタクシは好印象を持って読了致しました。「わたし」で語られる探偵小説は良いな〜と再認識♪。
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ウルフ・ムーンの夜 (Winter of the Wolf Moon) |
早川書房 文庫 | 初版2001年1月20日 |
あらすじ | 私立探偵アレックスのもとに、ドロシーという女が訪ねてきた。暴力的な恋人ブラックマンから逃げる手助けをしてくれという。彼はロッジに泊めるが、翌朝ロッジは荒らされドロシーの姿は消えていた。ブラックマンの仕業か?自責の念に駆られ、アレックスは彼女の行方を追うが、やがて麻薬密売に絡む二重三重の追跡劇の渦中へ!アメリカ探偵作家クラブ賞などトリプル受賞に輝いた『氷の闇を越えて』に続く注目の第2弾。
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感想 | 探偵業からは足を洗ったつもりでいたアレックスの元へ、失踪に手を貸して欲しいという女ドロシーが現れる。ドロシーの恋人ブラックマンは薬物の売人で恋人自身も薬物を乱用する凶暴な男だった。逃げたことがバレると殺されると主張するドロシーを、とりあえず自分の保有する貸しロッジに泊まらせ、翌朝に対処しようとしたアレックスだったが・・翌朝。ロッジの中は荒らされ、女の姿は忽然と消え去っていた。女性の言うことを信じず動きが遅かったがためにドロシーを守りきれなかったという自責の念を抱えたアレックスは、再び探偵となり女性の行方を追う・・・という展開です。 前作も楽しめたのですが、本作はさらに楽しめる出来でした。物語の核となるのは、女性が行方不明となりいったい誰がどこへ連れ去ったのか?そして女性の安否は?という地味な謎だけなのですが、物語の謎が地味になった分だけ、登場人物がより丁寧に造詣されているのですよね。アレックスの好さは勿論なのですが、アレックスの友人でありバーのオーナーのジャッキーと、アレックスの押しかけ相棒となるリーアン・プルーデルが好いんですよ。プルーデルはシリーズ第1作目では木偶の坊のように描かれていたのですが、本作では準主役と言えるほどに活躍をしていて、この二人の活躍を他にも読みたいなと思わせるほど良いペアに仕上がってます。主人公のアレックスは本作でも探偵家業を嫌っていて、自身では探偵になんかなりたくないと思っているんだけど、前作同様に本作でも探偵は嫌だと思えば思うほど事件のほうから寄ってくるという展開ですが、筋立てに無理はありません。カナダにほど近いミシガン州の山奥での極限状態の寒さの描写が心に沁みる探偵小説でした。お勧め作ですが〜シリーズ第1作で解決されなかった謎が本作でもそのままでした。読み進めば、いつか解決するのでしょうかね?(笑)。 ![]() ![]() |
狩りの風よ吹け (The Hunting Wind) |
早川書房 文庫 | 初版2002年5月20日 |
あらすじ | 30年ぶりの再会だった。私立探偵アレックスのもとを訪れたのは、かつてバッテリーを組み、共に一流のメジャーリーガーを夢みた親友だった。その夢を捨て、音沙汰のなかった彼が、昔の恋人の捜索を依頼してきたのだ。アレックスは旧友のために彼の最愛の女を追うが、まもなく何者かに暴行を受け監禁される…やがて明らかになる悲劇的な真相とは?
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感想 | 30年前、マイナーリーグでキャッチャーを務めていたアレックス。彼はメジャーに昇格することなく、メジャーリーガーになる夢を諦め警官となり、その警官という職も職務中に3発の銃弾を浴び瀕死の重傷を負い退職。現在は貸しロッジの管理をして暮らしているのだった。そんなアレックスの元に30年前にバッテリーを組んでいた左腕のランディー・アルキンズが訪ねて来たのだった。30年ぶりに現れたランディーは昔の恋人マリアを捜して欲しいとアレックスに訴える。相変わらず探偵家業に熱の入らないアレックスだが、元相棒のランディーに乗せられ、友人に手を貸すことになる。アレックスとランディは、ランディーの元恋人マリアが住んでいた町であり、アレックスが警官として勤務していた地であるデトロイトへ向かうが・・・という展開です。シリーズを通して3作品を読み終わってみて比較すると、ミステリとして出来が良いのは本作でしょうか。30年前に出会った女性を探すんだけど、その女性を探そうにも住んでいた場所と名前だけしか分からず苦戦するアレックスが、一つまた一つと階段を上るように女性へと辿りついていく過程はなかなかに読み応えがあります。そして、全編を通して漂う中年の悲哀というか、夢破れた男たちが抱える惨めさのようなものが心に迫ってきて、妙に感動させられる作品でした。主人公のアレックスがミシガン州の小さな町パラダイスを飛び出したお陰で、お気に入りの登場人物たち(リーアンとジャッキー)の登場が少ないのが残念でしたけど、非常に出来の良い作品だったと思います。お勧め作ですが、このシリーズは通して読まれた方がより楽しめると思われます。 一つ気になったのですが〜作中で主人公が何度も「左利きにはいかれたやつが多い」と発言するんですよね(笑)。自身が左利きであるワタクシはニヤニヤしながら読んだのですが、英語でそういう言い回しというか、ことわざ(?)があるのでしょうかね?。 |