完全なる沈黙


ロバート・ローテンバーグ(Robert Rotenberg)作家略歴&著作の感想
作家名 ロバート・ローテンバーグ(Robert Rotenberg)
生年月日 1953年
生誕地  カナダ オンタリオ州トロント生まれ
処女作  『Old City Hall』(完全なる沈黙)
デビュー年 2009年
公式サイト

作家略歴

1953年、カナダのオンタリオ州トロント生まれ。ロースクールを卒業後パリに渡り、英文雑誌の編集者として活動。その後トロントに戻り、自らの雑誌を創刊したが軌道に乗らず、映画やラジオ業界などで様々な職を経験した。37歳のとき弁護士を開業。そのかたわらで執筆を続け、『完全なる沈黙』でデビュー。妻、3人の子供とともにトロントに在住。

判る範囲で著作リスト
Novels(シリーズ外単発作品)
Old City Hall (2009)『完全なる沈黙』
The Guilty Plea (2010)


完全なる沈黙
(Old City Hall)
早川書房文庫 初版2009年12月10日
あらすじ  「彼女を死なせた。死なせてしまった」血に濡れた両手を差し出しそう告げたのを最後に、容疑者は完全に口を閉ざした。浴槽の中で見つかった内縁の妻の死体。見かけどおりの単純な事件なのか、それとも…すべての鍵はその沈黙の中にある。事件関係者、警官、検察官、弁護士、それぞれに過去を背負う登場人物が織りなす迫真の群像劇。緻密な構成と真実を追う者たちへの温かな眼差しが光る現役弁護士作家渾身のデビュー作。

 
感想  新人さんが書いた作品とは思えないくらい良く出来た物語でした。物語の動かし方も良いし、多視点で物語を語った点も良いし、何より人物造詣が良くて感情移入できたし〜楽しめました。ジャンルはリーガルスリラーなのですが、法廷シーンだけを描写して終わるタイプの作品ではないので、法廷物が苦手な方にもお勧めしたい作品です。で、ストーリーはというと・・・。
 12月のある日の早朝、カナダで最も有名なラジオ番組の司会者ケヴィン・ブレースが、自宅の玄関に新聞を配達に来たガディル・シンという移民の老人に、自分の血まみれの両手を見せ「彼女を死なせた」と囁いた場面から物語は始まる。老人はケヴィンの自宅に入りケヴィンの内縁の妻トーンが浴槽で腹部を刺されて志望しているのを発見、すぐさま警察に通報。駆けつけた新米警官ケニコットは浴槽の死体を確認後、ケヴィンを殺害容疑で逮捕した。最初は、ごくありふれた単純な事件だと思われた。だが、ケヴィンは逮捕後、完全黙秘を貫いた。凶器と思われるナイフもケヴィンの自宅から見つかり、彼の有罪は揺るぎないものに見え、検察局はケヴィンを第一級謀殺罪で起訴。だが、本格的な捜査が進むにつれ、見かけのような単純な事件ではないことが明らかに・・・という展開の物語です。面白いのはケヴィンは最初から最後まで喋らないんですよね。自身で雇った自身を弁護する弁護士とも筆談で意思の疎通をするほど、かたくなに喋るのを拒否するんですよ。で、物語はケヴィン以外の主要登場人物の目線で語られていくんですが、登場人物がそれぞれに魅力的なんですよね。物語の視点がアッチャコッチャ動き回るので、一歩間違えばイライラさせられる構成なんだけど、語り手が魅力的なので動く視点も一向に気になりませんでした。中でもユダヤ系の刑事グリーンと兄を殺されたのを切っ掛けに警官になった元弁護士のケニコット、この二人の組み合わせが良くて、シリーズ化されたら良いなと思うほどでした。殺人事件が物語の核となっているんだけど、実は物語の核は家族とは何か?みたいな印象の作品で、謎解き重視派向けじゃないかもしれないけど、お勧め作です。
(ケニコットがラストで、殺されて死んだ兄の犯人逮捕に繋がるかもしれない謎を追ってイタリアに向かうんですよね。そこで物語が終わっているので、ひょっとして次作はこの続きになるのかな?と期待しています。是非とも、邦訳して欲しいです)



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