ビッグ・レッド・テキーラ/ホンキートンク・ガール/殺意の教壇/殺人鬼オーストゥンに帰る

リック・リオーダン(Rick Riordan)作家略歴&作品紹介
作家名 リック・リオーダン(Rick Riordan)
生年月日 1964年
生誕地  アメリカ テキサス州サンアントニオ
処女作  ビッグ・レッド・テキーラ(Big Red Tequila)
デビュー年 1997年
公式サイト http://www.rickriordan.com/


リック・リオーダン 作家略歴


テキサス大学オーストゥン校で国語と歴史を専攻。1988年、同大学サンアントニオ校で教員資格を取得後、サンフランシスコ市に移りサンフランシスコ州立大学で国語と中世文学を専攻。98年、『Big Red Tequila』の刊行決定後に同大学を離れ、サンアントニオに帰郷。創作の傍ら地元のミドルスクールで歴史と英語を教えていたが、現在は教職を離れフルタイムの作家となる。夫人と二人の息子がいる。

 日本では全く無名ですが本国ではかなり売れているようです。デビュー作のハードボイルド(というかミステリ?)『ビッグ・レッド・テキーラ』でアンソニー賞、シェイマス賞をダブル受賞しています。『ビッグ・レッド・テキーラ』の続編『ホンキー・トンク・ガール』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀ペーパーバック賞を受賞しています。(共に小学館から出版されており、第四作まで日本での邦訳が決定しているそうな)その後も名だたる賞にノミネートされ続け順調な作家生活を送っているそうな。

 2004年10月現在、大人向けのミステリを6作品上梓し、9〜14才向けの児童小説を1作品上梓しています。この児童小説『The Lightning Thief』はADHDで失読症というハンディーを持った少年パーシー・ジャクソンが主人公でギリシャ神話を材にしています。この映画化権は既にミラマックスに売れていて映画化される模様。英語が読めない管理人が公式ホームページを何とか解読(?)したところ、リオーダンが中学校の教師をやっていた頃にADHDの子供達に接した事があったり、ご自分の息子さんも学習障がいがあったりで、主人公の少年を障がいを持った子供に決めたのだそうです。リオーダンはインタビューで『学校では不幸なことに彼らは(ADHDの子供)しばしば価値のないものとされる。怠け者、やる気がない、不作法、あるいは愚か者とさえみなされるが彼らはそうではない。失読症のパーシーを作ることは全ての子供を褒め称える私のやり方だった』と仰っています。
余談・・・リオーダンはこの物語の構想が固まった時、息子さんに三日掛けてストーリーを説明したそうな。すると『本にしてよ』と息子さんのGOサインが出たのだそうな。この児童小説(というかファンタジーのようですが)は、フランス&タイ&ドイツ&スペイン&日本など多数の言語に翻訳され世界中で売られる事が決定しています。既に次回作の発売も決まっていてシリーズ化されるようです。



この作家の英語は英語が苦手なマダラには非常に難しくてお友達に文章の確認までさせてしまいました。有難うねー♪。





ビッグ・レッド・テキーラ
(Big Red Tequila)
2004.10.22読了
小学館 ソフトカバー 初版2002年12月20日
あらすじ テキサス州南部のサンアントニオで保安官の父を殺されたナヴァー。必死の捜査にも拘わらず犯人は挙がらなかった。青春のまっただ中で父の死を迎えた彼は、恋人リリアンや家族とも離れ、思い出も故郷も捨てて西海岸へ移る。12年後、弁護士事務所の調査員となっていたナヴァーは、かつての恋人からの依頼で帰郷するが、彼を待っていたのは、リリアンの失踪と、なぜか敵意に満ちた人々の視線だった。PWA処女長編賞受賞作。

 
感想 この作品のジャンルは何になるんだろうか?。探偵が出てくるので(ネオ)ハードボイルドなのだろうが、軽いノリのペーパーバック風だし、コージーミステリーっぽくもある。だが古いハードボイルドの匂いも残っているし・・・とにかく不思議な作風だ。
主人公のナヴァーは太極拳が出来る弁護士事務所の調査員だ。一匹の猫と暮らしている。西海岸へ移っていたのだがある事がきっかけで故郷のテキサス州サンアントニオに戻り事件に巻き込まれるという内容だ。この舞台であるテキサス州の訛りやスペイン語が沢山出てくる所為か訳が読み難かった。訳者の方は苦労されたのだろうが、もうちょっと何とかならなかったのかなぁ。これが一番気になった。物語自体は楽しめたし、なんと言っても作中に出てくるメキシコ料理の数々に涎が(笑)。作風は違うのだがスティーブン・ウォマックの『ハリー・デントン シリーズ』を思い出した。ハリーシリーズみたいに脇役のキャラクターが立っていて笑えるのですよね。この作品はシリーズ化されていて続編も出ているし、売れているそうなので次回作まで読んでみるつもりだ。
しかし、版元が小学館の上にソフトカバーじゃ日本では売れていないだろうな。もうちょっとミステリやハードボイルドに強い版元なら人気が出たのかも?。
作家名INDEXホームへ戻る

ホンキートンク・ガール
(THE WIDOWER'S TWO-STEP)
小学館 文庫 初版2004年3月1日
あらすじ  故郷テキサス州で探偵見習いとして働きはじめていたトレス・ナヴァーは、ジュリーというフィドル奏者を尾行中、目の前で彼女を射殺されてしまう。ジュリーはカントリー音楽の聖地ナッシュヴィルをめざす新進歌手ミランダ・ダニエルズのバンドメンバーだった。ミランダの才能はケタはずれに評価が高く、エージェントの間で激烈な競争が展開されていた。ジュリーはその巻き添えで殺されたらしい。納得できないナヴァーは独自の調査を始めるのだが…。恋の迷走、そして思いがけない結末。アメリカ探偵作家クラブ(PWA)賞受賞作。

 
感想  シリーズの二作目にあたります。本作は前作よりかなり愉しめました。なので、この作家を読んでみようと思われる方は、一作目の『ビック・レッド・テキーラ』を飛ばして本作から読んでみるのをお勧めします。シリーズ物ですが、途中からでも充分楽しめると思います。ただ、一つだけ難点があるんですよね。カントリー・ミュージックの世界が事件の鍵なので、ミュージシャンについての記述がダラダラとあるワケです。カタカナが満載です(笑)。なので読書慣れ、活字慣れ、翻訳物に慣れている方向きだと思います。リック・リオーダンはデビュー作でPWA処女長編賞を受賞し、本作でPWAペーパーバック賞を受賞しているのですが、それも頷けます。どんどん巧くなっているようです。
 探偵見習いのトレス・ナヴァーは張り込みをしていたのですが、ちょっと目を離した隙に張り込みの対象者を射殺されてしまう。で、納得のいかないナヴァーは独自の調査を開始し、事件に巻き込まれる・・・というストーリーです。前作より巧くなったなと思うのは情景描写でしょうか。主人公&脇役の人物造詣は相変わらず巧いし、描写も楽しいので笑いながら読めるといった感じです。探偵小説&ユーモアミステリ&コージーミステリの融合といった雰囲気は前作よりも顕著です。アメリカ人ってこの作品のようなユーモアのある文体が好きですよね。この作家がデビューから色んな賞にノミネートされ続けている意味が分かります。


↑本国でのペーパーバック装丁

↑翻訳本 小学館文庫装丁
版元に一言要望・・・。

管理人は、日本人でカントリーミュージックが好き♥なんていう方は少数だと思うのですよね。
で、小学館文庫のカバー(装丁)と題名は如何なものかと思う訳です。本の世界でもジャケ買いはあるんだから、もうちょっとどうにかしてくれればと思わずにはいられません。題名も『THE WIDOWER'S TWO-STEP』の直訳の方がよほど良いと思うんですがね・・・。
ちなみにペーパーバックの版元はBantam社です。アメリカでも大手の版元ですがこちらの方がはるかに良いですよね?。
作家名INDEXホームへ戻る



殺意の教壇
(THE LAST KING OF TEXAS)
小学館 文庫 初版2005年5月1日
あらすじ  テキサス大学の中世文学担当教授が相次いで変死した。探偵修行中のトレス・ナヴァーは、学部長から『警察が連続殺人犯を逮捕するまで、自分の命を自分で守る』という奇妙な条件下の下で、後任の教授に抜擢される。
 だが、就任直後、ナヴァーもまた差出人不明の小包爆弾で命を狙われ、自ら事件の真相に迫るべく殺人課美人刑事デレオンとともに捜査に乗り出した。辿り着いた先にあったのは呪われた教壇と、麻薬取引に手を染める『醜い王』との意外な繋がりだった・・・。
 
感想  いつ、翻訳を打ち切られるのかとビクビクしておりましたが、無事に新刊が出ました♥。この調子で翻訳が続く事を切に願います。で、本作の感想の前に一言。
 このシリーズの舞台はサンアントニオ。だからカントリーミュージックに纏わるストーリーだったり、メキシコ料理やスペイン語が頻繁に出て来たりと難しい(?)ので読み手にとって、訳は重要になるワケですよ。で、前の訳者さんはカントリーミュージックにお詳しい(好きな)方だったのですが、その所為か、所々に出てくるカントリー音楽についての記述が分かり難かったのですよね。その世界を分かる人にとっては、分からない人に理解出来るように書く事が難しかったのでしょうね?。で!!!本作では訳者が変わっています!。前の訳者さんよりはるかに読み易くなっています(笑)。それと、訳者が変わった所為なのか、はたまたリック・リオーダンが巧くなったのかは定かではありませんが、文章や描写が美しくなっています。もし、初めてこの作家の作品を手にとられる場合は本作をお勧めします。シリーズ物ですが、途中から読んでも何の問題もありません。

 で、やっと感想ですが非常に楽しめました。本作『殺意の教壇』は前二作よりプロットが込んでいます。その上、前二作で登場した脇役陣の全てがより深く書き込まれているので、シリーズの愛読者にとっては一番楽しめる作品だと思います。それと、この作者の作品を私が好きな理由は、作者が楽しんで書いている事が伝わってくるからなんですよね。この手のペーパーバック風の作品は楽しめてナンボだと思うんですよ。小難しい話や救いの無い話は嫌だといわれる方にお勧めしたい作品です♪。(デニス・ルヘインのパトリック&アンジー シリーズをお好きな方や、G・M・フォード ファンの方!読んでみませんか?♪)

 装丁がだいぶまともになっていました(笑)。ですが、題名の酷さは変わらず・・・。 作家名INDEXホームへ戻る 



殺人鬼オーストゥンに帰る
(THE DEVIL WENT DOWN TO AUSTIN)
小学館 文庫 初版2006年7月1日
あらすじ  兄にかかった冤罪は、連続殺人の序章だった。
パートタイムの大学教授にして駆け出し探偵のトレス・ナヴァー。事故で両足を失った兄が始めたIT企業が破綻し、射殺された共同経営者殺害の容疑が兄に降りかかった。冤罪を晴らすべく謎を追うトレスは、兄の苦い過去に直面し、友人一族の暗部を掘り起こしてしまう。さらに新たな死体が…。殺人鬼の真の狙いは何なのか!? 

 
感想  今までの作品とだいぶ作風が違います。今までの作品は軽快&軽妙ってな雰囲気だったのですが〜本作はちとシリアス(?)な作品です。本作にはトレスのボスやボスの息子、悪友のラルフ等の味のある脇役陣が出てこないのですよね〜(涙。
今回の準主役(?)はトレスの兄ギャレット。彼は勤めていた会社を辞め、友人二人とIT企業を興していたのですが〜会社は倒産寸前。で、父が遺した農場が担保に入れられており、来月には銀行に農場を取り上げられると知ったトレスは兄に会いに行くのですが、その夜・・・兄の共同経営者は射殺体となって発見される。第一容疑者は兄のギャレット・・・という展開です。窮地に陥ったギャレットの会社を安く買い叩こうとする男が現れるのですが、この男が怪しいのですよ。この男の周りの人々は水死だったり謎の自殺だったり、不審な死を遂げているのですよね。で、トレスの元彼女マイアも加わり、真犯人探しが始まるのですが〜これ以上はネタバレになるので書かないけど、ここまで結末をムリクリしないでも良いんじゃないの?!って終わり方です。ちゃんと辻褄は合っているし、プロットに破綻も無いのだけど、イマイチな結末だと思うのは何故?(笑)。きっとね、ワタクシはこのシリーズで笑いたかったからじゃないかと思います。いつもの軽快さが欲しかったダケなのだろうと思います。って事で、このシリーズを途中から読んでみようと思われる方には一作前の『殺意の教壇』から入られることをお薦めします。

管理人のぼやき・・・今までの3作品の巻末には(訳者あとがき)必ず、次作の翻訳予定が書いてあったんだけど・・・本作には『次作も翻訳されます』という文章がありませんでした(涙)。ひょっとして、本作を最後に邦訳打ち切りでしょうか?!。小学館さま、いつも文句ばっかり言っていますが、きちんとお金を出して買っています。次作の邦訳も宜しくお願い致しますっ。



作家名INDEXホームへ戻る