ウェクスフォード警部シリーズ
シリーズ外作品
ルース・レンデル(バーバラ・ヴァイン)作家略歴&作品紹介 |
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作家名 | ルース・レンデル Ruth Rendell(バーバラ・ヴァイン Barbara vine) |
生年月日 | 1930年2月17日 |
生誕地 | イギリス |
処女作 | 薔薇の殺意(From Doon with Death) |
デビュー年 | 1964年 |
公式サイト | http://www.inejacet.nl/RuthRendellenglish/start.html (公式サイトかどうか不明ですが経歴等が詳しく載っています) |
ウェクスフォード警部シリーズ |
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死が二人を別つまで (A NEW LEASE OF DEATH) |
創元推理文庫 | 初版1987年6月19日 |
あらすじ | 徹夜の訊問明けに舞いこんだその話を聞いて、ウェクスフォードは不機嫌になった。十六年前にヴィクターズ・ピースで発生した女主人殺し。初めて担当した殺人事件ながら、彼が絶対の自信をもって解決したこの事件に、真っ向から疑問を投げかける男が現れたというのだ!。 過去の殺人に潜む意外なドラマを鮮やかに描いた、シリーズ中の異色作。(シリーズ第二作)
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感想 | ↑のあらすじは文庫に書いてあるあらすじですが、異色作とまでは言わないでもと思う。本作はウェクスフォード警部シリーズの二作目なのですが主人公はウェクスフォード警部じゃ無いんですよね。だから版元は異色作と書いているのでしょう。シリーズが始まったばかりで主人公を別の人物に据えるなんてなかなか大胆な事をするなぁと感心致しましたが。 主人公は牧師さんです。その牧師の息子が結婚したがっているのですがお相手の女性の父親は殺人罪で死刑になった男だという。で、本当に女性の父が殺人者なのなら牧師として許可するわけにはいかない。で、事件の真相はどうなのかと探り出す・・・というストーリーです。私はルース・レンデルのシリーズ外のサスペンス作品が好きで(それも中期以降の)このシリーズを読むのはこれで二作目なんですよね。なので本作がミステリ色が薄いのにちょっと驚きました。後期でミステリとシリーズ外のスリラー&サスペンスを書き分けだす前の作品なので試行錯誤されていたんだろうなぁなんて深読みしつつ楽しみました。文章の美しさや人物描写は初期から巧い作家だったんですね。 ![]() ![]() |
シリーズ外作品 |
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死のひそむ家 (THE SECRET HOUSE OF DEATH) |
創元推理文庫 | 初版1987年9月25日 |
あらすじ | 常に全ての窓を閉ざし、ひっそりと奇妙な沈黙に包まれた邸。いつの日からかこの邸に主人の留守中、フォード・ゼファーに乗って一人の男が訪れるようになった。いそいそと迎えに出る妻。近所の主婦連中はさっそくゴシップを立て始める。不穏な緊張が続く中、やがてその妻と男は邸内の寝室で射殺体となって発見された。折り重なるように倒れている二人を見て誰もが古典的な心中だと思ったが事件の裏には意外な真相が隠されていた・・・。
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感想 | 本作はルース・レンデルの六作目の作品でシリーズ外作品では三作目にあたります。レンデルのシリーズ外作品にしてはミステリ色が濃い作品で、徐々に謎が明かされていくという手法が採られている珍しい(?)作品です。中期以降に見るレンデルの特徴はまだ出ていませんが日常に潜む犯罪を描くという意味ではレンデルらしい作品なのかもしれません。 この作品には最初から最後まで不倫や離婚といった夫婦関係の危うさが根底に描かれています。主人公スーザンの隣家で恐ろしい事件が起こるのですがスーザンが孤独だった事が原因で巻き込まれてしまう。で、この作品の好き嫌いは主人公スーザンに感情移入出来るか出来ないかだろうと思います。スーザンが夫に捨てられ孤独に耐えていて、寂しさから好きでもない男に惹かれて行く様が克明に描かれているのですがそれを読み流してしまえば、ただの中途半端なミステリに見えるかもしれません。ただのミステリ(謎解き)だけでは物足りないという方にお勧めです。(本作は現在在庫切れ・・・というか絶版です) ![]() ![]() |
死のカルテット (MAKE DEATH LOVE ME) |
角川文庫 | 初版1985年11月25日 |
あらすじ | アングリア・ヴィクトリア銀行のチルドン支店長アラン・グルームブリッジには密やかな楽しみがあった。銀行の金三千ポンドをこっそり取り出しては、その感触を楽しむのだ。三千ポンド・・・それは彼にとっては一年間の自由が買える金だった。家庭からも職場からも全てから逃れられる自由が・・・。 事件は彼がその密やかな楽しみに耽っている時に起きた。二人組の強盗が押し入り、金庫の金を奪い、一人しかいない行員のジョイスを拉致したのだ。身を隠したアランは無事だった、三千ポンドの金も手許に残った。 アランは姿を消した。拉致されたジョイスと犯人の二人組、そして自分の身に、やがて思いもかけぬ運命の転換が待っていようとは知らぬまま・・・。 |
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感想 | 本作はミステリやThrillerというよりは限りなく普通小説に近い作品です。そして非常にレンデルらしい作品でもあります。 主人公アランは極々普通のサラリーマン。18歳の時『二度はしなくても良いや』程度の彼女と関係を持つのですが、孕ませてしまい仕方なく結婚。で、子を二人儲けるのですが子供とはそりが合わない。(長男は家に一円の金も入れないケチんぼ&長女は母親を巧く誤魔化しつつ男遊びに精を出す15歳)その上、家には口うるさい爺さんが同居している。アランは毎日毎日、読書で気を休め、一度も体験した事の無い『恋愛』『自由』を夢に見ている。そのアランが自分の勤める銀行で銀行強盗に遭遇してしまう。夢に見ていた自由を手に入れるチャンスだとドサクサに紛れ三千ポンドを手に行方をくらまし・・・というストーリーです。 読んでいて兎に角苦しい。普通の男が抱く苦悩を、最初から最後まで掘り下げて描いてあるのですが読んでいて悲しくなるほどなんですよね。強盗犯の二人組も、そこらにいる普通の小悪党で彼らの描写も悲しい。そして結末も救いが無い。でもまた手に取ってしまう不思議な作家です。それとレンデル作品を読む度に毎回思うのですがプロットと人物造詣は天下一品の作家ですね。 救いの無い結末を迎えますがレンデルにしては読み易い作品だと思います。(本作も絶版です) ![]() ![]() |
身代りの樹 (THE TREE OF HANDS) |
早川書房 HPB1468 | 初版1986年4月10日 |
あらすじ | 『この子、どうかしら?』ジェイと名乗る見知らぬ幼児の手を引いたモプサが言った。まるで犬でも連れて来たような聞き方だった・・・。未婚の母として子供を育てていた女流作家ベネットが、愛児を病で失いショックで倒れてから何日過ぎただろう。後始末を終えられたのは、スペインからやって来た母モプサのお陰だった。だが、モプサは心を病んでいた。幼い自分にナイフを突きつけた母、自分を食堂に監禁した母・・・ベネットの頭にいやな記憶が甦る。ジェイが母の友人の孫だと聞かされてもベネットは不安を拭い切れなかった。真相はすぐに知れた。ベネットがまだ寝ていた前の週は、世間で大騒ぎしていたに違いない。モプサは消沈する娘のために子供を攫って来てしまったのだ。罪悪感の欠片も見せない母への憎悪、それ故に母を犯罪者にできないという愛情、家で虐待されていたらしいジェイへの愛情。心の揺れるベネットが選んだ道は?。CWAシルバーダガー賞受賞作。
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感想 | 感想は読まない方が良い、本作を読んでみて下さいとだけ言いたい作品です(笑)。 心を病んだ母親が、ある日突然、子供の手を引いて娘ベネットに引き合わせるのですよね。友人の孫を預かったという言葉を最初は信じる娘のベネットですが、新聞の記事を読んで真相に気がつく事になる。目の前にいる子供は、娘のために母が誘拐してきた子だったわけです。子供の体には傷が沢山あり、虐待されていた事が窺い知れる。返すべきなのか?。丁寧に描かれるベネット母子の関係、ジェイの若い母とその恋人の関係。誘拐事件が周りの人々の運命を変えていく・・・というストーリーです。 この作品を面白いと評するのはどうかと思うけど、でも、面白いんですよね(笑)。ハイスミスやマーガレット・ミラーの作品を面白いと思える方にお勧めです・・・が、本作も絶版です。しっかし!レンデル作品の感想は書き難いね。 |