沢崎シリーズ私が殺した少女

新・沢崎シリーズ愚か者死すべし

原 リョウ 作家紹介&作品紹介
作家名 原 りょう(遼の”しんにょう”が無い字)  
生年月日 1946年12月18日
生誕地  佐賀県鳥栖市  
処女作  そして夜は甦る(山本周五郎賞候補作)
デビュー年 1985年四月
公式サイト


原リョウ 作家略歴

レイモンド・チャンドラーに心酔し、彼の世界を描くために作家になったと公言するほど、雰囲気が似た作品を書く。元ジャズピアニスト。ジャズについての著作もある。
デビュー後、「私が殺した少女」を上梓するまで4年の月日を要するが、めでたく直木賞を受賞する。
他の著作は「天使達の探偵」「さらば長き眠り」。トータルでも4作しかない(推理小説に限り)。
その後、沈黙を守り、続編は出ていない。実弟が、鳥取でジャズ喫茶を開店しているらしい。
(近くの方!聞き込み調査に行ってくれ!)
この作家を知ったのは平成二年。直木賞の受賞コメントを見て『なんか毛色が違うぞ』と興味を持ち読んでみたのだ。コメントの内容はうろ覚えだが『私に賞をくれるなんて直木賞も変わったんですね』みたいな内容だったのだ。 受賞者のコメントには必ず「これ以上の喜びはありません」などとお愛想を述べるのが普通なのに・・・。
余談だが原氏が直木賞を受賞してから以後、新人が受賞する事は無くなったようだ。直木賞サイドは彼に賞を与えた事を『しまったっ』と思っているのだろうな。だって原氏は『受賞作家は20年は食える』というジンクスを打ち破ったのだよ。
     その後、全く作家活動をしないこの作家が、今は何をやっているのかは謎だ。
情報をお持ちの方、教えてください。

追記・・・死んでいるんじゃないかと思っていた原リョウ氏ですが2004年11月!!!ついに新刊『愚か者死すべし』が出ました。それも待望の沢崎シリーズです。ですがこのシリーズは『新・沢崎シリーズ』なのだそうな。新でも旧でもどっちでもいいから待たせないで欲しいのだっっっ。



私が殺した少女 早川書房 ハード初版1989年10月
あらすじ まるで宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話からはじまった。
私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に自宅を指定していた。だが、そこで彼は、自分が誘拐事件に巻き込まれたことを知る。

 
感想  チャンドラーの世界に心酔し、作家になっただけあって、そのまんまです。チャンドラー好きにはたまらないのですが。別にチャンドラー ファンじゃ無くても楽しめると思うけど。 この作品のジャンルはハードボイルド。四冊ある著作は全て『沢崎探偵シリーズ』だ。 人間離れした感や運で事件の真相にたどり着くタイプの作品では無い。地道な捜査の末に真相に辿り着くという「古典的正当派探偵物」なのだ。 沢崎探偵の気の利いたセリフが、随所に出てくるのだが、このセリフを考えるのが大変なんだろうか?とか、チャンドラーに縛られて他の作品は書けないのだろうか?と深読みしたくなるほど続編が出ない。死んでいるのかと思ったら、早川の雑誌にコメントが載っていたりもする。謎だ。
和製チャンドラーの元祖・原氏の第2作目にあたります。デビュー作でいきなり山本周五郎賞候補となり、本作で直木賞受賞という快挙を成し遂げたにもかかわらず、今では忘れられた不思議な人・・・。 しかし、直木賞選考委員は、困っただろうなぁ(笑)。受賞作家は売れっ子作家の階段を上ると言うジンクスを打ち破った人だから。受賞した後に、2冊しか書いていない作家ってこの人だけだと思う。 実は、この点にもかなり好感が持てる・・・。四冊しか著作が無いのにマニアなファンが多い。
私も「頼むから、続編を書いてくれ!!!」と叫びたい気分だ。
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愚か者死すべし
(新沢崎シリーズ第一弾)
早川書房 ハードカバー初版2004年11月20日
あらすじ  死んだ渡辺を頼って私立探偵事務所を訪れた女性を、ひょんな事から新宿署に送っていく事になる主人公・沢崎はいつもの様に事件に巻き込まれる。新宿署地下駐車場での狙撃事件に端を発し、老資産家の誘拐事件と、暴力団同士の抗争の両方に巻き込まれた沢崎が、2つの事件の裏に隠された意外な真実を見抜く。

 
感想  相変わらずのチャンドラー風私立探偵小説で身悶え致しました(笑)。沢崎の洒落たセリフも健在だし、前も乗っていたオンボロ ブルーバードにまだ乗っているし、煙草も手放していないしで前作から9年の月日が流れている感じは全くしませんでした。この主人公のセリフが良いんですよね。現実にいる人物が喋れば鼻つまみ者なのでしょうがハードボイルドの主人公が喋ると絵になる。ハードボイルドとは何ぞや?と問えば人それぞれの考えはあるでしょうが、私は日本でハードボイルドを書く作家は非常に少ないと思うのですよね。日本では何でもハードボイルドに分類されてしまうけれど、この原氏だけは正真正銘のハードボイルド作家だと思います。でも本作は前の4作と比べるとちょっとプロットに変化があるようです。9年ぶりの新刊なので気合でも入っていたのでしょうか?(笑)。ストーリーに関してはちょっと強引な箇所もあるけど気にしない。死ぬ前にシリーズが読めて良かった〜〜。
 本作の後書きに著者が『次作は早く書けると思う』と豪語して(?)いらっしゃいます。確か前作の時も同じような事を言っていた気がしますが今度こそ信じたいっ(笑)。お願いだから、新シリーズ第二弾は9年も待たせないで欲しいぞ。