夜のフロスト/フロスト日和/クリスマスのフロスト/フロスト気質


R・D・ウィングフィールド(Rodney David Wingfield)作家略歴&著作の感想
    
作家名 R・D・ウィングフィールド(Rodney David Wingfield)
生年月日 1928年
没年月日2007年
生誕地  イギリス ロンドン
処女作  『クリスマスのフロスト』
デビュー年 1984年
公式サイト

作家略歴


著作リスト
Jack Frost ジャック・フロスト警部シリーズ
1. Frost at Christmas (1984)『クリスマスのフロスト』
2. A Touch of Frost (1987)『フロスト日和』
3. Night Frost (1992)『夜のフロスト』
4. Hard Frost (1995)『フロスト気質』
5. Winter Frost (1999)
6. A Killing Frost (2008)

クリスマスのフロスト
(Frost at Christmas)
創元推理文庫 初版1994年9月30日
あらすじ  ロンドンから70マイル。ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小様々な難問が持ちあがる。日曜学校からの帰途、突然姿を消した八歳の少女、銀行の玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物…。続発する難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品きわまる名物警部のフロストが繰り広げる一大奮闘。

 
感想  刑事に昇進したと喜んだのも束の間、栄光のロンドンから70マイルも離れた田舎町に配属された新米エリート刑事クライヴ。で、そのクライヴはフロスト警部の部下として働くことになったのだが、フロストはシモネタと女をこよなく愛す下品極まりない男。その上、勤務態度はデタラメで規則は守らず地道な捜査と書類仕事を苦手とし欠点ばかりだが、寝る間を惜しんで捜査に当たるワーカホリックなので、部下を道連れに夜中まで勤務に明け暮れ・・・という展開です。どうも、小さな警察署に同時多発する事件をフロストとその同僚たちが捜査に当るというのが、本シリーズのパターンのようです。フロスト警部が非常に楽しい人物なので、彼の登場場面を読んでいるだけでニヤニヤ出来るユーモアたっぷりの作品なのですが、その笑いの影には作者の用意周到に張り巡らされた謎と仕掛けがあります。たくさんの謎を一つ一つ解決していく過程は読んでいて安心感がありますし、ミステリとして骨子がしっかりしているからこそ、登場人物が多少ハチャメチャでも落ち着いたミステリに仕上がっているのは作者の腕なんでしょうね(笑)。こういう作品はなんの前知識も持たずに読むのが一番だと思うので、この辺で終わります。 作家名INDEXホームへ戻る



フロスト日和
(A Touch of Frost)
創元推理文庫 初版1997年10月17日
あらすじ  ウェブスターの眉間の皺は深まる一方だった。切れ者の警部として鳴らしたこの自分が、上司に鉄拳をお見舞いしたばかりに降格の上、役立たずのぼんくら親父ジャック・フロストのお守り役を押し付けられる羽目となった。だが肌寒い秋の季節、連続婦女暴行魔は悪行の限りを尽くし、市内の公衆便所では浮浪者の死体が小便の中に浮かぶ。ここは一つ、ロートル警部に成り代わって事件解決に邁進しなくては・・・。皆から無能と謗られながら名物警部フロストの不眠不休の奮戦は続く。シリーズ第2弾。

 
感想  相変わらず上手いなと唸るストーリーでした。公衆便所で浮浪者の死体が見つかり、森では連続婦女暴行魔が跋扈し、市内では暴走車に老人がひき殺され、その上押し込み強盗まで発生、そんでもって未成年の少女が行方不明で事件か家出か分からぬままで〜という相変わらずドタバタと多発する事件を、フロスト警部が無能と罵られつつも一つ一つ解決へと導いていくという展開です。パターンは毎度一緒で、変わりがあるとすればフロストと組まされる刑事が各作品ごとに違うだけなんだけど、妙に好いんですよね。これが不思議です。傑作と言われる作品って筋立てが突出して良いか、またはキャラクター造詣に優れているか、このどちらかが良い作品が評価されるんだと思うんだけど、フロスト物は両方が良いんですよね。こんな風にバランスの取れたシリーズってのは少ないと思います。  作家名INDEXホームへ戻る



夜のフロスト
(Night Frost)
創元推理文庫 初版2001年6月15日
あらすじ  流感警報発令中。続出する病気欠勤に、ここデントン警察署も壊滅状態。それを見透かしたように、町には中傷の手紙がばらまかれ、連続老女切り裂き犯が闇に躍る。記録破りの死体の山が築かれるなか、流感ウィルスにも見放された名物警部のフロストに、打つ手はあるのか?日勤夜勤なんでもござれ、下品なジョークを心の糧に、フロスト警部はわが道をゆく。大好評シリーズ第三弾。

 
感想  え〜、なぜシリーズ物の第3作から読み始めたのかというと・・・実は「クリスマスのフロスト」と「フロスト日和」は2冊とも出版当時に購入してあったのですが、どうしても読み進めず途中で諦めて放置していたんだよね。というのも今から15年ほど前はフロスト警部という主人公がどうしても好きになれず読めなかったわけでして。だもんで、以前 失敗した(?)2冊を手にするよりはと第3作「夜のフロスト」に挑戦してみたわけですが・・・これが不思議!面白いんですよ(笑)。15年前には耐えられなかった「人の心の寛大さはそいつのちんぽこのでかさに比例する」ってな言葉や、人のオケツを見るたびにそっと忍び寄り指で浣腸をかますフロストの品のなさが全く気になりませんで、15年の間に物語の好みってのも大きく変わるのだなと自分でも驚いている次第です(滝汗)。まぁ、15年前にどんな作品を読んでいたのかというと正統派(?)警察小説や探偵小説中心で読んでいたので、証拠は平気で捏造し汚い手も平気で使う、この破れかぶれな警部の捜査法が自分の好みじゃなかっただけだと思われます。で、物語はというと・・・
署内で酷い流感が流行、それでなくても人員が足りないデントン警察署では、24時間勤務も当たり前なほどなのだが、そういう時に限って事件は多発。新聞配達中の少女が行方不明になったままだし、連続老女切り裂き殺人事件は発生するし、墓地荒らしに、脅迫状にと事件は鈴なり。で、そこに新任の部長刑事ギルモアが配属されたのだが、悪夢のようなシモネタジョークを連発するフロスト警部と組まされ、妻との仲が危うくなるほどこき使われるハメに・・・という展開です。なんというか警察小説の王道のような筋立てで、事件が同時期に多発し、それが複雑なプロットを生むという展開です。だもんで、大変にページ数の多い物語なのですが、破綻のない出来の良いミステリです。英国製らしいミステリといえると思います。また、昔は分からなかったんだけど、この主人公が善いんですよね(笑)。口は悪いし下品だしこ汚いしで良いとこなしな男なんだけど、こと仕事となると寝食を忘れてひたすら打ち込む名刑事なんですよね。そんでもって、大変に登場人物の多い物語で見開きの人物表に上った人物だけでもなんと44人!(笑)。ですが〜物語は理路整然と(?)進んで行きますので、たとえ登場人物が40人を超えようと混乱することなく読み進めます。これ、凄いことだと思うんですよね。作者はかなり筆力のある作家だと思われます。やっぱ、食わず嫌いはいかんし、一度読めなかったらといって諦めちゃいかんのだと猛反省中です。再度、挑戦する切っ掛けを与えて下さった活字中毒者仲間のヒ様とL様に感謝です。 作家名INDEXホームへ戻る



フロスト気質
(HARD FROST)
創元推理文庫上下巻 初版2008年7月31日
あらすじ  ハロウィーンの夜、ゴミの山から少年の死体が発見されたのを手始めに、デントン市内で続発する難事件。連続幼児刺傷犯が罪を重ね、15歳の少女は誘拐され、謎の腐乱死体が見つかる…。これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部。勝ち気な女性部長刑事を従えて、休暇返上で働く警部の雄姿をとくと見よ!シリーズ第4弾。

 
感想  下ネタをこよなく愛すガサツで無神経なフロスト警部シリーズの第4作です。冒頭から事件が次々と勃発し、デントン署の面々は寝る間を惜しんで捜査に当たるんだけど、直感で動き回るフロスト警部は失敗も多くフロスト警部を追い出したいマレット署長との仲も険悪化・・・という展開です。相変わらずプロットが込んでいて、作者の巧さに脱帽しきりですが・・・本作は今までの作品とちょっと違うんですよね。フロストが今までの作品よりもかなり人間臭く描かれているんです。今までの作品はフロスト警部を周りの登場人物の目から見たような形で描写されていたんですけど、今回はフロストの内面描写がちょこちょこあってその点が読みどころかもしれません。
物語とはなんの関係もないんですが。フロスト警部が頻繁に上司マレットの煙草を盗む描写があるんですけど、これが最高に笑えるんですよね。煙草がひと箱1000円もする国だったらこんな感じなんだろうな〜と頷けるというか(笑)。



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