ロバート・B・パーカー(Robert B.Parker)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | ロバート・B・パーカー(Robert B.Parker) |
生年月日 | 1932年 |
没年月日 | 2010年2月17日 77歳で死去 |
生誕地 | マサチューセッツ州スプリングフィールド生まれ |
処女作 | The Godwulf Manuscript (1973)『ゴッドウルフの行方』 |
デビュー年 | 1973年 |
公式サイト | http://www.robertbparker.net/ |
ダブル・デュースの対決 (Double Deuce) |
早川書房単行本 | 初版1993年1月10日 |
あらすじ | 黒人スラムと化した公営団地ダブル・デュースの路上で、十四歳の少女と赤ん坊が射殺された…。犯人と目される黒人少年メイジャーは住民の誰もが恐れるギャング団のリーダーで、ダブル・デュース一帯を牛耳っていた。その教区の黒人牧師に雇われたホークが事件の解決に乗り出すが、ホークはスペンサーに協力を求めてくる。ところが、ホークに恋人が現われ、TV局のプロデューサーである彼女がホークに同行して少年ギャング団の実態を取材しはじめたことから、ことは面倒になってきた…。兇暴な黒人少年ギャング団と渡り合う私立探偵スペンサーと相棒ホーク。最強コンビのぴたり息のあった活躍を痛快に描く、人気シリーズ第19弾。
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感想 | 非常にスペンサー物らしいストーリーです。ホークが黒人牧師率いる自警団に雇われ、その仕事は一人では無理だからとスペンサーの協力を求め、二人でギャング団に立ち向かうというシンプルなストーリーなんですけど、リアル感がまったくないんですよね(笑) 。なんせ、50をとうに過ぎたであろうおっさん二人が武装した少年ギャング団に立ち向かうってだけでも無理があるのに、おっさん二名でギャング団を排除しちゃうんですよね。もちろん、武装集団と戦うわけだからホークもスペンサーも武装していて、発砲事件を起こすし、敵の一人を撃ってしまったりもするんだけど、相変わらずお咎めなしで終わります。ってか、ぶっちゃけますと〜このシリーズはホークとスペンサーのキャラクターを愛する方が読む物語なので、ありえない展開にダメだししたがるような読者は近寄らない方が賢明なのかも?。ワタクシも年を取りましたので丸くなり(ゑ?本当?)読めるようになりましたが、これが10年前だったら投げ出してたかもです。(この作品に出てくる少年はスクール・デイズにも登場します)
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歩く影 (Walking Shadow) |
早川書房単行本 | 初版1994年12月10日 |
あらすじ | 演劇好きなスーザンはボストン近郊の港町ポート・シティにある著名な地方劇団の理事をしていた。その劇団の責任者で美術監督のクリストフォラスが得体のしれぬ人影に後をつけまわされているらしいのを案じたスーザンは、スペンサーに尾行者の正体を突き止めてほしいと頼み込む。ほかならぬ恋人からの依頼にスペンサーはさっそく現地へ赴くが、町を牛耳る警察署長デスペインや、中国人ギャングたちに締め出されそうになる。そして、スーザンに誘われ一緒に観劇していた最中に、主演男優クレイグ・サンプスンが舞台上で射殺されてしまった。スペンサーは犯人をつきとめるために、劇団の関係者に聞き込みを始める。理事の一人であるリッキイ・ウーに質問すると、彼女は過敏に反応して敵意をむきだしにする。彼女は町のチャイナタウンの顔役ロニイ・ウーの妻で、スペンサーは事件の調査を強引にすすめるためにも、相棒ホークと凄腕のもと悪党ヴィニイ・モリスの協力を求めるのだった…。複雑なプロットと新たな展開でボリューム・アップした、私立探偵スペンサー・シリーズ第21作。
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感想 | スペンサー物にしては珍しく物語が入り組んでいるので、途中から読んでみたいと言われる方には良いかもしれません。ですが、リアル感がないのはいつもの通りでして・・・スペンサーは彼女のスーザンからボランティアで仕事を頼まれるんですよね。スーザンがとある地方劇団の理事をしているんだけど、そこの劇団の総責任者が何者かに後をつけられている。だもんで、誰がやっているのか調べて欲しいという依頼だったんだけど〜引き受けたその日に劇団の俳優が舞台上で射殺される事態に。スペンサーは殺人の犯人探しまでタダでやることになり・・・という展開です。この事件でもスペンサーはホークともう一人の助っ人ヴィニィ・モリスの協力を得ることになるんですが、ボランティアで請けた仕事なのに二人も誘い入れちゃうんですよね。毎度毎度、金にならない仕事を引き受けているわりに、金周りはいつも良いようで、この作品ではスペンサーとスーザンの共同名義で週末用の田舎家まで購入しちゃいます。そんでもって、突っ込みたいのは中華街でドンパチの寸前まで行くんですよね。で、警官隊が現れ中国系ギャング団の一味は一斉逮捕されるんだけど、その相手方だったスペンサー、ホーク、ヴィニスは逮捕もされません(笑) 。街中でショットガンとブローニングで武装しているにもかかわらずです。ラストもとある公僕がスペンサー側の一人に射殺されるんだけど、これもお咎めなしで終わります。これって、ピーターパン・シンドロームの夢想?(笑) 。ま、何度も言いますが、ホークとスペンサーを気に入っている方にしかこのシリーズは向きませんので。
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スクール・デイズ (School Days) |
早川書房単行本 | 初版2006年12月10日 |
あらすじ | ボストン郊外の私立ハイスクール、ダウリング校で発生した乱射事件。スキーマスクで顔を隠し、二挺ずつの拳銃を持った二人の少年は七人の教師や生徒を射殺し、人質をとって図書室にたてこもった。警察の包囲と説得の末、六時間後にそのうちの一人で生徒のグラントが投降。いつのまにか姿を消していたもう一人、同校生徒のジェレド・クラークも、すぐにグラントの自供により逮捕された。そのジェレドの祖母がスペンサーを訪ねてきた。孫の容疑を濡れ衣と主張する彼女はスペンサーに、事件を調査し、ジェレドの無実を証明してくれと依頼する。現場を訪れ、地元警察と接触し、弁護士と話すうち、スペンサーの嗅覚が小さな疑問を嗅ぎあてた。少年たちの動機や凶器の拳銃の入手経路を誰も追及していないのだ。それどころか、警察も弁護士も少年たちの両親さえも、さっさと事件に幕を引きたがっている。事件の背後に何かが隠されているのか?追及をはじめたスペンサーの前に、まずは地元警察が立ちはだかり、さらには…スーザンもホークも不在のなか、単独で事件に挑む孤高の騎士スペンサー。
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感想 | 随分と久しぶりにパーカー氏の作品を手に取ったのですが(15年ぶり?もっと?)驚いたというか、嬉しかったのは本の厚さが以前とこれっぽっちも変わっていなかった事でしょうか(笑) 。職人さんだなぁ〜っと思うのですが、毎度毎度、どんな作品でも300ページ前後というページ数は変わらないんですよね。欧米の作家の作品が辞書みたいに厚くなっていく中、パーカー氏だけは自分のスタイルを死ぬまで貫かれたのだなと感動さえ覚えました。で、物語はというと・・・ 高校で銃の乱射事件が発生。スキーマスクで顔を隠した犯人の少年二人は7人の生徒と教師を射殺。犯人二名は人質を取り立て篭もったのだが、警察の包囲の末に一人の犯人が投降し逮捕されたのだが、もう一人の犯人は現場から姿を消していた。逮捕された少年の供述により、共犯者の少年ジェレド・クラークも逮捕され即座に自供。二人の逮捕により事件は終結を迎えると思われたのだが・・・。ジェレドの祖母はジェレドの無実を確信しており、スペンサーに孫を助けて欲しいと調査を依頼。スペンサーは渋々、調査を引き受け、地元警察や弁護士らと接触するうち、事件の関係者たちはみな事件に幕を引こうとしていることに違和感を覚える。警察でさえ少年たちの動機や銃の入手経路さえも調べようとせず・・・という展開です。投獄されている少年が本当に犯人なのか、もし犯人だとしたらその動機は?という簡単なストーリーなのですが、スペンサーの魅力だけでラストまで読まされたといった感じです。今回はホークが不在、だもんで、力技で無理やり解決という道をたどらないので読み易かったのかもしれません(笑) 。 この作品には、相棒のホークやスペンサーの恋人のスーザンがほとんど出て来ませんで、スペンサーが珍しくも一人で動きます。スーザンとホークの不在が15年ぶりに本書を手に取った一因だったんですが、もう一つの要因は訳者さんが代わっていたこと(加賀山卓朗氏訳)だったんです。で、読んでみてほんのちょっとですが違和感を感じました。この訳者さん、他の作家さんの作品では良い訳をされているのになと、感じた違和感が不思議だったんですが・・・きっと、前の訳者さんの菊池さんを過度に意識されて訳されたのが仇になったのじゃないかなと思われます。文章というか口語文で「〜なのだ」という言葉が引っ掛かるんですよね。今時、会話で「〜なのだ」を使われるのは菊池さんくらい(?)で、菊池さんだからそれで良かったんだろうけども、新しい訳者さんまで無理して合わせずとも良かったんじゃないかな、加賀山調で行かれても良いんじゃないかなと思いました。 (作中にメイジャー・ジョンソンというギャングが出てくるんですよね。で、この人 なぜか覚えのある名前だなと思ったら「ダブル・デュースの対決」に出てきた青年なんだそうです。家にあるので、これも読んでみようと思います) |