ピーター・ロビンスン(Peter Robinson)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | ピーター・ロビンスン(Peter Robinson) |
生年月日 | 1950年 |
生誕地 | 英国ヨークシャー |
処女作 | 『Gallows View』 |
デビュー年 | 1987年 |
公式サイト | http://www.inspectorbanks.com/ |
余波 (Aftermath) |
講談社文庫 | 初版2009年7月15日 |
あらすじ | 金髪の美少女が5人、相次いで失踪した。誰にも姿を見られることなく犠牲者を連れ去る犯人は「カメレオン」と呼ばれ、州をまたぐ合同捜査本部が立ち上げられる。そんな折、家庭内暴力発生の通報を受けて警察官が急行した家の地下室で、全裸の少女がベッドの上で縛られた状態で死んでいるのが発見された。
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感想 | 「向かいの家で家庭内暴力がふるわれている」との報を受け、男女の警官二名が現場へ駆けつけ家の中に突入すると、その家の妻と思われる女性が怪我をして倒れていた。女性警官は倒れている女性を介護し、男性警官の方が家中を捜索するも夫の姿はない。が、そこで地下室があることに気付き、踏み込んだ警官二名は仰天。地下室には全裸の少女が縛られ監禁されていたのだが、その少女に気付いた瞬間、鉈を持った男が男性警官に襲い掛かったのだ。不意をつかれた警官は死亡。残る女性警官が警棒を手に反撃し、男の頭が割れるほど強打し取り押さえる。そして、その家に警察の調べが入るが、地下室の床には死体が埋められおり何人分ものゆびや手がつき出しており、庭にも・・・という展開です。 筋立て・構成に凝った作品です。というか〜冒頭で犯人が取り押さえられちゃうんですよね。だもんで、犯人は誰だ?というミステリを期待されている読者には不向きな作品かもしれません。ですが、物語はいったいその家で何があったのか?いったい何人の少女が殺されていたのか?そして、これだけの犯罪を妻に隠れて夫一人で行うことが可能だったのか?妻は無実なのかそれとも?という謎を軸に物語は進んで行き、ラストまで飽きさせることなく進みます。主人公のバンクス警視が真相へと近付く過程が物語の中心なんですけど、それ以外にも、犯人を警棒で殴り(犯人は意識を取り戻さぬまま死亡)取り押さえたものの、過剰防衛どころか故殺で取調べを受ける女性警官の心理状態なんかが細かに描写されていて、米国のミステリにはない趣きがあります。これがもし、米国のミステリだったなら、犯人を殺してしまったとしてもこの女性警官は英雄扱いされただろうと思うと、お国の違いでミステリまで変わってくるわけで〜こういう点が面白いですね。主人公のバンクス警視も、今の立場に辿り着くまでは紆余曲折あったようで、そういう過去の因縁なんかがチラホラと語られていて、過去作品も読んでみたいなという気にさせる秀作でした。 普段ならシリーズ物は第1作から読み始めるワタクシには珍しく、シリーズ12作目である『余波』を手に取ったのは、活字中毒者仲間Lさまの評を伺って、何かが脳に引っ掛かったからだったのですが〜読んでみてその何かが何であるのかが判りまして・・・。ワタクシ この作家の『乾いた季節』辺りの数冊を読んでいたんですよね(汗)。前々から声を大にして訴えておりますが、シリーズ物を売ろうと思うなら、せめて1年に1冊は邦訳してくれんと忘れるんよね。山と出る新刊を、出来ることなら全て読んでしまいたいと思っているのに、いつ読んだかわからん様な記憶に朧なシリーズ物は、当然のことながら読みたいリストから零れ落ちていくわけですよ。それに、この手の警察小説というのはその時の世相だったり社会だったりを反映して著されているわけだから、リアルタイムにより近い形で読んだ方が断然楽しめるハズなんだよね。本作『余波』も本国では2001年に上梓された作品で、邦訳は2009年。間が8年も空いとります。講談社文庫の海外物ってあんがいと良い作品が多いのに、読者からの評価は低い。その原因はこういうとこにあるんじゃないかなと思います。 |