カディスの赤い星燃える地の果てに燃える蜃気楼水中眼鏡の女(ゴーグルのおんな)

逢坂 剛 作家紹介&作品紹介
    
作家名 逢坂 剛(おうさか ごう)  
生年月日 1943年11月1日
生誕地  東京  
処女作  屠殺者よ グラナダに死ね(オール読物推理小説新人賞)
デビュー年 1980年
公式サイト

作家紹介

1966年、中央大学法学部卒業。同年、博報堂に入社し、1997年6月までの31年間勤務する。博報堂に勤務していた1980年「屠殺者よ グラナダに死ね」で第19回オール読物推理小説新人賞を受賞。1986年「カディスの赤い星」で直木賞、1987年に日本推理作家協会賞をW受賞。スペイン現代史に材をとった作品や警察小説、犯罪心理物、サスペンス小説を得意とする。時代小説も数冊上梓。
小説以外にも著作は多い。(メディアに関する物、フラメンコ物、タイガース応援本、西部劇に関する物、将棋の本など。M・ルブランの「奇巌城」の翻訳もしている。クラッシックギター、フラメンコ、西部劇のガンプレイ等が趣味で趣味に関する著作が多いようだ。)
現在、日本推理作家協会の理事長を務められているので、毎月「剛爺コーナー」なるエッセイ(?)をHPで読める。余談だが、東京神保町に事務所を構えておられるので、周辺でお姿を拝見できるらしい。
 
イベリアシリーズ、百舌シリーズ、岡坂神策シリーズなどシリーズ本も多い。 個人的に大好きな作家で新刊が出るたびに追っかけている。薀蓄が多すぎるとか登場人物の女性に現実味が無いとか悪評もよく聞くが良いのだ!。逢坂小説に恋愛は要らないし、薀蓄が無い逢坂なんて逢坂じゃ無くなるのだ!。


 
カディスの赤い星 講談社 ソフトカバー初版1986年7月
あらすじ フリーのPRマン・漆田亮は、得意先の日野楽器から、ある男を探してくれと頼まれる。 男の名はサントス、20年前スペインの有名なギター製作家ホセ・ラモスを訪ねた日本人ギタリストだという。 わずかな手掛りをもとに、サントス探しに奔走する漆田は、やがて大きな事件の闇に巻きこまれてゆく…。 サントスとダイヤが埋められたギター「カディスの赤い星」を追ってスペインに渡った漆田は、ラモスの孫娘フローラの属する 反体制過激集団FRAPのフランコ総統暗殺計画に巻きこまれる…。スペイン内戦時の秘密を軸に、日本とスペインを舞台に展開される、 サスペンスにみちた国際冒険小説。日本推理作家協会賞&冒険小説大賞&直木賞受賞作。
 
感想 この作品が逢坂氏との出会いとなった。まさに運命的な出会い。この作品に出会うまでは日本人の書いた本に飽きて、洋物ばかりを読み漁っていた。時刻表でアリバイ崩しをするとか、電化製品を使ったトリックのようなせせこましいストーリーに飽き飽きしていたのだ。 で、本作を読んで”冒険小説”なるジャンルの面白さを知ったのだ。謎はふんだんに有るし、サスペンスもあり、広告業界の話もあり、その上スペインが舞台でフランコ総統の暗殺計画まで絡んでくる。このスペインの描写が良いんだよね。逢坂氏はスペイン通で有名だが、愛情のようなものまで感じさせてくれる。 逢坂氏お得意のどんでん返しもあり、読後『ぼーーっ』となったのを良く覚えている。本を読んで、あんなに感動したのは数少ないかも。書けば書くほど嘘臭くなってくるが事実だからしようが無い。「結末をほにゃららして欲しかった」という感想を良く聞くがこれで良いのだ。 ハッピーエンドで終る話など飽き飽きしているのだから。
 

 
燃える地の果てに 初版1998年8月
あらすじ 最後の核爆弾一基が見つからない!スペイン上空で核を搭載中の米軍機が炎上、墜落した。 事実をひた隠して懸命の捜索を行う米軍。放射能汚染におびえる村人。ギタリスト古城邦秋を待ちうける虎口の数々…。 跳梁するスパイの狙いは?過去と現在、二つの物語が衝撃的に融合する。
 
感想 現在と過去が平行して進んで行き、過去と現在が交錯した時、大きな謎が明らかにされます。兎に角、読んだ当時は驚きました。厚い本ですが、ジェットコースターに乗せられたようで、最後まで一気に読まされました。オチも驚愕のラストというか掟破りなというか。これが逢坂氏の持ち味だし、得意技なんですが相変わらず”やられ”ました。 スペインを舞台にした作品は数多いのですが、その中でも一押しです。のどかな農村の、トマト畑に墜落した米軍機の場面と東西の駆け引きに鳥肌立ちました。出来としては『カディスの赤い星』に匹敵すると思います。この作品とカディスを読んで肌に合わない方は逢坂自体が合わないと言える位、秀作だと思うし、お気に入り作品です。
 

 
燃える蜃気楼
(EL ESPEJISMO ARDIENDO)
講談社 ハードカバー初版2003年10月15日
あらすじ 日米開戦。敵同士となった北都昭平とヴァジニアの前に一人の日系女性が現れる。幻惑される北都。嫉妬に狂うヴァジニア。二人の絶望的な愛のゆくえは―― 独ソ開戦以降、混迷の度合いを深める第二次大戦下のヨーロッパ。フランコ政権下のスペインは、枢軸側と連合国側の間を揺れ動く。 焦点は連合国の北アフリカ上陸作戦。時期は、そして場所は?裏の裏、そのまた裏をかくスパイたちの死闘は白熱する。

 
感想  本作『燃える蜃気楼』は作者のライフワーク第三弾のスペイン物です。読みきり長編という形を採ってはいますが、第一作『イベリアの雷鳴』と第二作『遠ざかる祖国』をお読みでない方には退屈な作品かもしれません。というかこのシリーズは連作長編とも言える作品なので単作での評価は難しい。間違っても途中からお読みにならないように。読むなら最初から手に取るしか楽しむ方法は無いと言えるほどです。 この作品は最初、ライフワーク三部作と銘打たれて出版されたのですが、本作を読んでみたらまだまだ続きそうなので驚きました。そしてもう一つ驚いた事は、もう二度と出て来ない筈のあの人のその後が出てきます。逢坂剛氏らしい仕掛けなのですがちょっとやり過ぎかも?。
物語の骨子は泥沼化する第二次世界大戦中の各国のスパイ合戦なのですが、本作は逢坂に珍しい(?)恋愛絡みもあります。逢坂の描く女性像はちょっと苦手なのですが・・・。
しかしこの作品の感想を書く事は苦しい。前二作に密接に繋がっているので書けばネタバレになるんですよねー。とりあえず文庫も出ている『イベリアの雷鳴』を読まれる事をお勧めします。第二次世界大戦に突入する前後の日本や真珠湾攻撃に至る過程に興味をお持ちの方には是非お勧めしたいシリーズです。



 
水中眼鏡の女 文春文庫 初版:1990年2月10日
あらすじ 精神科に勤める坪田医師のもとを、女性患者が訪れる。「目が見えないのです。光に当たると目が開かない」と言う。紺のスーツにゴーグルという、変わった姿で。。。 

 
感想 逢坂氏の作品をはじめて読んだのは「カディスの赤い星」だった。兎に角、巧いなぁ、すごいなぁという印象だった。その後、この短編集を読んで更に虜になった。冒険小説の作家だと思っていたから驚きも格別だったのだ。この作品は何の前知識も無く読んで欲しい。聞くと読後の喜びが減るだろう。この作品は、構成そのものに仕掛けが凝らされているので、書評など読まぬ方が良いのだ。1人称、3人称と交互に書かれているので、着目して読んでみると面白いだろう。逢坂は、短編も上手いんだよ♪。