ハリー ボッシュ シリーズ→
マイクル コナリー略歴&作品紹介 |
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作家名 | マイクル・コナリー(MICHAEL CONNELLY) |
生年月日 | 1956年 |
生誕地 | 米 フィラデルフィア |
処女作 | ナイト ホークス |
デビュー年 | 1992年 |
公式サイト | http://www.michaelconnelly.com/index.html |
ハリー・ボッシュ シリーズ |
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ナイトホークス (THE BLACK ECHO) |
扶桑社(上下巻) | 文庫初版1992年10月30日 |
あらすじ | ブラック・エコー。地下に張り巡るトンネルの暗闇の中、湿った空虚さの中にこだまする自分の息を兵士たちはこう呼んだ・・・。 パイプの中で死体で発見された、かつての戦友メドーズ。未だヴェトナム戦争の悪夢に悩まされ、眠れぬ夜を過ごす刑事ボッシュにとっては、20年前の悪夢が蘇る。事故死の処理に割り切れなさを感じ捜査を強行したボッシュ。だが、意外にもFBIが介入。メドーズは、未解決の銀行強盗事件の有力容疑者だった。孤独でタフな刑事の孤立無援の捜査と、哀しく意外な真相をクールに描く長編ハードボイルド。 |
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感想 | この本を初めて読んだのは今から11年前。当時は「まぁ、普通に面白い」程度の感想だったので、その後の作品を手に取る事はなかった。だが近作を読んでみると非常に面白かったので思い出す意味で読み返してみた。 でね・・・当時「面白いけれど普通だ」と評した理由が分かった。今のコナリーのように手馴れてない所為か、ちょっとスピード感が足りないのだよね。それと主人公がよくあるベトナム帰還兵上がりの警察官だし。その上、非常に地味な作品だ。地味な作品というか作風はコナリーの特徴でもあるのだが、この良さに限っては私自身が若かった為、理解出来なかったんだろうな。他者と一歩隔たった描写方はこのデビュー作でも感じられるし、新人作家でこれだけのモノを書けば御の字なのだろう。シリーズの主人公ハリー・ボッシュの初登場作品だし、他の作品を楽しむ為には要チェック作だと言えるだろう。第三作目の『ブラック・ハート』で出てくるドールメイカー事件についてもほんのちょっと触れられているので、ブラック・ハートを読む前には必読かも?。 ![]() ![]() |
ブラック・アイス (THE BLACK ICE) |
扶桑社文庫 | 文庫初版1994年 5月30日 |
あらすじ | モーテルで発見された麻薬課刑事ムーアの死体。殺人課のボッシュはなぜか捜査から外され、内務監査課が出動した。状況は汚職警官の自殺。しかし検屍の結果、自殺は偽装であることが判明。興味を持ったボッシュは密かに事件の裏を探る。新しい麻薬ブラック・アイスをめぐる麻薬組織の対立の構図を知ったボッシュは、鍵を握る麻薬王ソリージョと対決すべくメキシコへ…ハリウッド署のはぐれ刑事ボッシュの執念の捜査があばく事件の意外な真相。
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感想 | ハリー・ボッシュ シリーズ第二弾です。前作では主人公ボッシュがベトナム帰還兵であるがために抱える苦悩が描かれていましたが、本作ではボッシュの生い立ちの闇が明るみに出ます。全作を通して描かれるボッシュのトラウマは、ちょっとしつこいとは思うけれど作品に深みを与えているので見逃します。 左遷されたボッシュは上司に「検挙率を上げろ。大晦日までに犯人を挙げるんだ」と数件の未解決殺人事件の捜査を命令されます。で、その事件を調べていくうちに、ある殺人事件の被害者を発見したのが知人の刑事である事を知ります。その刑事に発見の模様を聴取しようとするのですが刑事は既に死んでいる。状況を見る限り自殺らしいのだが、不審な点が多い。刑事の死と殺人事件の繋がりを調べようとするボッシュは穏便に済ませたい上司に阻止される。が、一匹狼のボッシュは一人調査を続け麻薬組織と殺人事件の繋がりを見つけ・・・というストーリーです。数件の殺人事件と麻薬組織の暗躍が複雑に絡み合いラストではピースのパズルがはまる様に繋がっていく様はさすがマイクル・コナリーだなぁと感心しましたが、この主人公を好きになれない人には退屈かもしれません。事件と同時進行する主人公ボッシュの過去やトラウマが鼻に付く方もいらっしゃるかも。このシリーズは第一作を読んで合わない人にはお勧めしません。 ![]() ![]() |
ブラック・ハート (THE CONCRETE BLONDE) |
扶桑社(上下巻) | 文庫初版1995年9月30日 |
あらすじ | 11人もの女性をレイプして殺した挙げ句、死に顔に化粧を施すことから"ドールメイカー(人形造り師)"事件と呼ばれた殺人事件から4年―。犯人逮捕の際、ボッシュは容疑者を発砲、殺害したが、彼の妻が夫は無実だったとボッシュを告訴した。ところが裁判開始のその日の朝、警察に真犯人を名乗る男のメモが投入される。そして新たにコンクリート詰めにされたブロンド美女の死体が発見された。その手口はドールメイカー事件と全く同じもの。やはり真犯人は別にいたのか。 |
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感想 | ハリー・ボッシュ シリーズ第三作です。ハリーが左遷される原因になったドールメイカー事件から四年後、ハリーはドールメイカー事件の犯人の未亡人から訴えられ法廷に立つことになります。辣腕弁護士チャンドラーとの法廷での戦いはスリリングで面白いけれど、スピード感には欠けるかな。本作は洋物ミステリ特有の長さというかもたつきがあるので、初めてボッシュシリーズを読む方の入門書(?)としては適さないかもしれません。ですが、作者マイクル・コナリーのストーリー テラーぶりは発揮されています。裁判と同時進行する別(?)事件の方は非常に動きがあるし、どんでん返しもあるので上巻の後半からは一気読みできました。裁判で主人公の生い立ちの闇が明るみに出るのですが、このトラウマがシリーズ全般に深く係わってくるので読んで損は無い作品だとは思います。 本作には前作「ブラック・アイス」に出てきた女性が再登場します。コナリー作品の登場人物は色んな作品にクロスしてくるので、第一作目から読むのが最適なのかもしれません。 ![]() ![]() |
ラスト・コヨーテ (THE LAST COYOTE) |
扶桑社(上下巻) | 文庫初版1996年6月30日 |
あらすじ | ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。
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感想 | 本作はシリーズ第一作目からチョコチョコ描かれていた主人公ハリー・ボッシュの母親の死がメインテーマです。
だいっ嫌いな上司に暴行を働き、強制的に休職扱いになるボッシュは自分のトラウマの元を探ろうと決意する。で、30年以上前に死んだ母親を殺したのはいったい誰だったのかと調査を始めるボッシュですが、その調査が引き金となって一人、また一人と死人が出る・・・という展開です。相変わらず巧いなと思うのはプロット。必ずドンデン返しというか波があって最後まで一気読み出来ます。 ただこのシリーズは何時も『後ろ向き』なんですよね。第一作ではベトナムでの暗い記憶がメインだし、第二作も生い立ちの謎がメイン、第三作も過去の事件で裁かれるし、テーマが常に『過去』なんですよ。このまま過去を焦点にし続けるのは無理があるし、この先どういう方向に向かうのか非常に興味があります。ハードボイルドで主人公が暗い過去を背負うなんて良くある話だけれどこのシリーズほど徹底しているのも珍しいです。 このシリーズは主人公ボッシュを知る事で面白さが増すので第一作目から読まれる事をお勧めします。 ![]() ![]() |
トランク・ミュージック (TRUNK MUSIC) |
扶桑社文庫(上下巻) | 初版1998年6月30日 |
あらすじ | ハリー・ボッシュが帰ってきた!。ハリウッド・ボウルを真下に望む崖下の空き地に停められたロールスロイスのトランクに、男の射殺死体があった。「トランク・ミュージック」と呼ばれる、マフィアの手口だ。男の名はアントニー・N・アリーソ、映画のプロデューサーだ。どうやら、彼は犯罪組織の金を「洗濯する」仕事に関わっていたらしい。ボッシュは被害者が生前最後に訪れたラスヴェガスに飛ぶ。そこで彼が出会ったのは、あの『ナイトホークス』で別れた運命の女性、エレノア・ウィッシュだった。
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感想 | ハリー ボッシュ シリーズ五作目にして初めてボッシュの過去が関係しないストーリーです。前作を読後に『このシリーズは終わりが近いのかもしれぬ』と思ったのですが本作を読む限りまだまだ続きそうで一安心しました。シリーズ第一作で登場したエレノア・ウィッシュが再登場したり、新しい上司がいたりでファンには嬉しい展開でした。今まで『糞』のような上司に苦しめられていたボッシュですが本作で初めてまともな上司を向かえ、物語に暗さが無いというかテンポが良いというか・・・とにかくサクサク読了出来ます。 私は『わが心臓の痛み』から読み始め、マイクル・コナリーの著作を順番通りに読んでいないので感じるのですが、単発作品(シリーズ外)である『ザ・ポエット』辺りからコナリーの巧さに拍車が掛かったような気がします。本作のプロットも凝りに凝っていて、コナリー得意技のどんでん返しが何度もあり読み終わるのが勿体無いほどです。 シリーズの最初からヒロインがコロコロ変わるボッシュシリーズですがこの作品から展開が変わりそうです。書いちゃうとネタバレに繋がるので書けないけど驚きました。 ![]() ![]() |
堕天使は地獄へ飛ぶ (ANGELS FLIGHT) |
扶桑社 ソフトカバー | 初版2001年9月30日 |
あらすじ | 土曜日の夜、ロサンジェルスのダウンタウンにあるケーブルカー、"エンジェルズ・フライト"の頂上駅で惨殺死体が発見された。被害者の一人は黒人の女性、もう一人は、辣腕で知られる黒人の人権派弁護士ハワード・エライアスだった。市警察にとってエライアスは、長年にわたる宿敵ともいうべき苦手な人物だった。しかも、月曜の朝には市警察を相手とする訴訟が開始されることになっていた。恨みをもつ警官の犯行か?警察が扱いを間違えば、大規模な人種暴動が起こることは必至だ。現代アメリカの暗部を描いて比類なきコナリーがメインキャラクター「ハリー・ボッシュ」を擁して新境地を開いたシリーズ第六作、ここに登場。
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感想 | 本作はハリー ボッシュ シリーズ六作目です。前作『トランク・ミュージック』から一年後が舞台。前作の終わりで結婚していたボッシュですが、本作では既に離婚の危機に見舞われていて、やっぱハードボイルドの主人公が幸せだと書き難いのかなぁと何となく納得・・・。 ロドニー・キング事件に端を発したロス暴動以降の不穏な空気、マイノリティー(有色人種)と警察との確執などが事件の根底に流れていて興味深く読み進みました。人権弁護士が惨殺され犯人を捜す内に、警官の容疑者虐待問題や幼児虐待、インターネット犯罪など話しはどんどん別の方向に向かって行き、どんでん返しの連続!。さすがにコナリーは巧いなと唸りました。爆発寸前のロスを背景に描かれる現代アメリカの暗部は読み応えありです。 本作にはボッシュの前パートナーであるシーアンや、前作に出てきたFBI捜査官ロイ・リンデルが再登場します。ファンはこういうのが楽しいんだよね。 余談・・・マイクル・コナリーはハリー ボッシュ シリーズを12作まで書く予定らしい・・・。番外編である『夜より暗き闇』まで数に入れると既に8作品書いている訳だから(2004年8月現在)残り4作品・・・(涙)。 ![]() ![]() |
シティ・オブ・ボーンズ (CITY OF BONES) |
早川書房ハードカバー | 初版2002年12月31日 |
あらすじ | ハリウッドの丘陵地帯の奥深くで、人骨らしき遺物が発見される。一匹の犬がそれを咥えてきた時、隠されていた事件が明らかになった。警察の鑑定の結果、その骨は十二歳くらいの少年のもので、死亡時期は二十年近く前、死因は鈍器による頭部への殴打であることがわかった。ハリウッド署の刑事ハリー・ボッシュは、殺人事件として捜査にあたるが、手がかりは乏しく、捜査は遅々として進まない。だが、まもなく現場付近に住む逮捕歴のある小児性愛者の男が捜査線上に浮かび上がる。ボッシュは取り調べにあたるが、男の前歴が外部に漏れ、容疑者としてテレビ報道されてしまう。男は無実を訴え、不当な取り調べを糾弾する遺書を残し、自殺してしまった。有力容疑者の死亡という最悪の事態に、警察内部にはボッシュを早期に解雇せよとの不穏な空気が流れ始め、彼は窮地に立たされた。そんな時、ある女性から骨について新しい情報が入るが…。哀しき運命に翻弄された骨のため、ボッシュは刑事生命を賭けて事件の真相に迫る。 |
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感想 | 本作はハリー ボッシュ シリーズ7作目。凄く面白いのだけれど、非常に感想が書き難い作品だなぁ。主人公ハリー・ボッシュが大転機を迎えるのだが これについて書く訳にはいかないしなぁ。ネタバレは極刑だからな。 ボッシュが『飼い犬が人骨を咥えてきた』という通報を受けて事件の捜査に当たるのだが、その過程でボッシュの人間性が巧く描かれているので途中からこのシリーズを読んでみようと思われる方に本作は最適な作品かもしれない。猫が嫌いなんだけど見捨てて置けなくて餌を与えに行くボッシュにほろっときてしまった。(本当はシリーズ第一作の『ナイト・ホークス』から読むのが最適だけどね) 『トランク・ミュージック』でささやかな幸せを掴み、『堕天使は地獄へ飛ぶ』でまた孤独に舞い戻り、本作ではまたまた孤独の色を濃くするボッシュ。一体、このシリーズの行く先は何処へ落ち着くのだろうか?。しかしコナリーはシリーズ物を書くのが巧いな。どの作品にも主人公の転機があり飽きる事が無い。 番外編の『夜より暗き闇』を入れると既に8作品が上梓されているのでマイクル・コナリーの描くボッシュを読めるのも残り四作品・・・。 版元と訳者にお願い・・・訳者は古沢嘉通氏だ。非常に好みの訳者なのだが、もうちょっと仕事を減らしてコナリーの訳をさっさと終わらせてくれないもんだろうか?。本国では既に二作品が発表されているのに日本での発売は2005年らしい。それも予定は未定なのだそうな・・・。がるるるる。そんでもってね、版元がコロコロ変わるのは何で?。変わる度に初版が文庫だったりソフトカバーだったりハードカバーだったりでテンデばらばらなんだよね。最初は扶桑社→講談社→早川書房・・・で次の新作は講談社らしい。 ![]() ![]() |
暗く聖なる夜 (LOST LIGHT) |
講談社 文庫 | 初版2005年9月15日 |
あらすじ | ハリウッド署の刑事を退職し私立探偵となったボッシュには、どうしても心残りな未解決事件があった。ある若い女性の殺人と、その捜査中、目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。独自に捜査する事を決心した途端にかかる大きな圧力、妨害・・・。事件の裏にはいったい何が隠されているのか?。本作はハリー ボッシュ シリーズ8作目。 |
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感想 | 『トランクミュージック』『堕天使は地獄へ飛ぶ』『シティ・オブ・ボーンズ』と三作品連続でボッシュの過去が関係しないストーリーだったのですが、本作ではまたまた『過去』がテーマです(笑)。刑事を退職したボッシュをどうやって事件に関係させるのだろう?と思っていたのですが、コナリーはストーリーテラーですね。 刑事を退職してから一年後、未解決殺人事件の情報を入手するボッシュ。独自の調査に乗り出すボッシュは、ロス市警から『この事件に関わるな』という圧力を受ける。止めろと言われて余計に怪しむボッシュが更に調査を続けると、今度はFBIの妨害に遭う。若い女性が殺害されるという事件と200万ドル強奪事件、FBI捜査官の失踪に繋がりが見え、捜査を続行するボッシュは・・・というストーリーです。読んでいてね、『ザ・ポエット』っぽいな、何でだろう?と不思議に思っていたのですが、読後に意味が分かりました。そういえば本作も『ザ・ポエット』も一人称で書かれてますよ。ボッシュが刑事を辞め、一人でコツコツ捜査する民間人になった途端に書き方まで変えるコナリーは巧者だな。手法を変えた事によって、このシリーズ特有の『暗さ』が減っています。今までのボッシュ シリーズを苦手に思っていた方に是非とも読んで欲しいですね。あ、それと本作には準レギュラー化しているロイ・リンデルが登場します。ファンはこういうのが嬉しいのですよね。(結末で驚く事があるのですが、ここには書けないっ。ネタバレは極刑だからね) 管理人はコナリーのファンなので、彼が何故日本でブレークしないのかが、ずっと疑問なんですよね。で、考えたら・・・ボッシュ シリーズから薦めるから入り難いんじゃないだろうか?という結論に達しました(笑)。コナリーに初挑戦される方は本作『暗く聖なる夜』か『ザ・ポエット』か『我が心臓の痛み』から入られる事をお薦めします。ボッシュ シリーズは途中から読まれても充分楽しめる完成度ですので♪。 次作『THE NARROWS』の邦訳本は2006年初旬発売予定だそうです。版元サマ、古沢嘉通サマ、お願いです。予定は未定なんて言わないで、さっさと新刊を読ませて下さいませっ。 愚痴・・・解説者が林家正蔵氏ですよ。帯にも『林家正蔵師匠も絶賛』と書いてある・・・。ロバー●・B・●ーカーを絶賛する彼がコナリーを推薦したら、逆に売り上げが減るんじゃなかろうか?。もし、これがはじめて手に取る作家の本だったら、絶対に買ってませんね。 ![]() ![]() |
天使と罪の街 (THE NARROWS) |
講談社 文庫 | 初版2006年8月11日 |
あらすじ | 元・ロス市警刑事の私立探偵ボッシュは、仕事仲間だった友の不審死の真相究明のため調査を開始する。その頃ネヴァダ州の砂漠では多数の埋められた他殺体が見つかり、左遷中のFBI捜査官レイチェルが現地に召致された。これは連続猟奇殺人犯、"詩人(ポエット)"の仕業なのか?そしてボッシュが行き着いた先には……。
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感想 | 本作はハリー ボッシュ シリーズ9作目です。ボッシュ シリーズは12作で終了という噂があったのですが、とりあえず12作では終わらない模様で良かった良かった〜♪。が!本作を読んで何となく終わりに近付いている気がするのはワタクシだけでしょうか???。な〜んか嫌な予感がするんだよね。 で、感想の前に一言!。この作品を読むと『ザ・ポエット』の犯人が知れてしまいます。で、それだけでは終わらず『わが心臓の痛み』と『夜より暗き闇』の完結編ともいえる様な内容なのですよね。なので〜遠回りになりますが新刊を枕の下に収め『ザ・ポエット』『我が心臓の痛み』『夜より暗き闇』を出版順に読まれる事をお薦めします。どうしても待てないと仰る方でも『ザ・ポエット』だけは読まれた方が良いですよ〜。で感想ですが何を書いてもネタバレになるので伏字にします(笑)。 *もうね、読み始めた途端ショックを受けました。だってね〜〜〜大好きな登場人物であるマッケイレヴが死んでるんですよっ(怒。ワタクシはマッケイレヴが主人公の単発作品を楽しみにしていて、続編が出ないかなぁ〜と願っていたのですよね。それがダメなら脇役でも良いからボッシュシリーズに出てこないかなぁ〜なんて夢想していたのですが・・・よもや死人で登場とは無念です(ガックシ)。ですが、この潔さがコナリーの自信の表れなのでしょうね。映画にまでなった人気キャラクターをあっさりと殺しても、プロットには困らないさ〜って感じに見えますね(笑)。しっかし、巧いなと思ったのは犯人逮捕シーンをあえて書かなかった『ザ・ポエット』と、何となく準レギュラー化していたマッケイレヴを同時に始末(?)するのをボッシュにやらせるってのは巧い手ですよね。それにあのラストのどんでん返しが良いじゃないですか!。マッケイレヴが簡単に詩人に殺されたと思うと癪で仕方が無かったけどラストで救われた気がしました(笑)。ただ気になるのはコナリーが作品と登場人物の整理を始めたんじゃないか?って思わせること。新シリーズを始めるのなら良いけどもボッシュ シリーズを終わらせる気じゃないでしょうね???。作者に『ボッシュを殺すな』と脅迫状でも書こうか?(笑)* ↑既読の方は*〜*までをコピペされると読めますので♪ネタバレしておりますので未読の方はご注意下さい。 |
終決者たち (CLOSERS) |
講談社文庫 | 初版2007年9月14日 |
あらすじ | 3年間の私立探偵稼業を経てロス市警へ復職したボッシュ。エリート部署である未解決事件班に配属された彼は、17年前に起きた少女殺人事件の再捜査にあたる。調べを進めるうち、当時の市警上層部からの圧力で迷宮入りとなっていた事実が判明。意外な背後関係を見せる難事件にボッシュはどう立ち向かうのか。 |
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感想 | この作品は正統派警察小説です。で、驚いたのはストーリーテラーのコナリー作品にしては珍しく、本作には余分な脇道が一切無いのですよね。ボッシュの恋愛も、子供も、同時進行する事件も描かれてはおりません。ボッシュはただひたすら過去に書かれた殺人調書を紐解き、過去の事件現場を現代に蘇らせ、そして現在の科学捜査をもってして事件解決に当たる、ただそれだけが描かれています。ただ、地味に淡々と捜査するボッシュが描かれているのに、なぜか全編に哀しみが漂っているんですよね。哀しみというのは17年前に娘を殺された両親の哀しみなんだけど、それが痛いほど伝わってきて、その哀しみに突き動かされるように捜査を進めるボッシュまでが哀しげに見えるというか。ボッシュ自身が殺人事件の被害者だからなんだろうけど(詳しくは『ラスト・コヨーテ』で)使命感に突き動かされているというか、どこまで行っても母の死の影を引き摺っているように見えるボッシュが哀れでもあります。そして、驚愕のラスト。コナリーは巧いですね。最後の一行まで気を抜けない展開を描き続けるのは並大抵じゃないですよ(笑)。個人的感想ですが『堕天使は地獄へ飛ぶ』と並ぶほど作品としての出来は良いと思います。警察小説としてみるなら『終決者たち』の方が勝っているんじゃないかなぁ〜。 Mr.clean(謎)が本作でゴニョゴニョするのですが、次作からボッシュの目の上のたんこぶが誰になるのか興味津々です(笑)。まさかこのままフィナーレを迎えるわけじゃないですよね?。嫌な予感がするんだけど〜シリーズの存続だけを願ってます。 |
単発作品(シリーズ外) |
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ザ・ポエット (THE POET) |
扶桑社(上下巻) | 文庫初版1997年10月30日 |
あらすじ | デンヴァー市警察殺人課の刑事ショーン・マカヴォイが変死した。自殺とされた兄の死に疑問を抱いた双子の弟で新聞記者であるジャックは、最近全米各所で同様に殺人課の刑事が変死していることをつきとめる。FBIは謎の連続殺人犯を「詩人」(ザ・ポエット)と名付けた。犯人は、現場にかならず文豪エドガー・アラン・ポオの詩の一節を書き残していたからだ。FBIに同行を許されたジャックは、捜査官たちとともに正体不明の犯人を追う…。
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感想 | 楽しめました!。最初の50pくらいはモタモタするのですがそれ以降はスピード感がありサクサク読み進めました。一人称で書かれているので不思議な感じがしましたが、読み終わって納得しました。一人称を用いた意味は後半部を読まれればお分かり頂けると思います。それにマイクル・コナリー自身が新聞記者だったという経験があるお陰か主人公の描写が細やかで、なんだか楽しんで書いたんじゃないか?と思うほどです。 この作品はシリーズ外の単発作品なのですが他の単発作品である『わが心臓の痛み』『夜より暗き闇』でちょっと触れられているので、出来るならこの『ザ・ポエット』を先に読まれる事をお勧めします。 主人公は地方紙の新聞記者。彼には双子の兄(殺人課刑事)がいたのですが車の中で自殺してしまう。その死に疑問を抱いた弟は調査を始め事件に巻き込まれていくという在り来たりのストーリーなのですが、ここからが二転、三転し身悶え致しました。多少『そりゃ無いだろ?』と突っ込みたい部分もありますがこれだけ楽しめれば十分!。マイクル・コナリーってこんなにストーリー・テラーだったっけなぁと嬉しい誤算でした。私はハリー・ボッシュシリーズよりも単発作品の方が好みなのかもしれません。 ![]() ![]() |
わが心臓の痛み (BLOOD WORK) |
扶桑社 | ソフトカバー初版2000年4月30日 |
あらすじ | 連続殺人犯担当だったFBI捜査官テリー・マッケイレブ。心筋症を患っていた彼は心臓移植を受け、早期引退していた。病院から退院した彼のもとにある女性が現れる。その女性グラシエラによると、いまマッケイレブの胸のなかで動いている心臓はコンビニ強盗に遭遇して絶命した彼女の妹グロリアのものだという…。因縁の糸に導かれ、事件の解決にのめり込んでいくマッケイレブが到達した真相とは?・・・。
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感想 | 今から10年位前にこの作家の本を読んだ時は「まぁ普通に面白い」くらいの感想だった。この頃にはハードボイルドも読んでいたのだけれど、マクベインや二人のマクドナルド等の古臭い(?)ハードボイルドが好みだったのでコナリーにピンと来なかったのだよね。で、本作は単発物だと知りもう一度読んでみようかと手に取ったのだが・・・面白かったのだよね!!!。 主人公は心臓移植を受けたばかりの元FBI捜査官。この元捜査官が自分に心臓をくれた女性の姉に「妹は強盗に殺された。犯人を捜して」と頼まれ動き始める。元FBI捜査官だけあって随所に科学捜査の手法も出てくる。好みなのだよっ。探偵役の主人公が臓器移植しているなんて珍しいしね。 本作の作風はネオ ハードボイルドだがミステリ色が濃いのでハードボイルドが苦手な方にもお奨め出来る作品だと思う。(本作はボッシュ シリーズ程ハードボイルド色が濃くないように思う)そしてコナリーはストーリーテラーだと再認識させられた。初期よりもかなり巧くなっているのだろうな。人物造詣も巧いし、謎も多いし、主人公が犯人に迫っていく過程が面白く、一度も本を閉じる事無く読了できた。 この主人公が出てくる作品がもう一度読みたくて検索してみたらなんとハリー・ボッシュ(他シリーズの主人公)と『夜より暗き闇』で競演しているそうだ。読みたいと思ったら我慢できないので早速購入した♪。 ![]() ![]() |
夜より暗き闇 (A DARKNESS MORE THAN NIGHT) |
講談社(上下巻) | 文庫初版2003年7月15日 |
あらすじ | 心臓病で引退した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブは、旧知の女性刑事から捜査協力の依頼を受ける。殺人の現場に残された言葉から、犯行は連続すると悟ったテリーは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュ刑事を訪ねる。だが、ボッシュは別の殺しの証人として全米が注視する裁判の渦中にあった――。 |
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感想 | 本作の感想は前作の『わが心臓の痛み』を読まれていない方は読まないで下さい。 本作は前作に登場した元FBI捜査官マッケイレブとボッシュ シリーズのハリー ボッシュの競演だ。前作『わが心臓の痛み』の三年後が描かれている。 マッケイエブは前作で知り合った女性と結婚し彼女の甥も養子に迎え幸せに暮らしているのだが、かつての同僚のウインストンにある殺人犯のプロファイルを依頼される。幸せな生活を営みつつも心の奥底に病気でFBIを辞さねばならなかった悔しさ、切なさを抱いていた彼は妻を説得して捜査にのめり込む。大ハリキリで捜査するマッケイエブはかつての仕事仲間のハリー ボッシュとも再会を果たす。そのハリーはハリウッドで起きた殺人事件の証人として法廷に立っていた。有名映画監督が被告人なのでマスコミ注視の的だ。一方マッケイエブはプロファイリングを進めていく過程で出てきた事柄を考え合わせ、犯人はハリーではないかという疑いを抱く。もしハリーが犯人なら現在進行形の裁判にも影響を及ぼすだろう・・・というストーリーだ。処女作以来コナリーの作品を読んでいなかったのだが、この作家がアメリカで非常に人気が高い理由が今は頷ける。描写が細やかでプロットも巧みなので、派手さは無いけれどよく出来た作品なのだよね。登場人物も他の著作と密接に繋がっているので「おっ。こいつ また出てきたぞ」とファンは喜んでしまう。この登場人物がクロスする手法はリチャード・N・パタースンも良く使うが、両作家とも固定ファンが多いのはこの手法によるところが大きいのかもだな。とにかく楽しめる作品だが、前作を読んでからの方が二倍楽しめるだろう。 余談・・・本作の解説を五條瑛氏が書かれているのだが・・・本当に読んだのだろうか?と首を傾げる箇所がある。版元さん!チェックくらいしようよ。 ![]() ![]() |
バッドラック・ムーン (VOID MOON) |
講談社文庫 | 初版2001年8月15日 |
あらすじ | キャシーは仮釈放中の元窃盗犯。現在は優秀な自動車販売員として働いているが、ある目的のために昔の仲間レオからの仕事を受ける。カモはプロのギャンブラー。計画は順調に進むかのように見えたが、ある出来事から歯車が狂い始めた。そのとき空には「不吉な月」が……。 |
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感想 | 仮釈放中のキャシーはある目的の為にもう一度やばい山を踏もうと決意し、ホテルの一室に盗みに入り成功する。だが、命がけで盗んだ大金はマフィアがらみのヤバい金だった。追っ手は人殺しでも何でも請け負う裏の顔を持つ探偵カーチ。関係者四人が惨殺されついに魔手はキャシーの最愛の●●に及ぶ・・・というストーリーです。 トランク・ミュージックに出てきた刑事やマフィアの名が出てくるのでニヤリとする箇所もありましたが、期待したほどには楽しめませんでした。好みの問題だと思います。どうしても探偵や刑事が主人公の作品をコナリーには期待してしまうので、女泥棒が主人公というシチュエーション自体がそぐわないというか馴染めない。さすがコナリーだなぁと思う部分も多いのでボッシュシリーズや他の短編を読まれた事のない方だったら楽しめたと思います。 本作の訳者が今までのコナリー訳者と違うので違和感がありました。例えばチップの事を『ティップ』(心づけのTipの事)、オーバーオールの事を『オーヴァーオール』と訳されるのですよね・・・。ボルボは『ヴォルヴォ』。 正確な発音に近づけたいという気持ちは分かるのですが非常に読みにくい。カタカナの訳は全部がこんな感じで『ォ』『ィ』『ェ』『ヴ』が多いんですよ。講談社さん・・・何とかしてくれっ。 ![]() ![]() |
チェイシング・リリー (CHASING THE DIME) |
早川書房 ハードカバー | ハード初版2003年9月10日 |
あらすじ | 『リリーはどこだ?』 ナノテク学者ピアスの自宅に男たちから熱狂的な電話が次々と掛かってきた。ピアスはその女に会った事さえなく、明らかに間違い電話だった。しかし、リリーが評判の娼婦だと知るに及び、ピアスは彼女についてインターネット上で調べ始めた。肩に届く黒髪、ブラウンの瞳、深い褐色の肌。。粗い目のネットで出来た黒いネグリジェで胸を包み、褐色の股間のラインと尖らせた唇で男を誘う。淫らな美神がそこにいた。リリーに惹かれたピアスはホームページの管理会社を訪ね、彼女が失踪している事実を知る。その直後、リリーを捜す彼の元に脅迫が・・・。 ↓これより下記はかなり突っ込んで書いているのでご注意下さいっ。 |
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感想 | 本作はハリー・ボッシュ シリーズではありませんが非常に愉しめました。今度の主人公のナノテク学者ピアスは『ナイトホークス』『ブラック・ハート』で触れられている「ドール・メイカー事件」の被害者の弟さんです。なので最低でも『ブラック・ハート』を先に読まれた方が良いかもです。『シティ・オブ・ボーンズ』のネタバレ(ハリー・ボッシュについて)も書かれているので、そちらを先に読まれた方が良いかもです(笑)。 主人公ヘンリー・ピアスは若くして才能を認められた天才科学者。ピアスの専門はナノテクで、ある特許を餌に大口投資家との契約を結ぼうとしている所だった。賞賛と巨額の富を生む大チャンスを掴んでいるのに、自宅にかかってくる間違い電話から事件に巻き込まれ・・・というストーリーです。 会社の一大事だというのに仕事をほったらかし娼婦の行方を探る主人公ピアスがどうにも好きになれないけれど、物語としては非常に愉しめました。ただの間違い電話がきっかけで見ず知らずの娼婦を捜すその理由はピアスの姉が原因なんですよね。1988年に連続殺人鬼ドール・メイカーに姉を殺された主人公は姉を助けられなかったという後悔&トラウマを抱いているワケです。で、止めておけば良いのに調査を続けて行き危険に巻き込まれるのですが、さすがコナリーだと読後は大満足。どちらかというとコナリーらしくない作品のように見えますが結末はやっぱりコナリー節が炸裂ですよ(笑)。ただの娼婦失踪事件では終わりません♪。それと本作にはスピード感があるのですよね。いつも思うのだけどシリーズ外作品は、ボッシュシリーズにある暗さが無い。だからスピードを感じるのかもです。文中でハリー・ボッシュについての記述があったり、主人公をハリー・ボッシュが手掛けた事件の被害者の弟にするとかファンサービスもあるし読みながらニヤニヤ致しました。 ネタバレしないように曖昧に書こうとするとワケワカラン感想になってしまい・・・(汗。 ドールメイカー事件とは?・・・11人もの女性をレイプして殺した挙げ句、死に顔に化粧を施すことから"ドールメイカー(人形造り師)"事件と呼ばれた殺人事件の事。マイクル・コナリー著のボッシュ シリーズでハリー・ボッシュが解決した事件。 |
リンカーン弁護士 (THE LINCOLN LAWYER) |
講談社 文庫上下巻 | 初版2009年6月12日 |
あらすじ | 高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが…。リーガル・サスペンス。
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感想 | 今までのハリー・ボッシュ物でも裁判シーンは数多く出てきていて、コナリーはリーガル物も書けそうだなと思ってはいたんですけど、実際に書かれたものを読んでみて驚きました。良くあるリーガル物の王道を行ってはいませんが、コナリー色の濃いリーガル物に仕上がっていて、他のリーガル物にはない味があります。それに、主人公のミッキー・ハラー弁護士は、ボッシュ物でちょっとだけ触れられている人物でもあるんですよね。なので、待ちに待った謎の人物の登場で、大変に楽しんで読めました。この作品は単発物にしては珍しく次作も発表されていて、その作品ではボッシュと共演しているそうなので先が楽しみです。出来で言うならマッケイレヴ物と並ぶ出来なので、これ以降の感想も読まずに手にとられることをお勧めしたいと思います。で、物語はというと・・・ 大型高級車リンカーンの中でも最高級モデルであるリンカーン・タウンカーの後部座席を事務所代わりにして、1万平方キロに及ぶ広大なカリフォルニア州ロサンゼルス郡に点在する40箇所に近い裁判所を縦横に行き来し、弁護報酬を稼ぐのが刑事弁護士ミッキー・ハラー。弁護士本人と秘書兼電話番と格安で雇った運転手以外のスタッフはいない零細弁護士事務所にオフィスは必要ないのだ。二度結婚して二度離婚、幼い娘がいるので養育費も払っている。その上、高価な車のローンに家のローンも抱えているので依頼人を選ばず稼ぐ必要があるのだ。そんなハラーにうまい話が転がり込む。金持ち相手の不動産会社を営む女性が溺愛する一人息子が、商売女への暴行容疑で逮捕され、その弁護をハラーが行うことになったのだ。だが、多額の報酬を生む依頼人には裏があり、ハラーの弁護士生命ばかりか命まで・・・という展開です。四の五の言わずに読めっ!買え!と自信を持ってお勧めできる作品です(笑)。 |