テキサスは眠れない/かもめの叫びは聞こえない


メアリ=アン・T・スミス(Mary-Ann Tirone Smith)作家略歴&著作の感想
作家名 メアリ=アン・T・スミス(Mary-Ann Tirone Smith)
生年月日 ???年(1965年に大学卒業らしい)
生誕地  米国
処女作  The Book of Phoebe (1986)
デビュー年 1986年
公式サイト

作家略歴

 イタリア系とフランス系移民の子供としてアメリカで生まれる。1965年大学を卒業後、平和部隊に参加し、カメルーンで公立図書館の設立にたずさわる。1985年に“The Book of Phobe”を発表、作家としてのキャリアをスタートさせた。1998年の『殺人を綴る女』(新潮社)でミステリの分野に初挑戦、2002年にはFBI特別捜査官ポピー・シリーズの第1作となる『テキサスは眠れない』(ヴィレッジブックス)を発表し、ジャネット・イヴァノヴィッチやサラ・パレツキーの後継者として注目を浴びる 。
Series Poppy Rice Mystery(FBI捜査官ポピー・ライスシリーズ)
1. Love Her Madly (2002)『テキサスは眠れない』
2. She's Not There (2003)『かもめの叫びは聞こえない』
3. She Smiled Sweetly (2004)

Other Novels(シリーズ外単発作品)
The Book of Phoebe (1986)
Lament for a Silver-Eyed Woman (1987)
The Port of the Missing Men (1989)
Masters of Illusion (1994)
An American Killing (1998)『殺人を綴る女』
Dirty Water: A Red Sox Mystery (2008) (with Jere Smith)

Non fiction
Girls of Tender Age (2005)


テキサスは眠れない
(Love Her Madly)
ヴィレッジブックス文庫 初版2002年12月20日
あらすじ  「あたくしは人の命を奪いました」―死刑執行まであと10日に迫ったロナ=リーは、マスコミのインタビューに聖女の微笑みを浮かべて答えていた。17年前「斧があの女をぶった切るたびに、はじけちゃった」と笑いながら人を殺した女性とはとても思えない。彼女はほんとうにそのような凄惨な殺人をやってのけたのだろうか?どこか不自然なところを感じたFBIの女性捜査官ポピーは、現地テキサスへと飛び、事件の再調査を開始する。鋭い推理とタフな捜査で知られるポピーだが、限られた時間のなかで、真実を探り出せるのか?。

 
感想  先に『かもめの叫びは聞こえない』を読み終わっていて、だもんで出版順に読んでいないわけですが、『かもめ〜』より、こちらの『テキサス〜』の方が読み応えがありました。というのも、ミステリ以外に政治的な内容も描かれているからだったのですが〜で、物語の内容はというと。
科学捜査研究所の所長として辣腕を揮い、研究所の大刷新を終えた時点で現場への復帰を願い出、今は特別捜査官として活躍するポピー・ライス。彼女がいつものように眠れない夜に(主人公は不眠症)、ニュース番組のインタビューを観た事により物語は始まる。番組内でインタビューされていたのはロナ・リーという元売春婦の死刑囚で、17年前に若い男女を斧で惨殺した罪で10日後に処刑が迫っているのだ。彼女は天使のような風貌を持った華奢な女性で、獄中でキリストを知り改悛し生まれ変わったと公言している。お陰(?)で、国内外のキリスト教関係者のみならず、全米の死刑反対派からの嘆願の声が高まっていた。このインタヴューを観て主人公の胸には、この女性が本当に犯人だったのかという疑問が浮かび上がる。彼女はすぐさまFBI長官に直訴し、テキサスへ飛び事件の再捜査を開始するが・・・という展開です。斧を振るったにしてはあまりに細い手首を持つロナに、本当に彼女に二人も殺せたのか?という疑問を持った事から主人公が事件にかかわって行くのですが、物語の随所にテキサス流ともいうべき他州との価値観の差や習慣の差が描かれていて、それがとても楽しかったのですよね。テキサス州はアメリカでも死刑判決数、執行数ともに格段に突出した州なんだそうで、この物語に出てくる州知事も「死刑囚を死刑してなにが悪い?」ってな風に描かれておりましてハラハラドキドキの展開なんですよね。(この人、もろブッシュさんなんだろうなと思わせるのですよね)ロナは真犯人なのか?それとも?というミステリなんだけども、同時にテキサスという州の特異性も描かれていて、謎解き以外の部分も楽しめた作品でした。テキサスって敬虔なキリスト教徒が多い州でありながら、死刑容認派が圧倒的多数を占めるのだそうで〜冤罪に対する懸念から死刑制度自体が消えて行っている中、こういう州も残っているんだというのが面白いですね。そんで、その州出身のブッシュがあんな風だったのも頷けるなぁ〜っと(笑)。ミステリの面白さってこういうのも描かれるから、でしょうか。 作家名INDEXホームへ戻る



かもめの叫びは聞こえない
(She's Not There)
ヴィレッジブックス文庫 初版2005年11月20日
あらすじ  FBIの切れ者捜査官ポピーは、難事件を解決したごほうび休暇を、かもめがたわむれる風光明媚な島で過ごすことにした。だが着いてすぐ、島で奇妙な死体を見つけてしまう。ほぼ全裸で、奇妙にねじくれた死体を…。島の警察はあてにならない。ポピーはやむなく捜査の手伝いを申し出る。被害者は島で開かれていた肥満少女のためのダイエット・キャンプの参加者だとわかり警告を発したとたん、キャンプの少女が相次いで同じく奇怪な死体となって発見される。その死因は想像を絶するものだった!ポピーはひとくせもふたくせもある島の住人達を相手に、捜査を進めるが…。

 
感想  題名が怪しい感じだったのですが(?)わりと楽しめました。で、物語はというと・・・FBIのやり手捜査官ポピー・ライスは、前作での活躍のご褒美休暇をロードアイランド州南にあるブロック島で過ごしていた。風光明媚な島は8時間もあれば徒歩で一周出来る小ささなのだが、その島にポピーが着いてすぐ、肥満した少女の奇怪な死体を見つけてしまう。死体はほぼ全裸で、体中の筋肉という筋肉が痙攣を起こし奇妙に捻じれ、見るも無残な歪んだ顔をしていた。島に常駐している警官はアル中で役に立ちそうにないので、ポピーはやむなく捜査の手伝いを申し出る。被害者は島で開かれていた肥満少女のためのダイエットキャンプの参加者だと分り、ポピーはキャンプの即刻解散を警告するが、第二第三の殺人事件が・・・という展開です。
フェリーに乗って日帰りでやって来る観光客以外は、全島民が顔見知りという閉鎖的な島で連続殺人事件が起こるんだけど、警察は、少女が薬物を過量摂取したことによる中毒死で片付けようとするんですよね。で、FBI長官と直に話し事件への介入を要望できるほど大物のポピーの尽力により、少女は薬物での事故死ではなく殺人事件と判明するんだけども、殺人の方法さえも定かではない状態で犯人探しは難航・・・という物語なんだけど、設定がね・・・。この主人公のFBI捜査官ってのがかなりの権力者なんですよね。そんでもってFBI長官とツーカーの仲(古い?)だもんで、いとも簡単に事件に介入出来、ささっと事件を解決っていう設定自体が、鼻につく方もいらっしゃるかも。



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