ぼくを忘れたスパイ


キース・トムスン(Keith Thomson)作家略歴&著作の感想
作家名 キース・トムスン(Keith Thomson)
生年月日 ???年
生誕地  ???
処女作  ???
デビュー年 ???年
公式サイト http://keiththomsonbooks.com/

作家略歴

 フランスでセミプロの野球選手、ニューズデイ紙の漫画家、映画監督、脚本家など様々な職を経て作家になる。ニュース・ウェブサイト“ハフィントン・ポスト”で謀報に関する記事も書いている。米国アラバマ州在住。

判る範囲で著作リスト
1.Once a Spy (2010)『ぼくを忘れたスパイ(上下)』
2.Twice a Spy (2011)


ぼくを忘れたスパイ
(Once a Spy)
新潮社文庫上下巻 初版2010年10月1日
あらすじ  父がスパイだった?。それも辣腕?。競馬狂いで借金まみれのチャーリーは、金目当てで認知症の父を引き取ってから次々と奇怪な出来事に見舞われる。尾行、誘拐未遂、自宅爆破に謎の殺し屋の出現。あげく殺人犯に仕立てられ逃げ回る羽目に…。父は普通の営業マンではなかった?疑念は募る。普段のアルツハイマーの気配も見せす、鮮やかに危機を切り抜ける父の姿を見るたびに―。

 
感想  いやぁ〜〜楽しめました。久々に、何にも考えないで読めて笑えて悶える(?)痛快スパイ小説に出逢えて幸せです(笑)。スティーブ・ホッケンスミス著『荒野のホームズ』を読んだ時にも思ったのですが、物語の何が良かったかというと、やっぱり発想の妙というか着眼点が良かった、これに尽きるんだと思います。"もしも、国の安全に関わる内部情報を知り尽くした敏腕スパイがボケて徘徊し始めたらどうなるか?"という着眼点だけで、この作品の勝利は決まったのだと思います。で、物語はどう始まるのかというと・・・。
 主人公のチャーリーは競馬狂いで借金まみれの20代半ばの男。いつか大穴を当てて借金を清算出来ると信じ、競馬にのめり込んでいるのだが、ロシア・ギャングに金を借り てしまい、今すぐ返済しなければ命が危ない状況にまで追い込まれている。そんな進退極まった彼にソーシャルワーカーから電話が入り、彼の父親ドラモンドがパジャマで街を徘徊していて保護されたという報が入る。父親はアルツハイマーを発症していたのだ。小さい頃から出張がちだった父親とは親密でないチャーリーだが、金目当てで父親に手を貸そうとする。が、父親はボケと普通を行ったり来たりするのでホームに入る相談など出来そうにない状態。だもんで、そんな父親をとりあえず家に連れて帰ろうと、チャーリーは 父親の家に向かうが、家から謎のガス会社の男が出てくるのを発見。呼んでもないのに家に勝手に入るなんてと後を追うが、ガス会社の男は通りから忽然と姿を消す。ほんで、おかしいなと思いつつ家に入るとガス爆発で家は吹っ飛び、死は確実!と思ったその時、ドラモンドは機転を利かせチャーリーを抱いて二階の窓からダイブし、二人は九死に一生を得る。が、この直後。ガス会社を訴えるなら手を貸すという弁護士と名乗る男が現われチャーリーが対処しようとすると、男がなぜかいきなりサイレンサー付きの銃を取り出し発砲しようとする。洗濯機のセールスマンを長く続けてきたはずの父親はニセ弁護士に殴りかかり、銃を奪い取り応戦。気付いた時にはチャーリーと父親は銃撃戦の真っただ中・・・という物語です。
ドラモンドは超一流のスパイで、現役中は世界中を飛び回っていたのですよね。母親を幼くして亡くしていた息子には、父親は3流家電メーカーの宣伝マンだと偽っていたので、チャーリーは”父親は洗濯機如きのセールスに忙しくて、自分は放っておかれている”と恨んでいたわけです。だもんで、父一人子一人なのに二人の間には深い溝が出来てしまっていたのですよね。父親がボケたと聞いた息子は金が手に入るってんで、父親を引き取るんだけど、ドラモンドがボケてしまった事から、ドラモンドを抹殺して情報を保持しようとする複数の組織が動き出していたんですよね。ところがボケているはずのドラモンドは、息子が一緒にいるもんだから息子を守る為、息子に危機が迫った時だけ正気に戻るんですよね。次から次へと迫りくる危機を、かつて培ったスパイの技能(?)で乗り越えて行くドラモンドは最高に格好良かったです。親子の間にあった深い溝も、力を合わせて危機を乗り越えて行くうちに次第に薄れて行くんだけど〜この辺りは実際に読んでホノボノして貰いたいと思います。今年読んだ本のベスト5に必ず入ります。『黙って読め』と言って終わりたいと思います。
 次作の『Twice a Spy (2011)』の邦訳を楽しみに待ちたいと思います。



作家名INDEXホームへ戻る