ケン・ブルーウン(KEN BRUEN)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | ケン・ブルーウン(KEN BRUEN) *新潮社はブルーエンと表記 |
生年月日 | 1951年 |
生誕地 | アイルランド ゴールウェイ |
処女作 | 『FUNERAL』 |
デビュー年 | 1992年 |
公式サイト | http://www.kenbruen.com/ |
酔いどれに悪人なし (THE GURDS) |
早川書房 文庫 | 初版2005年1月20日 |
あらすじ | 酒のせいで警察を辞職する羽目になったジャックは日々行きつけの店で飲んだくれ、飲まないときは読書をするか、前職を活かした探偵業にいそしんでいた。ある日、いつものように飲んでいると、美しい女が自殺した娘の死の真相を調べてほしいと頼んできた。望みの薄そうな調査に始めはいやいやだったジャックだが、ある事件をきっかけに負けじ魂に火がつく。
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感想 | この作家、文章が下手なのでしょうか?。それとも狙っての事なのでしょうか?。というのは、文章がですね、物凄く短いのですよ。文章中にほとんど接続助詞が使われておりません(笑)。ふと思いついて中に入ってみた。フロントは中に押し込まれていた。年配の女性がアイルランズオウンという雑誌をめくっていた。←全体的にこんな感じの短い切れ切れの文章が続きます。なので、慣れるまでは非常に読み難かったです。それと、↑の粗筋を読むと探偵小説なんだろうと誰でもが思われると思いますが〜探偵小説ではあるんだけど、本作を普通の探偵小説だと思って手にとられた方は激怒されるかもです。謎解きらしいものは無いし、探偵が主人公なのに調査する場面は殆どありません。なので、普通小説と思って読まれた方が賢明と思われます(汗。 で、感想。ストーリーはそう目新しいものじゃありませんが、この主人公が人間臭くてなんか良いのですよね〜(笑)。ワタクシ自身、酒が大好きで、休肝日に酒を抜く寂しさとか苦しさとかが分かるもんだから、アルコール依存症と必死で戦おうとするけど誓いに負けて呑んでしまう主人公に感情移入してしまうダケかもしれませんがね(笑)。それと、文章が短いことに利点もありました。それは、二時間掛からずに読み終えられること(456ページあるのに!笑)。訳者さんのせいなのかは分かりませんが、漢字が異様に少ないのですよね。なので実際の内容は半分のページ数しかないのかも?。 ![]() ![]() |
酔いどれ故郷にかえる (THE KILLING OF THE TINKERS) |
早川書房 文庫 | 初版2005年5月10日 |
あらすじ | 酒のせいで親友を亡くし、アイルランドを離れていた私立探偵ジャックが帰郷した。着いた足で向かったパブで友人がパーティを開いてくれた。が、幸せ気分も束の間、そこで知り合った男から連続シプシー殺しの犯人をみつけてくれと頼まれる。警察はジプシー同士の抗争と見て動かない。酒に冒されたジャックの脳裡に愛する犯罪小説のフレーズがよぎり、調査を引き受けたものの…。
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感想 | 前作を読んで『この作家変わっているな』と思ったのですが、妙に気になってもう一作読んでみることに(笑)。ストーリーは前回と同様で探偵小説らしくありません。探偵小説と聞けば、普通は依頼人が現れ探偵に仕事を依頼し、引き受けた探偵が結果を出し終わるってのが常道なんでしょうが、この作品はそういう展開を迎えません。主人公は探偵で仕事も引き受けるんですが、調査は殆どせず、呑むか本を読むか女を口説いているかなのですよね。で、仕事は殆どしないのに、なぜかラスト近くでは犯人らしき人物が分かってしまうという稀有な(?)能力を持っているのです。探偵が歩き回って事件を解決するというような物語を期待されている方には鬼門な作品ですのでご注意下さい(笑)。 で、前作を読んで気になっていた文章について。この作家の細切れの文章は本作でも顕在でした(笑)。この作家、狙ってこういう文を書いているのでしょうね?。接続詞、接続助詞が殆ど無い、プロの作家の文章ってのは稀で面白いですよ!。というか、この作家の文章は日本語には向かない気がします。これ、英語ならキレがあって迫力のある文体なのでしょうが、日本語で書かれると馬鹿にされているのかと思えるほど違和感がある。この辺りは読み手の好みなんでしょうけどね。癖が強い作品(作家)なので、他人にお薦めは出来ませんが、この不思議な文体は、一度読んでみる価値があるかも?!ですぞ。短時間で読み終えられる作品ですので♪(暗に漢字が少なすぎると言っている管理人(笑))。 ![]() ![]() |
アメリカン・スキン (AMERIKAN SKIN) |
早川書房文庫 | 初版2008年1月25日 |
あらすじ | 銀行から不正な手段で大金を手に入れたスティーヴは、生まれ故郷のアイルランドを独り発った。愛する恋人、亡き友の思い出、そして家族を置き去りにし、自由の国へ向けて。だが、アメリカ人になりすまして身を隠しつつ逃亡する彼には、知る由もなかった。親友を惨殺したIRAの殺し屋と異常殺人鬼が彼のあとを追っているということに……大切なものを次々と失ってゆく男の生きざまを描き出した、哀しみのノワール。
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感想 | 面白いです(笑)。ミステリじゃないし推理小説でもない、かといってよくあるノワールってのとは一味違うんですが、楽しめました。普通小説だと思って読まれた方が良いかもしれません。 で、物語はというと。 故郷のアイルランドで銀行強盗をやり、アメリカに逃げた「おれ」スティーヴは、何とかしてアメリカ人になりきりアイルランド訛りを捨て米語を身につけようとしている。だが、行く先々で『アイルランドから来たの?」と言われてしまう、ちょっと憎めない男。で、このスティーヴの語りの部分は1人称で書かれているのだけれど、残り3人の主要登場人物がいて、交互に語り手が変わるのですよね。で〜このスティーヴ以外の人物3人に焦点が当っている部分は3人称で書かれているんです。(IRAの殺し屋ステイプルトン、殺人者のデイド、男を手玉に取りながら詐欺を繰り返すシェリー)で、「おれ」と残り3人が交錯した時、全員の運命が変わっていくんだけど〜お奨め作品です。↑の「酔いどれ探偵シリーズ』よりも万人受けする作品だろうと思います。この作家、小悪人を描くと巧いんですよね。悪人だったりアルコール中毒者だったり犯罪者だったり、一般市民からはみ出した人間を描くのが巧いのは、ひょっとして作者がアイルランド人だから?(笑)。ワタクシはというと、勧善懲悪ではないところと登場人物が味のあるところに惹かれているのだと思います。 それと訳者さんが鈴木恵さんに代わっています。こちらの訳者さんの方が前の方より雰囲気が合っているかも。 ![]() ![]() |
ロンドン・ブールヴァード (London Boulevard) |
新潮社文庫 | 初版2009年11月1日 |
あらすじ | 3年の刑期を終えて、ミッチェルは出所した。かつてのギャング仲間から荒っぽい仕事を世話される一方、彼はふとしたことから往年の大女優リリアンの屋敷の雑用係に収まる。リリアンに屈折した愛情を注ぐ執事ジョーダンは、彼女がミッチェルを“独占”できるよう何かと骨を折るのだが、おかげでミッチェルは危険な隘路へ―。
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感想 | いやぁ〜やっぱりこの作家は良いですね。特色だといえると思うんですが、ブルーエンは癖のある小悪党を描くのが巧いんですよね。万人にうける作品じゃないだろうけど、とり合えず読んでみてと言いたくなる作品です。パズル色の強いミステリが好みの方には勧められないけど、謎解きがなくても全然平気という方にはお勧めしたい。それと、ノワールやクライムノヴェルと銘打った作品で過去に痛い目に遭い「金輪際ノワールなんて読むかよ、ケッ」という悲しい経験者にお勧めしたい作品です(笑)。で、内容はというと・・・ 主人公のミッチェルはサウス・イースト育ちのギャングというかチンピラで、重傷害罪で3年の刑に服していた。で、釈放の日。ミッチェルはもう二度と刑務所には戻らない、外に出たら堅気の仕事を探しまっとうな生活を送るぞと決意し、刑務所の門をくぐるのだが、門を出たところで彼を待っていたのはミッチェルの悪友のチンピラ。早くも犯罪者との付き合いが始まろうとしていた。一方、ひょんなことから知り合った女性がミッチェルに堅気の仕事を世話してくれる。往年の大女優リリアンの豪邸での雑用係というのがその仕事なのだが、リリアンとその執事はギャング以上に異常な連中で・・・という展開です。テンポの良い作品で、ワタクシは一晩で読み終わってしまったほど勢いに乗って読める作品です。ラストの評価が割れるでしょうが(笑)。文体は相変わらずですが、前の3作品よりは読み易いと思います。 (注:新潮社が出している作品である本作だけブルーウンではなくブルーエンと表記されています。原音に近いのか遠いのかそんなことは良く分からんけども、同じ作家なのに版元によって表記が違うのは混乱します。ワタクシも危うく新刊に気付かないまま終わるところでした) |