天使の爪/プリティ・バレリーナ/あの夏の日に別れのキスを

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ジョン・ウェッセル(John Wessel) 作家略歴&作品感想


作家略歴

1994年、当時42歳の時、オハイオ州『シンシナティ マガジン』主催のミステリー短編コンテストで第一席を獲得する。このコンテストで最終審査を行ったのが『アリバイのA』にはじまるキンジー・ミルホーン シリーズの著者スー・グラフトンだった。コンテストの副賞としてサンタバーバラで開催される作家会議に招かれ、ここでグラプトンに『天使の爪』の未完成原稿を手渡す。で、ウェッセルに惚れ込んだグラフトンは自分のエージェントに原稿を送る。エージェントの支持を得たウェッセルは90万ドルの契約を交わしてデビューする事になったのだそうです。『天使の爪』はアメリカ私立探偵作家クラブ(MWA)処女長編賞にノミネートされた。
デビュー前は温室を建てる建設会社やファストフード店、書店員などの仕事をしていたらしい。
現在は妻と共にイリノイ州リンカーンシャーに在住。

2004年10月現在、『天使の爪(DHC)』『プリティ・バレリーナ(DHC)』『あの夏の日に別れのキスを(ソニーマガジンズ)』の3冊が翻訳されているが『天使の爪』&『プリティ・バレリーナ』は既に絶版です・・・。

この作家のプロフィールが入手出来ないので後日にでも書き足すつもりです。

天使の爪
(This Far, No Further)

2004.10.31読了
DHC出版ハードカバー ハードカバー初版1998年1月30日
あらすじ 探偵の免許を剥奪された、もと私立探偵のハーディングは記録に残らない非公式な仕事を友人から回してもらってシカゴの街で生きていた。凍える冬の夜中に呼び出されたハーディングに依頼された仕事は、大学教授の地位にある美容整形外科医の素行調査だった。依頼主であるその妻は白い肌に無数の痣が残る身体を震わせていた―「離婚できる証拠がほしいの」ハーディングは数週間にわたる監視の末、医師が愛人と変態的なセックスに耽っている事実をつきとめる。そこで調査は終わるはずだった。しかし、医師の周辺で変死事件が相次ぐ。「今回の件はこれで終わりだ」と友人は止めるが、ハーディングは事件から手を引けない。彼の探偵魂がそれを許さないのだ。しかし、この探偵魂こそがハーディングが探偵免許を剥奪された原因でもあった。凍える夜に震えていた人妻のために、調査を続けるハーディングの脳裏に過去の忌まわしい記憶がよぎる。

 
感想 ジャンルはハードボイルド(?)です。元は私立探偵だったのですが、ある事件で免許を剥奪され今はしがない調査員が主人公。この主人公はゴジラ等の怪獣映画やゾンビ物の映画が好きな『オタク』でもあります。
免許を剥奪された主人公なんて探偵物ではよくあるパターンなので『またかよっ』と気になったのですが、この免許を取り上げられた事件が物語りに深く関わってくるのでなるほどと納得致しました。プロットが非常に入り組んでいて、その上、登場人物も念入りに描かれているので詰め込み過ぎの感があるのが気になるくらいで概ね愉しめました。結末はすっきりしない終わり方なので、白黒はっきりした結末を求める方には不向きな作品かもしれません。この作品は1997年度のMWA&PWAの処女長編賞にノミネートされました。

余談・・・DHC社からハードカバーで上梓された本作ですが新刊は絶版の上、古本でも品薄で(売れていないのだろうな)入手に苦労しました。これの次回作『プリティ・バレリーナ』も絶版で入手に苦しんでいます。DHCさん!出版事業にも力を入れて、是非とも文庫化もして欲しいっ。ポッと出の新人の作品に2000円近いお金を出す人は少ないと思うんだよねー。そしてもう一つ。このハードカバーは活字が一段組みで非常に読み難かったのですよ。本に慣れていない人の為に一段組にしたのでしょうが、活字に慣れていない人が無名の新人のハードカバーなど買う筈が無いのだから二段組にして欲しかった。一段組みは目が疲れるし行間が広すぎますっ。
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プリティ・バレリーナ
(Pretty Ballerina)
2004.11.12読了
DHC出版ソフトカバー ソフトカバー初版1999年9月25日
あらすじ 真夜中の留守番電話に残された仕事の依頼。その依頼は元ポルノ女優キャシー・レインからのものだった。はじめは「いかれた女のいかれた依頼」くらいに思っていたハーディングだが、彼のまわりで不穏な事件が次から次へと起こっていき、やがてとんでもない事件に巻き込まれてしまったことに気づく。

 
感想  この作家は巧いのか、それとも下手なのか判断に苦しみます(笑)。前作の『天使の爪』より出来は良いのですが相変わらずプロットに凝っているので詰め込み過ぎの感が・・・。ポルノ女優から依頼された事件が発端で過去の殺人事件が浮上してくるのですがとにかく入り組んだストーリーに途中、ワケが分からなくなり中二日間お休みし、再度挑戦し読了致しました。このシリーズの主人公ハーディングとその彼女が非常に魅力的なので引きずられて読み終わった気がします。あと、チョコチョコ笑える部分があるのが良いトコなのかも。
 この作家の作品を読んでいるとジャンルは何になるんだろう?と悩みます。冒頭は正統派ハードボイルドなのですが、途中から何でもありに突っ走り、ラストは掟破りに近い事もやるのですよね。まぁ、読んでみて下さい。そして感想を聞かせて欲しいです。(本書は2004年現在絶版です・・・)

版元に一言。
第一作『天使の爪』はハードカバーで第二作の本書はソフトカバーってどうよ?!。本棚に並べる方の身になってみてくれ。最初、1900円で売れなかったからソフトカバーにして1800円に抑えたつもりだろうかね?。100円しか値下げしないのなら装丁は揃えてくれっっっ。
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あの夏の日に別れのキスを
(Kiss It Goodbye )

2004.11.16読了
ヴィレッジブックス
(ソニーマガジンズ)
文庫初版2004年7月20日
あらすじ ハーディングはライセンスを剥奪されたシカゴの“元”私立探偵。今も探偵らしき仕事で食いつないでいる彼が、恋人アリスンと友人の結婚式に出席しようとした矢先、ふたつの悪い知らせが飛びこんできた。ひとつはハーディングの名刺を持ったトレイシーという見知らぬ女性が無惨な死体で発見されたということ、もうひとつは新郎チャールズが姿をくらましたとのことだった。どちらの知らせにも首を傾げるハーディングだったが、調べるうち、すべては十年前アリスンが湖畔で過ごしたある夏に集約していく。あの日あの時、一体何があったのか?。

 
感想  DHC出版はシリーズ第2作で翻訳を打ち切ったらしい。シリーズ第3作の版元はソニーマガジンズさんだ。私の想像だが途中で終わられ無念の訳者・矢口誠氏が版元に持ち込みでもしたんじゃなかろうか?。しかし版元が変わって良かったね。文庫で1000円以下なら知らない作家でも手を伸ばし易いしね。
 で、本作の感想ですが、前二作よりも大分、分かり易いストーリーでした(笑)。相変わらずプロットに力を入れ過ぎてごちゃごちゃした感はありますが概ね楽しめました。相変わらず主人公のハーディングとアリスン(主人公の彼女)の魅力で引っ張られたという気がします。ですが最後のオチがちょっと気になりました。何故殺したのか?という動機が曖昧に終わったので何となく消化不良気味・・・。主人公とその彼女は進展しそうなので作者は第4作も書くのでしょうが、日本で翻訳されるのでしょうかね???。それだけが気になります。



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