血の奔流/市民ヴィンス


ジェス・ウォルター(JESS WALTER)作家略歴&著作の感想
作家名 ジェス・ウォルター(JESS WALTER)
生年月日 ???年
生誕地  ワシントン州スポーケン
処女作  EVERY KNEE SHALL BOW (ノンフィクション)
デビュー年 1995年
公式サイト http://www.jesswalter.com/

作家略歴

公式サイトにも略歴がなくて〜不明です(笑)。
『Jess Walter is the author of four novels, the most recent of which is THE ZERO, a finalist for the 2006 National Book Award, the 2007 Los Angeles Times Book Prize and winner of the Pacific Northwest Booksellers Award. His previous novel, CITIZEN VINCE, was a Washington Post best book of the year and winner of the Edgar Allan Poe Award for best novel.』調べたんですが↑くらいしか分からず。後日、更新します。

Novels
Over Tumbled Graves 『血の奔流』(2001)
Land of the Blind (2003)
Citizen Vince 『市民ヴィンス』(2004)
The Zero (2006)

Non fiction
Every Knee Shall Bow: The Truth and Tragedy of Ruby Ridge and the Randy Weaver Family (1995)


血の奔流
(OVER TUMBLED GRAVES)
早川書房 文庫 初版2002年2月20日
あらすじ  市民を射殺したという拭えぬ過去に苛まれながら、刑事キャロラインは数十ドルを握らされた女の死の謎を追っていた。まもなく、それが被害者を娼婦だと示す行為と知り、彼女は犯人を追ってバーやポルノ書店を探り回る。だが、その甲斐もなく次々と犠牲者が。やがて殺人鬼はキャロライン自身に異常な興味を示しはじめた…。

 
感想  ワシントン州スポーカン市警の刑事キャロライン・メイブリーは赤ちゃんを連れた若い母親に扮し、リヴァーフロント・パークでの麻薬のおとり捜査に参加していた。が、キャロラインのドジでおとり捜査がばれ、麻薬の売人と客に揃って逃げられる。必死で二人を追うキャロラインだが、彼女の目前で客が売人を公園内の橋から川へ突き落としたのだ。川に落ち濁流に呑み込まれつつある売人を助けるか目の前にいる客を逮捕するのか選択を迫られるキャロラインは若い売人を救おうとする。が〜売人はキャロラインの目の前でダムの底に沈んでいった・・・。同じ頃、老人が鈍器で撲殺され、さらに質屋の主人が顔面を銃で撃たれるという事件が発生する。それだけではなくて売春婦が狙われる猟奇殺人事件が発生。発見された被害者はみんな爪を剥がされ手を漂白剤で洗われ、手に20ドル札を握らされていた。で、捜査を進めるうちに麻薬の売人を川に突き落とした男が連続殺人犯と思われ・・・という展開です。あらすじが長くなったのはこの物語自体が長いからです(笑)。
 やっと感想。
『市民ヴィンス』がなかなかに面白かったので本作『血の奔流』を読んでみたのですが・・・若いなぁ〜という印象です。面白いんだけどあまりに長過ぎてくど過ぎて、途中がダレます。主人公のキャロラインはDVの通報を受けて駆けつけた現場で妻を殺しかねない夫を射殺してしまったという過去を持っているんですよね。で〜その過去がトラウマになっているから↑の麻薬の売人を撃てずに取り逃がしてしまうわけです。周りの警察官たちは口には出さないけれど『女が凶悪犯罪の捜査は出来ない』『キャロラインがもし男の刑事なら射殺せずに逮捕できただろう』『おとり捜査でも客を撃てなかったのはキャロラインが女だからだ』と思っているんですよね。で、その評価をなんとしても払拭したいとキャロラインは必死で捜査を続けるんだけど〜やっぱ、この人は刑事である前に女なんですよね(笑)。そして、主人公は怪しい現場に出くわして他の警官に応援を要請せぬまま一人で現場に出向き〜結果、失敗を繰り返すんですよね。女だからという前にこの主人公・・・マヌケなんですよ。ラストでも応援を要請していれば簡単に事件は解決したのにと思うと〜消化不良だし惜しい出来です。ワタクシが個人的にこの主人公を好きになれなかったので評価は辛めですが、この主人公に共感できる方だったら楽しめるのかもしれません。しっかし・・・この作品と『市民ヴィンス』の間にある作品『Land of the Blind (2003)』が俄然、気になります(笑)。どういう風に巧くなっていったのか知りたいし読みたいっ。でも、この作家がかなり売れない限り邦訳はされないだろうなぁ〜(笑)。

追記・・・主人公も主人公の同僚も好きになれないタイプだったけれど〜なぜか犯罪者側に心惹かれました(笑)。麻薬の売人だったり、娼婦だったり、けち臭い質屋の親父なんかが良い味を出してるんですよ♪。この作家、市民ヴィンスで小悪人を書いて巧かったんだけど、処女作からその傾向があるようです。ピカレスク物が似合う作家なんでしょうね。(2007年10月1日読了) 作家名INDEXホームへ戻る



市民ヴィンス
(Citizen Vince)
早川書房文庫 初版2006年12月15日
あらすじ  しがない街のしがいないドーナツ屋店主ヴィンス・キャムデンは、裏稼業のカード偽造と麻薬の密売をやめられず、汚れた金にまみれていた。そんなある日、事態が一変した。何者かがヴィンスの命を狙いはじめたのだ。四年前のあの忌わしい事件が関係しているのか?。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

 
感想  4年前、36歳のとき。マフィアの犯罪を立証する証人となるため協力者となった「男」は名前も住所も経歴も何もかもを捨てて生まれ変わった。証人保護プログラムに組み込まれた男は新しい名前と新しい経歴を貰い、今までの全てと決別し、スポーケンという目立たない小さな田舎町でドーナツ屋の店主ヴィンス・キャムデンとして暮らしている。が、名前が変わろうが経歴が消えようが犯罪者はいつまでも犯罪者のままで、クレジットカード詐欺とマリファナの密売でせっせと稼いでいた。マフィアにいつか居所がばれて狙われるのじゃなかろうかという不安を抱えつつも、子悪党生活を満喫していたヴィンスだったのだが〜ついに殺し屋が現れ・・・という展開です。
ミステリとは呼びにくいけれども〜好みの作品です♥。主人公の人物像が良いってのが楽しめた最大の理由だけど〜その主人公を取り巻く脇役陣が個性的なのですよね。キレやすい殺し屋、まともな職業につきたがっている子持ちの娼婦、郵便物からクレジットカードを抜いて犯罪に手を貸す郵便配達員、犯罪者より性質の悪い悪徳警官、浮気を告白してしまい妻に逃げられた議員候補などなど、登場人物全てが笑えるというか味があるので、ニヤニヤしている内に一気に読み終わってしまいます。犯罪者が主人公でピカレスク物ですが、なぜか読んでいる間、ほのぼのします(笑)。お薦めです。



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