血まみれの月 (BLOOD ON THE MOON) |
扶桑社 文庫 |
初版1990年7月25日 |
あらすじ |
その孤独な殺人者は内なる妄念に衝き動かされ、次々と若い女を惨殺していた。ある時は路上で。またある時は被害者の部屋で。"詩人"と呼ばれるその男はいつも彼の最愛の女性を殺すのだった―。一方この殺人者を追い求めるロイド・ホプキンズはロス市警強盗殺人課の部長刑事。仲間から"ブレーン(頭脳)"と呼ばれる天才肌で、異常なほどの正義感をもつ男だった。そのホプキンズの直感が犯人は一種の天才であると告げていた。天才対天才の闘いが始まった直後、ホプキンズに市警の上層部から圧力がかかった。上司からも部下からも見放され、〈静かな狂気〉と化したホプキンズは、ひとりロサンジェルスの街を駆けめぐり、〈激しい狂気〉である"詩人"を追いつめる。ロイド・ホプキンズ・シリーズ第1弾。
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感想 |
読みたい本が手元に無いという危機的状況を打開すべく(大袈裟な)本棚を漁ったら、出てきたのがこれ『血まみれの月』です。エルロイとの出逢いとなった記念すべき作品です。
今読むと『若いなぁ』って印象ですが、荒削りだからこそ受けるショックというか感動は他の作品では味わえないかも。初めてこの作品を読んだ時に、精神を病んだ犯人や、その犯人を追う精神を病んだ刑事(自分ではまともだと思っている)の人物造詣よりも、このキャラクターを描くエルロイ自身を恐ろしく感じたのを鮮烈に覚えています。なんかね、作家が抱えている心の闇というか狂気みたいなものが、登場人物を通して透けて見えるのですよね。ゴッホの絵を見て怖いと感じる私は、同質の怖さをエルロイにも見たのです。エルロイ作品を初めて読んでみようと思われる方に是非、お勧めしたい作品です。(小説作法とかが気になる方にはお勧めしませんが(笑))
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