皇帝のかぎ煙草入れ殺人者と恐喝者

ジョン・ディクスン・カー 作家紹介&作品紹介
    
作家名 ジョン・ディクスン・カー(John・Dickson・Carr)
生年月日 1905年年
没年月日1977年
生誕地  アメリカ ペンシルヴァニア
処女作  夜歩く
デビュー年 1930年


作家紹介


1905年、アメリカ ペンシルヴァニアで政治家の息子として生まれる。30年にアンリ・バンコランが探偵役の「夜歩く」でデビュー。 『密室の王者』と称された不可能犯罪小説の巨匠作家。
日本ではクリスティーやクイーンに押され地味な存在だが、マニアックなファン(カーキチと呼ばれる)は多い。江戸川乱歩、横溝正史、 高木彬光など日本の探偵作家や現在活躍中(?)の新本格作家にも多大なる影響を与えた。不可能犯罪小説だけが得意なだけの作家ではなく、 歴史ミステリーや冒険小説も著している。著作は厖大なのでカーキチ サイトかNET書店での検索をお薦めしたい。シリーズ物も 数多くある。管理人のお気に入りはギデオン・フェル博士シリーズの「三つの棺」、なぜかカーらしくない「火刑法廷」、ノンシリーズの 「皇帝の嗅ぎ煙草入れ」の三作品。
カーはカーター・ディクスン(Carter・Dickson)なる別名での著作もある。別名での著作のシリーズはヘンリー・メリヴェール卿が探偵役。 100キロ近いデブでハゲで口の悪いH・M卿が引き起こすドタバタ劇(コミカルな)が愉快なシリーズだ。 著作は色々な版元から出版されているが早川書房と東京創元社が一番多い。最近、原書房から長らく絶版だったH・M卿の作品が 出版された。この調子で絶版の復刊が続くといいな。

”夜歩く”の装丁 この「夜歩く」がはじめて出逢ったカー作品です(古本屋で)。昭和34年7月に発行。東京創元社から出たもので、 たしか50円くらいで購入しました(小学校6年生頃)。この当時の装丁っておしゃれですね。
ジョン・ディクスン・カー 名義
皇帝のかぎ煙草入れ
The Emperor's Sniff Box
創元推理文庫
あらすじ 前夫ネッド・アトウッドとの離婚が成立した金持ちの美女イヴ・ニール。向かいの家に住むトビー・ローズと婚約したが、 前夫は復縁を執拗に迫っていた。ある夜イヴは窓越しに、頭を割られて死んでいるトビーの父モーリス卿を発見する。 色々な行き違いから容疑者にされてしまうイヴだが、アリバイを主張できない。それもそのはず、モーリス卿を発見したその時、 イヴの部屋には前夫ネッドが忍び込んでいたのだ!。探偵役、ダーモット・キンロス博士は真相を突き止めるのか?。

 
感想  この作品はカーらしくない一冊で怪奇色が無く現代色が濃いのです。(シリーズ物ではありません。単発物です)
主人公の女性が殺人現場を目撃するのですが(ここは詳しく書けない)その家の中で見た事を詳しく供述できない。 何故かというと婚約者の家だからその家の中に犯人がいるとは思えないから。自分が疑われるに及んで自分のアリバイを主張しようにも、 家の中に前夫がいたとは言えない。なんせ婚約中の身だから。でも婚約者は頼りない・・・というストーリーです。
非常にお気に入りの作品です。でもね・・・カーファンには受けない作品なのですよね。これが不思議。 私は前々からカーの作品に出てくる探偵役が気に入らなかったんですよ。ハゲだったりデブだったりで「もうちょっと颯爽とした探偵が 出てくればなー」と思っていた所でこの作品に出逢ったのです。この探偵役のキンロス博士はデブでもハゲでも無いのでお気に入り なのかもしれません(笑)。内容は現代でも充分に通用するものなので是非、カーを毛嫌いしている方に読んで欲しいです。 トリックに関して色々な評価があるけれど私は非常に楽しめました。本格物なんて騙されてナンボでしょ。愉しめればいいのです。

カーター・ディクスン 名義
殺人者と恐喝者
Seeing Is Believing
原書房 ハード初版2004年 4月 5日
あらすじ ヴィッキー・フェインは夫アーサーが浮気相手を殺していた事を知らされる。叔父ヒューバートがその一部始終を見ていたのだと。 アーサーとヒューバート・・・殺人者と恐喝者の奇妙で危うい同居が、フェイン家に悲劇をもたらす。晩餐の余興として催眠術が 披露され、術をかけられたヴィッキーはアーサーを短剣で刺殺してしまう。余興用のゴムの短剣が本物にすり替えられていたのだ。 不可解な事件はこれで終わりではなかった。担ぎ出されたヘンリー・メリヴェール卿が突きとめる真相とは?。

 
感想  本作は1959年に創元推理文庫から出ていたものを原書房が復刊したものです。なんと40年以上も 絶版だったのですよね。この作品はアントニー・バウチャー(作家、評論家、編者)がカーの元に抗議の手紙を出した作品だと 聞いていたのでずっと読みたかったんですよね。(抗議の内容は「曖昧な言葉を使った最低のいかさま」だと) で、読んでみて解ったのですがこれは訳者は苦労しただろうな・・・と。英語と日本語じゃニュアンスが変わるから日本人には(訳を 読む限り)関係ない気がします。
 で、ストーリーですがカー作品によくある怪奇色は全く無いし、相変わらずヘンテコなH・M卿が笑いをくれるしで楽しめました。 衆人監視の下でおもちゃの短剣が本物にすり替えられ、誰が?どうやって?という不可能犯罪物ですが、それだけでは終らない。 同時にヴィッキーの命が狙われ、その理由も方法も分らないという二つの謎が同時進行します。 ですがプロットも構成もシンプルなので非常にわかり易い作品だと思います。 この作品はH・M卿の子供の頃のエピソードが満載なので、H・M卿のファンにはたまらない作品だと思います。

・・・版元に一言・・・

「おぼえていますとも。あの午後のことはなんだっておぼえています。それがなにか?」 「ミセス・フェインの本日のおかげんはいかかですかな?だいぶんよろしければいいのですが」 「小鳥がブドウの木のあいだでけんかを始めた」
全文、こんな感じで漢字が無いのですよね・・・。まるで小学生相手のジュブナイルでした。なんで普通の文章にしてフリガナを 打たないの?。漢字を使っている箇所にはフリガナを使っている場合もあるけれど・・・。
例えば  舗道=ほどう  緋色=ひいろ   葛藤=かっとう
今時、本格推理小説を読むなんて子供しかいないと思っているのでしょうか?。子供でも読めるようにカナを振れば良いだけでしょ?。 これは版元の意向?それとも訳者の森英俊氏の一存でなのでしょうか?。折角、2100円も出して買ったのに非常に残念でした。



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