汚れた翼/私刑連鎖犯


ジャン・バーク(JAN BURKE)作家略歴&著作の感想
作家名 ジャン・バーク(JAN BURKE)作家略歴&著作の感想
生年月日 1953年
生誕地  アメリカ テキサス州
処女作  グッドナイト・アイリーン
デビュー年 1993年
公式サイト http://www.janburke.com/


作家略歴

生まれはテキサス州だが、人生の大半は南カリフォルニアに住んでいるのだそうな。カリフォルニア州立大学を卒業。1993年『グッドナイト・アイリーン』でデビュー。2000年アイリーン・ケリーシリーズの『骨』でMWA最優秀長編賞を受賞。アイリーン・ケリー シリーズ以外にも数多くの短編を発表されているらしい。邦訳を待ち望んでいるのだが。
旦那さんはミュージシャンでティム・バークとおっしゃるのだそうな。(こちらが旦那さんのサイト


汚れた翼
(FLIGHT)
講談社文庫 初版2005年11月15日
あらすじ  子供2人とともに船旅を終えた裕福な実業家が惨殺された。犯歴のある地元のギャングに容疑がかかるが、捜査に当たった一匹狼の刑事、ルフェーヴルは真相を明らかにせぬまま自家用セスナで失跡。10年後、墜落した機体が発見され、ハリマン刑事らの再捜査が始まる。

 
感想  久々のアイリーン・ケリー シリーズですが、シリーズとはいっても、本作『汚れた翼』の主人公はハリマン刑事(ケリーの夫)なので、番外編って感じですかね。実は管理人はこの作家の事を日本で邦訳された頃から追っ掛けて読んでいて、新刊を楽しみにしていたのですよね。アイリーンシリーズもちょっとマンネリ化していて、尻すぼみになるんじゃないかと危惧していたんだけど心配は要りませんでした。ハリマンを主人公に据えた作品を他にも書いて欲しいと思うくらい面白かったです♪。シリーズ作品ですが、途中から読まれる方でも文句なしに楽しめると思います。
で感想ですが、本作はあらすじ&感想に目を通さずに読み始めた方が楽しめます。なのでネタバレしたくないので*から*までをコピペして読めるようにしています。
*冒頭、魅力的な登場人物が二人出てきます。妹と父親を何者かに惨殺された少年セスと刑事ルフェーヴル。セス少年は自身も大怪我を負い死の淵を彷徨ったのですが、現場にいち早く駆けつけた刑事ルフェーヴルのお陰で一命を取り留めます。(要するにこの少年は殺人事件の生き証人なワケですよ)で、この少年とルフェーヴルの描写が良いのですよね。読者は内容にどっぷり引きずり込まれて、少年と刑事に感情移入している所で、副主人公かと思われたこの少年は殺され、ルフェーヴルは失踪してしまう。『うぉーーー何で殺すんじゃっ』と叫びたい所で場面は変わり10年後。失踪したルフェーヴルのセスナ機が山中で発見されるのですが、セスナ機の中にはミイラ化した死体が。だが、セス少年を殺したのはルフェーヴルだという説が根強い署内では誰一人、事件の真相を探ろうと思う刑事はいない。で、立ち上がるハリマン刑事・・・という展開です。MWA賞受賞後にどんな作品を書くのだろうと思っていたんだけど、冒頭の100pでこの作家は読者との勝負に勝ったって感じですね。ストーリーもプロットも考え無しに読ませる勢いがあります。
何を言いたいのか自分でもワケが分からなくなったな(汗)。でも、お薦め作品です。
*

版元さんへ一言・・・『骨』が上梓された翌年の2001年、本国では『FLIGHT』が上梓されたというのに、日本では何年経っても邦訳されないので、これでジャン・バーク作品は邦訳打ち切りなのだと思っていました。が、なぜか4年も経ってから邦訳されているじゃないですか?!。新刊を読めるのだから文句は言いたくないけれど、折角、MWA賞をとって知名度が上がったトコだったのに、こんなに時間を空けられてはと残念です。『骨』でファンになられた方でも4年も経ってしまったら忘れてしまうよね。もし、もしも訳者さんの事情で邦訳が遅れたのだったら訳者さんを変えて欲しい。 作家名INDEXホームへ戻る



私刑連鎖犯
(NINE)
講談社 文庫 初版2007年6月15日
あらすじ  指名手配犯が逆さ吊りの惨殺体で発見された。犯人は自警団を気取り、FBIに先んじて死刑を執行したことを宣言するかのごとく、現場に「9」の数字を残していった。残虐な「私刑」はまだ続くのか? エドガー賞受賞の名手が生み出した新ヒーロー、アレックス・ブランドン刑事が活躍する圧倒的サスペンス。

 
感想  アイリーン・ケリー シリーズかと思って購入したのですが、シリーズ外作品でした(笑)。で〜最初に断っておきますが、本作は犯人探しの要素の多いミステリじゃありません。早い段階で犯人が読者には知れるので、犯人探しのミステリを好まれる方には不向きかもしれません。が〜出来の良いスリラーですので、謎解きだけじゃ物足りない方や人物像形やプロットの出来にこだわる方にお薦めです。
 本作の主人公・殺人課刑事のアレックス・ブランドンは裕福な家に生まれたのだが〜父親が堅実とは言い難い男で事業に失敗し破綻、それで自殺を遂げ、残されたアレックスと兄は保安官だった叔父に引き取られ育つ。で、アレックスは叔父を慕い自身も殺人課刑事となる。そんなこんなで(?)アレックスは陰のある男なのだが、彼は新しいパートナーの女刑事キアラ・モートンと組んで猟奇殺人事件の捜査に当たることになる。事件の被害者はFBI指名手配凶悪犯リストに載っている10名のうちの一人で、空き家のバスタブの真上で逆さ吊りにされるという異様な殺され方をしていたのだが、事件は1件では終わらず指名手配犯リストに載っている凶悪犯が次々と殺されて行き・・・という展開です。かなり早い段階で読者は犯人を知ってしまい、主人公のアレックスが犯人に辿り着いていく過程を見せられるという展開なんですけど、犯人の動機だったり物語の展開だけを見ればイマイチっだなぁ〜と思う箇所も多いです。物語に破綻は無いんですけど、山ほど出てくる桁違いの大金持ちや色男など〜頭では理解出来ても納得は出来ないというか(笑)。ですが、ジャン・バークの人を描く事の上手さは健在です。老人や子供を描かせたら上手い作家なんですけど、本作でもその良さが良く出ているので、容易に感情移入出来ます。次作も翻訳されるといいな〜それも早急に(笑)。



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