失われた顔/顔のない狩人/爆風/見えない絆/嘘はよみがえる/そしてさよならを告げよう/その夜、彼女は獲物になった


アイリス・ジョハンセン(IRIS JOHANSEN)作家略歴&著作の感想
作家名 アイリス・ジョハンセン(IRIS JOHANSEN)
生年月日 1938年4月7日
生誕地 
処女作 
デビュー年
公式サイト http://www.irisjohansen.com/

作家略歴


著作リスト(ですが、とりあえずこのシリーズから読みはじめたいのでイヴ物のみで失礼)
Eve Duncan(イヴ・ダンカン シリーズ)
第1作 The Face of Deception (1998)『失われた顔』
第2作 The Killing Game (1999)『顔のない狩人』
第3作 Body of Lies (2002)『嘘はよみがえる』
Blind Alley (2004)
Countdown (2005)
Stalemate (2006)
Quicksand (2008)

シリーズ物から派生した番外編
THE SEARCH(2000)『爆風』(イヴ物から派生したスピンオフ) FINAL TARGET(2001)『見えない絆』(ウィンドダンサー物からのスピンオフらしいです) No One to Trust(2002)『そしてさよならを告げよう』 Dead Aim(2003)『その夜、彼女は獲物になった』

失われた顔
(The Face of Deception)
二見書房文庫 初版1999年10月25日
あらすじ  幼い一人娘を凶悪犯に殺された辛い過去を持つイヴ・ダンカン。彼女は遺体の頭蓋骨から顔を復元する専門家として名を馳せていた。ある日、著名な大富豪ローガンがイヴのもとを訪れ、身元不明の頭蓋骨の復顔を依頼する。だが、やがてその顔をよみがえらせた時、彼女は想像を絶する謀略の渦中に投げ込まれていた!

 
感想  いやぁ〜。この作品を手にして何が一番驚いたかというと・・・1999年に初版が出ている10年近くも前の作品なのに未だ新刊で売られているんですよね。これは物凄いことですよ(笑)。古本屋に行っても山ほど並んでいるし、それだけ売れている作家ということなんでしょうね。で、その売れっ子作家なんですが、ワタクシ 初挑戦でして(汗)。そんでもって、活字中毒者仲間のお勧めで読んだわけで、彼女から薦められなければ食わず嫌いのまま終わっていた事を考えると・・・御礼申し上げます(滝汗。ワタクシの食わず嫌い克服に手を貸してくれる、ミステリ好き仲間に感謝です。
 で、感想ですが。
ロマンス作家だと思って1冊も手にせずにきたジョハンセンなのに〜本作は至って普通のミステリで拍子抜けしました(笑)。ワタクシは、危険に晒された登場人物がどこの馬の骨とも知らぬ人間とあんな事やこんな事をして、更に自身の身を危うくするというR系ミステリを読んでいると妙にモゾモゾしてこそばゆくて(←標準語?)それでRを避けているんですが、本作は立派にミステリとして成立していて、構えて読んだ自分が馬鹿みたいでして。幼い一人娘を殺された過去を持つイヴは遺体の頭蓋骨から顔を復元する専門家で、子供の顔の復顔を優先して引き受けていた。が、失踪児童捜索基金への寄付を条件に、大富豪に復顔して欲しいと頼まれた頭蓋骨が、実は国を世界を揺るがす大事件で・・・という展開はミステリというか冒険小説っぽくもあり、筋立てで更に驚きまして(笑)。結論から言うと楽しんで読めたんですが、非常に残念だと思うのは、この本が出版された当時に読んでいたら10倍は楽しめただろうなってこと。思い返せば10数年ほど前、復顔という作業で頭蓋骨を元の顔に復元できるというニュースを見た時、すごく興味があったんですよね。DNAによる身元確認なども今なら当たり前のことだけれど、この作品が発表された当時はまだまだ新しい技術だったわけで、発表当時に読んでいたならと惜しまれます。やっぱ、食わず嫌いはいかんのだと反省しています(汗)。 作家名INDEXホームへ戻る



顔のない狩人
(The Killing Game )
二見書房文庫文庫 初版2001年4月25日
あらすじ  「ボニーを殺したのはフレイザーではない、私だ」ドンと名乗る男は、電話でイヴにそう告げた。イヴの愛娘ボニーは何年も前に殺害され、遺体はまだ見つからない。が、凶悪犯フレイザーが犯行を自供し、死刑になった。なのに、真犯人は別にいたのか?動転するイヴは、姿なき男ドンが仕掛けた戦慄のゲームに否応なく巻き込まれていく。

 
感想  ミステリを読みなれている人ならこういう筋立ての作品を読んだ時『一番 怪しくないのが犯人だ』と頭から決めてかかって読みますよね。で、本作は王道を行く(?)作品なので、やっぱり、一番怪しくないやつが犯人なわけです(笑)。なので、ミステリとして見るならもうちょっとだと思う箇所も少なくはないんですが〜個人的に見るなら前作より本作の方が好みでして。というのも、犯人捜しという大筋以外の箇所が好いんですよね。物語の中に里親に育てられているという幼い女の子が出てくるんですが、この彼女が卑劣な犯人に名指しで狙われるんですよね。で、その子を守るためにイヴは全力を尽くすわけだけど、この女の子が不憫でそして可愛いもんだから、彼女に感情移入してしまって苦しいわけですよ(笑)。でね、埋められた遺体を発見するために救助犬に捜索を頼むシーンがあるんですが、この犬と飼い主がまた好いんだよね。そんでもって狙われた少女とこの犬が絡むシーンがあって、ここがまたジーンとくるんですよ。子供と犬に適う登場人物はないですもんね(笑)。作者は読者の掴み方を心得ている巧者ですね〜。
で、今まで避けに避けてきたロマンス作家が書いたミステリ小説なんだけど、この作家のこのシリーズに関しては何の抵抗もなく読めまして拍子抜けしています。まぁ、多少のアンナコトやコンナコトは普通のミステリでも出てくるんだから、このシリーズがRという括りで括られている(?)事の方が不思議です。 作家名INDEXホームへ戻る



爆風
(THE SEARCH)
二見書房文庫 初版2003年2月25日
あらすじ  捜索救助の専門家としてゴールデンレトリーバーのモンティとコンビを組むサラ。新たな現場はコロンビアの無法地帯。富豪の実業家ローガンの研究所から拉致された社員を捜し出すのが目的だ。灼熱の密林のなか決死の追跡劇が続くが、知られざる過去が明らかになるにつれ、事件はローガンを狙った恐るべき罠の幕開けに過ぎないと気づかされる。(シリーズ第2作『顔のない狩人』から派生したスピンオフ・番外編)

 
感想  『顔のない狩人』から半年後、サラは救助犬モンティと共に世界中を忙しく駆け回る生活に戻っていた。が、サラの前に大金持ちの企業家ローガンが現れ、南米ジャングルの奥地に拉致された自社の科学者を探し出して欲しいと頼まれる。科学者を探し出してくれれば願いを聞くと言われたサラはジャングルへと赴くが、これが原因で自身とモンティはサイコパスに付け狙われることに・・・という展開です。ストーリーが破天荒・・・というか荒唐無稽というか(笑)。主人の公サラ&ローガンが対峙する相手が物凄い悪人というかサイコパスなんですが、この人物像に現実味がないんですよね〜。これがただ一つの惜しい点なんですが、これさえ目を瞑ればなかなかの出来だと思います。なんてったって犬が好いんですよ(笑)。犬好きには堪らない作品だと思います。でね、ファンサービスがありまして、元シリーズの主人公イヴやクイン、そんでもって前作で登場した幼い少女ジェーンまで登場するんですよね。だもんで、この作品を読まれる前にはせめて『顔のない狩人』を読まれる事をお勧めします。派生作品といいつつ、しっかり前作から繋がった物語なので、いきなり本書を読まれても面白みが減るかも?です。しっかし、この作家 掴みが巧いですね。ワタクシはどちらかというと大元のシリーズ主人公イヴよりもサラや犬やジェーンが好きなんですが、その登場人物を主人公に持ってこられれば、派生だって追い掛けるやんね(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



見えない絆
(FINAL TARGET)
講談社文庫 初版2004年1月15日
あらすじ  目の前で人が殺され、自分の殻に閉じこもってしまった大統領の娘。精神科医ジェシカは妹メリッサと協力して治療にあたるが、娘の“命の恩人”が現れ、国際的な地下組織から狙われる羽目に。娘はこころを取り戻すことができるのか。謀略劇の行方は。

 
感想  今までジョハンセンの作品を3作品読んできて、食わず嫌いはいかんなと反省していたところだったんですが、なぜか本作だけには妙な違和感を覚え、ハッキリ言いますと楽しんで読めませんで・・・これを1発目に読まないで良かった〜って(汗)。なんかね、シドニー・シェルダンっぽいうそ臭さを感じるんですよね(笑)。これ理由が全く分からないんですが、活字中毒者仲間のLさまに伺いますと、この作品だけはウィンドダンサーシリーズから派生した作品だそうで(イヴ物とも登場人物が被っている)ひょっとすると、そちらの匂いが濃厚なのでワタクシには違和感を感じたのかもしれません。 作家名INDEXホームへ戻る



嘘はよみがえる
(BODY OF LIES)
講談社文庫 初版2004年6月15日
あらすじ  身元不明の頭蓋骨は誰?有力上院議員から直接依頼され、イヴは静かな生活を捨てて復顔の仕事に没頭する。が、家政婦をはじめ身近な人間が次々と不審な死を遂げ、自らも瀕死の目に。恋人に裏切られ、一人娘を殺された過去に苦しみながらイヴが対決する強大な敵とは。

 
感想  これは純粋なる(?)イブ物のシリーズ第3作で、まぁ楽しめたのですが、展開が『見えない絆』っぽいんですよね。なんかね、似て見える筋立てが気になったんですが、これは立て続けに読んでいる読者側の問題だと思われます(汗。ジョハンセンは本シリーズとシリーズから派生した番外編とを交互に発表しているようですが(年に1〜2冊?)、順番通りに時間を空けて読めば、展開が似ているなどという違和感は感じずに済みそうなので、ワタクシももうちょっと時間をかけて読みたいと思います(滝汗)。
あ、それと訳者さんについてですが。本作は他のジョハンセン作品の訳者さんとは違いまして北沢あかねさんが務められていたんですが、違和感は感じませんでした。お忙しい(?)池田真紀子女史にだったら更に邦訳に時間が掛かったでしょうから、違う訳者さんを持って来られた版元に拍手を贈りたいと思います。ベテランの訳者さんが手掛けた作品を読みたいと読者なら誰だって思うことだけど、例えちょっと文章が変わったとしても出版が早い方を歓迎します。ただし〜文章で『マジ』という言葉は使わんで欲しいけども(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



そしてさよならを告げよう
(No One to Trust)
ヴィレッジブックス文庫 初版2004年9月20日
あらすじ  戦いのプロ、ショーン・ガレンは麻薬取締局の捜査官から仕事を依頼された。エレナという女性をコロンビアの刑務所から救出してほしいというのだ。エレナは以前はコロンビアの反政府ゲリラの一員で、コロンビアの麻薬王チャベスをアメリカにおびき寄せるための切り札を握っていた。驚いたことに彼女は自力で刑務所から脱走し、ガレンと合流、やがて無事アメリカに入国した。ともに孤独で強靭な戦士であるふたりは、心ならずも相手に惹かれていく。だが、エレナを追うチャベスとの凄絶な死闘は、まだ始まったばかりだった…。

 
感想  今まで読んだ作品のほとんどに脇役で登場していたショーン・ガレンが作品の主人公です。ガレンがエレナという女性をコロンビアから脱出させるという仕事を引き受け、で〜仕事は無事に完了しサヨナラとなるはずだったんだけど、ガレンはエレナに恋心を抱き彼女と行動を共にする事に。けども、このエレナはコロンビアの麻薬王から付け狙われていて、彼女を守る為にガレンは麻薬王と対峙することに・・・という展開です。この作品に出てくるエレナとジャド・モーガンは次の作品『その夜、彼女は獲物になった』で重要な役割を果たすことになるので、出来るならこちらを先に読まれた方が良いと思われます。物語はけっこうハードボイルド的な展開なんですが、どっちかというとR色が濃い作品でした。 作家名INDEXホームへ戻る



その夜、彼女は獲物になった
(Dead Aim)
ヴィレッジブックス文庫 初版2005年7月20日
あらすじ  コロラド州でダムが決壊し、多数の犠牲者が出た。女性フォトジャーナリストのアレックスは救助活動に加わるが、やがて驚くべき光景を目撃した。彼女を迎えに来たヘリコプターが謎の男たちに撃墜されたのだ。しかも、その際に耳にした男たちの言葉は、ダムの決壊がテロ工作の結果である可能性を示唆していた。この日以来、アレックスは何者かに執拗に命を狙われる。彼女を救えるのは、かつてCIAの暗殺者だった男ジャド・モーガンだけ。が、ふたりの行手を阻むのは、ホワイトハウスをも巻き込む巨大な謀略だった!

 
感想  イヴ物&イヴ物から派生した番外編までを含めた登場人物のオンパレードともいえる作品で豪華でした(笑)。ただし〜物語の核となる人物である二人は前作『そしてさよならを告げよう』に出ていた人物なので、とりあえずその作品を読んでいないと、人物たちの関係やらがイマイチ分からず楽しめないかも?です。他に『爆風』で主役になったサラ・モーガンや『見えない絆』で出たアンドレアス大統領などが出てくるので、他の作品を未読の方にはお勧めし難い作品なんですよね。もしジョハンセンを初めて読まれる方ならば『顔のない狩人』と『爆風』が管理人のお勧めです。



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