殺す者と殺される者


ヘレン・マクロイ(Helen McCloy)作家略歴&著作の感想
    
作家名 ヘレン・マクロイ(Helen Worrell Clarkson McCloy)
生年月日 1904年
没年月日1993年
生誕地  米国ニューヨーク
処女作  『死の舞踏』
デビュー年 1938年
公式サイト

作家略歴

判る範囲で著作リスト
Series Basil Willing(精神科医探偵ベイジル・ウィリング博士シリーズ)

Design for Dying (1938)『死の舞踏』
aka Dance of Death
The Deadly Truth (1941)
Cue for Murder (1942)『家蠅とカナリア』
The Goblin Market (1943)
The One That Got Away (1945)
Through a Glass, Darkly (1950)『暗い鏡の中に』
Alias Basil Willing (1951)
The Long Body (1955)
Two-thirds of a Ghost (1957)『幽霊の2/3』
Mister Splitfoot (1968)『割れたひづめ』
Burn This (1980)『読後焼却のこと』

Novels(シリーズ外単発物)
The Man in the Moonlight (1940)
Who's Calling? (1942)
Do Not Disturb (1943)
Panic (1944)
She Walks Alone (1948)『ひとりで歩く女』
aka Wish You Were Dead
Better Off Dead (1949)『人生はいつも残酷』
He Never Came Back (1954)
aka Unfinished Crime
The Slayer and the Slain (1957)『殺す者と殺される者』
Before I Die (1963)
The Further Side of Fear (1967)
Question of Time (1971)
A Change of Heart (1973)
The Sleepwalker (1974)
Minotaur Country (1975)
Cruel as the Grave (1976)
aka The Changeling Conspiracy
The Imposter (1978)
The Smoking Mirror (1979)

Collections (短編集)
Surprise, Surprise (1965)
aka The Singing Diamonds『歌うダイアモンド』
The Pleasant Assassin and Other Cases of Dr. Basil Willing (2003)

(もれている作品もあるかと思いますが、解り次第 追加していきます)

殺す者と殺される者
(The Slayer and the Slain)
東京創元社文庫 初版2009年12月25日
あらすじ  小さな大学の心理学部で講師を務める主人公のヘンリーは、叔父の死亡通知と遺産相続の知らせを受け取った日、氷に足を滑らせ後頭部を強打。意識を失い治療を受ける。ほどなく意識が戻ると、転ぶ直前のことを思い出せないまでも、他に後遺症はなく済んだ。不慮の事故から回復したのを契機に、おじの遺産を相続し、大学の職を辞して亡母の故郷クリアウォーターへと移住したハリー(ヘンリー)・ディーン。思い出の残る小さな町で彼は新しい生活を始めた。人妻となった想い人と再会し、新生活を始めた彼の身辺で、異変が続発する。消えた運転免許証、差出人不明の手紙、謎の徘徊者…そしてついには、痛ましい事件が―。この町で、何が起きているのか?。

 
感想 本作の発表年は1957年でして、半世紀も前の作品という事になります。で、その半世紀も前の作品がなぜ今頃、新訳で再版されているのかというと、2009年は版元の創元推理文庫の創刊50周年記念にあたるそうで、その記念として読者からの復刊リクエストを募ったところ、本作『殺す者と殺される者』が見事第三位を獲得。だもんで、復刊と相成ったそうです(ちなみに1位を獲得したのは同じくヘレン・マクロイの『幽霊の2/3』)が、なぜ珍しくも(ゑ?)ワタクシがこんなに古い作品を手に取ったかというと訳者さんが務台夏子さんだったから。古い作品を焼直すからといって、ら抜き言葉を使うような訳者さんが手掛けていたとしたら絶対に読んでいなかったと思います。で、感想はというと・・・
意外にも面白かったです(笑) 。実は大昔にこの方の作品を読んだ事があったのですが、当時は有名作家だったからとりあえずカッコつけて読んだだけで、楽しめなかったという記憶しかなかったんですよね。今考えると幼過ぎて理解出来なかったんだと思います。というのも、謎解きのあるミステリではなくて、本作はサスペンスというか心理スリラーなんですよね。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、作者の技巧だけで読ませるような作品なので、発表当時からするとかなり革新的なミステリだったと思われます。それと、ひとつ付け加えておきたいのはミステリを読み慣れてる方なら中盤で容易に謎が解ってしまいます。で、作者自身も物語の確信の部分を物語の7分目辺りで読者に明かすんですが、これは作者が意図的にやったんだと思うんですよね。作者は本作をただのミステリとは思っておらず、主人公を生身の苦悩する男として描くため、パズル色を途中で排除するという手法をとったんじゃないかなと思います。こういう確信犯的な手法の巧い作家というとパトリシア・ハイスミスマーガレット・ミラーをすぐに思い出すけれど、両者に負けないくらい個性的な作風の作家さんですね。
最後に、ネタバレになるので警告し難いんですが、折原一氏のよく使うアノ手が苦手な方には鬼門だと思われます(謎。



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