グレッグ・ルッカ(Greg Rucka)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | グレッグ・ルッカ(Greg Rucka) |
生年月日 | 1970年 |
生誕地 | サンフランシスコ |
処女作 | 守護者 |
デビュー年 | 1996年 |
公式サイト | http://www.gregrucka.com/index.html |
守護者(キーパー) KEEPER |
講談社 文庫 | 初版1999年3月15日 |
あらすじ | 病院前では“堕胎は殺人だ”というプラカードが林立している。「あなたを雇いたい。私と娘を保護してもらいたい」妊娠中絶反対派の度重なる嫌がらせに、強靱な女性医師ロメロのストレスも頂点に達していた。プロ魂に燃えるボディガードと脅迫者の必死の攻防が続く。
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感想 | これ、出た当時に読んでいたのですが、綺麗さっぱり内容を忘れていたので読み返してみました。 今、読んでみると『若いなぁ』って印象です。勢いはあるし読みやすいんだけど、描写が半端な箇所があったり、モタモタする箇所があったりで、まぁ普通の出来といった感じです。物語の根底に流れている『中絶は女性の権利か?それとも殺人か?』というアメリカが抱えている(というかキリスト教徒が抱えている?)大問題と、プロのボディーガードを結びつけた作者は巧いと思うけどね。この作者はシリーズを描き進むにしたがって巧くなっていくので、シリーズの途中から読まれた方が良いかもです。で、気に入ったら、最初からね♪。 ![]() ![]() |
奪回者 FINDER |
講談社 文庫 | 初版2000年11月15日 |
あらすじ | 「貴様なら娘を守れる。エリカを見張ってくれ」国防総省高官ワイアット大佐の依頼だった。プロのボディーガード・アティカスは早速チームを組み、十五歳の少女を守るべく臨戦体制に入った。敵は名うての英国特殊部隊出身の誘拐チームだ。生死を賭けた攻防が続く。シリーズ第2作。
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感想 | これ、前作を読んでいる筈なのに内容を全く覚えていなかったのですよね(汗)。ですが、充分に楽しめました。『ちょっと設定がムリクリだなぁ』とか、『ボディーガードだからって街中で発砲し敵を殺しても逮捕もなしかよっ?』とか突っ込みどころも多いけど、まぁ楽しめたから良いや(笑)。 アティカスは、ボディーガード業を休業し、SMクラブの用心棒として生計を立てていた。その店で、強面の男に絡まれている少女を助けるアティカスだが、それが事件へ巻き込まれる切っ掛けになる。少女は、アティカスが軍にいる頃の国防総省高官の一人娘で、なぜか英国特殊部隊に狙われているのだ・・・というストーリーです。ハードボイルドというよりはエンタメといった雰囲気で一気に読めたのだけれど、プロットや細かなところで気になる箇所も多かったです。作者が若い所為なんだろうけど、今一歩詰めが甘いなぁって印象。ただし、ぐいぐいと引っ張って読ませる勢いというのか、魅力はあるので先が楽しみな作家です。 ![]() ![]() |
暗殺者(キラー) SMOKER |
講談社 文庫 | 初版2002年2月15日 |
あらすじ | 巨額の煙草訴訟でメーカーに大打撃を与える重要証人を亡き者にすべく、世界でも超一流の暗殺者が雇われた。ボディーガードのアティカスは証人警護の依頼を受けるが、正体不明の殺人者がどんな手段で襲撃してくるか分からない。一瞬たりとも気を抜けない緊張感の中、プロとしての誇りを賭けた闘いが始まる。
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感想 | うーーん。作者は、徐々に腕を上げているのは間違いが無いんだけど、詰めが甘い気がするのは何故だろう?(笑)。思うに、この作者のラストに不満がある所為かもしれないな。この作者は、最後を唐突に終わらせる事が多いので『結局、どうなったワケ?!』っという不満が残るのです。ネタが無くなったら、続編でも書く気だろうか?とか疑ってしまう。もうちょっと潔く終わって欲しいな。と、文句を言いつつ読み続けているのは、単に訳者が好きだから。とはいえ、売れているシリーズなんだよねぇ。![]() ![]() |
耽溺者(ジャンキー) SHOOTING AT MIDNIGHT |
講談社 文庫 | 初版2005年2月15日 |
あらすじ | 「あいつに見つかっちまった」親友からの未明の電話で、女性私立探偵のブリジットは己の過去に直面させられた。10代で薬物中毒だった2人は更生施設で出会った。再び悪事に引き込まれそうな友を救うため、彼女は自ら囮(おとり)となって麻薬密売組織に闘いを挑む。ボディーガード・アティカス・シリーズ番外篇!。
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感想 | この作品で、グレック・ルッカの邦訳作品を全て読み終えたことになるのだけれど、これが一番のお気に入りです。純粋に楽しめました。今までの作品は全て、読後に『何かが足りない』って感じだったのですが、本作では、その読後の不満感がありませんでした。それに、この作家は確実に成長を続けていますね。次回作も楽しみです。 本作は一人称で描かれているのですが、ちょっと面白い一人称です。一人称二視点なのですよね。第一部&第三部は、個性的な女性探偵ブリジットの『あたし』の語りで進み、二部はブリジットを捜索するアティカスの『わたし』の語りで進みます。この手法は共作なんかでよく使われる手だけれど(ビル・プロンジーニがこの手をよく使う)、ルッカが本作を一人称二視点で書いたのは、巧いなぁと感心しました。主人公のブリジットの個性を際立たせないと、本作の突飛なプロットが生きないだろうから、この手しか使えなかったんでしょうね。読んでいて違和感も感じず、良い出来だと思います。それに、もしこの作品が三人称多視点で著されていたなら、これほど楽しめなかっただろうし、ただ単なるお馬鹿なジャンキーの物語で終わっていたと思います。 この作品の感想を詳しく書いてしまうと、『守護者、奪回者、暗殺者』のネタバレに繋がってしまうので書けないけれど、お勧めです。グレッグ・ルッカに初挑戦する方は、本作から読まれるのも一興だと思います。で、面白かったら全作読破へどうぞ♪。 ![]() ![]() |
逸脱者 (CRITICAL SPACE) |
講談社 文庫 上下巻 | 初版2006年1月15日 |
あらすじ | 世界的に著名な要人を窮地から救ったことで、一躍全米中の注目を集めたアティカスは、再び同じ要人の警護を依頼される。危険人物と思しきストーカーが浮かび上がり、すぐさま調査に乗り出す。すると、プロの暗殺者がアメリカで活動をはじめたとの情報が入る。暗殺者の狙いは警護対象者か、それとも―。
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感想 | ん〜〜〜〜っ。正直に言うと前半が退屈で退屈で仕方がありませんでした。というのも、本作は前々作『暗殺者』の続編のようなお話なのですが、その『暗殺者』が翻訳出版されたのが2002年で、本作は2006年・・・。間が4年も開いているので、前の作品の内容を綺麗サッパリ忘れちゃっているワタクシには話の流れが見えず、前半は全く楽しめませんでした(涙。この作品は本国で上梓されたのが2001年なワケだから、邦訳されるまでに5年も掛かっているのですよね。これじゃ覚えていられませんよっ!。と、版元への文句はここまでにして感想。 ↑にも書いたとおり、前半はヒジョーに退屈でした(笑)。それは、単に前の作品の内容を全く覚えていないワタクシの記憶力の問題だと思われるので、4年前に読んだ作品でもしっかり覚えていられる立派な記憶力の方には楽しめる内容だと思います。後半からは、物語が動き出すので、前作を読まれていない方でも楽しめるとは思うのですが〜〜〜でも、やっぱ読んでからの方が良いと思います(笑)。 ただ、物語自体の出来は良いと思うんですけど、この作家の作品をもし次回読むとするなら、一年前後で出版された時ダケのような気がします。というのも、本作も終わり方が微妙で、次作は『逸脱者』の続編のような物語になるだろうと予測できるから。今度、このシリーズを読んで『前の内容を覚えとらんけん、つまらんっ』ってな気分に陥りたくないのですよ。前の作品をほじくりだして(ダンボールに詰まっているので探すのは至難の業)読み返すほど暇人じゃないし、他にも読みたい作家は腐るほどいるんだからね。 ![]() ![]() |
哀国者 (PATRIOT ACTS) |
講談社文庫 | 初版2008年9月12日 |
あらすじ | あの男の裏切りで友は死んだ。男の行方はどこか、指示を出したのは誰なのか?亡霊たちへの思いと復讐の決意を胸に、グルジアで二年半の潜伏生活を送るアティカス。愛する女とのその暮らしは一通のメールで打ち破られ、やがて強大な標的が姿をあらわし始める―。新展開のアティカス・シリーズ。
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感想 | 2002年に邦訳出版された『暗殺者』の続編ともいえる作品が2006年に出た『逸脱者』で・・・そんでもって本作『哀国者』は『逸脱者』の続き物のような作品でして(南無)。だもんで、最初の暗殺者から数えると本作まで6年もあるわけで、内容なんか覚えてられませんってば(哀)。ということで、はっきり言って物語の筋を思い出せないまま読了してしまいました。面白いっちゃ面白いんだけど、この作品は3作品を連続で読まないと理解できないだろうなと思います。だってね、シリーズの1作目2作目と正義のヒーローだった主人公アティカスが、なぜか本作では世界に名だたるプロの暗殺者と行動を共にしているんですよね。そんでもって、暗殺の仕事を請け負ったりしちゃうわけです。この展開に読者は非常に戸惑います。例えるなら、警察小説を読んでいるつもりだったのに、主人公がどんどんどんどん逸脱しちゃって、ついには犯罪者に、クライムノヴェルになっちゃってるんですよ(笑)。まぁ、それはそれでいいんだけど、ワタクシは、物語がそこで完結しないシリーズ物は嫌いです。姑息というか〜作者にそんな気は無いんだろうけど、読者に対して失礼だと思うんですよね。版元も、判じ物みたいに内容が続いている作品だと分かっていたんだろうに、本国の出版から邦訳まで4年もかけたりして、読者をなめとるとしか思えない。いつまででも続きが出るのを待っていて読むだろうと思っているんだろうけど(読んだけどさ(汗))。哀国者っていう題名もサラリーマン川柳みたいでいけてないしなぁ。哀国者ならぬ哀読者の愚痴になってしまった・・・。
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回帰者 (Walking Dead) |
講談社文庫 | 初版2010年8月12日 |
あらすじ | グルジアの小さな町でアリーナと静かに暮らしていたアティカス。だが隣人一家が何者かに惨殺され、その静かな生活は終わりを告げる。惨殺された一家には14歳の少女がいたのだが、彼女だけは殺されずに連れ去られたのである。理由は明白で、人身売買のために連れ去られたのだ。少女の行方を追い、アティカスは世界の裏路地を独り駆け抜ける。背負い続けてきた十字架と向き合い、かつての自分と和解するために、男は最後の戦いに挑む・・・。
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感想 | ついに、シリーズの完結編が出ました。で、その内容はというと・・・アティカスとアリーナはグルジアの小さな町で偽名でひっそりと暮らしていた。だが、ある日 隣人一家が惨殺され、14歳の少女だけが生きたまま連れ去られたのだ。アティカスは連れ去られた少女を追い、人身売買組織に挑む・・・という単純明快な物語です。シリーズ最終編に相応しい痛快な作品なので、是非とも皆さんに読んで頂きたいということで感想を終わらせて頂きます(ゑ)。っていうのも〜この作品の感想というか、シリーズ全編を通した感想をブログの方(http://madara66.blog55.fc2.com/blog-entry-1215.html)に書いたのですよね。だもんで、良かったらどうぞ。
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シリーズ外単発作品 |
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わが手に雨を (A FISTFUL OF RAIN) |
文芸春秋社 ハードカバー | 初版2004年9月30日 |
あらすじ | 雨の夜。故郷ポートランドに帰り着いたミム・ブラッカを待っていたのは何者かの襲撃だった。監禁され、数時間後に開放されたミム。敵の狙いは何か?。バンドから一時帰宅を言い渡され、失意の底にあったミムは敵が卑劣な罠を仕掛けていた事を知る。ネットに流された盗撮写真・・・それは地に落ちたミムの名誉に更なる汚泥をぬりたくるものだった。 かつて母を轢き殺した父の帰還、愛してやまぬ養父母への思い。過去の苦い記憶。アルコールに溺れる自分。全てを失ったミムは決意する。苦痛に満ちた過去と向き合い、見えざる敵に立ち向かおうと・・・。 |
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感想 | 著作のカバーに「ハードボイルド・サスペンス」と書いてあったので購入したのですが、ハードボイルドというよりは普通のサスペンス作品、または普通小説に近い気がします。主人公の再生を描いた冒険小説とも言えるかな?。ハードボイルドじゃ無くても楽しめたので良いのですがね。 ロックバンドのギタリストとして頂点に登りつめようとする矢先に、アルコール依存症が原因でバンドをクビになるミム。ミムは二日酔いで自宅に帰り着くが、いきなり謎の男に銃を突きつけられ、車に乗せられ全裸にされる・・・が、レイプもされずに自宅に戻される。警察に届け出るが「全裸にされたがレイプもされていない」というと相手にもされない。そして自宅に侵入者が。その後、ネットに自分の全裸の写真が多数流失している事がわかり・・・というストーリーです。 ミステリとしてはイマイチかもしれません。ですが、それでも充分楽しめました。犯人が最初の頃に分かってしまうのだけど、謎解きに期待して読んだ訳ではないので気になりませんでした。ミムは幼い頃に目の前で母親を亡くしているのですよね。犯人は酔っ払った父親で、その父がムショに入ってしまった為に家族は離散、里親の所を転々としたミム。なぜ、ミムがアルコール依存症になったのか過去が明らかにされていくのですが、その過去が現在のミムを取り巻く悪事に結びついて行くワケです。この主人公のミムがイタイんですよね。26才にもなって考え無しに行動し、逃げたくなったら酒、酒、酒。ようするにアル中のバカ女なんですよね。ラスト100pはスピード感があって一気読み出来たのですが、そこに行き着くまでが苦しかった。主人公に感情移入出来なかった所為でしょう。本の帯に『感動の余韻が響く』と書いてありますが、言い過ぎだと思います・・・。(何か、褒めてないよね???汗) |