手負いの森/憤怒/黒い河/白骨/

G・M・フォード 作家紹介&作品紹介

G・M・フォード 著者略歴

日本での著作が三冊しかないので著者のデータがあまり無いのだが分かる範囲で著者略歴。
長年コミュニティーカレッジで創作講座の担当を担当した後、レオ・ウォーターマンを主人公とする『手負いの森(早川書房)』(1995年)で作家デビュー。この処女作で1996年度のアンソニー賞とアメリカ探偵作家クラブの最優秀処女長編賞にノミネートされるが残念ながら受賞は逃す。やっと53歳でフルタイムの小説家になる夢を叶えたがこの時点で二度の離婚歴がある。生粋のニューヨーカーだが現在はシアトル在住。フォードが読む本のジャンルは殆どがハードボイルド。好きな作家は二人のマクドナルド、レックス・スタウト、S・ハンター、マイクル・コナリー、ハーラン・コーベン・・・等。
G・M・フォードの著作は本国ではかなり出版されているようだ。下記に著作データ。

Leo Waterman シリーズ
Who in the Hell is Wanda Fuca?/1995
Cast in Stone/1996
The Bum's Rush/1997
Slow Burn/1998
Last Ditch/1999
The Deader the Better/2000
フランク・コーソ シリーズ
Fury/2001
Black River/2002
A Blind Eye/2003

G・M・フォードという名前はてっきりペンネームかと思っていたら本名なのだそうだ。ジェラルド・マンソン・フォードと仰るそうなのだが、ジェラルド・フォードじゃ元大統領と同じ名前になるし、マンソンじゃ犯罪者の名前と一緒になるのでG・M・フォードと名乗っているそうな。

G・M・フォード 画像


手負いの森
(WHO IN HELL IS WANDA FUKA?)
早川書房 文庫初版1997年5月20日
あらすじ その老人は、むせかえるように暑い温室で私を待っていた。私立探偵の私は、暗黒街のボスである老人から、過激な環境保護グループの一員となり家出した孫娘を連れ戻すよう依頼されたのだ。やがて私は、孫娘の居所と彼女が密会する若者が住む小屋を探りあてた。だがその晩、小屋は焼け落ち、さらに私の身辺にも卑劣な罠が…探偵レオが森林開発に絡む邪悪な陰謀に挑む。

 
感想  いやー!!!。面白かったー♪♪♪♪♪。本作『手負いの森』はG・M・フォードのデビュー作であり6作出ているレオ・ウォーターマン シリーズの第一作目になる。だが、日本では97年に上梓されているのに2004年現在すでに絶版だ・・・(怒)。第一、本国では6冊も出ているのに1冊目だけ翻訳するってどういう事?!。そんなに日本で売れなかったんだろうか?。
 で、本作の感想だがストーリーはそう目新しいものでは無い。雰囲気もロス・マクドナルドあたりの雰囲気に酷似しているのだがそれでも非常に楽しめた。ハードボイルドではあるのだが冒険小説としても読めると思うような内容だ。
主人公のレオ・ウォーターマンは私立探偵だ。仕事が入ると近所のホームレス軍団を助手として使う。その理由はホームレスなら何時間、同じ所にいても誰の注意も惹かないからだ。この探偵助手がホームレスという手はコナン・ドイル(ホームズ物作者)も使っているが、これがまた良いのだよね。出てくるホームレスの面々が非常に魅力的で魅了された。この作家の人物造詣の巧さはデビュー作からだったのだと再認識♪。そしてプロットも凝っている。ほんでもって、本作の最大の特徴だが(レイモンド・チャンドラー好きの著者らしく)主人公が喋る台詞がとても楽しいのだよね。古き良き時代のハードボイルドという雰囲気で、登場人物の台詞が楽しくて笑いながら読むなんて久方ぶりだった。本作はハードボイルド入門者にお勧めだが、目の肥えた洋物ハードボイルドファンにも是非、読んで欲しいと思う。いつか何処かで出逢ったような懐かしい香りがプンプンですぞ。(エルロイなどのノアールを求めている方には不向きだと思うけどね)
何としてもこの続きが読みたいっ!と思うが新シリーズ(フランク・コーソ物)が売れない限り無理だろうな。早川の後を引き継いで新潮や創元推理文庫、扶桑社、小学館、ヴィレッジブックスあたりから出ないかなー(お願いしますっ)。

憤怒
(Fury)
新潮社 文庫初版2003年9月
あらすじ シアトルを震撼させた連続レイプ殺人犯が唯一の証人の供述により逮捕され市民は安堵した・・・・・はずだった。 処刑六日前に新聞記者コーソを訪ねて来た証人は「あれは、偽証だった」と告白する。 冤罪を確信したコーソは、警察と対峙すべく真犯人探しに乗り出す。残された時間は六日間。さらに新たな犠牲者が出るに至り、事件は思わぬ方向に進み始める。

 
感想  この本は書店で”有名じゃない作家”の新刊を探していて発見し購入したものだ。 あらすじを読むとジョナサン・ラティマー著『処刑6日前』のオマージュ(パロディ?)風だ。 (ご存知の方も多いと思うがタイムリミット物の名作です。前は創元推理文庫で売っていたけど現在、絶版です・・・怒) 余程、作者には自信があるのだろうとすぐさま、購入した次第だ。 最初の2、30Pはモタモタした感じで「まさか、ホラー作家O女史のようにただのパクリで終るのでは?!」と危ぶんだがなかなかどうしてこれが面白いのだ。オマージュかと思われたが内容は全くの別物だし、プロットも人物造形も巧いのだ。 ちょっと、描写がねちっこいかと思う場面もあったが、訳者に慣れれば平気になるだろう。 ジャンルはハードボイルドになるのかな?。主人公は記者だが立派な探偵小説だった。 主人公の描写にもちょっと笑った。”スティーブン・セガール”似の大男なのだそうだ。髪は後ろでポニーテールにしているんだと・・・うぷぷぷ。 処刑までの六日間で終わりだと思っていたらそこから100pもあって「そのまんまパクリじゃないのだな」とニンマリ。 本作の題材は連続殺人なのだが意外に読後感は良かった。暗いミステリーが嫌いな方でも楽しめると思う。ただし、謎解きに重点を置いて読みたい方には物足りないかも。どちらかというとキャラクターというか人物造詣で読ませる作家なので物語を楽しみたい方にお勧めしたい。
だが、何の賞もとっていないのに新潮社が翻訳するとは珍しい。 と思って本国での人気は?っと調べてみたが公式サイトもまだ存在していないようだ。 だが、個人のサイトやNET書店でかなりの記述があったので、向こうでは既に人気のある作家かも知れぬ。 新潮は売れなければ、すぐさま絶版にするので興味のある方は急がれよ♪。

黒い河
(BLACK RIVER)
新潮社 文庫初版2004年5月1日
あらすじ 病院の崩壊事故にともなう死傷事件の公判直前。手抜き工事の黒幕バラギュラは、証人を片端から消すよう部下に命じていた。ノンフィクション作家コーソは、彼の悪事を暴く本を執筆中だったが、元恋人が、バラギュラの証拠隠滅工作に巻き込まれ瀕死の重傷を負ったと知る。さらに自分の身辺にまで殺し屋を差し向けられ、ついにコーソの憤りが炸裂する。

 
感想 もう何でか理由が分からないのだけれど、非常にお気に入り作家です。本作『黒い河』は前作『憤怒』から更に進化し楽しめる作品に仕上がっています。裁判にかけられている裏社会のボスが、殺しやゆすりなど手段を厭わず無罪を勝ち取ろうとしていて、それを阻止すべく立ち上がる主人公なんてあまりにも使い古されたストーリーなのですが古臭さは全く感じません。主人公コーソ像もロス・マクドナルドの主人公をあからさまに意識しているし、他のハードボイルド探偵をMIXしているのはみえみえなのですがそれでも楽しめる。不思議です。このG・M・フォードの何処が巧いのか考えるとやっぱり人物造詣なんだろうなと思います。描写が巧い所為か登場人物が映像で目に浮かぶんですよね。前作で登場した味のある脇役も本作に登場するし、これぞシリーズ物という感じがします。本作ではじめて登場したボディーガードも個人の描写は1pしか無いのにそれでも非常に味のある登場人物として浮き上がってくる。なんと表現していいか分からないけど登場人物の全てが兎に角「魅力的」なのですよね。
導入部も面白かったです。ある殺し屋が一人の男を始末しに向かうシーンから始まるのですが、その男は既に殺されていた。何で?誰に?という所から主人公が関わる裁判に結びついて行くのですが、この辺が前作より巧い。『憤怒』では導入部のもたつきが気になったけれど本作では解消されています。
作風はハードボイルド風ですが限りなくエンターテインメント小説に近いです。物語を楽しみたい方やネオハードボイルドファン、そしてロス・マク ファンにお勧めしたい。
余談・・・新潮社は『憤怒』と『黒い川』だけしか出版する契約を交わしていないようなんです・・・。本国では既に3作目が出ているというのにっ!。頼むっ。読ませて下さいっ!!!。

白骨
(A BLIND EYE)
新潮社 文庫 初版2005年5月1日
あらすじ  裁判所から召喚された世捨て人作家フランク・コーソは出廷命令を無視して行方を眩ますことにした。元恋人メグ・ドアティと空路ミネソタを目指すが、空港は大雪で閉鎖。レンタカーで移動する二人は、吹雪で事故を起こし、凍死寸前に。やっと見つけた空き家で床板を燃やして一命を取りとめるが、床下からは何体もの白骨死体が。その家に纏わる身の毛もよだつ驚愕の秘密とは?。

 
感想  翻訳が打ち切られるのでないかという、ワタクシの心配は杞憂に終わりました(笑)。待ちに待ったフランク・コーソ シリーズ第3作が無事に邦訳されましたっ。本国では既に第4作が出ており、5作目も上梓される事が決まっているそうな。新潮様、お願いです。是非、続けて、それも急いで邦訳して下さいまし。
今回は今までの作品と趣が変わっていました。導入部が面白いのですよね。
証人として出廷せよと裁判所から出頭命令を受けているフランク・コーソは、裁判で証言するワケにはいかないので、命令の効力が切れるまで逃げ隠れしないといけない。コーソが証言台に立てば、ある事情で逮捕される事になるんですよね。そんで、カメラマンであるメグ・ドアティを伴って逃避行をしていたのですが、大雪に見舞われ身動きが出来ず飛行場に缶詰になってしまう。飛行機が飛ばぬのなら車で移動してやるっ!と車で大雪の中を移動していたら危うく遭難寸前。で、雪の中、必死の思いで辿り着いた空き家で暖をとっていたら、なんと、その空き家には4体の白骨死体が・・・というストーリーです。裁判所から逃げているコーソがなんの偶然か白骨死体を発見し、その重要参考人である『ある女』を追うんですが、コーソ自体が終われる身なので、思うように動けないんですよね。追われるコーソの物語と、4体の死体が物語る残忍な犯人像が交錯し、読み応えのあるサスペンス(サイコサスペンス?それともエンタメかな?)作品に仕上がっています。
ここまで書いて、自分の感想を読み返したら、何を言いたいのかさっぱり分からないじゃない?!。けどね、詳しく書く訳にはいかないんだよねぇ♪。こういうゾクゾクするタイプの物語は何の先入観も持たずに読むのが一番!。騙されたと思ってご購入下さい。



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