フェイ・ケラーマン(Faye Kellerman)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | フェイ・ケラーマン(Faye Kellerman) |
生年月日 | 1952年 |
生誕地 | セントルイス(ミズーリ)生まれ |
処女作 | 『The Ritual Bath (水の戒律)』 |
デビュー年 | 1986年 |
公式サイト | http://www.fayekellerman.net/ |
水の戒律 (The Ritual Bath) |
創元推理文庫 | 初版1993年4月23日 |
あらすじ | きっと猫の声だろう。夜遅く水浴場(ミクヴェ)の待合室で一人で洗濯機を回していたリナは、悲鳴を耳にした瞬間そんな風に思った。この神学院(イエシヴァ)の敷地内にはたくさんの猫がいる。彼らは時折人間の悲鳴に似た声を上げ、子供たちを怖がらせるのだ。だが、もう一声。不安にかられて表に出た彼女を待っていたのは、服を引き裂かれ全身泥だらけになって横たわる友人サラの姿だった。敬虔なユダヤ人コミュニティを突如襲ったレイプ事件。それがもたらした動揺と緊張。マカヴィティ賞最優秀処女長編賞受賞作。
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感想 | この作品、リアルタイムで読んでいたんですが全く記憶に残っておらず再読した作品です。が、非常に楽しめてしまい〜自身の記憶力の悪さを再認識いたしました(汗。 で、物語は・・・厳格な戒律に従って敬虔な毎日を送っていたはずのユダヤ人コミュニティでレイプ事件が発生し、それを捜査する未成年犯罪担当刑事デッカーが捜査にあたる事になる。が宗教の壁が立ちはだかり捜査は混迷を極め・・・という感じです。ミステリとして見るなら何のオチもなく珍しくもない作品なんですが、特筆すべきは作中で描かれているユダヤ人の生活の様子なんですよね。戒律に縛られているように見えるユダヤ人達が、この作品を切っ掛けにして等身大に見えたというか、彼らも普通なんだなと思わせてくれたというか。でね、主人公のデッカーがレイプ事件を切っ掛けにしてユダヤ人の女性に恋心を抱くんですよね。で、彼は彼女と親しくなりたいと思うんだけど、敬虔なユダヤ教徒であるリナは異教徒との恋愛などはなから考えられず(ユダヤ教で婚前●●●などご法度)、捜査の前に立ちはだかる宗教や民族の差は二人の関係にも大きな壁となっていくという展開で、事件以外の部分が面白い(?)作品です。ワタクシはこの作品を読んだ当時、この手の薀蓄入りミステリが大好きだったんですよね。医者が書いた医学物が好きでジョナサン・ケラーマンを読み、その後 彼の奥さんのフェイ・ケラーマンを手にしまして、両者とも薀蓄好きなミステリ作家だったというわけです(笑)。残虐なシーンやエロい場面は無いので、ユダヤ教ってどんな宗教なんだろう?ユダヤ人ってどんな民族?と興味をもたれているちびっ子にもお勧めしたい作品です。 ![]() ![]() |
聖と俗と (Sacred and Profane) |
創元推理文庫 | 初版1993年12月17日 |
あらすじ | ユダヤ教への改宗を志して、最初のクリスマス。デッカーはリナの息子たちとキャンプを張っていた。仕事では決して味わえない穏やかな時間。だが、ふとした隙に兄のサミーが姿を消してしまう。懸命の捜索の果てに少年は見つかったが、彼が前にしているものを見てデッカーは言葉をなくした。そこにはなんと二体の黒焦げの人骨が横たわっていたのだ。かけ離れた人生を送っていた二人の少女が同じ場所で最期を迎えた謎を巡り、デッカー刑事のひたむきな捜査が展開する、シリーズ第2弾。
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感想 | 前作とは違い、本作は二人の少女を殺したのは誰か?という謎が物語の中心にある警察物捜査物といった作品なんだけど〜なぜかミステリ味が薄く感じる作品です(笑)。デッカーが相棒のマージとこつこつ丹念に捜査に当たり犯人へ辿り着く物語なのに、なぜミステリ味が薄く感じるのかというと、作者は親と子の繋がりだとか、リナとデッカーの恋の行方やなんかの方に重点を置いて書いているような気がするせいかもしれません。1作目を読んだ時も感じたんですけど、作者はユダヤ教徒・ユダヤ民族とは何かを書きたいがためにミステリを書いている、という印象を受けるんですよね。逆を言えば、第1作と第2作さえ抑えておけば、残りの作品のどれに飛んでも理解できるといえるくらい最初の2作品は入門書っぽい感じです。
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豊饒の地 (Milk and Honey) |
創元推理文庫上下巻 | 初版1995年9月29日 |
あらすじ | 森閑とした真夜中の新興団地。ラビとの聖書勉強会のあと丘陵地帯を車で流していたデッカーは不審な動きに目を留めて急ブレーキを踏んだ。甲高い泣き声にも導かれ彼が行き着いたのはシーソーに乗って一人無心に遊ぶ幼子の姿。性別は女、身につけたパジャマは血まみれだったが虐待を受けた形跡は無くかすり傷一つ負っていない。おまけに翌日団地で行われた聞き込みで身元を知るものは一人も現れなかった。シリーズ第3弾。
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感想 | 実はユダヤ人だったデッカーはユダヤ教徒として生きることを選択(詳しくは『水の戒律』をどうぞ)、ラビに付き聖書を勉強しリナとの関係を成就させたいと思っているのだが進展は遅く・・・。そんなある日、新興団地で一人血まみれのパジャマをまとい遊んでいる女児を発見。虐待された様子も無く健康的な姿から両親がすぐさま見つかるだろうと思ったのだが・・・聞き込みでも情報は得られない。で、デッカーは女児のとある特徴から手がかりを見出し、谷あいの小さな村を目指すがそこには4体の死体があり現場は血の海。で、同時期にベトナム戦争時代の戦友エイベルが売春婦への暴行とレイプ容疑で逮捕されるが、彼は身に覚えが無く無実だと主張。デッカーは保釈金を立て替え、このレイプ事件を個人的に再捜査してみることになるのだが・・・という事件が二本立て(?)の物語です。前2作はミステリとして見るならイマイチな作品で、どちらかというとユダヤ教とユダヤ民族についてのお勉強本といった雰囲気だったのですが、この作品から急にミステリ度(?)が上がります(笑)。リナとの恋愛も書き込まれてはいるのですが、同時にデッカーが抱える過去のトラウマやらが丹念に描かれているので物語に時間の奥行きがあるというか〜作者はこの辺りから腕を上げているなといった印象を受けます。それと、全作を通して言える事なんですが脇の登場人物がしっかりしているんですよね。デッカーの相棒マージやホランダー、そんでもってデッカーのユダヤ教の先生のラビ シュルマンなどなど、それぞれが主人公でスピンオフ作品が書けるだろうなってほど魅力的です。主人公以外にも逢いたくなるからこそ、シリーズが人気を誇っているんだろうなと思います。
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贖いの日 (Day of Atonement) |
創元推理文庫 | 初版1997年7月25日 |
あらすじ | リナとの新婚旅行で西海岸を離れ、デッカー刑事はニューヨークの一廓を訪れた。正統派ユダヤ教徒が住まうその地域を選んだのはリナの亡夫の家族と新年祭を過ごすためだったが、現れた年配の女性客の姿を見て息を呑む。15の年に自分を産み落とし、養子に出して以来音沙汰の無かった実の母親であったからだ。そして・・・前触れもなく彼女の孫息子が消えた。不安に蝕まれていく家族を前にしてデッカーは異郷で困難承知の調査に取り組む。シリーズ第4弾。
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感想 | 何度も言いますが、この作品 再読しているんですよね。それなのに、ラストで泣けまして(←記憶力が相当悪いので(汗)。 本作はミステリというよりはスリラー、サスペンスといった内容の作品です。NYで実母に会ってしまったデッカーは非常に動揺しパニックに陥るんだけど、その動揺が収まらぬうちに実母の孫が失踪。実母の孫ということはデッカーにとっては甥ってことで、新婚旅行を放棄し甥っ子探しに奔走する事に。が、実母以外の親族はデッカを血縁者とは知らず・・・という物語で、スリラーって感じでしょう?(笑)。で、物語は少年の失踪という事件だけでは終わりませんで、デッカーの実母との出会いまでありまして。この、デッカーの抱える里親を愛し敬う気持ちと、長い間抱えてきた実の母への思慕との葛藤が巧く描かれているんですよね。読んでいてどちらもが可哀想で感情移入してしまい〜感動のラストでは不覚にも涙まで(笑)。これ、絶対にネタバレご法度な作品なので、刊行順で読まれてみて下さい。泣けますよ〜。 ![]() ![]() |
堕ちた預言者 (FALSE PROPHET) |
創元推理文庫 | 初版1999年8月27日 |
あらすじ | 彼女は脱ぎ捨てられた服のように横たわっていた。ライラ・ブレヒト―往年のハリウッド女優を母親にもち、みずからは高級フィットネス・クラブを経営する美貌の主。現場に到着したデッカーは、レイプ及び盗難の被害者となったライラの纏う尋常ならぬ空気に当惑しながら捜査を開始するが…。シリーズ第五弾。
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感想 | 本作もユダヤ人とは何ぞや戒律とはなんぞやというユダヤ教ネタ(?)は少なめでして、どっちかというと事件が中心に物語が進んで行く普通の(?)ミステリでした(笑)。どうもシリーズ4作目までが戒律についてのお勉強ミステリで、この5作目からミステリ味が濃い作品が続くようです。第4作『購いの日』でデッカーの出生の秘密が明らかにされたのを考えると、前作がみそぎ作という位置付けだったのかもしれません(笑)。で、犯人捜しの方はというと、はっきり言って大したことのない結末なのでお勧めするほどの作品では・・・(ごにょごにょ)。このシリーズは、デッカーとリナという登場人物に好感を抱ける人だけが楽しめる物語だと思うんですよね。だもんで、もし途中から読んでみようと思われる方がいらしたら『正義の裁き』から入られる事をお勧めします〜。で、楽しめたら他の作品に進まれると良いと思います、うん。
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赦されざる罪 (GRIEVOUS SIN) |
創元推理文庫 | 初版2001年6月15日 |
あらすじ | デッカーとリナの娘が生まれた夜、同じ病院の新生児室からヒスパニック系の赤ん坊が誘拐された。担当だった看護婦も同時に姿を消している。奇しくも、最初に異常に気付いたのはデッカーの娘シンシアだった。生まれたばかりの妹をみていた時に、隣室の赤ん坊たちが一向に泣き止まないのを不審に思ったのだ。事情を知ったデッカーは他人事とは思えず、事件解決のために立ち上がる。失踪した看護婦はどう関わっているのか?。犯人なのか?。あるいは殺されたのか?。
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感想 | デッカーとリナに健康な女の子が産まれ幸せも絶頂〜と思ったら、リナが産後の大出血で命を危うくするんですよね。で、リナは分娩室から手術室に移され危ない状況が続くんだけど・・・。デッカーはこの病院の看護婦の無責任さに目を留めるんですよね。新生児室には何人もの赤ちゃんがいるというのに、看護婦は平気で部屋を出て行き、無人のままになることに気が付いたデッカーは、長女シンシアに赤ちゃんを見てくれるように頼むんだけど、デッカーの杞憂は現実となり赤ちゃんと看護婦が行方不明に・・・という展開で新生児室からヒスパニック系の赤ちゃんが誘拐され、その時間新生児室を担当していた看護婦まで姿を消し犯人は看護婦か?それとも他に犯人がいるのか?というミステリなんですが、はっきり言ってミステリの部分は大したことはありません。ですが〜感動する物語でして(笑)。物語の最初の100ページはリナが出産で命を落としかけるシーンが描かれているんだけど、この場面が感動的なんだよね。出産と言うのはいつの時代も命がけなんだなと妙に感動いたしました。が、これ以降の部分はまぁ普通なので646ページも費やさずとも良かったんじゃないかと思います。面白かったけども他人にはお勧めし難い作品でした。
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逃れの町 (Sanctuary) |
創元推理文庫 | 初版52005年9月30日 |
あらすじ | 9ヶ月の娘と農場で静かに暮らすピーターとリナのデッカー夫妻の元へリナの旧友ハニーが突然子供連れで泊まりに来ることになった。来訪を歓迎しつつもハニーとその子供たちの怯えぶりが気になるリナ。一方デッカーもまたユダヤ人のダイヤモンドディーラー一家が忽然と消えた難事件に頭を悩ませていた。戒律厳しいユダヤ教徒の村に潜む秘密と裕福なディーラー一家失踪の謎。奇しくも双方の事件を追う羽目になったデッカーが行き着いた先は遥かイスラエルだった。聖地へ飛んだデッカーとリナを待ち受けていたのは・・・シリーズ第7弾。
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感想 | 相変わらずミステリとしてみるなら突込みどころの多い物語なのですが、不思議と読ませるというか着地を決めるのが上手いというか不思議な作家です(笑)。で、物語はというと・・・ デッカーとマージはよその署に転勤となりともに殺人課に勤務することになる。初の殺人課勤務で張り切るマージ。が、上司は女性蔑視、人種差別バリバリの糞野郎で、事件性があるのかないのか分からないダイヤモンドディーラー一家失踪事件をマージに押し付ける。マージとデッカーはこれはただの失踪ではない、事件だと直感するが、はっきりした証拠もないのだから捜査を打ち切れという上司。マージとデッカーは一か八かで死体を捜しに山に入り・・・。一方 デッカー家へ遊びに来たハニーとその子供たちの父親が死体になって発見されたという報が入るが、同時にハニーとその子供たちは行方不明に。偶然にも死んだハニーの夫もダイヤモンドディーラーで・・・という展開です。結論から申しますと、ミステリとしてみるならちょっと無理のあるオチなんですよね。だけども物語としてはなぜか上手くまとまっていて〜ほんとフェイ女史は不思議な作家です(笑)。そんでね、感動したんですけど作中で出てくる刑事の名前が「マイロ・スタージス」っていうんですよね。で「どこかで聞いた名前だなぁ〜」と思いながら読んでいたんですがハッ!と気付きまして、フェイの夫のジョナサン著アレックス・デラウエア シリーズで出てくる準主役級の刑事なんですよね。でもって、事件はアメリカからイスラエルへ、そしてまたアメリカへと戻るという展開で冒険小説っぽい要素もあり楽しめました。夫ジョナサンの「殺人劇場」という作品も物語の舞台がイスラエルだったんですけど、それよりははるかにこちらの方が楽しめると思います。何度もいいますが、ミステリとして見るより、ユダヤ民族の生き方をちょっと覗くってな気分で手にされる方が良いシリーズです。 ![]() ![]() |
正義の裁き (Justice) |
東京創元社 文庫上下巻 | 初版2008年5月30日 |
あらすじ | 愛する妻や幼い娘らと共に平和に暮らすデッカー。目下の唯一の心配事はニューヨークで大学に行っている前妻との娘のことだった。どうやら娘の周辺で女子大生がレイプされる事件が続発しているらしい。イライラを募らせるデッカーの元にホテルの1室で若い女性が殺されているとの知らせが。被害者は高校生活の最後を飾るプロムの夜、友人たちと羽目をはずしていたらしい。デッカーの心の中で被害者と自分の娘が重なる。そして、捜査線上に浮かんだのは、プロムの夜被害者と一緒にいた少年クリスだった。シリーズ第8弾。
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感想 | 正直言って冒頭から驚きの連続で・・・。というのも今までのリナ&デッカーシリーズらしからぬ展開と筋立てなんですよね。今までのシリーズ作品はミステリというよりは”ユダヤ人とは何ぞやユダヤ人にとって宗教とは何ぞや”という点が物語の骨子で謎解きは二の次という雰囲気だったわけですが、本作は普通にミステリしていて驚きました。作者は7作品を著してきて、既に言いたいことは書き切ったということなのかもしれません。で、物語はというと・・・。 デッカーの管轄区域にある高校に通う女子高生シェリルが殺され、デッカーは捜査に当たる事になる。シェリルはプロムの夜、モーテルの一室で絞殺されているのが発見されたのだが、彼女はボウタイとストッキングで縛られていた。で、捜査線上にプロムの夜被害者と共にいた男子生徒クリスが浮かぶのだが、彼は無罪を主張。彼にはマフィアの叔父がおり、見るからに怪しい人物だけど嘘発見器もパスし強硬に犯行を否認し・・・という展開です。粗筋をざっと書くといつものデッカー物と思われるかもしれませんが、本作の主人公は実は二人の高校生なんじゃないか?と思うほど今までの作品とは違う手法で描かれておりまして〜3人称で描かれる部分と1人称で描かれる部分とに分かれているんですよね。で、この1人称で描かれる部分はクリスのガールフレンド・テリーから見た目で描かれているんですが、この辺りが上手いんですよ。テリーは、18歳にしてチェロの演奏家として生計を立てているクリスから家庭教師を頼まれ、それで彼と付き合いが始まるのですが、彼は自分以外の女の子とプロムの夜にホテルに行き乱交パーティーに参加、ちゃちゃっと二回もやっちゃうような男で読者が見てもあやしいわけですよね。で、捜査陣も犯人はこいつで決まりだと思うんだけど、実はもう一つ重大な証拠物件が見つかり、クリスが本当に犯人なのか悩むデッカーは・・・といった展開で、いつものリナとデッカーの問題は全く触れられぬまま物語は進みます。これ、ユダヤ教に関して知らずとも今までの作品を読んでいないでも理解できる作品なので、途中からこのシリーズを読まれる方でも問題なくイケると思います。内容の割には読後感も良いのでお勧めです。ただし、今までの作品とは違い、S○○の描写もあるので、子供さんには読ませられないかもです。(不思議なんですが読んでいる最中、リチャード・N・パタースンに似ているなぁ〜という感覚が抜けませんで。考えるに、誰が犯人なのかギリギリラストまで読者には明かさない焦らすような手法がパタースンを思い出させたのだと思われます) ![]() ![]() |
死者に祈りを (Prayers for the Dead) |
創元推理文庫上下巻 | 初版2009年4月24日 |
あらすじ | 警部補に昇進したデッカーだったが、忙しさは相変わらずで、愛妻のリナや子どもたちともすれ違いの毎日が続いていた。そんなとき、高名な心臓の専門医が無惨に殺害される事件が発生。家族にとっては良き夫、偉大な父、仕事仲間の医師たちにとっては確かな腕と権威をもつ絶対的な存在、そして厳格なキリスト教原理主義者でもあった被害者。さらに彼が画期的な新薬の開発に関わっていたことも判明する。リナ&デッカー・シリーズ第9弾。
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感想 | ラストがちょっと哀しい終わり方なのですが、リナ&デッカーシリーズの中で1、2を争う好みの作品でした。ワタクシが今まで本シリーズを全作読んできて、一番好きな作品は『購いの日』だったんですが、本作はそれに取って代わる出来だと思います。
で、物語はというと・・・ <神の手>を持つと言われる高名な心臓移植外科医アゾー・スパークスが、自身の車の中で惨殺された。超一流の外科医で、敬虔なキリスト教徒で、6人の子を持つ良き父でもある彼を殺害したのは誰なのか?。調べを進めたデッカー警部と部下たちは、アゾーが契約金だけでも7桁を下らない新薬の開発の責任者だったことを知る。同時に、アゾーは600万ドルの保険契約を結んでいたことが分かり、相続人である子供たち6人は容疑者でもありえるわけで・・・という展開です。事件は新薬の開発を巡る殺人事件に見えたのですが、ここから二転三転する展開に引きずられ一気読み致しました。一人ね、魅力的な登場人物が出て来まして、彼に感情移入して読んでたんですが〜これ以上は書けません。このシリーズを1冊も読まれてない方でも十分に楽しめる内容ですので〜入門用にもお勧めです。 ![]() ![]() |
蛇の歯 (Serpent's Tooth) |
東京創元社文庫上下巻 | 初版2010年1月15日 |
あらすじ | 高級レストランで男が銃を乱射。悪夢のような惨状に、デッカーら捜査陣は怒りと動揺を隠せなかった。そんななか、犯人らしき男もその場で死亡しているのが見つかる。やめさせられた元バーテンダー。犯行後に自殺したらしい。誰かを狙った計画的犯行か、それとも衝動的なものなのか。動機は?デッカーは犯人と被害者たちの接点を調べ始める。リナ&デッカー・シリーズ第十弾。
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感想 | 人気のレストランで銃の乱射事件が起こり13人が死亡、30人以上が撃たれ負傷。現場には自殺と思われる男がいて、彼が犯人ということで事件は片付くかに見えたが、数々の証拠や証言は別の犯人を示唆しており・・・という展開です。ミステリとしてみると突っ込みどころがいっぱいで、いつかどこかで読んだような物語なのですよね。ですが、冒頭で描かれているレストランでの銃乱射事件の描写ははさすがだなと思わせます。予約を取るのも困難な人気のレストランに食事に来ている人々がほんの数分の間にこの世と別れを告げるのですが、ケラーマンが一人一人丁寧に人物造詣しているお陰で、事件に必死で取り組むデッカーに容易に感情移入でき、物語に入り込めます。ですが、あまりにも都合よく終わりすぎるんですよね。この作品はケラーマン入門編には向かないと思われます。リナとデッカーのファンの方だったら文句なしに楽しめますけど。 |