びっこのカナリア/片目の証人

E・S・ガードナー(Erle・Stanley・Gardner)作家紹介&作品紹介
作家名 E・S・ガードナー(Erle・Stanley・Gardner  
生年月日 1889年
没年 1970年
生誕地  アメリカ マサチューセッツ州  
処女作  不明
デビュー年
公式サイト


作家紹介

大学中退の後に法律事務所に入り、1911年に弁護士資格を取得。二年後に独立を果たすが経済的な理由から、雑誌の短篇小説を書き始め作家デビューする。1933年に発表したペリイ・メイスンものの長篇「ビロードの爪」で人気作家となる。この後、弁護士業は休止となる。1962年MWA巨匠賞を受賞。

  この作家は兎に角、著作が厖大です。昭和31年の著作にその時点で長篇80余、短篇は1700に及ぶと記されていますので、亡くなるまでの間に一体どれ程の著作を遺されたことか。メイスンものは日本でもその殆どが発表されていますが、短篇の全てを読む事は難しいでしょう。(最近、在庫なしの本が多くなってきたのでそろそろ危ない作家です・・・がるる)
  A・Aフェア、カールトン・ケンドレイク、チャールズ・M・グリーン の別名義での著作も数多くあります。A・A・フェア名義の著作は今でも人気があるので入手は簡単だと思います。
びっこのカナリア
(カナリアの爪)
早川ポケットブック 昭和31年8月15日
あらすじ 若い女が持ってきたカナリアはいわくありげだった。依頼そのものは平凡な離婚問題だが、足の不自由なカナリアはどこか謎めいている・・・ありきたりの民事事件に端を発する世にも不可解な殺人事件。びっこのカナリアに隠された秘密とは?  行動派探偵小説と称されるシリーズの中でも本格味濃厚な作品。

 
感想 いや〜〜〜〜〜っ!!おもしろかった〜〜!!この作品は1937年に発表されたもので、ペリイ・メイスンものの中でも秀作だと思います。古きよき探偵物の匂いがプンプンする「本格推理小説」です。さすがは、本格推理小説黄金時代の作品!。冒頭の不思議なシーンから、最後の奇想天外な謎解きシーンまで一気読みさせられます。  私の読んだ本は昭和31年に江戸川乱歩氏の監修により「世界探偵小説全集」と銘打たれ出版されたものです。奇想天外な幕開けから最後の法廷シーンまで、スピード感溢れる作品。文は非常に古臭いし訳も稚拙なのですが、それを吹き飛ばしてしまう程に内容が充実しています。主人公が魅力的なのは当然ですが、脇役陣(特に助手の探偵)が実に生き生きと描かれ、作品に深い味わいを与えています。  勿論、法廷シーンもあります。その法廷で「犯人は○○だ!」と明かされるシーンでは思わず身悶えをいたしました(笑)。この時代は”本格物の宝庫”だと再認識。  
 現在は「カナリアの爪」と改題され(訳者も違う)早川ミステリ文庫から出版されています。他に80作くらいのメイスンシリーズ(長編)がある。


 

片目の証人
早川ポケット・ブック 昭和31年9月30日
あらすじ 弁護士メースンは匿名の女の依頼により、新聞記事をカーリンという男に届けた。その夜カーリン邸が爆破され、男の焼死体が発見された。メイスンが爆発現場近くに住むファーゴ夫人に依頼人の目星を付けたのも束の間、彼女の夫が刺殺され夫人も失踪してしまった。・・・

 
感想 依頼人不明のまま事件が展開する本格味濃い作品だ。ガードナーが巧いなぁと思うのは出だしからスピード感がある事だ。途中で一息つく暇も無いくらい愉しませてくれる。両目では見えないが片目だと見える不思議な証人を法廷に喚問、例によって大波乱を巻き起こす。メイスンの指摘する「片目では見えるが、両目では見えない」ものとは何か?。それは読んでからのお楽しみ♪。   追記・・・私が読んだ本は昭和31年に発行されたもので、解説も面白かった。題が『があどなあ ほおだん』というのだ。”本物の検事の教科書”と題された解説には、当時のアメリカの法律について書かれている(平山 禾著)。この当時に読んだ方はミステリとしてだけではなく、知らない国の法律を知るという知的好奇心もあったのだろう。これだから絶版探しは止められない。