ボビーZの毛怠く優雅な人生/フランキー・マシーンの冬


ドン・ウィンズロウ(Don winslow)作家略歴&著作の感想
作家名 ドン・ウィンズロウ(Don winslow)
生年月日 1953年
生誕地  ニューヨーク
処女作  『 A Cool Breeze on the Underground (1991)』 (ストリート・キッズ)
デビュー年 1991年
公式サイト http://www.donwinslow.com/

作家略歴

判る範囲で著作リスト
Series Neal Carey
1. A Cool Breeze on the Underground (1991)
2. The Trail to Buddha's Mirror (1992)
3. Way Down on the High Lonely (1993)
4. A Long Walk up the Water Slide (1994)
5. While Drowning in the Desert (1996)

Novels
Isle of Joy (1996)
The Death and Life of Bobby Z (1997)『ボビーZの毛怠く優雅な人生』
California Fire and Life (1999)『カリフォルニアの炎』
The Power of the Dog (2005)『犬の力』
The Winter of Frankie Machine (2006)『フランキー・マシーンの冬』
The Dawn Patrol (2008)
The Gentlemen's Hour (2009)
Savages (2010)
About Tommy Flynn (2011)

Non fiction
Looking for a Hero: Staff Sergeant Joe Ronnie Hooper and the Vietnam War (2009) (with Peter Maslowski)


ボビーZの毛怠く優雅な人生
(The Death and Life of Bobby Z)
角川文庫 初版1999年5月25日
あらすじ  海兵隊あがりの冴えない泥棒ティム・カーニーは、服役中の刑務所で正当防衛のためにヘルズエンジェルズの男を殺し、塀の中にいながら命を狙われる身となった。生きのびる道はただひとつ。ティムの容姿が、南カリフォルニアの伝説的サーファーで麻薬組織の帝王、ボビーZにそっくりであることに目をつけた麻薬取締局の要求を飲み、Zの替え玉となることだった―。

 
感想  文句なしに楽しめました。今まで表紙が嫌いというただそれだけの理由で避けてきたのが馬鹿みたいに思えます(笑) 。ジャンルはというとコテコテの冒険小説なんですよね。勝手な思い込みでノワールだろうと決めて掛かっていたので嬉しい驚きでした。で、物語はというと・・・。
服役中の小悪人ティム・カーニーは刑務所の中で身を守るためとはいえヘルズエンジェルズの男を殺してしまう。お陰でティムはカリフォルニア州のどこの刑務所に行こうが命を狙われる破目に。刑務所内での殺人罪で有罪となれば終身刑は確実。でも刑務所内にいても命の保障は無い絶体絶命の状態から抜け出す方法はただひとつ。麻薬取り締まり局の捜査官の要求を呑み、麻薬組織の帝王ボビーZの替え玉となることだった。メキシコの麻薬王に捕らえられている麻薬取り締まり官と身柄を交換されるためにメキシコ国境へ向かったティムだが、その場でドンパチが始まり・・・という展開です。国境でのドンパチからは抜け出せた主人公のティムだけど、メキシコの麻薬王に幽閉されちゃうんですよね。でも、そのままいても殺されるだけだという事を知るわけですよ。で、ティムは何の偶然か同じ敷地内にいたボビーZの子供を連れて砂漠の中を逃げ出すんだけど、追っ手がいっぱいなんですよね。ティムに逃げられた麻薬局の人間や、ヘルズエンジェルズや麻薬王の手下から追われ敵だらけだというのにティムは6歳の子連れで、圧倒的に不利な状況にいるん だけど、海兵隊員時代に培った戦闘法を存分に発揮して窮地から脱出し続けるという展開でページを閉じるのが持ったいないほど練りに練ったストーリー展開でした。ただ、文章がちょっと癖があるんですよね。大きな特徴でもあるんだけど、物語は現在形で描かれていて、過去形の文章を読みなれているワタクシには最初、ちょっとだけ違和感がありました。ですが〜圧倒的な主人公の魅力で、読まされたなという読後感です。物語の雰囲気やなんかはジェイムズ・グレイリー著『狂犬は眠らない』っぽくて、主人公像はケン・ブルーエンの描く小悪人風という、ズバッとワタクシの好みの作品でした。
 装丁が嫌いで読まなかった作品を手に取った理由は翻訳ミステリー大賞シンジケート内で訳者の東江一紀さんが薦められていたから。読み逃している古い作品に出逢うチャンスを有難う御座いました。 作家名INDEXホームへ戻る



フランキー・マシーンの冬
(The Winter of Frankie Machine)
角川文庫 初版2010年9月25日
東江一紀/訳
あらすじ  フランク・マシアーノはマフィアの世界から足を洗ったつもりだった。地元サンディエゴで釣り餌店をはじめ複数のビジネスを営むかたわら、元妻と娘、恋人の間を忙しく立ち回り、“紳士の時間”にはサーフィンを楽しむ62歳の元殺し屋。だが“餌店のフランク”としての彼の平和な日々は、冬のある一日に突然終わりを告げる。過去の何者かが、かつて“フランキー・マシーン”と呼ばれた凄腕の存在を消し去ろうとしていた・・・。

 
感想  いや〜楽しめました。多分、ワタクシみたいな読者は少数派なのでしょうが、ワタクシはウィンズロウ作品のこのノリを求めているのですよね。だもんで前作の『犬の力』を読んだ時は確かに巧いなと思ったけども好きになれず、それで感想も書かなかったのですが〜本作は文句なしに楽しめました。特に冒頭数ページの文章は(訳文は)酔いました(笑)。もろ、好みの作品です。で、ストーリーはというと・・・
 サンディエゴの海辺で釣り餌屋を営むフランクは地元で愛されている男だ。釣り餌屋以外にも手広く商売をし、別れた妻と恋人との間を行ったり来たりしつつ、サーフィンも嗜む(?)人生を楽しんでいる62歳なのである。が、フランクの元に二人の若い男が訪ねて来たことから彼の生活は一転する。フランクは何者かに罠にかけられ、殺害されそうになったのだ。が、フランクは62歳と思えぬ身のこなしで、フランクを殺害しようとした男二人を始末し、巧みに姿をくらますのである。それもそのはず、フランクはその昔、マフィアに「フランキー・マシーン」と呼ばれた辣腕の殺し屋だったのだ・・・という展開です。フランクはその昔 マフィアの一員だった過去があるんですよね。マフィアの生活やしがらみに嫌気がさし足を洗い、一般市民に紛れ生活していたフランクだったんだけど、自身の命を狙われた事から、自分を狙うのは誰なのか突きとめるべく動き出すというシンプルな筋立てです。で、現在と同時進行で描かれるフランクの過去の回想シーンが良いんですよね。その回想シーンでは次から次へと人が死んでいくんですが、これっぽっちも湿っぽさが無い。これは、ウィンズロウの筆力なんだと思います。何故、誰に?フランクは狙われるのかという真相が開かされていく場面も見事ですが、フランキー・マシアーノという人物を創り上げた作者もお見事です。主人公が格好良くてね、一気読みは確実!お奨めです。



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