弁護/訴追/審判/遺産/聖林(ハリウッド)殺人事件


D・W・バッファ(D.W.BUFFA)作家略歴&著作の感想
作家名 D・W・バッファ(DUDLEY.W.BUFFA)
生年月日 ???年
生誕地  ???
処女作  『THE DEFENSE(弁護)』
デビュー年 1997年
公式サイト ???

作家略歴

調べてみたのですが載っているのは→くらいで『D W Buffa served as a defence attorney for ten years and has a doctorate in political science. He is now a fulltime writer and lives in Napa Valley, California.』詳しい経歴が分かりません。なので後に書き足します。

弁護
(THE DEFENSE)
文芸春秋社 単行本 初版1998年9月25日
あらすじ 正義にはふたつある。道徳上の正義と法廷での正義だ──。裁判では負け知らず、どんな被告をも無罪にしてきた辣腕弁護士アントネッリがひょんなことから引き受けた継父による少女レイプ事件の裁判。誰が見ても有罪なその父親の弁護をしたことから、事件をめぐる人々を巻き込む巧妙な犯罪計画が動き出した……。弁護士アントネッリ シリーズの第1作。

 
感想  本作はリーガル ミステリ(法廷モノ)なのだろうけど、リーガルと言いつつ、法廷シーンで愉しむっていう作品じゃないのですよね。法制度の矛盾というか〜陪審員制度の怖さというか〜法制度のハザマに落ち込んでしまった弁護士、裁判官、そして被害者の織り成す物語って感じでした。法廷シーンで活躍する敏腕弁護士の物語が読みたいって方より、人について丁寧に書き込んである作品が好きって方にお薦めです。リーガル物が苦手って方の入門編にも良いかもです(笑)。
で、ストーリーですがこれ以下、かなり突っ込んで書いていますので未読の方はご注意下さい。

 主人公アントネッリは医者の父を持ち『将来は医者になって欲しい』と思われていたんだけど、親の意向を無視して弁護士になる。古い映画やなんかを観て、お金の為じゃなく正義の為に奮闘する正義の弁護士に憧れたからだ。が、少年は大人になり弁護士として法廷に立つうちに、勝つ事のみに生き甲斐を感じるようになっていく。法廷に立てば全戦全勝、名声は高まるばかり。そんな折、12歳の少女(妻の連れ子)を強姦したという男の弁護を引き受ける事になる。法廷で少女の証言を聞いたアントネッリ弁護士は『自分の依頼人は間違いなく有罪だ。この少女を犯したのだ』と確信する。裁判官も陪審員12名も、おそらく法廷にいた全員がこの男の有罪を確信したのだが〜弁護士は男が有罪だろうが無実だと依頼人が言う限り、無実になるべく弁護をするのが自分の職務だと、普通どおり弁護活動をし〜〜〜結果、アントネッリは勝利し継父は無罪放免される。でね、無罪を勝ち取った弁護士のもとにある犯罪者(窃盗犯)が現れるのだよね。彼は留置場で無罪になった継父と同房だったと言うのだよね。留置場内で継父は『自分の義理の娘を強姦した』と吹聴していたと言うのだ。ほんで、なぜあんな男を弁護したのだ?とアントネッリは詰られるのですよ。自分は泥棒はするけど幼い子供を強姦するような人間は許せない。なぜ、そんな男を弁護できるのか?と。この継父。実は娘を強姦したのは一度きりじゃなくて、日常的にやっていたと言うのだ。それも、母親がジャンキーで、旦那に薬をもらう為に進んで自分の娘を夫に差し出していたというのだ。 そして、数年後。新たに殺人事件が起こる。この殺人事件、もし最初の裁判で正義が貫かれていたら、法制度が機能していたら、実は有罪だった男が投獄されていれば・・・起きなかった事件なワケですよ〜。面白そうでしょう?。
で、感想ですが書けません(笑)。というのも何かを書けば物語に仕掛けがあるのをバラしてしまう事になるのですよね。大した仕掛けじゃないけど、それでも読んでからのお楽しみ(笑)。謎解きのあるミステリとして読むなら、まぁ普通の出来ですけど、この作家 処女作でこれだけ書ければ御の字なんじゃないかと思います。魅力のある作家なので続きが楽しみです。(シリーズ化されているそうなので♥) 作家名INDEXホームへ戻る



訴追
(THE PROSECUTION)
文芸春秋社 文庫 初版2001年7月10日
あらすじ  二度と法曹界へは戻るまいと隠遁生活を送るアントネッリだったが、親友のホラスから呼び戻され、今度は弁護士としてではなく特別検察官として法廷に立つ事になる。やり手の地方検事補が取調べ中の殺人犯に妻殺しを嘱託した疑いで地元警察に逮捕されたのだが、検事局に任せれば訴追されるかどうかも疑わしいので部外者のアントネッリに白羽の矢が立ったのだ。初めて有罪にする側に回ったアントネッリは・・・。

 
感想  いやぁ〜面白いですね〜(笑)。この作品ですね、前半で嘱託殺人で裁かれる検事補を有罪にすべく奮闘するアントネッリを描き、後半で別の事件の法廷シーンがあるのですよね。で!その後半からが俄然面白いのですよ。冒頭の裁判は(といっても270頁も費やされている)はっきり言って退屈です。読み流しちゃっていい感じ(良いのか?!)なのですが〜第二の事件が起こってからが一気読み確実。後半の事件で殺人罪で裁かれるのは、シリーズ第1作にも登場した魅力的なホラス検事の妻アルマなのですよね〜。わたしは、この作家の作品を今まで2冊読んだわけですが、どういうワケかリーガル物だと思って読んでおりません。裁判のシーンがあるから間違いなく法廷モノ、リーガルスリラーなのでしょうが、それ以外の描写が良くて読んでいるのですよね。本作も親友とその妻を必死で弁護するアントネッリや妻を必死で護ろうとするホラスの描写が良くて、楽しめた〜って感じです。そうさな、法廷モノというより愛の物語なんでしょうね。ワタクシ、愛だ恋だなどがベタベタと描かれている作品は苦手なのですが、この作者の描く愛は受け入れられます(笑)。オチは・・・もうちょっと捻って欲しかったけども、ってか第一部の事件を削って第二部だけ書き込んで欲しかったなぁ〜。作家名INDEXホームへ戻る



審判
(THE JUDGMENT)
文芸春秋社 文庫 初版2002年7月10日
あらすじ  弁護士アントネッリの旧知の主席判事が刺殺される。外部通報により捕まった容疑者のホームレスは自供した後に自殺。ほどなく後任の判事も同様の手口で殺される。やはり外部通報で逮捕されたのはホームレス。模倣犯として処理しようとする警察に対し、関連性を捨てきれないアントネッリは、2件目の容疑者の弁護を買って出る。

 
感想  弁護士アントネッリ(主人公)の宿敵判事が、何者かに腹を切り裂かれ惨殺される。この殺された判事、法律家としては優れていたのだが、判事としてみるなら最低、人間としてみるなら最悪と評され敵は数知れず、なので警察の威信をかけた捜査も難航していた。が、匿名通報により容疑者が浮上、逮捕されたホームレスは判事殺害を自供した後に不可解な(?)自殺を遂げてしまう。警察は一件落着と捜査を終了するが、殺された判事の後釜に座った判事も前の判事と同じように腹を切り裂かれて殺される。殺された手口は全く同じだが、前の事件の容疑者が自殺している以上、今回の事件は模倣犯の仕業だとして捜査が行われる。そして〜前回の事件と同じく匿名の通報によりホームレスが逮捕される。彼は自分の名前も生まれた場所も供述できないほどなのだが(幼い頃から虐待を受けていて人間として教育を受けていない為、成長が止まっている)警察はこの青年を訴追する。アントネッリはこの青年の弁護を買って出るが・・・という展開です。粗筋を略して書くと↑な感じなのですが〜なぜアントネッリが判事を宿敵というのかが冒頭から過去を振り返る形で語られます。この冒頭から物語に引きずり込まれるのですよね。この冒頭で語られる過去の事件が今現在の判事殺害事件に絡んでくるのですが〜ネタバレになるのでココで止めます(笑)。
 バッファの作品を『弁護』『訴追』と読んで来て、3作目の『審判』が一番、法廷モノらしい作品だと言えます。それに、ワタクシ好みの展開なのですよね(笑)。この作品が突出してプロットが良いのもあるけれど、作品に描かれている人物達の生き様というか人間模様というか、それが丁寧に描かれているので、感情移入が容易に出来、一気読み出来ました。ただ、この作品をミステリとして読むなら評価が分かれると思います。謎解き重視の方が読まれたら展開がトロい、モタモタしていると仰るかも。なので〜謎解きは二の次、人物造詣が良い作品が好みと仰る方にお薦めします。特にバッファの作品を読んでみようと仰る方!最初にこれを読んでみて、もし肌に合わなければ、この作家自体が合わないんだと思われます(笑)。相性診断には(?)最適な作品です〜。
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遺産
(THE LEGACY)
文芸春秋社 文庫 初版2004年10月10日
あらすじ  次期大統領を目指すカリフォルニア州上院議員が路上で射殺され、黒人医学生が容疑者 として逮捕される。大物政治家殺人事件の容疑者を弁護したがる弁護士は地元にはおら ず、被告側弁護人としてアントネッリに白羽の矢が立った。“ゆきずりの殺人”として 処理したい検察に対し、“陰謀”のにおいを嗅ぎ取ったアントネッリ。事件の鍵を握る 人物から、予想をはるかに超える罠の存在を知らされるが……。

 
感想  ここまで読んできて新刊以外は全作読んだ事になるのですが、一番気に入っているのは『審判』で二番目が本作『遺産』ですね。尻上がりに良くなっている印象があるけども、正統派リーガルサスペンスを好まれる方にはどうだろう?(笑)。相変わらず裁判シーン以外の肉付けは良いんだけど、法廷内での丁々発止のやり取りにはチト何かが足りないなぁ〜とも思うし。
で、感想。今回の被告人は苦学生。貧乏な黒人家庭に生まれた青年は、医者になりたくて働きながら勉学に勤しんでいる。で、学費を払う為にしていたバイトの帰り道で銃声を聞いてしまう。一瞬、怖いとは思ったんだけど銃声のした方角へ向かうと車が止まっていて中には血を流している男が。で、助けようと車の中に入るが〜いきなり外から懐中電灯で照らされ犯人が戻ってきたのかと怯えた青年は逃げ出してしまう。が、その懐中電灯は警官のモノで青年は発砲され負傷、で逮捕され訴追される。被害者は次期大統領候補だった上院議員だったので、地元の弁護士で黒人青年の弁護を引き受ける者はおらずアントネッリが弁護を依頼され・・・という展開です。相変わらず人物造詣やなんかの肉付けは良い感じなので、サクサクと読み進めますが・・・ラストの評価は割れるだろうなぁ(笑)。オチでどんでん返しが用意されているんですが、物語の途中から『この人の生死が鍵なんだろうな』と読者には分かってしまうのですよね。まぁ、主人公の弁護士を無敗、常勝って風に人物造詣しているので、シリーズが進んでくれば無理も出て来るんだろうけど。あ!それとこの作品は過去の作品を読んでいなくても問題なく読める作品ですので、試しに読んでみたいといわれる方にはお勧めです。 作家名INDEXホームへ戻る



聖林(ハリウッド)殺人事件
(STAR WITNESS)
文芸春秋社 文庫 初版2006年11月10日
あらすじ  ハリウッドの有名女優が殺され、夫である有名映画監督ロスが逮捕される。アカデミー賞を受賞し、自分が育てあげた女優を妻にし、ハリウッド一のスタジオを経営し、絶頂期にあるロスがなぜ?。 いまや全米にその名を知られるアントネッリが弁護を引き受けるが、証拠はロスに不利なものばかり。ロスは裁判そっちのけで、自分の無実を証明するための映画作りに熱中する……。

 
感想  まず題名について。ミステリを普段読まない読者を引っ掛ける気か?はたまたチャンドラーファンを引き込む気か?それとも本格ファンをも取り込もうという魂胆なのかは分からないけど〜この題名で、読んだ事の無い作家の作品だったら絶対に買っていませんね(キッパリ)。新刊を買うときって、装丁や題名で買う事って案外と多いのに、これじゃリック・リオーダンの『ホンキートンク・ガール』と良い勝負・・・以下自粛。
ストーリーは・・・ハリウッドの有名女優が自宅のプールで何者かに殺害された。その犯行時刻に自宅にいたのは被害者とメイドと被害者の旦那である有名映画監督だけ。自宅は防犯カメラとセンサーによって警備されており、外部から侵入された形跡は無い。ゆえに旦那は逮捕される。名の売れた刑事事件専門弁護士のアントネッリが弁護を引き受けるが、誰がどう見たって負けそうな裁判で〜といった展開です。
で、感想。なんとなくどこかで読んだ事のあるような既視感が気になりますが、まぁ楽しめました。映画界という特殊な世界を舞台にした事でリーガルミステリを苦手とする人にも読み易い作品に仕上がっていると思います。ただ〜法廷物だと思って読まれた方にはチト物足りないかもしれません。それと、ラストが〜ラストの3行が読者の評価を真っ二つに割りそうな予感が(笑)。



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