兄の殺人者 (My Brother's KIller) |
東京創元社文庫 |
初版2010年5月28日 |
あらすじ |
霧の夜、弁護士事務所の共同経営者である兄オリバーから急にオフィスに呼び戻されたサイモンは、そこで兄の射殺死体を発見する。傲慢かつ自信家で家庭内の不和と仕事上の軋轢を抱えていたオリバーは殺される理由に事欠かなかった。捜査の過程で次々と暴かれる兄の忌まわしい秘密。彼は卑劣な犯罪者であったが故に殺害されたのか?。兄の汚名を雪ぎ、第一容疑者となった友人を苦境から救うため、サイモンは自ら調査に乗り出すが・・・。
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感想 |
何となく避けてきたディヴァイン作品ですが、ついに読んでみました。なぜ、読めたのかというと週に4日も酒を抜いているので、魔が差した(?)のだと思われます(笑)。で、なぜ避けてきたのかというと〜冒険小説やスリラー、ハードボイルドが台頭してきた1960年代以降に書かれた本格ミステリというのが引っ掛かってたんですよね。幼い頃ならいざ知らず、今更 トラディショナルな本格ミステリなど・・・と腰が引けてたわけです。が、実際に読んでみると、時代を感じさせない作品で、読んでみて良かったなというのが正直な感想です。兄が殺された後、実は兄は卑劣な脅迫者だったという証拠が出てくるんだけど、その事実を受け入れられない弟サイモンが自身の手で、真犯人を探すというオーソドックスな内容なんですが、この時代の本格物には珍しく(?)人物造形が自然で、1960年代の作品と感じさせません。それに、霧を小道具にした風景描写と事件の複雑さとが絡まって良い雰囲気を出していて、これぞ英国風だなぁ〜と感じ入りました(笑)。読者を無理やっこミスディレクションしていく本格物が嫌いなワタクシでも読めましたので、万人受けする作品じゃなかろうかと思われます。本格物なので、これ以上本筋に触るとネタバレに繋がるので、ここで御免っ。
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