ホーギー&愛犬ルル シリーズ笑いながら死んだ男/真夜中のミュージシャン/フィッツジェラルドをめざした男/猫と針金/女優志願/自分を消した男/傷心/殺人小説家

ミッチ・バーガー シリーズブルー・ブラッド/シルバー・スター/ダーク・サンライズ
ラッセル・アンドルース名義ギデオン 神の怒り


デイヴィッド・ハンドラー(DAVID HANDLER)作家略歴&著作の感想
作家名 デイヴィッド・ハンドラー(DAVID HANDLER)
生年月日 1952年
生誕地  ロサンゼルス生まれ
処女作  『KIDDO』
デビュー年 1987年
公式サイト http://www.davidhandlerbooks.com/


作家略歴

1952年、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業後、ニューヨークのコロンビア大学大学院でジャーナリズムを専攻。新聞のコラムニスト、ブロードウェイ評論家を経て、小説『KIDDO,BOSS』で好評を博す。現在でもハンドラーはアメリカの『TVガイド』をはじめ数々の雑誌に記事を書く一方、テレビドラマの脚本も執筆しており、中でも『KATE AND ALLIE』『THE SAINT』ではエミー賞を受賞した。元売れっ子作家のゴーストライター“ホーギー”と愛犬ルルを主人公にした「フィッツジェラルドをめざした男」でMWA賞を受賞。

注・・・この作家の初期作品は殆どが絶版ですが、地味に(?)売れたようなので古本で簡単に手に入ると思います。

著作リスト(作品名の後にある数字は本国での発表年度です)
Series Danny Levine
Kiddo (1987) First Novel
Boss (1988)
A Stewart "Hoagy" Hoag Mystery
1.The Man Who Died Laughing (1988)講談社文庫『笑いながら死んだ男』
2.The Man Who Lived by Night (1989)講談社文庫『真夜中のミュージシャン』
3.The Man Who Would Be F. Scott Fitzgerald (1991)講談社文庫『フィッツジェラルドをめざした男』 (2006/01/18) 1991 Edgar Awards Best Original Paperback Winner
4.The Woman Who Fell from Grace (1991)講談社文庫『猫と針金』
5.The Boy Who Never Grew Up (1991) 講談社文庫『女優志願』
6.The Man Who Cancelled Himself (1995) 講談社文庫『自分を消した男』
7.The Girl Who Ran off with Daddy (1996)講談社文庫『傷心』
8.The Man Who Loved Women to Death (1997)講談社文庫『殺人小説家』

Mitch Berger and police trooper Desiree "Des" Mitry Mysteries
1.The Cold Blue Blood ( 2001)講談社文庫『ブルー・ブラッド』
2.The Hot Pink Farmhouse (2002)『芸術家の奇館』
3.The Bright Silver Star (2003)『シルバー・スター』
4.The Burnt Orange Sunrise (2004)『ダーク・サンライズ 』
5.The Sweet Golden Parachute (2006)
6. The Sour Cherry Surprise (2008)

Other Stories(シリーズ外)
Click to Play (2009)

Russell Andrewsという別名義(共著)でも著されています。判明している題名は
『Gideon (1999)』講談社文庫『ギデオン 神の怒り』
『Icarus (2001)』
『Aphrodite (2003)』
『Midas (2005)』
『Hades (2006)』

ホーギー&愛犬ルル シリーズ
笑いながら死んだ男
(THE MAN WHO DIED LAUGHING)
講談社 文庫 初版1992年10月15日
あらすじ  元超売れっ子のコメディアン、ソニー・デイの自伝執筆のためにロスを訪れたホーグ。だが招かれた豪邸のベッドには、ソニーの写真を肉切り包丁で刺しつらぬいた枕が置いてあった。続いて届いた死の脅迫状。(邦訳順番から言うと三作品目なのですが、シリーズ第一作です)

 
感想   伝説のコメディアン、ソニー・デイは今は落ちぶれた存在だが、再起を賭け自伝を出そうとする。ホーグはソニーの豪邸に招かれ、自伝執筆のために彼の生い立ちや、何故売れに売れていたその時にコンビ解消をしたのかを聞き出そうとするが、何者かから脅迫状を受け取り〜といったストーリーです。
このシリーズ、面白いですね(笑)。シリーズの途中から読んでいるワタクシですが、この作品を読んでますますこの主人公と愛犬ルルのファンになりました。ストーリーは決して褒められたモンじゃない(在り来たりなので)けど、登場人物たちの魅力で読まされるのですよね。後に脇役として出てくるヴィック・アーリーも最初から、このシリーズに出ていたんだなぁ〜この作家、最初からシリーズ化するつもりで書いたんだなぁって(笑)。謎解きのあるミステリとしても読めるし、エンタメとしても読めるお勧めシリーズです。
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真夜中のミュージシャン
(THE MAN WHO LIVED BY NIGHT)
講談社 文庫 初版1990年3月15日
あらすじ  なぜかキャット・フードが大好きなバセット・ハウンド犬のルルを連れて、売れなくなった元ベストセラー作家の僕は、ロンドンにやってきた。ロックンロール世代が神とあがめた(今は大金持ちになり疲れ切っている)T・Sの自伝を書くためだ。輝いていた時代。青春。少し不器用に、優しく生きていた僕たち。だがその陰に恐るべき犯罪が―。

 
感想  今回の舞台はロンドン。ロック・スターの自伝を書くためにロンドンに渡ったホーギー&ルルだが、別れた妻のメリリーも、芝居の公演のためロンドンにやってきていた。久々の再開を果たす二人は良い雰囲気で過ごすのだが〜なぜかホーギーが狙撃され、殺人事件まで起きて・・・という展開です。有名人の自伝を書くために過去をほじくり返すホーギーに危険が迫り、殺人事件まで起こるといういつもの展開なのですが、伏線でホーギーと元妻メリリーとのロマンス(?)も描かれていて、途中からこのシリーズを読んでいるワタクシには解説書(入門書?)のような意味合いを持つ作品でした(笑)。それと、実在する歌手や俳優の名前がばんばん出てくるので、妙に笑えるのですよね〜。クラプトン、マッカートニー、ジミー・ペイジが小説の登場人物と共に演奏する〜なんて場面もあったりして笑えます。(謎解きはそう褒められたモンじゃないけど、それ以外で楽しめました。それと〜この作品がシリーズの後半で活躍している家政婦パムとの出会いの作品となります) 作家名INDEXホームへ戻る



フィッツジェラルドをめざした男
(THE MAN WHO WOULD BE F.SCOTT FITZGERALD)
講談社 文庫 初版1992年1月15日
あらすじ  花々が咲きそろった明るい春のニューヨーク。バセット・ハウンドの愛犬ルルを連れたもとベストセラー作家の僕は、彗星の如く現われた若き天才作家ノイエスの伝記を依頼された。が、作業に取りかかった僕の行手には次々と死体が―。

 
感想  舞台はニューヨーク。主人公のスチュワート・ホーグ(通称ホーギー)は元売れっ子作家で、その元妻はハリウッド女優という華々しい登場人物ばかりのわりには、なぜか牧歌的な雰囲気が漂います(笑)。主人公は元売れっ子作家なんだけど、挫折して書けなくなりゴーストライターで糊口を凌いでいる寂しげな男なのですよね。ですが、主人公の愛犬ルルやホーグの助手ヴィックの愛らしさ(?)のお陰で殺人事件が連続して起ころうが、なぜかホノボノとした展開です。至るところに散りばめられた映画ネタで笑えるし、登場人物の会話は愉しいし、脇役に至るまで魅力的だし〜で、引き込まれます。これだけ登場人物について丁寧に書き込んである割には謎解き部分もしっかりしているし、これでMWA賞を受賞したというのも頷けます。こんな面白いシリーズを今まで読まずにいたなんて不覚でした(笑)。それと〜G・M・フォードのファンの方にお薦めしたい作品です。何となくですが、語り口や人物造詣やなんかが似ているのですよね。 作家名INDEXホームへ戻る



猫と針金
(THE WOMAN WHO FELL FROM GRACE)
講談社 文庫 初版1993年10月15日
あらすじ  灼熱の恋が、ヴァージニア州の崩れゆく大農場を舞台に燃えた―。南北戦争を舞台のこの大歴史ドラマは、瞬く間にブロードウェイを、ハリウッドを舐め尽し、世界を圧倒した。だが続編の執筆は作者の事故死後50年間、なぜか禁じられていた。今、執筆を依頼されたホーギーの前にまたまた屍の山が築かれる。

 
感想  このシリーズ、何故か版元も読者も『都会派ミステリ』だと言うんだけど〜どうしてこれが都会派なのかワタクシにはよく分かりません。とても、のどかな雰囲気の作品なので、たとえ主人公や脇役がハリウッドに現れようがニューヨークに居ようが牧歌的な気がするんですけどね(笑)。
 今回の舞台はヴァージニア州の歴史ある大農場。南北戦争時代を生き抜いた女性を描いた大ヒット小説『オゥ、シェナンドゥ』の続編を書く仕事を引き受けたホーギーは、舞台となる農場へ赴くのだが、到着早々死人が出る・・・という展開です。ホーギー シリーズらしい展開で楽しめたのですが〜他の作品よりは劣るかなぁ〜という印象です。『真夜中のミュージシャン』に出ていた味のある脇役パメラが再登場していて、シリーズを欠かさず読まれている方には重要作品でしょうか?。   作家名INDEXホームへ戻る



女優志願
(THE BOY WHO NEVER GREW UP)
講談社 文庫 初版1995年9月15日
あらすじ  離婚スキャンダルで苦境に立つ若き天才監督マシュー・ワックスの伝記執筆のため愛犬ルルを伴ってハリウッドに乗り込んだホーギー。マシューを囲む人人には、それぞれ明かされたくない過去があった。そして、ついに殺人が…。愛と憎しみが交錯する映画界を舞台に謎に迫るホーギー。

 
感想  超有名映画監督マシューは苦境に立たされていた。離婚した妻が結婚生活を洗いざらい暴露する自伝を出版するというのだ。そこでマシュー側も対抗して自伝をという事で、売れっ子ゴーストライターのホーギーが招かれる事になる・・・という展開です。自伝のゴースト作家としてマシューと接触するホーギーは、自伝を書く為にマシューの過去を聞きだそうとするのですよね。ですが〜彼の周りには過去を穿り反されたくない人が大勢居て、ついには殺人事件が起こります。ホーギーが動く事によって事件が起こるという展開は今まで通りなのですが、本作はいつもの作品とはちと違います。この作品、650pもある大作なのですが、無駄にページ数が増えているわけじゃないのですよね〜。ホーギーと依頼人との絡みが密に描かれているし、事件にかかわる人々の描写が細やかだし、何より事件に纏わる伏線を丹念に張り巡らしてあったりで、厚みの割にはあっという間に読了出来ました。
今までこのシリーズを追い掛けて読んできて思うのですが(順番はバラバラですが)この作品が一番楽しめた、出来が良かったという気がします。主人公の愛する元妻メリリーの登場は殆ど無いのですが、主人公ホーギーと執筆の依頼人である有名映画監督との絡みが良い、人間模様の描写が良いのですよね〜。笑えて、そしてちょっと切なくて、このシリーズの良さが全面に出ている気がします。このシリーズを途中から読まれる方には、この作品から入られる事をお薦めしますね。ただし、絶版ですがね(汗。
愛犬ルルの描写が多いので、犬好きの方にもお薦めです。 作家名INDEXホームへ戻る



自分を消した男
(THE MAN WHO CANCELLED HIMSELF)
講談社 文庫 初版1999年5月15日
あらすじ  『アンクル・チャビー・ショー』は、全米最大の人気番組だ。「俺はテレビで一番笑える男なんだぜ」主演のライルは、カリスマ的な人気を誇るコメディアン。だが、スタッフの誰もが憎む暴君だった。自叙伝執筆を引きうけた“ホーギー”はTV業界の陰謀渦巻く制作現場に乗り込む。そこでは不穏な空気が立ちこめていた…。人気絶頂のコメディアンに隠されていた恐るべき秘密とは?ホーギー・シリーズ第6弾。

 
感想  今回はショービジネス界が舞台です。ホーギーの元を訪れたのはテレビ界のスター、ライル・ハッドナット。彼はお茶の間の、そして子供たちのアイドルだったのだが、ポルノ映画館で昼日中にマ●をかいていた所を逮捕され、視聴率ナンバー1の番組を打ち切られ役者生命はこれまでかと思われていた。が、高視聴率をとれる番組を熱望する製作側は番組の再開を決定する。そしてライルは全てを明らかにすることを条件に自伝を執筆する事になり、ホーギーに執筆を頼むが〜〜〜というストーリー展開です。今度もホーギーが自伝のゴーストライターを務めることになった途端、事件が頻発します。舞台セットに爆弾が仕掛けられ吹っ飛ばされ、撮影現場で饗された食事に毒物が混入され、ついには死人が出たりで相変わらずの展開です(笑)。なぜ、作家の周りでことごとく殺人事件が起こるのかという疑問符はいつも付いてまわるのですが、それでも楽しめます。このシリーズは純然たるミステリの形式をとってはいるのですが、ミステリ以外の部分が愉しいのですよね。ホーギーと元妻メリリーの恋の行方や準レギュラーのヴィックやヴェリーの魅力、そして愛犬ルルの愛らしさで読まされるといった感じです。それと、本作はラストが感動的なのですよね(笑)。ネタバレになるので書けませんが、お薦めです。 作家名INDEXホームへ戻る



傷心
(THE GIRL WHO RAN OFF WITH DADDY)
講談社 文庫 初版2001年6月15日
あらすじ  53歳離れた義父ソアと駆け落ちしたクレスラは有名人の母から夫を奪った娘として自叙伝を依頼される。ゴーストライターを頼まれたホーギーはクレスラを取材するうちに、彼女の心の闇に気づく。スキャンダルや中傷が飛びかうなか、ソアが惨殺された。ホーギー・シリーズ第7弾。

 
感想  笑えます。この作品でも愛犬ルルが良い味を出しているのですよね〜。飼い主であるホーギーとメリリーの間に子供が生まれたため、疎外感を感じるルルが自殺を試みようとする場面では大笑いいたしました。犬が入水自殺を試みるなんて変なの〜と思いはするのですが、その入水自殺を止めようとした飼い主ホーギーが池の底から死体を発見するという展開で、この作家巧いなと(苦笑。犬好きの方には楽しめるシリーズだとは思っていましたが、シリーズも後半になるにしたがって、ルルがどんどん人間臭く(?)なっていて準主役といった雰囲気です。今回は親子関係、近親相姦(?)、子育てなどなどの重いテーマが横たわっているのですが、それでも笑いながら読めるのは人物造詣の巧さでしょうか。今回もヴェリー警部補が登場しますので、シリーズを追いかけているファンには嬉しい展開が続きます。   作家名INDEXホームへ戻る



殺人小説家
講談社 文庫 初版2005年6月15日
あらすじ  差出人不明の封筒が、小説家ホーギーのもとに届く。なかに入っていたのは、小説の第1章と礼儀正しい添え状だった。書き手の才能に驚いたホーギーは、翌朝、さらに驚くべき事実を知ることになる。小説に書かれていたとおりの殺人事件が起きたのだ。警察が捜査に躍起になるなか、二番目の犠牲者が発見される。 シリーズ8作目。

 
感想  なぜかこの作品だけ趣が違います。さすがに、毎度毎度同じ手法で(ゴーストライターの仕事中に事件に巻き込まれる)主人公が事件に巻き込まれるっていう展開も使い難くなったのでしょうか?。作者が苦しんでいるのが見えるような気がする(笑)。
 メリリーとよりが戻り、家族四人の仲(?)も巧く行っていて、幸せな生活を送るホーギーにアンサーマンと名乗る謎の男から、小説の第一章だけが送りつけられて来る。書き手の才能に驚いたホーギーは翌朝、更に驚く事になる。小説に描かれていた殺人事件が実際に行われていた事を知ったのだ。すぐさま、友人(?)の警部ヴェリーに連絡を取るが、ホーギーの元には第二章が届けられ、第二の殺人事件が・・・というストーリーです。今回、笑いっぱなしっていう作品じゃありませんでした。というのも事件がホーギーの過去というか〜ホーギーが過去に知り合った人たちが事件の渦中にいるのですよね。これ以上書くとネタバレになるので書けませんが、切なくなる読後でした(笑)。(このシリーズは1997年以降、書かれていないのですが、これで打ち切りだと言われても驚かない気がします。作者も書き難いんじゃないかな〜) 作家名INDEXホームへ戻る



ミッチ・バーガー シリーズ(Mitch Berger and police trooper Desiree "Des" Mitry Mysteries )
ブルー・ブラッド
(THE COLD BLUE BLOOD)
講談社 文庫 初版2006年4月15日
あらすじ  ミッチ・バーガーは、NYで最も権威のある新聞コラムを担当する映画批評家。コネティカット州のビッグシスター島で生活をはじめた彼は、家の前に埋められていた死体を発見してしまう。女性警部補とともに犯人を追いはじめるが、死体の数が次々と増えていく…。

 
感想  面白いです。かなり楽しめました(笑)。で、何が面白いかっていうと〜謎解きの部分ではありませんね(キッパリ)。でも、なんかね、不思議な作風で惹かれるのですよね。
冒頭、いきなり女性が撃ち殺される場面から始まります。で、場面は変わって・・・映画評論家の主人公ミッチが、執筆の為に借りた離れ島のコテージ前の畑を掘り起こしたら男性の腐乱死体を発見してしまう。死体はミッチが借りたコテージの家主の旦那で、金を持って愛人と逃げたと思われていた。で、冒頭で撃ち殺された女性とこの男は同じ銃で殺された事が判明し・・・というストーリーです。風光明媚な島は名門ペック家所有で、住んでいる人々はわずか7人。それなのに次々に死人が出てという展開なのですが、なぜかホノボノした物語なのですよね(笑)。コージーミステリでは無いんだけど、それに近い牧歌的な(?)雰囲気漂うミステリです。謎解きの部分に関して言えば、イマイチだと思うけれど(掟破りな結末なので)、謎解き無しでも十分に楽しめる出来でした。この作家、人物造詣や描写が巧いのでしょうね。他の作品も読んでみたいと思わせる出来でした。続編の翻訳を心待ちにしています。 作家名INDEXホームへ戻る



シルバー・スター
(The Bright Silver Star)
講談社 文庫 初版2009年1月15日
あらすじ  コネティカット州の閑静な村ドーセット。映画批評家ミッチ・バーガーが住むこの地は、若きハリウッド・スター夫婦と二人を追うマスコミのせいで最近騒がしい。そして突然起きた、衝撃的な転落死事件。ミッチと女性駐在デズが死の真相を探る中、人々の意外な素顔や関係が明らかに…。シリーズ第3作。

 
感想  プロローグは、名前を伏せて描写されていて、恋人同士が滝のそばで密会をしている場面から物語は始まります。片方が「関係を終わりにしよう」と恋人に告げ・・・実は相手を崖下に突き落とそうと目論んでいたんだけど・・・この人、突き落とそうと思っていた相手に不意を衝かれ崖から突き落とされ死んでしまうんですよね。で、物語は過去へと遡り〜180ページまで読んだ所で、冒頭で突き落とされて死んだ人がだれか読者には分かるという展開なんですが・・・。そうなんですよね。この名前を伏せた状態でプロローグの幕が開き、謎の人物が死に、そんでもって過去へと遡り、なぜ冒頭の人物が殺されたのか読者に分かるという展開は前作の「芸術家の奇館」と丸っきり同じです。シリーズ第1作の「ブルー・ブラッド」も全く同じような始まり方をするのでこれがお決まりのパターンと決めて書かれているのでしょうが、読み手からすると飽きたというか、趣向を変えて欲しいというか、ゴニョゴニョ。作中で「クライマックスのためにストーリーの根拠として、それに先立つシーンを挿入する」ことをハリウッドではレトロフィッティングと呼ぶと主人公が語る場面があるので、作者もワンパターンな始まり方は決まりごとでこれがこのシリーズのスタイルなのだと言い訳(?)しているのかもしれません(笑)。まぁ、正直言うとこういう結末から始まる物語は何を書いてもネタバレになるので感想が描き難く困ってるだけなんですけどね。相変わらずミッチ・バーガーもその彼女のデズも魅力的で、謎解き以外の部分で十二分に楽しめました。ミステリとしてみるなら突込みどころは多いんですよね。ドーセットという閑静な田舎町でそんなに何度も連続殺人事件が起こるのは無理があるよなぁ〜とか思うんですけど、それでも楽しめるし、殺人が起こりその殺人にはドロドロした理由があるんだけどでも読後感は良いですしね。
ただし〜読みながらずーーーーっと混乱しているんですけど「かなり太めだけどキュートで女性にモテモテなユダヤ系アメリカ人」ってのが想像できません。ミッチはどんな風貌なんだろうなぁ〜だれか似た俳優さんはいないのかな?。映画化して欲しいなと思う作品です。 作家名INDEXホームへ戻る



ダーク・サンライズ
(The Burnt Orange Sunrise)
講談社文庫 初版2009年11月13日
あらすじ  伝説の女性映画監督が50年ぶりにアメリカに帰国、彼女の娘夫婦が経営するホテル、アストリッド城に映画評論家のミッチが招待された。恋人の女性警官デズと訪れた夜はあいにくの猛吹雪。そして断崖に建ち外界から隔絶されたホテルの中で、恐るべき事件が発生する。シリーズ第4作。

 
感想  非常に古典的なミステリで驚きました。ってか、ひさびさに本格ミステリっぽい仕掛けの物語に出会ったので(出遭った?)笑いました(笑)。作者はよほど自信があって読者に挑んだのでしょうが〜陸の孤島で起こる連続殺人事件なんですよね。で、どんな物語なのかというと・・・
コネチカット州ドーセットにあるビックシスター島に住みはじめたミッチ・バーガー(映画評論家)は、島で初めての冬を過ごしていた。先日の嵐で、本土とビッグシスター島を繋ぐ橋は車の通行が不能になっているけれど、もともと人付き合いが苦手なミッチには何の苦にもならない。そんなミッチに嬉しい出来事があった。ミッチが尊敬して止まない映画監督エイガ・ガイガーが、娘夫婦の経営するプチホテルのアストリッド城にやって来たのだ。94歳という高齢ながら今も気骨に溢れるエイダ。ミッチは夕食の誘いを受け、恋人のデズとアスリッド城を訪れたのだが、その夜はあいにくの大吹雪。デザートも食べ終わらぬうちに停電。コネチカット州全域が停電し、地上道路のほとんどが通行止め、非常事態宣言が出されようとしていた。ミッチのいるアストリッド城も敷地内や城に通じる道路脇の古木がバタバタと倒れ、外界と完全に孤立してしまう。デズとミッチはアストリッド城に一晩、泊まることになるのだが、朝には死体が発見され・・・という展開です。電話も通じず電気も使えず、城に足止めを食らったミッチとデズは殺人事件に巻き込まれるのですが、外界との接触を絶たれた中で起こった事件なので、犯人は間違いなく城にいる人々の中にいるわけですよね。で、犯人は誰だ?というパズル色の強い展開で進んでいくのですが〜こういう作品は他人の感想など読まずに挑まれた方が良かろうかとココで終わります(笑)。本格物っぽい展開ですが、いつものようにホノボノしたミステリなので、謎解きに期待される方には不向きな作品かもしれません。ワタクシはというと、謎解きよりもミッチとデズの関係の行方の方が面白かったかも(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る


ラッセル・アンドルース名義作品の感想
ラッセル・アンドルース(RUSSELL ANDREWS)とはデイヴィッド・ハンドラーとピーター・ケザーズ(PETER GETHERS)が小説を共同で執筆する際のペンネーム。

ピーター・ゲザーズ(PETER GETHERS)
テレビ・映画の脚本家であり小説家。著書に『ゲッティング・ポイント(新潮文庫』『パリに恋した猫(二見書房』『猫と暮らしたプロヴァンス』他がある。ニューヨーク在住。

ギデオン 神の怒り
(GIDEON)
講談社 文庫 初版2001年2月15日
あらすじ ある殺人を告白した“手記”の小説化を極秘に依頼された作家カール。だが作品の出版を前に編集者は殺され、カールも命を狙われる。一体、手記の筆者は誰だ?真相を追うカールの前に現れた、殺人者の驚愕の正体とは?。

 
感想 ニューヨークの安アパートに住む28歳カール・グランヴィルはゴーストライターで糊口を凌いでいる小説家志望の男。その彼にやり手編集者として出版界に名を知られるピーターソン女史から仕事の依頼が入る。『ある女性の手記を小説化したいのでゴーストライターをやらないか?報酬は破格、前金は5万ドル!出版されればベストセラー間違いなし』という話しだが、一つ条件があって出版まで全てを極秘にという。悩むカールだが、仕事を引き受ければ最近作を大手版元から出版させてあげると言われ承諾する。そして、小説がほぼ完成するという矢先、ピーターソン女史が自宅で惨殺される。仕事はどうなるのかとピーターソン女史の雇い主に会うが『そんな話しは知らない』と門前払いされる。で、家に帰ると自宅は何者かに荒らされていた!。そしてカールは容疑者として追われ・・・という展開です。 で、感想ですが面白いですね〜〜〜。この作品、741頁もあるんだけど、その厚さを忘れさせるテンポがあります。ラストね、ここまで物語を大きくしないでも良いんじゃないか?って突っ込みたい気分にはなりましたが、娯楽小説として読むなら良い出来だったと思います。ハンドラー名義で書かれた作品から笑える文章を引いて、ミステリ色を足した・・・って感じの作品です。ハンドラーファンなら間違いなく楽しめる出来だと思います。お勧めです。



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