ディック・フランシス あらすじ&感想

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ディック・フランシス&フェリックス・フランシス(共著)
祝宴審判拮抗

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ディック・フランシス 作品あらすじ&感想
興奮 HPB・文庫 For Kicks 
あらすじ 最近、イギリスの障害レースでは思いがけない大穴が続いていた。番狂わせを演じた馬は、その時の状態から推して、明らかに興奮剤を与えられていた。ところが、いくら厳重な検査をしても興奮剤を投与した物的証拠が出てこないのだ。いったいどんなカラクリで不正レースが行われているのか?。
事件の解明を急ぐ障害レースの理事オクトーバー伯爵はオーストラリアに飛び、種馬牧場を経営するダニエル・ロークに不正レースの真相を探る事を依頼した。

 
感想 フランシスとの出会いとなった記念すべき作品だ。オーストラリアの牧場主が主人公。若くして世を去った両親の代わりにこつこつと働いて、三人の弟妹を養っている平凡な男だ。幸せだと思いつつも平凡な生活から逃れたいとも思っている男の前にスリリングな事件の依頼が舞い込んでくる。 で、彼は事件の渦中に飛び込んでいくのだが・・・。秀作だよ!。人物像良し、謎も良し、プロットもしっかりしているしで三拍子揃っているのだ。忘れてた。読後感も良しだよ。  フランシス リストに戻るホームに戻る

大穴 HPB・文庫 Odds Against
あらすじ  嚇かしでなく本気だと気が付いた時は既に手遅れだった。
相手は慣れない手つきで上着のポケットから拳銃を引き出すと、おっかなびっくり両手を使って引き金を引いた。彼・・・元チャンピオンジョッキーで今はラドナー探偵社の 競馬課の調査員シッド・ハレーは、夜の夜中、探偵社に忍び込んで餌をかじりに来たのがチンピラのアンドリュースだとわかったからこそ、洗面所の暗がりからのこのこ出て行ったのだ。
が、明かりを消そうとスイッチの方に向きかけた瞬間、アンドリュースは撃ってきた。
弾がシッドの体を斜めに貫通した。血がゆっくりとオフィスの床の上に流れた。助けを求める事も出来ず、十二時間余、シッドはじっと耐え奇跡的に一命をとりとめた。
そして、38口径の鉛の一片がシッドの腸を穴だらけにした事が、傷の痛みの他に激しい怒りをシッドに植えつけた。
 チンピラを探偵社に潜り込ませた連中は、いったいどんな陰謀を企んでいるのか?。ようやく傷も癒えたシッドは競馬界に蠢く悪辣な企みに敢然と挑戦していった。

感想 フランシス作品で2番目に手に取った作品です。  「射たれる日まではあまり気に入った仕事ではなかった」この最初の一行で鷲掴みにされ、これでもかと描写される主人公の内面の弱さに共感し、応援し一気読みしてしまいました。 片腕を失くし、生きた屍状態のハレーが立ち直るまでの、ヒーロー小説でもあると思います。  「石のように頑固な男」と評されるハレーが、内心に宿る恐怖心を押さえ込み、事件へと深入りしていく過程は、読み応えがありました。  フランシスの作品には、基本的に同じ主人公が出てくる事がないのですが、シッド・ハレーは例外で、3作品に出てきます。(この作品の続編 利腕 で、MWA・CWA賞をW受賞しています。)  ミステリの出来としては、手放しで褒められませんが、現在の円熟したフランシスにはない「青さ」が心地よいです。大穴・利腕・敵手 と読み進み、ハレーと著者の成長をみるのも一興です。3作すべてが、非常に評価の高い作品なので、フランシス入門編には最適の1冊だと思います。
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重賞 文庫のみ High Stakes
あらすじ  スコットの胸は自分の迂闊さを悔やむ思いで一杯だった。 持ち馬を預けていた調教師ジョディーに長年にわたり巨額の金を搾取されつづけていたのだ。 さらに、解雇を言い渡されたジョディーは復讐鬼と化し、スコットの持ち馬の中でも最も優秀な エナジャイズを駄馬とすり替えてしまうという悪辣な手段を講じてきた! 愛馬の奪還と真相の究明を誓うスコットの前には巧妙な罠が待ち受けていた・・・   ”無慈悲に調教師を捨てた男”というレッテルを貼られ、世間の非難を浴びながらも戦いを挑む スコット!
 
感想 ミステリというか、冒険物というか・・・謎はほんのチョットだけしかありません。
でも、フランシス作品の中でも、3本の指に入る爽快感でした。読後感が最高に良かった♪♪♪
 主人公はおもちゃの特許収益で暮らす35歳のお金持ち。 騙されたスコットの善良な隣人たちが、金を搾取された事に怒るのではなく、敵が卑劣な手段を使った事に憤り、一人また一人と手を貸していく経過に身悶えいたしました。
愛馬の奪還シーンはまるで、現金輸送車を襲う知能犯みたいで、お気に入りのシーン(笑)。
脇役というか、サブ主人公ともいえる4人の隣人達の人物像も最高でした。本作は初期作品にあたるのですが、この頃のフランシス作品が一番好きなのかもしれません。 この作品で脇役のセリフに「人間の中には生まれつき憎悪心の強い者がいる。彼らは被害者に苦痛を与える事を楽しんでいるのだ」というのがあります。 これぞまさしくフランシス作品に出てくる、悪役らしい悪役の特徴を言い表しているなぁーと妙に感心いたしました。 他の作家の作品を読んだ後だったので、評価はかなり高め、感激もひとしおでした。やっぱり、いいよなぁー>フランシス
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本命 HPB・文庫 Dead Cert
あらすじ  濃霧の中での障害レース。疾走する馬の蹄が地面を蹴り、ときおり蹄鉄がぶつかりあう鋭い音が響く。 白絹の乗馬ズボンにまだら模様のジャージを着た騎手たちは、はるか前方を走る一頭の馬を追っている。その場群を離れた遥か前方には 、白っぽい霧のカーテンに対して鮮やかな赤と緑を浮き立たせた一人の騎手が前面に横たわる最後の障害を飛ぶべく、馬の態勢を立て直 していた。それらは全て予想通りの事だった。ビル・デイビットソンは、彼にとって97回目となる障害競馬の優勝を目前としていた。 彼の乗る栗毛、アドミナルは本命馬に相応しく、その力強い下半身の筋肉を盛り上げ、緊張し、跳んだ。完璧な跳躍。飛べるのは鳥だけ ではないと言わんばかりに、宙に浮いた。そして次の瞬間、落ちた。ビルの体は跳躍した弧の頂点からまっさかさまに落ち、 その後を追う様にして、アドミナルがビルの腹の上にもんどりうった。ほどなくビルは死んだ。あまりに信じられない突発事故。 いや、それははたして事故なのか?!。ビルの後を追って走っていた親友のアラン・ヨークはその疑問を拭いきれず、一人事件の謎を 追い始める。

感想 障害レース中、ビルの後方を走っていた主人公アラン・ヨークはビルの馬が不自然に転倒した事を見ていた。 レース後、無人になったコースに戻り、ビルが転倒した箇所の障害物を見に行くと下に針金が落ちているのを発見する。 人為的な事故だと気が付き、何故ビルが狙われたのかを探る・・・という物語です。
本作はフランシスのデビュー作に当ります。プロットなどに不自然な箇所もありますが非常に楽しめました。 自身を囮にしながら犯人を引っ掛けていく過程で身悶えしました。 そしてフランシスの特徴とも言える「書き出しの巧さ」はデビュー作でも生きています。 洋物推理小説にありがちな前半のもたつきが無いんですよね。 後期の作品とは趣が違う、犯人は誰かという謎解きが主題のミステリ作品なのでミステリ色の濃い作品を好まれる方にお薦めしたいです。 フランシス作品の全てにある冒険小説的な要素も含まれています。
余談ですが戦争に行っていて帰って来てからは騎手生活、その後ほんのちょっと競馬の記事を書いていただけのフランシスが、第一作目で これ程の作品を書き上げた事は非常に驚きでした。この後イギリスミステリ界を代表する作家になっていくのですが その片鱗は本作にもあります。 フランシス リストに戻るホームに戻る


度胸 HPB・文庫 Nerve
あらすじ アート・マシューズというイギリスでも有数の騎手が、競馬場の下見所の中央で 、一発の銃声とともに、あたりに血を飛び散らせて自殺を遂げた。一瞬の躊躇いも無い。最終の決断をする為の動作の中断も無かった。
目を閉じる事すらしなかった。前に倒れ、顔からどさっと草の上に落ち、ヘルメットが転がっていく間も目は開いていた。銃弾は頭骸骨を貫通し、大きな穴が開いた。皮膚、髪、脳漿、骨の欠片の入り混じった血だらけの穴だった。
 下見所を覆った銃声はスタンドの高い壁で反響した。人々があたりを見回した。マシューズの残骸が顔を下にして明るい緑の芝の上に倒れているという、驚くべき、目を疑うような事実に気が付くと、手摺の周りを二重、三重に取り囲んでいる観衆の話し声、ざわめきが次第に静まり、やがて沈黙と化していった・・・。
自殺し、半狂乱に陥り、または見る影も無く落ちぶれていく騎手たち・・・。彼らを恐怖のどん底に追い込む怪物の、あるいは組織の正体は何なのか?。ロバート・フィンは謎に挑む。 フランシス リストに戻るホームに戻る

 
飛越 HPB・文庫 Flying Finish
あらすじ 「あなたは、偏屈者の大馬鹿野郎よ!」と、姉に罵られた事がきっかけでヘンリイ伯爵は仕事を変えた。 姉の発言は結果的に、ヘンリイに、”活”を入れる事になったのだ。同時に、危険への入り口でもあった・・・ ヘンリイは立派なオフィスの立派な机に座る世間体の良い仕事を捨て、アマチュア騎手である自分を生かせる 競走馬の空輸請負会社の馬丁におさまった。自分の好きな仕事に就いただけのことだったが、家族は驚愕し、半狂乱状態を呈した。 ヘンリイ伯爵は空輸請負会社の奇妙な事に気づいた。前任の馬丁頭は行方不明、臨時雇いの馬丁も次々と姿を消すのだ。 いままた、主任のサイモンがイタリアで忽然と行方を絶った・・・競走馬の空輸をめぐり何か恐るべき企みが遂行されている。 かくて、絶対的に不利な状況のまま、ヘンリイ伯爵は、一人、敢然と捜査に乗り出した。

 
感想 いやーー!!良かったです♪競馬場の描写が素晴らしいのは当然(笑)ですが、本作の醍醐味ともいえる航空機の シーンはまさに、鳥肌物でした!第二次大戦で空軍パイロットだったフランシスは、競馬以上に飛行機の操縦を描くのが巧い!!。 読み終わるのが勿体無くって、途中、何度も読むのを止めたほどでした。ラストの終わり方がちょっと難があったかもしれない (もっと描き込んで欲しかった)が、あそこで止めちゃうのがフランシスの良い所かも?・・・前半のモッタリした所もラストの飛行 シーンの前菜となり、メリハリの利いたサスペンス小説でした。(個人的には航空機サスペンスと呼びたい!)
余談ですが、航空機の描写が好きだという方には、是非、「混戦」をお薦めします。(布教活動♪)
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血統 HPB・文庫 Blood Sport
あらすじ 久し振りに得た休暇の初日の朝、ボスのキーブルにテムズ河上流の川遊びに誘われたイギリス諜報部員ジーン・ホーキンスは、そこでキーブルの友人でアメリカ有数の牧場主テイラーに紹介された。 彼の所有する今年のダービー優勝馬の父親で50万ポンドの名馬クリサリスが、輸送の途中忽然と姿を消した事件を探索し、馬を取り戻して欲しいというのが、ジーンが誘われた本当の理由だったのだ。疲れきったジーンは広大な土地の何処にいるかも分からない馬を探す気にはなれなかった。 だが、その日の午後に生じた事件がジーンの決心を変えた。水門近くの激流に流されそうになった小船の救助にキーブルが向かった時、小船の上の若い男の持つ棒が舳先にいたテラーの頭部を打ち、テラーがテムズ河に落下したのだ。 事故に見せかけた巧妙な殺人だった。翌日の午後、唯一の証拠品であるハンカチを携えたジーンはケネディー空港に降り立つ。
 
感想 ミステリというよりは冒険小説に近いだろう。今度の舞台はアメリカだ。広大なアメリカで一頭の馬を探す わけだが、案外あっけなく謎に迫ってしまう。ミステリとして読んだら肩透かしを食らうかも。主人公が諜報部員というのもこれが 最初だと思うし、主人公は強い自殺願望を抱いていて何時も拳銃を枕元に置いている様な男だ。フランシスには珍しい主人公像だった。 脇役の保険調査員ブレンセラが良かった。
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罰金 HPB・文庫 Forfeit
あらすじ  「忠告だ!自分の記事を金にするな。絶対に自分の魂を売るな!」そう言いざま、競馬記者のバートは7階のオフィスの窓から転落した・・・。
 同僚のジェイムズ・タイローンには、彼の遺した言葉の意味が解らなかった。が、その後、バートが新聞記事で、買いを勧めた馬が出走を取り消したのを知った時、彼の背中を冷たいものが走った。 派手に人気を煽った馬の出走取り消しは、賭け屋に莫大な利益をもたらすのだ。何かある!競馬の不正行為にバートが関連していたのだろうか? バートの死に際の言葉はこの不正を示唆していたのか?記者の魂を売り渡し、追いつめられて死んだのだとすれば、背後には誰が?調べだしたタイローンに危険が迫る!
 
感想 珍しく主人公が妻帯者です。
 小児麻痺のために左手をほんの少ししか動かす事が出来ない、妻エリザベスの描写には胸が痛みます。(呼吸さえも機械の助けを借りないと出来ない)ジェフリー・ディーバーのライムシリーズに全身麻痺の主人公が登場しますが、フランシスを読んだのかな?。ベッド周りの特殊機械の描写など非常に似ています。そういえば、ストイックな登場人物とか類似点も多いような・・・(ファンだったりして♪)ミステリ色は薄い作品でしたが、楽しめました。この作品だけ、いつものフランシス作品と違うなという印象を受けました。脇役のお医者様が良い味をだしてます。
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査問 HPB・文庫 Enquiry
あらすじ 問題のレースは1月の最後の週、オックスフォードで行われた。ケリイ・ヒューズは絶対視されていた 本命に乗り2着になり、全く予想されていなかった不人気馬が優勝をさらった。間々ある事だが本命馬が疲労気味だったのだ。 問題はむしろ本命馬と穴馬が同じクランフィールド厩舎の馬だったことにあった。着順を見て、観衆が騒ぎ出した。  レース後、ケリイと調教師のクランフィールドは八百長の疑いで裁決委員会に呼ばれ、説明を求められた。委員会は説明に 満足せず二人を査問会にまわすことを決定した。その時になってもケリイ達はまだ差し迫った危険は感じていなかった。 自分達の潔白は明白であり、査問会は競馬界の最高の権威によって行われる。そこでは良識と冷静な判断が彼らの無実を証明するだろう。 が、実際の査問会はケリイの予想に全く反したものだった。真実を明らかにするどころか、唖然とするケリイの目の前に 、思いも寄らぬ有罪の証拠と証人が次々と提出され、懸命の弁明と訴えも一切聞き入れられぬままに二人は無期免許停止とされたのだ。・・・あまりに大きな衝撃と困惑。 ケリイが悪夢のような現実を見つめ、謎に向かって行動を起こすには時間と厳しい勇気が必要だった!。  あいまいな影に包まれた競馬界の最高権威、査問会に挑む騎手ケリイの絶望的な戦いが始まる。

 
感想
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混戦 HPB・文庫 Rat Race
あらすじ 四人の乗客を乗せたデリイ・ダウンスカイ・タクシー社のチェロキー機は立ち上った巨大な積乱雲の雲の間を縫う様に飛んでいた。 馬主のバーグ、調教師のヴィラース、タイダーマン少佐の三人は興奮冷めやらぬ様子で今日のレースの出来栄えを論じている。英国で人気随一のチャンピオンジョッキー ロスだけが眠っていた。 夏の乱気流に機体はかなり動揺していたが、それとは別の正常が異常に変わった時の鳥肌立つ恐怖が、突如パイロットのマット・ショウを襲った。 マットの本能が針の先ほどの異常を告げている。マットは乗客の不平不満を押し切って、予定外の着陸を強行した。無事に着陸を終えると乗客たちから不満の声が上がったが、点検の為に飛行機を離れようとしたその時、枝を折るような鋭い音が聞こえ振り返ると今まで乗っていたチェロキー機は火の玉を吹き炎上していた。
 
感想 私の中では『フランシスTOP5』入りするほどのお気に入りだ。主人公は飛行機のパイロット。フランシス自身が戦時中に空軍のパイロットだったのだから当然だが、飛行中の描写が良いんだよね。主人公もちょっと影を持つ不器用だが魅力的な男でこれも良い。 飛行機に爆弾が仕掛けられていてその犯人を追うのだが、次から次へと起こるスリリングな事件に身悶えしながら読み進んだ。フランシスはこの作品と以降が一番脂が乗った時期だったんじゃないかな。操縦不能になった飛行機をマットの好きな女性が操縦していて、マットは何とか救おうと全力を尽くす場面があるのだがこれにやられた。お勧め作品だ。
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骨折 HPB・文庫 Bonecrack
あらすじ 黒ずくめの誘拐者は薄いゴムのマスクをしていた。ニールは信じがたい思いだった。確かに父の経営する厩舎は毎年ダービーの優勝馬を出している。しかし、彼自身は競馬には素人のセールスマンにすぎない。 しかも、父は交通事故で入院中なのになぜニールが・・・。その疑惑は一味の首領の前に連れ出された時、重苦しい不安へと変わった。ダービーの本命馬に一味の指定する騎手を乗せろというのだ。
 
感想 この作品はミステリ色が全く無い”冒険小説”です。敵が誰なのか、何を求めているのかは冒頭で解ってしまうので、パズル的な要素を求める方には不向きな作品だと思います。でも、不思議とファンが多い作品なんですよね。主人公と黒幕の息子との心の交流が見所でしょうか。出だしからいきなり事件に突入するので、まどろっこしいストーリーは嫌いという方にお勧めです。
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煙幕 HPB・文庫 Smokescreen
あらすじ 炎天下のスペインでの過酷なロケを終えて、イギリスの我が家に戻ったばかりのエドワード・リンカンが、 すぐさま南アフリカに行く事を承諾したのは、それが他ならぬネリッサの最期の願いだからだった。 馬丁の子として生まれ、愛情薄い継母に育てられ、騎手になる事を望みながら果たせず、映画のスタント・マンから現在最も人気 のあるアクション・スターの地位を得たリンカンにとってネリッサは母親のような意味を持つ最も親しい女友達だった。 数ヶ月ぶりに会ったネリッサは、不治の病に冒され、自分の命があと1、2ヶ月しかもたないことを自覚していた。 そして、リンカンに最近これまで消息不明だった甥のダニロの素晴らしい成長ぶりを見たこと、彼に彼女の所有になる南アフリカの 十数頭の競走馬を遺産として送りたいと思っていることを伝えた。 ただ、最近になってそれらの競走馬が突然信じがたいほど調子を落として、財産としての価値が失われそうになっている。 なぜそのような事態になったのか、手を尽くして調査したが原因が分らない。ついてはリンカンに力になって欲しいというのだ。 リンカンはネリッサの頼みを聞き、早速南アフリカに飛んだがその時はまだ想像を絶する苦難と罠が自分を待ち受けていようとは 予想だにしなかった。

 
感想 この作品は冒険小説だ。ミステリの要素もあるが、込み入った話ではないので犯人の予想は付いてしまうだろう。 (でも面白かった)
  アフリカに飛んだリンカンはすぐ身の危険を感じる。記者会見の席上で自分が使う筈のマイクを握った女性が感電し、死に掛けたのだ。 本当なら自分が死んでいた筈だと怯えるリンカン。その後も様々な人為的な事故に遭遇し明らかに自分が狙われている事を知る。 だが、馬の事を調べに来ただけのリンカンが狙われる理由が分らない。で、後にもっと大きな危険が見に迫るのだがこの描写が巧いんだよね。 フランシスにしては最初の導入部で無駄な描写をするなと思ったけど、最後の場面を読んで納得した。最後のシーンを生かすため、計算された 冒頭部だったのだ。まぁ、兎に角読んでみて欲しい。お勧め作品だ。
余談・・・フランシスは第二次世界大戦中に空軍パイロットだったのだが、作品の舞台ヨハネスブルグにも行った事があった のだそうだ。その後、競馬を楽しむ為にも訪れていて馴染みの深い土地だったらしい。きちんとリサーチされてたんだなとニンマリ。
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暴走 HPB・文庫 Slay−Ride
あらすじ ノルウェーの10月は、既に長い冬の装いをまとい始めていた。全てが雪に包まれるのももうすぐだろう。 英国ジョッキー・クラブの調査員デイヴィット・クリーブランドがイギリスからはるばるノルウェーにやって来たのは、 招待されレースに出た騎手・ボブが起こした売り上げ金横領事件を調査する為だった。しかし、この事件には解せない事実が多すぎた。 花形騎手の地位と比較できないほど小額の売上金を盗む意味は?大きな袋を抱えた姿でどうやって誰にも咎められずに姿を消す事が 出来たのか?・・・ボブの失踪は氷山の一角に過ぎないのではないだろうか?。 動き出したデイヴィットに魔手がせまる。彼の乗った小さなボートに快速艇が突っ込みボートは真っ二つに・・・ 苛酷な北欧の自然の中で展開するサスペンスミステリー。

 
感想 スピード感がある、ミステリ色の濃い作品でした。冒頭からいきなり命を狙われる主人公が、 「誰が?何のために?」を探るフーダニット物です。 長身(180cm)で33歳だけど25歳に見える好青年(美青年)のデイビットが、危険な目に遭う度に黄色い悲鳴を上げながら 読み進みました。
1973年の作品なので、共産圏の国々に対するヨーロッパの人々が持つ様々な感情が見え隠れします。ソビエトという国名に 思わず懐かしさが・・・(笑)。 中期から後期にかけて作風を変えるフランシスの”変わり目”にあたる作品だという印象を受けました。
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転倒 HPB・文庫 knock Down
あらすじ サラブレッド仲買業者ジョウナ・ディアラムが襲われたのは、知人から紹介されたある婦人と共に競走馬を競り落とし引き上げる途中のことだった。しかし奇妙な事に、連中はたった今競り落とした価格より多額の金を置いて馬を奪い去った。何故?  奇妙な事は次々に起こった。アル中の兄クリスピンには何者かによってウイスキーが与えられるし、預かっている輸送直前の明け3歳馬がやはり何者かによって解き放たれ、警察まで出動する騒ぎとなった。その上、泥酔したクリスピンを死の寸前に追い込む放火事件まで起こった・・・。  サラブレッドの生産者に対して法外なリベートを要求し、拒否されたときには競売市場でその馬に買い手がつかないよう策を弄する・・・仲買業者の世界では、このように暴利を貪る連中が平然と徘徊していた。彼らは組織化をもくろみ、中小の同業者たちに対しても激しい圧力をかけ始めていた。  中堅として実力を有し信用もあるジョウナは、強欲に業界を侵して行く組織にとって目の上の瘤であり、一連の奇妙ないやがらせも彼らの仕業に違いなかった。自分が戦わなければ業界に組織の糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされてしまう!。  敢然と立ち上がったジョウナの前についに姿を現した、陰で組織を操る人物とは?
 
感想 騎手だった主人公ジョウナは引退後、馬の仲買業者として馬にかかわる事になる。次々と奇妙な事が起こるが最初は自分を狙ったものだとは気付かないジョウナ。 で、ある組織を操る人物と対決と言うストーリーです。この作品は珍しく恋愛も絡みます。後、ジョウナとアル中の兄との家族愛(?)も描かれています。物語自体は『まぁ、普通』の出来でしょうか。 文中で楽しい言葉が出てきて笑いました。『あなたがどうしても気になるのであれば、ラドナー・ハレー事務所に依頼したら、どうでしょう? 彼らなら、調べ出してくれますよ』という言葉なのですが ハレー事務所というのは、”大穴””利腕”に出てくるシッド・ハレーが所属する探偵事務所なのですよね。きっとフランシスにとってもお気に入りの主人公なんだろうな。

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追込 ハード・文庫 In the Frame
あらすじ 馬専門の画家チャールズ・トッドが、週末を過ごす為に訪れた従兄弟宅で異変が起きていた。 従兄弟は呆然と立ちすくむ・・・見慣れた部屋からは家具や美術品がごっそりと盗まれ、彼の若い妻は床の上で血だらけで死んでいる・・・
一方、知り合いの女性の話がトッドを驚かせた。放火に遭い財産を焼かれたというのだ。一見、無関係に見える二つの事件にある共通項があったのだ。それは、共にオーストラリアから購入した”絵画”だった。嘆き悲しむ従兄弟を救う為、そして真相を知る為にトッドはオーストラリアへ飛ぶ。
 
感想 フランシス作品の特徴だが脇役の人物造詣が良い。
この作品は巻き込まれ型の”冒険小説”だ。巻き込まれると言うか、”自分から巻き込まれる型”だろうか。自分の災難を振り払うのではなく、妻を殺され盗難に遭った従兄弟を救う為立ち上がる主人公。フランシスお得意のパターンだ。主人公は従兄弟の窮状を救う為、イギリスからオーストラリアに飛ぶ。
スパイ物や国際的謀略物など多くの冒険小説があるが、”普通の生活をしている普通の男が主人公”の冒険小説を書かせたらフランシスの右に出るものは居ないだろう。ミステリか冒険小説か悩む所だが、面白いからどっちでも良いのだ。
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障害 ハード・文庫 Risk
あらすじ 半ば目覚めていた。明かりが全く無い。目は開いているはずだが、真の闇に包まれていた。力のあるエンジン音、きしむ音。・・・此処はいったい何処なのだ?3月17日までは、はっきり覚えていた。余暇をアマチュア騎手として過ごす公認会計士ブリトンにとって、3月17日は晴れやかな一日だったからだ。他馬にアクシデントがあったにせよ、出場した障害レースで優勝したのだ。 ところがレース直後、彼は理由もわからず何者かに誘拐された!ブリトンは不安と焦燥の中、脱出を決意するが・・・
 
感想 ごく平凡な公認会計士の男がごく平凡に生活しているのに、何故かいきなり誘拐され、船底に監禁される。この船底からの脱出劇からラストまでまさにノンストップで突っ走る。フランシス作品の中でも特にサスペンス色の濃い作品だと思う。
フランシス作品の長篇全てに男性の主人公が登場する。フランシスの理想の男性像が描かれているのだろうが、この作品はその最たるものかもしれない。
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試走 ハード・文庫 Trial Run
あらすじ 「俺は死ぬ・・・アリョシャだ・・・モスクワ・・・」モスクワ・オリンピック優勝を目指す 英国王子の義弟と同性愛の噂があった騎手が、謎の言葉を残して急死した。
死因は心臓麻痺だが・・・・アリョシャとは?
 スキャンダルを恐れた英国王室は独自の調査に乗り出した。 視力を悪くして騎乗停止となっていた元騎手ランドル・ドルーは、王子から直接、依頼を受ける。 「モスクワに飛び、調べて欲しい。スキャンダルを回避してくれ」と。 動き出したドルーを待ち構えていたのは、死の危険と、予想外の事態の展開だった。 オリンピックを目前にひかえたモスクワを舞台に繰り広げられるサスペンス。
 
感想 この作品は、冷戦時代のソビエトが舞台になっています。ヨーロッパの人々の持つソビエトへの感情が見え隠れし、不思議な感じがしました。
主人公は、民間人だけれども、立派な「スパイ小説」という印象です。(この当時、まさかソビエトが崩壊するなんて思いもしなかったんだろうなぁ)
 フランシスは初期の作品と中期の作品では、微妙に作風が変わります。私個人の感想ではこの作品が中期の終わり目に当たるのでは?と思っています。 「元騎手が、本を書いている」という言葉に対抗するように、色々なジャンルに挑戦していたのでは?。 「偉大な作家は元騎手だった」と評価が変わってきた頃から、当初のミステリ色の濃い作風に戻るのですが、、、「はっ!」こんな事を考えながら本を読むなんてすでに”オタク化”していますね・・・反省。(感想というよりは、フランシス考察になってしまった・・・(汗)
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利腕 ハード・文庫 Whip Hand
あらすじ 片手の敏腕調査員シッド・ハレーの許に、昔馴染みの厩舎から依頼が舞い込んだ。所属の有力馬が、次々と原因不明のままレース生命を絶たれるというのだ。調査に乗り出したハレーを襲ったのは、彼を恐怖のどん底に突き落とす脅迫だった。「手を引かないと、残った右手を吹き飛ばすぞ」と。
 
感想 今までに推理小説を読んでいて登場人物に惚れるというのは、めったに無い事だった。(ホームズは例外♪)だが、この主人公シッド・ハレーには”びびびっ”と来てしまった!「興奮」を読んで”この作家なかなかいいじゃんけ”と思い、後「利腕」で虜になった(笑)。
 完全無欠な男ではない。事故で片手を失くし、「もう一本の手もなくなったら?」とビビリ、脅迫に負けそうになる。自分自身の弱さを悩み、恥じ傷つきながら前進していく姿に共感したのだ。推理小説として評価を下すなら、少し辛口にならざるを得ない。詰め込み過ぎなのだ。が、これもフランシスの若さゆえ。
主人公が、”自分自身の弱さと戦う物語”だと思って読んで欲しい。推理小説を読んだ事が無いという方にこそ是非お薦めしたい作品。男性ファンが多いフランシスだが、この作品はその典型だと思う。
気球に乗って、追っ手から逃れるシーンが一番のお気に入りです。
備考・・・この作品でMWA賞、CWA賞を同時受賞しています。
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反射 ハード・文庫 Reflex
あらすじ  競馬写真家のジョージが交通事故で世を去った。騎手にとって屈辱的な写真ばかりを撮り続けた彼の死を悼むものは、少なかった・・・
そのジョージの家に二日連続で正体不明の男たちが押し入り、室内を物色されジョージの妻は執拗な暴行を受ける。ジョージの息子は騎手仲間であるフィリップ・ノアに助けを求める。
アマチュア写真家でもあるノアは、ひょんなことから手に入れた「一見失敗作」に見えるジョージの遺した大量のフィルムを現像し始める。強盗の狙っている何かがフィルムに隠されているのではないか?と・・・趣味である写真の知識を駆使し、そこに隠された秘密の解明を試みるノア。試行錯誤を続けるノアを待ち受けるものとは?!
 
感想  一種のダイイング・メッセージを追うという物語です。隠された秘密を追うノアが駆使するのは写真の知識。うーーん!!幅広い作家だなぁと感心しました。
主人公のノアは複雑な子供時代を過ごしていて、彼の祖母との確執が伏線として張られています。(この、祖母が面白い人でした。)脇役の青年弁護士も良い味を出しています。過去を回想する主人公につきまとう影が、作品に深みを与えています。主人公が事件と共に成長する過程を描いた”冒険物”であるのかもしれません。
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配当 ハード・文庫 Twice Shy
あらすじ 物理教師ジョナサンは、ある日友人からひそかに3本のコンピューターのテープを 渡された。数日後、その友人は事故死し、ジョナサンも命を狙われる・・・テープには3回に1回は 当たるという驚くべき確率の勝ち馬予想システムが組み込まれていたのだ。
 
感想 フランシス作品の中で唯一、肩透かしを食った作品だ(涙)。
2部構成になっていて、一部の主人公はジョナサン、2部の主人公は弟ウィリアムとなっている。 こういう形式を採ったのは、一人称で書くのを貫く為だと思われるが(長編は全て一人称で書かれている)話の流れが分断され、主人公への感情移入し難い結果になっている。 いっそ、連作短編という形のほうが読みやすかったかもしれない・・・内容はいつもの”勧善懲悪物”なのですが、満足感は得られなかった。いかに巨匠とはいえ、たまにはこんな事もあるさ!と自分を慰めた・・・。
 どうも、この作品が中期へ移行する(作風が微妙に変わる)変わり目に当たる気がする。 作家自身が”新しい作品”を模索し、試みたのかもしれないが。
マンネリを非常に恐れたフランシスが頑張った結果なのだろうが、個人的にはマンネリのフランシスが好きなのだと思い知らされた”記念すべき一冊”。
(フランシスの息子さんがモデルのようです。)
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名門 ハード・文庫 Banker
あらすじ ロンドンの商業銀行エカタリン社に、名馬「サンドキャッスル」を種馬として購入したいという生産牧場から、巨額の融資申込みがあった。社内では危険視する声も上がったが、馬の名を聞いた青年重役ティム・エカタリンは心を動かされた。その名馬が競馬場で疾走する勇姿を目の当たりにしたのは、つい半年前のことだったのだ。
エカタリン社は融資を承諾し、馬は生産牧場の所有になった。しかし、サンドキャッスルの生駒に次々と奇形が生まれたのだった。種牝馬にも、サンドキャッスルにも異常は認められない。何らかの外からの介在がないと、ありえない事態だった。何のために?どうやって?誰が?名馬の血統に牧場の命運を賭けた生産牧場と、名門銀行家ティムの苦闘が始まる。

 
感想 この作品もいきなり事件に突入します。冒頭から引き込まれました。快感です(笑) そんでもって、主人公ティムが魅力的なのです!! フランシスの作品ではサイドストーリーで恋愛も書き込まれている事があるけれど(あまり好きじゃない)この作品のラブ・ストーリーは良かったです。恋愛感情を書くことによって主人公の性格を巧く描写しています。
 いつものように、ミステリあり、サスペンスあり、絶妙の会話があり、読後感も良い!(笑)フランシス作品の中でも、特にお気に入りです。脇役のジニイという娘が非常に良かった!彼女が良い味付けになっています。
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奪回 ハード・文庫 The Danger
あらすじ ヨーロッパで最高の女性騎手がイタリアで誘拐され、巨額の身代金が要求された。誘拐対策企業の派遣スタッフ( 交渉人)であるアンドルー・ダグラスは即座に現地へ飛んだ。狡智にたけた誘拐犯人の策略に交渉は難航したが、6週間後、ようやく 人質は無事救出された。だが、数週間後、今度はイギリスで馬主の息子がさらわれたのだ。競馬関係者を標的に起こった二つの誘拐の影に、 アンドルーは同一犯人の存在を感じた・・・白熱の頭脳戦を卓抜な着想で描くシリーズ第22作。
 
感想
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証拠 ハード・文庫 Proof
あらすじ 半年前に最愛の妻を亡くし、虚しさ、寂しさを押し隠し自分の営む店に出るトニイ・ビーチ。 絶えず微笑を浮かべワインを売る生活・・・
 そんな時、ビーチはあるレストランで偽ラベルで売られている酒を発見する。一本一本慎重に香りを嗅ぎ味見をする。どれも同じワインだったのだ・・・しかもそれは氷山の一角で偽酒は大量に出回っていたのだ。
さらに、偽酒を扱っていたレストランのウェイターが惨殺され、事件は複雑な様相を呈しはじめたのだ。利き酒の能力と酒の知識をかわれ警察の捜査に協力するうちに、ビーチは巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく!
 
感想 フランシス作品に登場する主人公の中で、シッド・ハレーと並ぶほどお気に入りの主人公だ。半年前に妻を亡くし自分の半分は既に消えてしまったとひたすら苦しむ男が、平静を装い涙を見せず絶えず微笑を浮かべ商売を続けている。   この弱い男が事件に巻き込まれていくのだが、敵と戦うというよりは自分の弱さと戦う物語といったところだろうか。
主人公がワイン商という設定なので、随所にワインの話が出てくる。解説にはワインについての用語辞書まで載っていて、ワインがお好きな方だったら二倍美味しいストーリーじゃないかと思う。ハレー・ファンにお薦めしたい一冊だ。
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侵入 ハード・文庫 Break In
あらすじ 周囲の反対を押し切って、先祖代々敵対するアラデック家の息子と結婚した妹ホリイ。 ところが、何者かの扇動による中傷記事によって、二人が経営する厩舎が経営の危機に陥ったのだ。 憎悪に満ちた中傷記事を陰で操る黒幕は誰なのか?何が目的なのか?
チャンピオン騎手のキット・フィールディングは、妹夫婦に助けを求められ、背後関係を調べ始める。やがて、彼の身にも魔手がのび始める。孤立無援の騎手キットが、マスコミ界を相手に奔走するシリーズ第24作
 
感想 フランシス作品で珍しく2度登場する「キット・フィールディング」。(本作以外にも”連闘”に再登場します)
この主人公はフランシス自身の過去が、色濃く投影されている気がします。フランシスの騎手時代を書いたものだと思われるのです。(なので、特にお気に入りの主人公なのだ♪) 作品自体は、傑作と呼べるほどではないのですが、フランシスファンには必読の本かもしれません。(フランシス自身の思い入れが、伝わってくるので・・・) この作品に”さる国の王女”が馬主として登場するのですが、彼女がとても良いのです。(フランシスも、騎手時代に女王の持ち馬に騎乗していたのだ) 王政なんて縁の無い日本人でも、なるほどと思わせる描写です。彼女の姪とのロマンスもあり、サスペンスあり、騎乗シーンありで、てんこ盛りの内容です!(この姪との恋愛は”連闘”で続きが読めます)
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連闘 ハード・文庫 Bolt
あらすじ レースで勝鞍をあげつつも、騎手キット・フィールディングは心の晴れぬ日々を送っていた。婚約者ダニエルが他の男に心を奪われているのだ。
そんな時、馬主のカシリア王女が、彼に助けを求めてきた。夫が、銃器製造の分野に進出を狙う 会社の共同経営者から脅迫されているというのだ。敬愛する夫妻の為、キットは立ち向かう決意をするが、敵は既に彼の身辺にまで卑劣な罠を仕掛けていた。「侵入」の主人公が再び登場し、揺れる恋のなかで挑む新たな戦い!
 
感想 前作「連闘」の主人公が再び登場します。ただし、前作を読んでいなくても楽しめる(と思う)作品です。ですが、フランシスを一冊も読んだ事の無い方の入門書には不向きだと思います。 ミステリ色は、全くありません(笑)。相手も最初からわかっていて、謎という謎は無い。悪役は出てくるけれども、主人公のキットが戦う相手は「自分の恋心」でしょうか・・・。 フランシス作品には珍しく”恋”がモチーフになっています。
実際に、英国王女の持ち馬に騎乗していたフランシスは、カシリア王女を描きたくてキットを再び登場させたのかもしれません。 パズルゲームの要素を求めている方にはお薦めしませんが、フランシスの奥行きの広さを知る一冊として上位に位置する作品だと思います。
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黄金 ハード・文庫 Hot Money
あらすじ アマチュア騎手のイアンは、絶縁状態が続いていた父のマルカムから、突然の連絡を受けた。 5番目の妻が何者かに殺され、父自身も何者かに命を狙われているというのだ。犯人は巨額な遺産を狙う親族の中に居るのではないかと、 危惧しているらしい。わだかまりを残しながらも、イアンは父の護衛を引き受け、密かに犯人探しに乗り出す。  遺産相続を巡る醜悪な争いと親子の葛藤を、巧みなストーリー展開で描く。

 
感想 本作は、フランシスの著作の中では、珍しくフーダニット形式をとったミステリです。 14人の容疑者達とイアンやマルカムを操る作者の巧みさを存分に味わえます。 35年以上に亘って競馬シリーズを執筆し続け、殆どの作品が、平均点以上・大当たり多数・駄作無しという、 脅威としか言いようの無い天才作家です。競馬に材を採りながらも競馬に興味を持たない人までも魅了する、作家としての手腕に脱帽です。全英チャンピオンジョッキーという輝かしい過去を持つ、Fにしか書き得ない、競馬にまつわる人々を描いたドラマは、傑作としか表現出来ません。ハードボイルド・サスペンス・アクション・犯人探しと、てんこ盛りの内容です。(本作の感想というよりも、Fの感想になってしまいました。) 「競馬」という文字で敬遠されている方も多いと思いますが、1度手にとってみて下さい。競馬に興味を持っていない方でも、 F教入信は間違いありません。(笑)
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横断 ハード・文庫 The Edge
あらすじ モントリオールからヴァンクーヴァーまで、ロッキー山脈を越えて驀進するカナダ横断鉄道。 各地の競馬場でレースをしながら、車内ではミステリ劇を楽しむという趣向の特別列車が、競馬振興のためにカナダ・ジョッキー・ クラブの支援で企画された。ところが乗客の中に危険な男が一人いた。英国人の馬主フィルマー。恐喝によって名馬を脅し取ったり 様々な不正を働いている国際競馬社会の敵である。今度は何を企んでいるのか?  かねてからフィルマーを内偵中の英国ジョッキー・クラブは、保安部員トー・ケルジーをカナダに送った。 ケルジーは身分を隠し特別列車に乗り込む。馬・馬主・厩務員・競馬ファンそして密かな陰謀を満載して、大陸横断鉄道はスタートした。 サスペンスが鉄路を走るシリーズ第27作。

 
感想 この作品は珍しく「鉄道物」です。(カナダ大陸横断列車が舞台になります)黒幕は判っているのだけれど 敵の企みは判らず、それを阻止すべく保安部員のトー・ケルジーがウエイターに化けて列車の中に乗り込むというお話です。 フランシスが「スパイ潜入物」を書くのは数少ないのですが、非常に楽しめました。(日本の旅情ミステリーとは格段の差でした)  もちろん主人公のケルジーはお金持ち・ハンサム・荒業も得意のナイスガイ♪。 素敵な脇役も出てきました。ユーモアに溢れ知的な年配の女性なんですが、非常に上手い描写でした。フランシスの持ち味なんですが、 中年・老齢の女性を描かせると巧いのですよね。奥様がモデルなのかもしれませんね。
 鉄道マニアの方には物足りないところもあるかもしれませんが、カナダの大自然を想像しながら大いに楽しんで読了しました。
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直線 ハード・文庫 Straight
あらすじ 足首を負傷して休暇中の騎手デリックは兄グレヴィルが事故に遭い重傷を負ったという連絡を病院から受けた。 駆けつけた甲斐も無くグレヴィルは息を引き取る。病院を出た途端、デリックは何者かに襲われ兄の遺品の入った袋を奪われた。 グレヴィルは翌朝、兄の経営していた宝石の輸入会社へ兄の死を伝えに赴くが、オフィスが荒されていることを知る。 そして、ダイヤを扱う事がなかった兄が、多額の借金をしてダイヤを買い付けていたことも判明する。 だが、どこを探してもダイヤは見当たらなかった。 兄は遺言で、会社・持ち馬を含めた全ての資産をデリックに託していた。会社を救う為にダイヤの行方を追い始めたデリックは、 生前それ程親密な関係ではなかった兄の意外な側面を次々と発見していく。不自由な体でダイヤを追うデリックに次々と 難問が押し寄せる。 命の危険が迫る中、無事にダイヤを手に出来るのか?!

 
感想 探そうにも秘密主義だった兄の安全対策に阻まれ(あらゆる物が色々な所に隠されている)容易に、 ダイヤは見つからない。兄のオフィス、自宅、車と次々に荒されハラハラドキドキの展開です。ダイヤを巡る攻防戦とグレヴィルの 持ち馬を巡る陰謀とが同時進行していきます。 主人公がとっても魅力的です。亡くなった兄に対する悲しみが全編に溢れ、他のフランシス作品と趣が違うような気がしました。 お気に入りの一冊です。
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標的 ハード・文庫 Longshot
あらすじ 駆け出し作家のジョン・ケンドルが調教師トレメインの伝記執筆を引き受けたのは空腹だったからだった。  サヴァイヴァル専門家(6冊のトラベルガイドの著者)のジョンは、念願の小説家としてのスタートを切ったばかりで どん底の経済状態にあったのだ。食べ物と暖かい住処の確保の為、畑違いの伝記の執筆をする事になった彼はトレメインの厩舎に一月の 住み込みをする。だが到着早々に、行方不明だった女性厩務員の他殺体が発見され、ジョンは警察から協力を要請される。 サヴァイヴァルのプロが、その知識と技量を尽して立ち向かう事になる非情の罠とは?!
 
感想 この本のジャンルは冒険小説だろうか。フランシスには珍しく、主人公が貧乏人だ。(親近感を覚えた♪) 暖房の無い屋根裏部屋に住み、著作も売れず、食うに困っていた主人公は空腹に耐えかねて気に入らない仕事も引き受けてしまう。 で、住み込んだ先で他殺体が発見され事件に巻き込まれてしまうというストーリーだ。物語の随所に主人公が持つサバイヴァルの知識や 経験が出てくる。これが非常に楽しいのだよね。フランシスの得意技だが、その時々に何かのジャンルの専門知識を披露してくれるのだよね。
ラストに主人公が罠に嵌められ、窮地に陥る場面があるのだが、手に汗握ったよ。このラスト20pを是非、味わって欲しい。お気に入り作品の一つだ。
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帰還 ハード・文庫 Comeback
あらすじ 東京に赴任していた英国外交官ピーター・ダーウインは、本国へ転勤になり、帰国休暇の途中マイアミに立ち寄った。 そこでクラブ歌手のヴィッキーと知り合った彼は、なりゆきで、娘の結婚式のために英国へ行くヴィッキー夫妻を送っていくことになる。 ヴィッキーの娘ベリンダの住むチェルトナム競馬場近くの町は、偶然にも、騎手を父に持つダーウィンが幼年時代を過ごした場所だった。 ベリンダは勤めている動物病院の獣医ケンと婚約していたが、ケンの周囲には暗雲がたちこめていた。優秀な獣医である彼が手術した馬が 何故か次々と原因不明の死をとげ、病院に悪い噂がたちはじめていたのだ。さらに、ダーウィンらが到着して早々、病院は放火され、 焼け跡から身元不明死体まで発見された。 ケンの窮地を救おうとダーウィンは調査を始めるが、やがて幼年時代のこの町での記憶が次々と甦り、その記憶の中に事件の謎を解く 重要な手がかりが隠されていることに気づく。従来の魅力に医学サスペンスの面白さも加えた、シリーズ第30作。

 
感想
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密輸 ハード・文庫 Driving Force
あらすじ 競走馬輸送会社を経営するフレディーは、自社の運転手がヒッチハイカーを乗せる事を禁じていた。が、 一台の馬運車がその鉄則を破りある男を乗せたところ、男は急死した。 これが、一連の事件の発端だった。夜その車に何者かが侵入し、翌日修理工が調べると、車体の下から携帯用金庫が発見された。 車は密輸に利用されているらしい。やがて修理工が謎の言葉を残し不審な死を遂げた。謎が深まる中フレディーは陰謀に迫る。

 
感想 フランシスの作品には多くの魅力的な脇役が登場します。この作品にもアイルランド訛りで独特の語呂合わせの スラングを喋る名脇役が登場します。彼の残した謎の言葉(誰にも意味が理解できない)が重要なスパイスとなっています。  登場人物が非常に多いです(表紙裏に載っているだけでも26人!!)。ですが、巧みに交通整理されているので、多さを感じさせません。(巻き込まれ型のミステリーです) 1993年以前の作品なのにコンピューターウイルスをネタに取り込むところなど、70歳を過ぎても尚、前進しようとする著者には 驚かされます。 フランシスの特徴である「書き出しの巧さ」が光っています。前置きなしに事件に突入するところが大好きです。
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決着 ハード・文庫 Decider
あらすじ 建築家のモリスのもとを突然競馬場の支配人が訪ねてきた。経営者である男爵家一族が、競馬場の売却を巡り対立している為、株の所有者であるモリスに株主総会に出席し売却に反対してくれというのだ。モリスは亡き母の忠告を無視して総会に出席する。が、一族以外の参加を拒む男爵家の面々。ほどなく、競馬場が爆破された!
 
感想 この作品を書いた当時、フランシスは70代半ば!!!流石だ。超一級品とは呼べないけれど存分に酔いしれた。
この作品の主人公は子持ちの中年おやじ。なんと六人の子持ちだ。フランシス作品に妻帯者が少ないのは特徴とも言えるのに正直驚いた。フランシスも歳を取ったのか?。お孫さんでもモデルにしているのかな。本作は、この子供たち&男爵家の人々の書き分けが凄かった。
後期の作品には人間模様や家族愛などに主眼を絞った作品が多いが、本作はその代表作だと思う。ストーリー自体は普通の出来なのだが、躍動するが如き登場人物達のお陰で平均点を超える出来に仕上がっている。相変わらず最初から最後までドキドキさせてくれた。これが忘れられなくて後追い してしまうのかもしれない。「人物造形の巧さ」「無駄な描写が無い」これに尽きるぞ!フランシス。  ふと考えた。何故これほどまでにフランシスに酔いしれるのだろうか?と。シリーズとは言っても 主人公はほぼ毎回違うし、作風も違う。出会いから読了まで考え続け、今日、答えが見えた気がする。 子供の頃に魅了された”トムソーヤの冒険”を読んでいる時のドキドキ感と同じものを感じるのだ。 成長が無いのだろうか?。好みというものは、いくら成長しても(歳を取っても)変わらないのかもしれない。作家も成長し変化し続けるが、根幹は変わらないのだろう。初期作品も後期の作品もそれぞれに心に沁みる。
フランシスの感想を書いていると、何故か話がまとまらない。好きな作家について書くのは難しい・・。
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告解 ハード・文庫 Wild Horses
あらすじ 「私は・・・彼を殺した事を告白します・・・神様・・・お赦し下さい」
意識が混濁した瀕死の老人ヴァレンタインは、枕元にいた新進の映画監督トマス・ライアンを神父と間違えて、そう囁いた。 かつて装蹄師だったヴァレンタインが、作業の過ちで騎手の致命的な事故でも引き起こしたのだろうと、トマスは気にも留めなかった。 トマスは、26年前の競馬界の謎の事件を題材にした新作映画を撮影中だった。ニューマーケットの調教師の妻が、厩舎で変死したのだ。 夫が殺したのではないかと疑われたが、他殺とも自殺ともはっきりしないままに、年月が流れていた。ハリウッドのスターを主演に据えた この映画で、トマスは監督としての真価を問われていた。 事件の真相をめぐり脚本家との対立が激化するなか、何者かからロケを中止せよという脅迫状が舞い込む。 トマスは不屈の意思で撮影を続けるが、出演者が刃物で襲われ、さらに彼自身にも魔の手が・・・

 
感想
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敵手 ハード・文庫 Come to Grief
あらすじ 不運な落馬事故によって片腕となった元チャンピオン・ジョッキー、シッド・ハレー。 現在は競馬界専門の調査員となっていた。  放牧中の馬の足を鋭利な刃物で切断するという、残忍な犯罪が連続して発生し、ハレーに事件の調査依頼が舞い込む。 可愛がっていたポニーを襲われた白血病の少女が、犯人を探し出して欲しいというのだ。だが、容疑者として浮かび上がったのは、 ハレー自身が犯人とは信じたくない人物だった。
エリス・クイント・・・騎手時代には良きライバルであり、私生活でもハレーの親友だった男。引退後はテレビ・タレントとして 国民的な人気を博し、あらゆる人々に愛されている好男子だった。もちろんクイントは犯行を否定し、世間も彼が犯人だとは信じなかった。かえって、恵まれたクイントを妬むあまり間違った告発をしたと、ハレーはマスコミと世間からの凄まじい非難を浴びる。 ところが、この執拗なマスコミの攻撃には、じつは裏がある事が次第に明らかになってくる・・・。 「大穴」「利腕」に続き三度目の登場となる不屈のヒーロー、シッド・ハレー。
 
感想この作品を読み終わる度に、もう二度とこの主人公に出会えないのだと悲しくなります。フランシス作品の中で最も お気に入りの主人公シッド・ハレーは三作品に登場します。大穴・利腕の後15年の歳月を経て本作を登場させたあたり 作者本人もお気に入りの主人公だったのでしょうか。何かで読んだのですがこの作品は映画化、ドラマ化されたそうです。 その時に主人公を演じた俳優がはまり役だと絶賛され、この俳優がフランシスに直接 「もう1回演じたい。彼を主人公に再び書いて欲しい」とリクエストした事から本作『敵手』が生まれたそうです。
 で、本作ですがフランシス作品には珍しい形式をとっています。冒頭から犯人は分っていて、その後その犯人をどうやって 追い詰めたのかが明かされます。そしてエリスを擁護するマスコミはシッドを執拗に攻撃し、そこに個人的な悪意を感じたシッドは 調査を開始する・・・という内容です。前二作と比べるとミステリ色は薄いのですが酔いしれました。ですが、大穴&利腕を 未読の方にはこの良さが分らないかもしれません。是非、先に前二作を読まれる事をお薦めします。
読後、唯一つ残念だったのは前二作でシッドの助手を務めたチコが出て来ないことです。 マンネリを恐れたのかも知れませんが。その代わりシッド似の魅力的な脇役が登場します。 (いつも思うのですが、フランシスは自分自身が思い描く理想の英国紳士を主人公に据えている様な気がします)
 本作でMWA賞&CWA賞をダブル受賞しています。利腕でもダブル受賞を果たしているし、大穴も次点だった事を考えると フランシスの代表作と言えるのではないかと思います。あぁ、もう一作読みたいっ。
余談・・・前作”利腕”で31歳だったハレーは本作で35歳になっています。作中で利腕の事件を五年前だと言うシーンがあるので 誕生日前なのだなと思った私は、マニアックでしょうか?。
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不屈 ハード・文庫 To The Hilt
あらすじ 貴族の血を受け継いでいながら、一人スコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、 アリグザンダー・キンロック。
ある日、外出から戻った彼は、自分の山小屋の前で待ち構えていた四人の暴漢に襲われ、危うく命を落としかける。 闇雲に「あれは、どこにある?」と脅された挙句に、崖の上から突き落とされた。 悪魔的な連中が山小屋を めちゃめちゃにしたやり方は、まさに劇的といえる程の凄まじさだった。 事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷に行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義父が、 心臓発作に倒れたとの知らせを受けていたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義父の会社が倒産寸前であることを知る。 経理部長が莫大な資産を横領して姿をくらませたらしい。しかも、会社が主催する障害レースの賞品である、純金のカップも行方が わからない。 会社の危機を救うべく奔走をはじめたアリグザンダーは、自分を襲った四人組は横領事件に関係があるのではとの疑念を抱き始める。
 
感想
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騎乗 ハード・文庫 10‐lb Penalty
あらすじ 17歳のアマチュア障害競馬騎手のベンが突然厩舎を解雇される。父親のジョージの策略だった。 ジョージは下院議員選に出馬し、勝利する為に唯一の家族であるベンを必要としていたのだ。激しい反発を覚えながらも、やがて父親に 説得されたベンは選挙活動への協力を誓う。しかし、選挙区では、ジョージに対するスキャンダル攻撃と暗殺工作が待ち構えていた。
十代の少年を主人公に据え、生きる事の厳しさと真の男の勇気を描くサスペンス。

 
感想 10代の少年が主人公です。70歳を過ぎたフランシスの描く未成年は御孫さんがモデルだそうです(笑)。  日本の17歳と比べて非常に立派過ぎた主人公は、ちょっと違和感がありました。これはきっとフランシスの理想の少年像なので しょうか。もしくは、お孫さんが実際にこれ位立派なのでしょうか?(笑)。
政界が舞台で、主人公が未成年という異色の作品です。父親を狙うのは誰か?というフーダニット作品ではありますが、 そこに重点が置かれていません。質のよいサスペンスという印象です。
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出走 ハード・文庫 Field of 13
あらすじ 1967年に「本命」でデビューして以来、数々の傑作長編を世に送り出したディック・フランシス。 今や彼はミステリ界の最高峰に君臨し、全世界の読者が彼の作品に親しんでいる。 一方、その間にいくつもの雑誌やアンソロジーに、彼の短編作品が掲載されてきた。長編に劣らぬ短編の出来栄えに驚かされる。 そしてここに、競馬シリーズ37作目にして、初めての短編集の登場となった。 初の短編作品である「強襲」グランドナショナルに材をとった唯一の作品である「敗者ばかりの日」珍しく婦人雑誌向けに書かれた 「春の憂鬱」の他に、書き下ろされた5篇の作品が加わり全13作収録となったファン必見の短編集。

[収録作題名]  キングヒル・ダム競馬場の略奪/レッド/モナに捧げる歌/ブライト・ホワイト・スター/衝突/悪夢/強襲/特種/春の憂鬱/ ブラインド・チャンス/迷路/敗者ばかりの日/波紋

 
感想
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烈風 ハード・文庫 Second Wind
あらすじ 気象予報士のペリイは、同僚と共に、カリブ海でハリケーンの”目”を横断する飛行に挑む。 期待通り”目”の中の風景は、筆舌に尽くしがたい感動をよんだ。だがその帰途、強風に揉まれた機は海上へ不時着し、ペリイは嵐の海へと投げ出される・・・。 死を覚悟したペリイだったが、なんとか無人島へと泳ぎ着いた。そこは、偶然にも、”目”に挑む直前に彼らが立ち寄った島だった。 人の住まないその島では、なぜか牛の群れが飼われている。放棄された建物で金庫を目にしたペリイは、その中で奇妙な品物を目にした・・・。 やがて、救いの手が伸びる。だが、どこからともなく島へとやってきた飛行機に乗ったその人々は、奇妙な服に身を包み、銃を手にしていた・・・。 九死に一生を得てイギリスへ戻ったペリイだったが、事件はまだその姿を半分も見せてはいなかった。 一連の事件の裏には意外な黒幕が・・・思わぬ事態に直面したペリイは、自らの手で真相を解明すべく、陰謀の渦中へと飛び込んでゆく!。

 
感想
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勝利 ハード・文庫 Shattered
あらすじ 馬が足をもつれさせたのは、レースの最期の障害だった。七馬身の差をつけて先頭を走っていた馬が集中力を失い、障害にぶつかって転倒し、騎手の上でもんどりうったのだ。 半トンもの馬体は仰向けになり、下敷きになった騎手を押しつぶした・・・友人の騎手マーティンがレース中の事故で死亡し、ガラス工芸家ローガンの人生は一変した。マーティンは死の直前、謎のビデオテープを渡そうとしていたのだ。「テープには莫大な価値がある」 と言い残し・・・
やがて、謎の人物に襲われるローガン。狙いはビデオテープなのか?!ビデオテープの謎を追い、真相を探るローガン!
 
感想 ここに感想を書くのが憚られるのでこちらに記しています。
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再起 ハード UNDER ORDERS
あらすじ  障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された。持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ。彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという。ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた。そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた。レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという。やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される。こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する。彼は証拠不十分で釈放されるが、やがて事件が起きた。そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく。だが、卑劣な敵は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた。

 
感想  持ち馬が八百長に利用され、勝てるレースで勝っていないのじゃないかと疑っているエンストーン卿に調査をして欲しいと依頼されたシッド・ハレーは友人の騎手ウォーカーと友人の調教師ビル・バートンに会いに出かけるがウォーカーは競馬場の片隅で射殺体で発見される。その直前にウォーカーと言い争っていたバートンは殺害容疑と八百長の最重要容疑者として取調べを受けるが〜証拠不十分で釈放されたその日に拳銃自殺を遂げる。ウォーカーを殺したのは本当にバートンだったのか?バートンは本当に自殺だったのか?と調べ始めたシッドだが、シッドの彼女マリーナが襲われ真犯人がいることを確信し・・・という展開です。
 もうね、作品の出来がどうのこうの言うなんて贅沢は許されない作品です。作者ディック・フランシスは妻の死後、引退されていたんだけど〜6年ぶりでも新作を書いてくれただけで本当にありがたいし、まして新作の主人公がシッド・ハレーだなんてそれだけで星5つ差し上げたい気分です(笑)。そして、驚いたのですがフランシス御大は86歳ですよ(驚愕)。86歳でこれだけの作品を書ける気力、脱帽です。まぁ、率直に書くならシッドがちっと変わっちゃったなぁ〜とかいろいろ思うことはあるけれど、この作品はフランシスファンにとっては宝物なのだから評価など出来るはずがないじゃないかーーーっ。それと訳者さんが代わられていて驚いたのだけれど・・・前の訳者菊池光さんは亡くなられていたのですね。驚きました。ご冥福をお祈り致します。競馬用語なんかで突っ込まれていらっしゃった訳者さんだけど、わたしは大好きな訳者さんでしたし、出来るなら全ての作品を菊池訳で読みたかったです。
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ディック・フランシス&フェリックス・フランシス(共著)作品あらすじ&感想
祝宴
DEAD HEAT
ハードカバー 初版2007年12月10日
あらすじ マックス・モアトンは史上最年少でミシュランのひとつ星を獲得した若きシェフ。ニューマーケット競馬場の近くにみずからがオーナーのレストラン〈ヘイ・ネット〉を構えている。平日なら1週間以上、週末は1カ月前には予約が必要な人気店だ。ロンドン進出のオファーもあり、前途は洋々だ。しかし、彼が料理を担当した伝統の2000ギニーレースの前夜祭で食中毒が発生すると、将来には暗雲が立ちこめる。店の常連だった競馬界の有力者が次々と激しい腹痛と嘔吐に襲われ、〈ヘイ・ネット〉の厨房は食料基準局によって閉鎖されてしまう。マックス自身も毒に冒され、ベッドの上でのたうち回るはめに。彼と店のスタッフはつねに清潔を心がけ、食材の選定にも心を配ってきたはずだが……。必死に築き上げた評判も、このままでは地に落ちる。しかもレース当日、マックスは競馬場の貴賓席で催されるスポンサー企業のパーティをまかされていた。弱った体でなんとか料理をこなしたが、パーティ会場で爆弾テロが発生し、多くの死傷者が! 前日の食中毒と爆弾事件になにか繋がりがあると直感したマックスは、汚名返上のため調査を開始する。

 
感想  「勝利」を読んだショックから抜け出せないまま読み始めた「祝宴」ですが、結果から言うと楽しめました。ディック・フランシスがどの程度、制作に手を貸されたのか分かりませんが、本を読む限りではフランシス色の濃い作品です。ただし・・・相変わらずラブシーンが下手というかぎこちないというか。これは血統だったのでしょうかね?(笑)。
で、感想を書くのはここで控えます。というか〜共著になったのにこのページにこのまま書き連ねて行って良いのかどうか判断に悩んでます(汗。

審判
(SILKS)
早川書房単行本 初版2008年12月20日
あらすじ  弁護士のジェフリイ・メイスンは、法律事務所に勤務しつつ、休日はレースに出場するアマチュア騎手。ある日、トップ・ジョッキーのバーロウが干草用のピッチフォークで串刺しにされるというショッキングな殺人事件が起き、ライバル騎手のミッチェルが逮捕された。あくまでも濡れ衣を主張するミッチェルだったが、被害者と犬猿の仲であったことは周知の事実で、凶器が本人のものであったこと、被害者の携帯電話に彼の名前で脅迫メールが送られていたことなど不利な状況証拠も揃っていた。騎手仲間であるメイスンは弁護を依頼されるが、その直後から「弁護を引き受けてわざと負けろ」という奇妙な脅迫の電話やメールが届き始める。恐怖と職業倫理の間で揺れ動くメイスン。時同じくして、彼は事務所の前で待ち伏せしていた男にバットで手ひどく殴りつけられる。暴漢はかつての依頼人トレントという男で、有罪になったことを逆恨みしての凶行だった。トレントの報復とバーロウの殺人事件には何らかの関連が?真実を白日の下に晒すため、そして自身の誇りを取り戻すため、満身創痍のメイスンは法廷に立つ。

 
感想  弁護士の主人公の名前が「メイスン」って笑えますよね(笑)。こういうお茶目なところは息子さんの考えなんでしょうね〜。といいつつ、共著2作目の本作は非常にフランシスっぽい作品でした。主人公の弁護士メイスンはアマチュア騎手で休日だけアマチュアレースになんかに騎乗しているんだけど、その騎手仲間が殺されるという事件が起こる。で、犯人として捕らえられた男も騎手仲間で、メイスンは弁護をしてくれと頼まれ、友人の弁護など出来ないと断ろうとするが・・・。なぜかメイスンは暴漢に襲われる。時を同じくして『弁護を引き受け、裁判に負けろ』と脅迫の電話が掛かるようになり・・・という展開です。主人公は一旦は脅しに屈しかけるんだけど、事件の真相を知ろうと自ら立ち上がり、悪漢に立ち向かうという展開でして〜いつかどこかで読んだような展開です(笑)。そう『利腕』風なんですよね〜。といって、似ているからと非難しているわけではなくて、フランシス風を守っている息子さんに拍手です。読者であるわたしは、マンネリでもいいからフランシスの作風を貫いて欲しいと思っているんですよね。なので、共著として出版される限りは水戸黄門のようにマンネリを貫いて欲しいと思うわけです。でね、マンネリだと言ってますが、物語の結末はあんがいと巧く着地している(?)ので、ミステリとしてみても平均点は超えていると思います。昔からフランシスを読んであるファンの方でも十分読める作品だとおもいます。 作家名INDEXホームへ戻る



拮抗
(Even Money)
早川書房単行本 初版2010年1月10日
あらすじ  亡き祖父から受け継ぎ、競馬専門のブックメーカー業を営むネッド・タルボット。女王陛下が観戦する英国最大の競馬レース“ロイヤル・アスコット”の初日、馬券を売っている彼の前に、父親のピーターと名乗る男が現われた。両親は自動車事故で死んだと祖父母から聞かされていたネッドは、にわかに信用することはできなかった。男は36年前にネッドの母が死んだあと、当時一歳のネッドを残してオーストラリアに渡ったという。その驚くべき話が終わった直後、二人の前に暴漢が出現した。「金はどこだ」とすごむ男に抵抗したピーターは、刺殺されてしまう。警察のDNA鑑定の結果、ピーターが父親であることが確定するが、同時にネッドは警察から思わぬことを告げられる。ピーターが36年前に妻を殺した容疑者だというのだ。彼はその真偽と父が帰国した目的を探るが、やがて暴漢が父の持ち物を探していることを知る。さらに、別の男が父の持ち物を狙って彼の家に侵入する事件も起きた。父はいったい何をしていたのか? 競馬場内が通信不能になる事件が続発する中、病気の妻をいたわりながら謎を追うネッドに、さらなる苦難が!。

 
感想  読んでいて、主人公のネッド・タルボットにいつかどこかで会ったことのあるような不思議な感じを味わったのですが、すぐに思い当たりました。『証拠』に出てきた主人公のワイン商に似ているんですよね(笑) 。『拮抗』の主人公の妻は死んではいないんですが、躁鬱病で入退院を繰り返していて、それがためにネッドはとても幸せとはいえない生活を送っていて、こういう部分が『証拠』の主人公とかぶったのかもしれません。で、物語はというと・・・
 競馬専門の賭け屋を営んでいるネッド・タルボットの目の前にネッドの父だと名乗る男が現れる。ネッドの両親は自動車事故で死んだと教えられ、祖父母に育てられたネッドは俄かには信じられぬまま男の話を聞いていたのだが、二人の前に暴漢が現れ、ネッドの父と自称するピーターは暴漢に抵抗し刺殺されてしまう。警察のDNA鑑定の結果、ネッドとピーターの血縁関係は証明されたが、同時に警察からは意外な事実を知らされる。ネッドの父ピーターはネッドの母を殺した容疑者だというのだ。父の残した遺品からは父は何らかの不法行為に関わっていたと疑われ・・・という展開です。主人公の人物造形や物語の展開など、知らずに読んでいたならフランシス単独で書いたんじゃなかろうかと思うほどお父様風の作品に仕上がっています。ひょっとすると随分と以前から息子さんはフランシスの執筆に手を貸されていたのかも?しれませんね。で、物語は勧善懲悪物とは言い難い結末でして(黒幕は社会的制裁を受けないので)その点がフランシスファンには引っ掛かる点かもしれませんが、ワタクシは楽しんで読了しました。ラストに用意された救いの一文が良いんですよね(笑) 。
ディック・フランシスが亡くなり、このシリーズが続くのかどうか、それが気掛かりです。


  


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