新刊情報・・・2006年末頃にドートマンダー シリーズの新刊『Bad News』が早川書房から邦訳出版されるそうです♥ 
みなさん、是非、自分で購入致しましょう。



ドートマンダー シリーズホット・ロック/強盗プロフェッショナル/ジミー・ザ・キッド/悪党たちのジャムセッション/天から降ってきた泥棒/骨まで盗んで/最高の悪運

シリーズ外作品  我輩はカモである/

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ドナルド・E・ウェストレイク(Donald E.Westlake) 作家略歴&著作の感想
ドナルド・エドウィン・ウエストレイク
生年月日 1933年7月12日生
生誕地  アメリカ、ブルックリン生まれ
処女作  やとわれた男
デビュー年 1960年
公式サイト http://www.donaldwestlake.com/

作家略歴

1933年7月12日、アメリカ、ブルックリン生まれ。両親共にアイルランド系。子供の頃から本を読むのが好きで11歳の時、はじめて短編小説を書く。以後、ミステリ、SF,ウエスタンなど短い作品を書いては手当たり次第に雑誌に投稿するが、すべてボツにされる。20歳の時にはじめて雑誌に作品が掲載される。空軍に入隊するが軍隊生活に馴染めずカレッジへ。卒業後はニューヨークに移り出版エージェンシーのスコット・メレディスに勤務。心ならずもセックス小説を執筆。1960年『やとわれた男』を大手出版社のランダムハウスから上梓。その後、本名と別名を使い分けながら(リチャード・スターク/タッカー・コウ/カート・クラーク/ティモシー・J・カルヴァー/サミュエル・ホルト/ジャドスン・ジャック・カーマイクル)30年以上にも及ぶ執筆活動を続け多数の著作がある。リチャード・スターク名義で書いた『悪党パーカー/人狩り』で人気が出る。
ドナルド・E・ウエストレイク名義の作品は角川書房&早川書房&扶桑社&講談社&文芸春秋社から、タッカー・コウ名義は早川ポケットブックから(確か絶版)、リチャード・スターク名義の作品は早川書房から、サミュエル・ホルト名義の作品は二見書房から翻訳出版されている。(数作が早川書房のミステリアスプレス文庫から出ていたのですが、ミステリアスプレス文庫自体が廃刊になっているので先で危ないかも・・・)
受賞歴
1968年 MWA最優秀長篇賞   『我輩はカモである』(God Save the Mark)
1990年 MWA最優秀短篇賞   『悪党どもが多すぎる』(Too Many Crooks )
1991年 MWA最優秀映画脚本賞 『グリフターズ/詐欺師たち』(The Grifters)
1993年 MWA巨匠賞
1997年 アンソニー賞巨匠賞

現在は妻であり作家であるアビー・アダムズ(ノンフィクション作家らしい)と共にニューヨーク州の田舎に住んでいる。この奥さんは三人目の方。

(管理人追記・・・公式ホームページのウエストレイク氏の文章が笑えます。『私には一人の妻と一人の姉妹と二人の別れた妻がいる・・・(中略)7人の子供の養育費を〜』といった感じです。一度、覗いてみて下さい♪)

ドナルド・E・ウェストレイク名義の作品感想
泥棒ドートマンダー シリーズ
ドートマンダー シリーズは現在8作品が邦訳されていますが、版元がバラバラな上に入手不可能状態のモノもあるので、途中から読まれる方の為に簡単にドートマンダーのプロフィールを。(本国では12作品が上梓されているらしい)

ジョン・アーチボルト・ドートマンダーのプロフィール
イリノイ州中央部の小さな町に生まれた。女子修道院の運営する孤児院で育った。処女作の時点で二度の服役経験があり37歳。その他にも何回か逮捕歴があるが、その度に証拠不十分で釈放。強盗以外の犯罪で逮捕された事は無い。1952年にサンディエゴでナイトクラブのストリッパーと結婚したが1954年に離婚を要求したところ、相手は喜んで応じ処女作の時点では独身。見たところ病み上がりの男といったところで、髪には少し白髪が混じり、少し疲れ、顔には少ししわがより、痩せている。目は光が無く用心深くて無表情。ウェストレイクによると、ドイツのトルトムント産のビール(ドルトムンダー、英語読みでドートマンダー)から取ったそうです。 (名前のDortmunderは「Don't Murder」のアナグラムでもあります)


ホット・ロック
(THE HOT ROCK)
ドートマンダー シリーズ第一作
角川書店 文庫 初版1972年6月20日
あらすじ  長い刑期を終えて出所したばかりの盗みの天才ドートマンダーに、とてつもない仕事が舞い込んだ。それはアフリカの某国の国連大使の依頼で、コロシアムに展示されている大エメラルドを盗み出すというもの。報酬は15万ドル。彼は4人の仲間を使って、意表をつく数々の犯罪アイディアを練るが…。不運な泥棒ドートマンダーの奇怪で珍妙なスラプスティック・コメディ。

 
感想  巨匠ウエストレイク氏の感想が書き難くて放置していたのですが、好きな作家の名前が漏れているのは哀しいので読み返してみました。本作はドジで不運続きの泥棒ドートマンダー シリーズの第一作です。ウエストレイクはもうおじーちゃんだけれど未だに新作を執筆されています。人気シリーズです。
で、感想ですが今読んでも腹を抱えて笑えます。何が面白いって奇想天外なストーリーもだけれど、登場人物全員の人物造詣が良いんですよね。どちらかというと陰性のドートマンダーのぼやきで笑えるし、泥棒仲間の全員が超変人愉快なので最初から最後まで吹き出しながら読み進むといった感じです。列車オタクのチェフウィック&「うまい話しがある」が口癖の能天気なケルプ&車からヘリコプターまで運転なら何でもOK乗り物オタクのマーチ&女に目が無いグリーンウッド・・・この四人とドートマンダーの掛け合いだけでも物語が成り立つほどです。このシリーズの全作に言える事ですが主要登場人物以外の登場人物でも笑えるのですよね。悪党でも真面目な銀行員でもちょっと出てくる犬でも、その描写が可笑しいのです。長らく絶版だったのですが改定版が出ていますので新しい訳で読まれると良いと思います。お勧めです♪。ただし、この可笑しさは通じる方と通じない方とに二分されると思います。なので冒頭を読んでみて、合うか合わないかを見てからご購入された方が宜しいかもです。(10ページも読めば分かると思います)作家名INDEXホームへ戻る



強盗プロフェッショナル
(BANK SHOT)
ドートマンダー シリーズ第二作
角川書店 文庫 初版1975年1月20日 改定初版1998年9月25日
あらすじ  天才的犯罪プランナー、ドートマンダーも、近頃ではその仕事に少々嫌気がさしていた。ところがそこへ親友ケルプがでっかい話を持ち込んできた。銀行強盗だ。しかもただの銀行強盗ではない。その銀行はトレーラーを使って目下仮営業中。そこでそのトレーラー、すなわち銀行をそっくりそのまま盗もうというのだ。ドートマンダーのプロ根性がむらむらと頭をもたげるが…。不運な泥棒ドートマンダー・シリーズの第二作。

 
感想  読み直そうにも、本をどのダンボールに詰めたのか分からないので、改定版を買ってみました(ファンの鑑でしょう?)。で、読後の感想ですが、やっぱりこのシリーズは最高傑作ですね(笑)。出だしから最後まで腹を抱えて笑えます。ただ一つ、残念なのは列車オタクのチェフウィックが出て来ない事かな。好きなキャラクターなんですよね。
 百科事典を売りつけるというケチな詐欺で、危うく警察に捕まりそうになったドートマンダーに、仕事仲間のケルプが『今度こそ成功間違いなしの保障付き』というヤマを持ち掛ける。ケルプの持ち込む『うまい話』をこれっぽっちも信じていないドートマンダーだが、仕事の内容を聞いて動く気になる。そのヤマとは、トレーラーで仮営業中の銀行を、トレーラーごと強奪しようというのだ。かくして、仕事にとりかかる前に、まずメンバー選びから始まるのだが・・・というストーリーです。前作で登場したケルプ&マーチ&マーチのおふくろさんに加えて新メンバーが二人。一人はドートマンダーの彼女のメイで、もう一人はケルプの甥ビクターなのですが、この二人も、とにかく個性的なキャラクターなんですよね。ウェストレイクの巧さは人物造詣だけでは無いけれど、本作の魅力は、やっぱり登場人物のおかしさにあるんだなと再認識致しました。ですが、プロットも馬鹿にしてはいけません。本作はクライム・コメディーというかスラプスティックコメディーだけれど、プロットの確かさがあるからこそ、これほど楽しめるのだと思います。ウェストレイクが別名義で書く作品も好きだけれど、このシリーズは別格です。これほど愛着のあるシリーズは他にありません。 作家名INDEXホームへ戻る



ジミー・ザ・キッド
(JIMMY THE KID)
ドートマンダー シリーズ第三作
角川書店 文庫 初版1977年1月30日 改定初版1999年5月25日
あらすじ  "金輪際口をききたいとも思わなかった"相棒ケルプがまたしてもドートマンダーに"計画"を持ち込んだ。今回はずばり、誘拐。リチャード・スタークなる作家の小説を犯行のネタ本にしようというのだ。ケルプ曰く、この本の通りにすれば、子供も殺さず自分たちも捕まらず、大金ががっぽり、つまり大成功という訳らしい。呆れた話に聞く耳を持たないドートマンダーだが、恋人メイや、マーチ、マーチの母親は大乗り気。しぶしぶ腰を上げるはめになったのだが、実際には本の通りにいくはずもなく…。不運な天才泥棒と小悪党たちが繰り広げるスラプスティック・コメディー、シリーズ第三弾。

 
感想  これも、改訂版を読み直した感想です。久々に読むと笑えますね。私は、この本を通勤列車の中でニヤニヤしながら読んでいたのだけれど、さぞ、周りの方にとって不気味な存在だったろうと思います。笑いを堪えるのが大変でした。
 ドートマンダーが夜中の三時に毛皮店に盗みに入ろうとしたその時、どこからか自分を呼ぶ声がする。振り返ると疫病神のケルプがいる。また、ろくでもないヤマを持ち込んだのだろうと無視しようとするが、ケルプは一冊のペーパーバックを『あんたに読んで貰いたいんだよ』とドートマンダーに押し付けて去って行った。題名は『誘拐』で、作者はリチャード・スタークという人物・・・というストーリーです。ケルプは田舎町のブタ箱に五日間、拘置されていたのですが、その間、退屈だったのでスターク著のパーカー シリーズを数冊読んだのですよね。で、閃いた。この通りにやれば、間違いなく大金が転がり込んでくると思ったワケですよ。このリチャード・スタークなる作者は実在で、ウェストレイク本人なのですよね(別名義で書いている)。もう、この時点で笑えます。いつものメンバーと一緒に、本の通りに誘拐を実行していくのですが、本の通りには行かないので、いつものようにドタバタが始まるのですよね。この辺りは読んで頂いた方が良いでしょう。書いちゃうと、読む人に失礼ですよね。それと、いつも思うのだけれど、ウェストレイクはスラプスティック・コメディーでもプロットに懲りますね。最後のオチでは腹を抱えて笑わせて頂きました。ほんと、楽しんで書いているんだろうね、この人。 作家名INDEXホームへ戻る



悪党たちのジャムセッション
(NOBODY'S PERFECT)
ドートマンダー シリーズ第四作
角川書店 文庫 初版1983年5月10日 改定初版1999年5月25日
あらすじ  窃盗の現行犯で囚われていたドートマンダーの元に敏腕弁護士が現れる。無罪と引き換えに仕事を請けろ、という。依頼人は金持ちの絵画コレクターで、自分の所有する絵を盗んで欲しいらしい。偽装盗難をでっち上げ、保険金をだまし取る算段なのだ。依頼人から絵を盗む、単純なこの仕事は楽勝かに見えた。しかし、"疫病神"ケルプが登場し、盗んだ絵まで盗まれて…絶体絶命のピンチに陥ったドートマンダーだが、今度こそ大金を手に出来るのか!?間抜けで冴えないけれど、なんだか憎めない小悪党たちの競演。不運な泥棒ドートマンダー シリーズ第四弾。

 
感想  この作品も改訂版を読んでの感想です。
 出だしはドートマンダーが逮捕されているシーンから始まります。いつも儲からないけど捕まらない不運な天才泥棒ドートマンダーがついに逮捕されたワケですが、あっけなく無罪放免で釈放されます。やり手の弁護士に無料で弁護して貰ったお陰で無罪になったのですが、そんなうまい話があるはずが無い。借りを返さないといけないドートマンダーは保険金詐欺の片棒を担ぐハメになり・・・というストーリーです。何が楽しいって、この作品には今までの登場人物の殆どが(小悪党たち)登場するのですよね。このシリーズのファンには美味しい作品です。そして、プロットの巧さが光ります。物語が二転三転四転する度に、ドートマンダーが苦境に陥るのですが、その度に大笑い出来ます。
 本国では12作品もあるドートマンダーシリーズですが、邦訳されているのは8作品のみ・・・。何で邦訳が打ち切られちゃったのだろうなぁ。どこぞの心ある(?)版元様!お願いです。残りの作品を邦訳して下さいましっっっ。 作家名INDEXホームへ戻る



天から降ってきた泥棒
(GOOD BEHAVIOR)
ドートマンダー シリーズ第四作
早川書房 ミステリアス プレス文庫113 初版1997年6月30日
あらすじ  超高層ビルの最上階に軟禁された娘を救い出せ!天才的な泥棒ドートマンダーは、ひょんなことから厄介な仕事を引き受けるはめになった。ついでに貴重品を盗んでひと儲けしようと考えた彼は、それを餌に仲間を集め、厳重な警備を誇るビルに侵入する。が、ハプニングの連続で窮地に…。

 
感想  本作は多分、絶版です。早川書房がミステリアス・プレス文庫自体の出版を止めてしまったので、再販されるのかどうか危ないところです(人気のある作家のものは装丁を変えて再販され始めたので期待していますが・・・2005年6月現在)。
 輸入食品会社の倉庫に仕事仲間のオハラと一緒に忍び込んだドートマンダーは又しても警察に追い掛けられるハメに。切ったはずの警報装置が鳴り響き、駈け付けた警察官にオハラは御用。ドートマンダーは何とか追っ手の手を逃れたが、他の事件に巻き込まれる事に。ドートマンダーが逃げ込んだ先は修道院で、匿ってあげた代わりに、幽閉されている尼さんを一人、助け出して欲しいと頼まれ・・・というストーリーです。幽閉されている尼さんの父親は大金持ちで、所有するビルの最上階(76階)に尼さんを閉じ込めているのですよね。勿論、警備員は多いし、あらゆる警報装置は付いているし、進入口も無い要塞。で、ドートマンダーはいつもの仲間を集めて、尼さんの救出に挑むわけですが、それだけでは終わらない。そのビルの住居部分以外には沢山の宝石店が入っているので、ついでに宝石の強奪も計画する。だけど、いつものように計画通りにはいかないのですよね。幼い頃、修道院で育ったが為に、尼さんに逆らえないドートマンダーと、いつもの仲間たちが繰り広げるドタバタ喜劇は、疲れを吹っ飛ばしてくれるくらい笑えます。
 このシリーズには色んな登場人物が何度も出てくるのですよね。泥棒仲間以外でも過去に出てきた登場人物が出てきたりして『あっ、また出たっ』っと笑えますので、シリーズ第一作から通して読まれた方がより楽しめると思います。 作家名INDEXホームへ戻る



骨まで盗んで
(DON'T ASK)
早川書房 文庫 初版2002年6月10日
あらすじ  大腿骨はトラブルのもと?何の因果か天才的泥棒ドートマンダーは、ある国から隣の国が所有している聖少女の骨を奪ってくれと頼まれた。それはどうも国にとって重要な物だと知り、ドートマンダーは泥棒仲間と共にいざ出陣。だけども失敗、これはまずいと逃げだしたが…哀れ投獄された不運なドートマンダーと骨の運命は?

 
感想 某国大使館から、宗教的価値のある人骨を盗み出すという簡単な仕事を請け負ったジョン・ドートマンダー。盗みは簡単に終わったのだけれど、さぁ、逃げるぞという時にアンディ・ケルプのチョンボの所為でジョンだけが捕まってしまい・・・というストーリーです。
 とても面白かったんだけれど、訳が酷くて読み難い箇所がふんだんにあります。登場人物の一人が、英語の発音が上手じゃなくて(濁音を発音しない)この人の口語文が読み難いのですよね。例えば「それて、やり遂けても残りの半分しか貰えない。ちゃあ、とうしてそこて止めないんた?」「たか、アメリカの承認かある」「チョン(ジョンの事)」←こんな感じです・・・。読んでいて突っかかって突っかかって、普通の小説を読む倍の時間が掛かったんじゃないかというくらい気になりました。訳者の方も苦労されたのだろうけど、他に方法は無かったのでしょうかね?。まぁ、文句はこのくらいにして。(元々、この訳者が苦手なのでね)
 でもね、オチは最高です。この読後感が忘れられないので、ドートマンダー シリーズが恋しいのですよね。   作家名INDEXホームへ戻る



最高の悪運
(WHAT'S THE WORST THAT COULD HAPPEN?)
ドートマンダー シリーズ第六作
早川書房 ミステリアスプレス文庫147 初版2000年4月30日
あらすじ  天才的な泥棒ドートマンダーは盗みに入った大邸宅で、不運にも邸の主人に捕まってしまった。しかも、同居人のメイからもらった大切な指輪まで奪われるはめに。プロの意地を賭け、彼は仲間たちとともに指輪奪還に向かう。が、仲間たちは指輪のついでに大金を盗み出すことを計画し、事態は大混乱に―オールスター・キャストで贈る爆笑につぐ爆笑の話題作。

 
感想  いやぁ〜〜〜。最高に楽しめました♪。今までのシリーズに出て来た登場人物の殆どが集結するのですよね。なので、ファンの方には別の意味で楽しめる作品です。ワタクシは『強盗プロフェッショナル』と、本作『最高の悪運』が一番のお気に入りです。
 仕事仲間に誘われ、無人の筈の大邸宅に忍び込んだドートマンダーは、銃を突きつける邸の主に捕まってしまう。駈けつけた警察官に手錠を掛けられ、パトカーに乗せられたドートマンダーは、必死の思いで脱出を果す。がむしゃらに逃げ出したのは、恋人メイから貰った指輪を邸の主に奪われたからだった。プライドをコケにされたドートマンダーは指輪を取り返すべく、仲間を結集し・・・というストーリーです。パトカーから脱出を果したドートマンダーは指輪を取り返すために、大邸宅に後戻るのですよね。でも、主も指輪も居ない。で、怒れるドートマンダーは、大邸宅の中にあった車一台と金目のものを全て持ち出すのですよね。総額三万ドル。いつも不運なドートマンダーが不思議な事に大金を手にするんですよね。盗られた指輪以上のものを手に入れたドートマンダーだけれど、指輪を取り返すまでは諦めない。二度、三度と計画を立て、その度に指輪は戻らないけど大金を手に入れていくシーンでは、大笑いしながら読み進みました。
 ウェストレイクが、どちらかというと日本で地味に見えるのは、発表当時、日本では社会派ミステリが隆盛だった所為かもしれません。今こそ、再評価されて然るべき作家だと思います。初期の角川版は改定版として再登場しているし、本作も復刊される事を切に願います。 作家名INDEXホームへ戻る


シリーズ外(単発)作品感想
我輩はカモである
(GOD SAVE THE MARK)
早川書房 ミステリアスプレス文庫86 初版1995年4月30日
あらすじ  フレッド・フィッチは詐欺師に騙されてばかりいる不運な男。そんな彼に顔も知らない叔父の遺産が転がり込んできた。だが、叔父は詐欺の名人で誰かに殺された事が分かった。やがて怪しげな人々が現れ、彼は命まで狙われるハメに。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞を受賞。

 
感想 物語としては、とてもよく出来た作品だと思うけれど・・・なんと言えばいいのか。好みじゃないという感じでしょうか。主人公は、ありとあらゆる詐欺に遭い、騙され続けてきた人の好い男なんだけど、この主人公がどうしても好きになれないんですよね。(管理人は腹黒いので、こういうお人好しが出て来る作品が苦手でね)これは、ただ単に好みの問題だと思います。ウェストレイクの巧さはこの作品でも光っているので、この主人公像が鼻につかない方ならば存分に楽しめる作品でしょう。ドートマンダー シリーズと同じく、物語は奇想天外、プロットはしっかりしているしMWA賞を受賞したのも頷ける出来です。

注・・・この作品はハヤカワのミステリアスプレス文庫から出ていたのですが、現在は(2005年2月)装丁を変えて新装版が出ています。装丁は、以前のミステリアスプレス文庫の方が格段に良いので古本屋で捜されてみて下さいね♪。 作家名INDEXホームへ戻る




(THE AX)
文芸春秋社 文庫 初版2001年3月10日
あらすじ  わたしは今、人を殺そうとしている。再就職のライバルとなる元同業者6人を皆殺しにする。この苦境を脱する手は他にないのだ―リストラで失職したビジネスマンが打った乾坤一擲の大博打は、やがて彼の中の"殺人者"を目覚めさせてゆく。

 
感想  いやぁ〜〜〜〜〜〜っっ。最高に楽しめました。これを読んで、楽しめたと書いて良いのかと、ちょっと躊躇しますがね(笑)。
本作のジャンルはノワールです。ノワールと言っても笑える箇所もあるので、ブラック・コメディって感じでしょうか?。実は私はウェストレイク名義の作品なので、てっきりスラプスティック・コメディだと思い込んで読んでいたのですよね。正直言って驚きました。
 製紙会社の中間管理職として長年勤務してきた主人公バーク・デヴォアは現在失業中の身。会社に解雇されたのだ。技術も知識もあるのだから再就職は簡単だろうと思っていたが、現実は違った。デヴォア程度のキャリアを積んだ失業者は山ほどいたのだ。パート勤務で家計を支える妻と二人の子供たちの為に、何としても就職先が欲しいデヴォアはある決断をする。自分と同じように製紙会社の中間管理職に就きたがっている失業者を始末しようと・・・というストーリーです。デヴォアは自身で製紙会社の急人広告を出すのですよね。で、大量に送られてきた履歴書に目を通し『こいつは俺よりキャリアが優れているな』とか『こいつはベトナムに従軍しているぞ。こいつは採用され易いだろうな』という目ぼしい輩をピックアップし、一人、また一人・・・と殺していくワケです。全て一人称で語られているので、デヴォアの危ない精神状態を見せられて、ぞくぞくするんですよ。一人称で書かれていると、つい主人公に感情移入してしまうので、自分までおかしくなっていく錯覚に陥ります(笑)。しかし、ウェストレイクは巧いですねー。それに、作者が楽しんで書いているのが伝わってくる。『俺がウェストレイク名義でこの作品を発表したら、ファンは驚くぞ』とニヤついて書いたんだろうなぁ。ドートマンダーのファンにお勧めしたい一作です。一緒に驚きましょう♪。それと、パトリシア・ハイスミス ファンにもお勧めです。私は本作を読んで、ハイスミスを読む時に感じる怖さを感じました。



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