剥がされた皮膚/残虐なる月


クリス・シムズ(Chris Simms)作家略歴&著作の感想
作家名 クリス・シムズ(Chris Simms)
生年月日 ???年
生誕地  ???
処女作  Outside the White Lines (2003)
デビュー年 2005年
公式サイト http://www.chrissimms.info/

作家略歴

DI Jon Spicer Series(スパイサー警部シリーズ)
1. Killing The Beasts (2005)
2. Shifting Skin (2006)
3. Savage Moon (2007)
4. Hell's Fire (2008)
5. The Edge (2009)

Novels(シリーズ外単発作品)
Outside the White Lines (2003)
Pecking Order (2004)


マンチェスター警察殺人課ファイル
剥がされた皮膚
(Shifting Skin)
小学館文庫 初版2006年12月1日
あらすじ  「最初の被害者は胸と上腕の皮膚だけが剥がされたんだったね?今回は被害者の喉、胸、上腹部、太ももの皮膚までも剥ぎ取った」―イギリス北部の中心都市、マンチェスターで、格差社会から零れ落ちたような孤独な女性たちが次々と襲われ、被害者の傍らには剥がされた皮膚がきちんと積まれていた。ラガーマン警部、ジョン・スパイサーが、不思議な同僚リック・サヴィルと共に猟奇犯を追いつめていくが、次に狙われたのはジョンの知人・フィオーナだった。ドメスティック・バイオレンス、ゲイ文化、アル中患者、貧困家庭、売春組織など、マンチェスターの荒廃した社会に潜む犯人の正体は―。

 
感想  本作は日本で最初に邦訳されたシムズ作品なんだけども、シリーズの二作目の作品なんですよね。で、主人公のスパイサー警部は、仕事は出来るんだけどとある事情で上司に毛嫌いされているという設定でして、どうもその毛嫌いされる原因がシリーズ1作目で描かれているらしいんですよね。なので、いまいち主人公と上司との関係が理解できず、どうせならシリーズの1作目から読ませてくれれば良いのにと不満を抱えたまま読了致しました。
 で、物語はというと・・・英国マンチェスターで女性たちが殺された上、体の皮膚を剥ぎ取られた状態で遺棄されるという事件が立て続けに起こっていた。スパイサー警部は新人刑事リックと組まされ捜査に当たる事になるのだが、新人は上司のスパイかも?。で、スパイサー警部のパートナーは美容院に勤めているのだが、その美容院の同僚フィオーナはアル中の夫から虐待を受けていた。が、ある日 虐待に耐えられず家を飛び出し、モーテルの一室で夜を過ごすのだが、夜中に隣室での騒ぎを聞いてしまう。まるで女性がセックスの途中で絞め殺されるような物音だったのだ。で、フィオーナは殺人事件かもしれないと同僚の旦那であるスパイサーに相談するのだが、聞き間違いだろうと無視され・・・という展開です。
フィオーナはアル中の夫に虐待されている悲惨な女性なんだけど、彼女も長く辛い結婚生活の間に酒に依存する中毒者になっていたんですよね。で、殺人事件の現場を聞いてしまったと訴えるんですが、アル中のいう事だからと無視されてしまうのです。で、彼女は自身で隣で殺されたかもしれない女性の身元を探り安否を確かめようとするのですが、結果 彼女自身が犯人に狙われるという展開です。なんか説明できないんだけど、もうね、読んでいてイライラします〜〜〜でも、イライラさせられてしまうんだけど読んじゃうんですよね(笑)。主人公の警部のうかつさとか気の弱いところにイライラするのかもしれません。こういうのも作者の巧さなんでしょうけど大変に評価が難しい作品で、イヤミスってのはこういう作品のことを言うのかも???。すでに二作目が邦訳されているので(2008年11月23日現在)次作も読んでみるつもりです。 作家名INDEXホームへ戻る



残虐なる月
(SAVAGE MOON)
小学館 文庫 初版2008年11月12日
あらすじ  英国マンチェスター郊外の牧羊農家で、一匹の羊と主婦が喉をえぐられた惨殺死体で発見された。いっぽう、同性愛者が出会いを求めてたむろする市内の駐車場から、何者かが襲われているという一本の緊急電話が警察に入った―。この、一見関連性のない二つの事件が、ともに「クロヒョウの仕業」という線で結びついていく…。

 
感想  ↑の感想でも書いてますが、本作も読んでいてイライラする作品です(笑)。前作同様、本作も「イヤミス」と呼べる内容でして・・・物語の大筋である”連続殺人事件の犯人はクロヒョウの仕業か?もしくは人間の仕業か?”って部分は、まぁ普通なんですけど、主人公の嫁が何とも嫌な人物で読み進むのが苦しかったの何のって(汗)。前作で妊娠中だった主人公の嫁が本作では産後ウツになってあるんですよね。で、その産後ウツの苦しさは筆舌に尽くしがたいほど酷いんだというのは分かるんですが、彼女は子育てのために夫に「仕事をするな」と迫るわけです。夫は殺人課刑事だから仕事をするなと言われても制服警官のように定時で上がれるわけはないんだけど、そこを無理やっこ押し通しちゃう嫁で、旦那は受け持っていた事件を下りざるを得ない状況に追い込まれたり。で、ワタクシが一番耐えがたかったのは、この嫁さんは飼い犬を捨てて来いと旦那に言うんだよね。今まで夫婦で子供のように可愛がってきた犬を「犬が子供を襲う可能性があるから家から出せ、捨てて来い」と言うんだよね。これは、たとえ物語りでも許せないってか、登場人物に抱いた嫌悪感は消えないってかね。読んでいて作者は何を描きたかったのだろうか?と正直 首を捻りました。また、この嫁さんがね 産後ウツだけとは思えない突拍子もない行動に出るんだけど、彼女はイラク侵攻に抗議と称し、政治性党本部に乱入し、事務所で大暴れしたりする始末で(子供をつれて)、読んでいてこの作家 女というか子を持つ母になんか恨みでもあるのかしらん?と思わせるイヤミスぶりでした。作者はイラク侵攻に抗議したかったのか、イギリスの植民地の統治の酷さを訴えたかったのか・・・女って生き物は酷いぞと訴えたかったのか疑問ですが、ミステリ以外の部分に重きをおかれた作品だとはいえると思います。物語の評価は割れるでしょうが、女性の読者には反感をもたれそうな2作目でした・・・。



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