キャロル・オコンネル(Carol O'Connell)作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | キャロル・オコンネル(Carol O'Connell) |
生年月日 | 1947年 |
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処女作 | Mallory's Oracle |
デビュー年 | 1994年 |
公式サイト |
氷の天使 (Mallory's Oracle) |
東京創元社 文庫 | 初版2001年5月25日 |
あらすじ | キャシー・マロリー。NY市警巡査部長。ハッカーとして発揮される天才的な頭脳、鮮烈な美貌、そして、癒しきれない心の傷の持ち主。老婦人連続殺人事件の捜査中、父親代わりの刑事マーコヴィッツが殺され、彼女は独自の捜査方法で犯人を追いはじめる。シリーズ、第1弾。 本作は、竹書房から出ていた『マロリーの神託』の新訳版です。改題されていますが同一作品です。 |
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感想 | 老婦人連続殺人事件と刑事マーコヴィッツ殺しの犯人を捜すというのが本作の骨子ではあるのですが、殺人犯探しだけが描かれているワケではありませんでした。というのも、シリーズ第一作目から、このシリーズを続けるのだという想定の元にこの作品は描かれているようで、本筋の捜査の過程と同時進行で、延々とマロリーの過去と現在が読者に説明されているのですよね。
ストリートキッズだったマロリーがマーコヴィッツ家に引き取られたという過去があるのですが、それが作品の流れの中で読者に提示されていくのですよね。なので、過去と現在とが入り乱れる文章に最初は戸惑いました(笑)。はっきり言うと読み難い、咀嚼し難い文章なんですよ。オマケに比喩や死んだ人の言葉などが入り乱れるので、この文体に慣れるまで時間が掛かりました。コレ、訳者さんは非常に苦労されたでしょうね。務台夏子さんの美しい訳だから読み進めたものの、他の訳者さんだったら途中で投げ出しちゃっていたかもです。殺人事件の犯人に迫っていく過程を愉しむというよりは、丁寧に描かれた(人物造詣された)人間関係を愉しむって感じでしょうか。キャラ立ちした作品がお好きな方にお薦めです。(意味不明だな(汗))
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アマンダの影 (THE MAN WHO LIED TO WOMAN) |
東京創元社 文庫 | 初版2001年6月29日 |
あらすじ | マロリーが殺された?。部下の報告で検視局に駆けつけたライカーが見たのは、彼女のブレザーを着た別人だった。被害者の名はアマンダ。その部屋に残されていたのは未完の小説原稿と描一匹。彼女を死に追いこんだ「嘘つき」とは誰か?。高級コンドミニアムに関連を見いだし潜入するマロリー。―シリーズ第2弾 本作は、竹書房から出ていた『二つの影』の新訳版です。改題されていますが同一作品です。 |
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感想 | マロリーの上着を着ていた女性が惨殺された。女性は石で殴打された上に首を圧し折られていた。その被害者の女性は検視の結果、直前に堕胎していた事が判明。調査を開始したマロリーは、犯人が殺害現場近くの高級コンドミニアムの住人に違いないと潜入捜査を・・・というストーリーが本筋のお話です。で、他にも子供が超能力者なのではないかと怯えている一家や高級コンドミニアムに住む風変わりな金持ち連中なんかが入り乱れて、忙しい(?)展開。相変わらず読み難い(笑)。オコンネルの特徴だと思うのですが、人物造詣で手を抜かない作家なのですよね。ただの脇役から猫に至るまで丁寧に書き込まれているので、ストーリーを追うというよりは人物造詣を頭に入れていくうちにストーリーが展開するといった感じです。マロリーシリーズをここまでで3作品読んだのですが、本作を一番、気に入っています。(マロリーが連れている猫に飛び掛ろうとしたバカ犬を、無言で蹴り飛ばすマロリー。想像して大笑いしました。オコンネルは人物を描写する時に行動を淡々と描写して人物の人となりを表すのですよね。もうちょっと読み易い文体をオコンネルが著すなら、もっと売れるだろうに(笑))
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死のオブジェ (KILLING CRITICS) |
東京創元社 文庫 | 初版2001年8月31日 |
あらすじ | 画廊で殺されたアーティストの胸には、1枚のカードがタイトルのように「死」と告げていた。NY市警には、12年前に同じオーナーの画廊で起きた猟奇殺人との関連を示唆する手紙が届く。再捜査で閉ざされた過去をこじ開け、関係者たちの秘密を容赦なく暴くマロリー。市警を牛耳る何者かの捜査妨害。マーコヴィッツの膨大なメモが指し示す真犯人は?。―シリーズ第3弾
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感想 | 画廊で殺されたアーティストの胸には『死』の文字が記されたカードが。NY市警には、12年前の猟奇殺人との関連があると示唆する手紙が届く。12年前の事件の担当捜査官はマロリーの亡き父マーコヴィッツ。亡き父の膨大な捜査メモを手掛かりに、再捜査を始めるマロリー・・・というストーリーです。
マロリー シリーズを3作品連続で読了したのですが・・・やっぱ、読み難い(笑)。面白くないワケでは無いし、作者がヘタなわけじゃ無いのですが、文章を頭で理解するのに時間の掛かる文章なのですよね。死んだ人の会話や、何人も出てくる社会病室者的な人物達の会話で混乱するのかもですが。これ、訳者の務台夏子さんの腕が無いと読み物として成立していないかもってほど咀嚼し難い文体です(笑)。ただし、ストーリーが頭の中に入りだしたら、後はサクサクと読めますので。全作品を通して言える事ですが、本筋の犯人捜しとは別に『マロリーの過去は?』という謎が徐々に明らかにされていくので、このシリーズは途中から入られる方には全く面白くないかも・・・。![]() ![]() |
天使の帰郷 (FLIGHT OF THE STONE ANGEL) |
東京創元社 文庫 | 初版2003年2月28日 |
あらすじ | ルイジアナ州デイボーン。姿を消したマロリーをさがし、彼女の故郷を訪れたチャールズは、子供を抱いた天使の石像を見て驚いた。これは確かにマロリーの顔だ。17年前に惨殺された女医を悼んで刻まれた天使。腕の中の子供は、行方不明になった彼女の娘だという。一方、デイボーンでは、自閉症の青年が両手を負傷させられ、町の一角を占拠する宗教団体の教祖が殺された。そして、容疑者としてよそ者が勾留されているという。その名は、マロリー。誰にも一言も告げず、ひそかに帰郷した彼女の目的は?いま、石に鎖された天使が翼を広げる―シリーズ第4弾。
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感想 | ついに『マロリーの母親は誰なのか?なぜ、マロリーはストリートチルドレンになったのか?』という謎が明らかにされます。ここまでが長かったですね(笑)。シリーズ4作品目にしてやっとといった感じです。実母を殺害した犯人は誰なのかを知る為、そして復讐を果たす為にマロリーが故郷へ戻るというストーリーです。 で、感想です。4作品、このシリーズを読んできたワケですが、本作が一番面白いですね。子供の頃の過酷な体験の所為で、他人に心を許せない、感情を表に出せない(怒りだけは表現するんだけど)マロリーを主人公に据えるという設定自体に無理があるこのシリーズの行方が気になって読み続けてきたのですが、一作目から3作目までは、本作を書く為の序章にすぎなかったのだなという感じがします。それと、本作は今までの作品に比べ、非常に読み易いですね。脇役陣がみな味のある人物ばかりなので、久々に愉しんで読めました。このシリーズは第一作目から通して読み進まないと、面白さが半減すると思っていたのですが、もし途中から入りたいという方には本作から入られる事をお薦めします。 ![]() ![]() |
魔術師の夜 (SHELL GAME) |
東京創元社 文庫 上下巻 | 初版2005年12月28日 |
あらすじ | 往年の名人もステージに立つ《マンハッタン・マジック・ホリデーズ》。伝説のマジシャン、マックス・キャンドルが遺した『失われたイリュージョン』が今、旧友オリバーによって演じられようとしている。が、テレビカメラと観客たちの前で、拘束されたオリバーはクロスボウの矢に射抜かれた。マックスの従弟チャールズのもとに集う老マジシャンたちが胸に秘める第二次世界大戦下の出来事とは?。その一人マラカイを狂気に駆り立てた彼の妻ルイーザの死の真相は?。キャシー・マロリー シリーズ第5弾。
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感想 | うーーん、はっきり言ってあまり面白くない・・・。このシリーズは前作で終わりで良かったんじゃないかなぁ。やっぱ、設定に無理がありますよ。張り込みも尾行も出来ない(あまりの美貌で目立ってしまう為)ほど美人で、金持ちで、天才的な頭脳を持つ、善悪の判断の付かない刑事だなんて・・・シリーズを続けるのはムリでしょ?!(笑)。その上、ストーリーにも無理がある。第二次世界大戦中にマジシャンとして活躍していた人物数名の内の一人が今度の事件の犯人と目されるのだけれど、第二次世界大戦当時に青年だったって事は・・・作品中の文から想像すると、このマジシャンたちがヨーロッパで活躍していたというのが1942年〜1945年、然るに老マジシャン達の年齢は現在70〜80歳前後ですぞ!。ムリでしょうがっ!。 そしてね、版元にも文句を言いたい。この『魔術師の夜』が本国で発表されたのは1999年、だけど日本で翻訳されたのは2005年末。で、ジェフリー・ディーヴァーがマジシャンを題材にしたミステリ『魔術師(イリュージョニスト)』を本国で発表したのが2003年、で日本で翻訳されたのが2004年末。本当はオコンネルの方が先にイリュージョンをネタにしているんだけど、日本の読者は後から書かれたディーヴァーの作品の方を先に読んでいるワケですよ。やっぱ、比べてしまうよね?!。で、比べたら断然、ディーヴァーの方が楽しめる事を考えると、この発表から翻訳まで六年も時間が空いたことは致命的だと思うんだよね。いつも思うんだけど、旬の作家は(ブレイクした作家)旬の内に次作を出して欲しいのだよね。折角、『クリスマスに少女は還る』で名が売れていたトコだったのに、何でこんなに時間を置くかなぁ。せめて一年に一冊は出さないと、ファンでも離れますぞ。 そして、オコンネルさま、マロリーがマーコヴィッツ家に引き取られる前後の話を書いて下さいよ。番外編を希望いたしますっ。日本語じゃ通じないか(笑)。 ![]() ![]() |
クリスマスに少女は還る (JUDAS CHILD) |
創元推理文庫 | 初版1999年9月24日 |
あらすじ | クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。州副知事の娘と、その親友でホラーマニアの問題児だ。誘拐か?。刑事ルージュにとってこれは悪夢の再開だった。15年前のこの季節に誘拐され殺されたもう一人の少女・・・ルージュの双子の妹。だが、あのときの犯人は今も刑務所の中だ。まさか・・・。そんな時、顔に傷痕のある女が彼の前に現れて言う。「私はあなたの過去を知っている」。一方、何者かに監禁された少女たちは奇妙な地下室に潜み、力を合わせて脱出のチャンスをうかがっていた・・・。 |
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感想 | この作品の骨子は『真犯人は誰か?』という謎解きであるけれど、ミステリというよりは普通小説に近い印象を受けました。登場人物の人数が非常に多いのだけれど、主人公からほんのちょっと出てくる脇役まで全ての人物について丁寧に人物造詣がなされているので、物語のプロットを追うというよりは登場人物の人物像を理解していくうちに物語が自然に展開していくといった雰囲気で、このキャロル・オコンネルは巧者なのだなと嬉しい驚きでした。 15年前のクリスマスにルージュの双子の妹が惨殺された。犯人は捕まり刑務所に服役中なのだが、同じような事件が再び起こり二人の少女が失踪する。15年前の事件の犯人は真犯人では無いのか?。犯人は誰か?少女は何処に?・・・というストーリーです。このルージュの人物像が良いのですよね。15年前に双子の妹を殺され心に傷を抱えたまま大人になっているのですが、そのお陰で同じように心に傷を負った少年の心をいとも簡単に開いてしまう。私は物語が後半に差し掛かるまで主人公はこのルージュだと思っていました。実際は違ったんですけど、これも嬉しい誤算でした。(余談ですがT・ジェファーソン・パーカー著『サイレント・ジョー』の主人公ジョーを思い出しました。ストーリーは全く違うけれど主人公の雰囲気が似ている気がします)。物語全体のストーリーは目新しいものでは無いけれどお勧めです。ただし謎解きを重視される方にはお勧めしません。 キャロル・オコンネルは本作でブレイクしたそうですがシリーズ外作品でブレイクする作家は不思議と多いですね。 それと付け加えておきたいのは訳者の務台夏子さんの巧さ。この訳者さんは語彙が多いし、日本語が綺麗ですね(笑)。非常に読み易かったです。そして翻訳本には珍しく邦題が良い。最後まで読んではじめて邦題に『帰る』ではなくて『還る』の文字をあてた意味が解りました。 ![]() ![]() |
愛おしい骨 (Bone by Bone) |
東京創元社文庫 | 初版2010年9月17日 |
あらすじ | 十七歳の兄と十五歳の弟。二人は森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、時が止まったかのように偏執的に保たれた家。何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつひとつ置いてゆく。一見変わりなく元気そうな父は眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。何が起きているのか。次第に明らかになる町の人々の秘められた顔。
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感想 | 久々のオコンネルでしたが〜期待は裏切られませんでした(笑)。この『愛おしい骨』も『クリスマスに少女は還る』と同じく、ミステリだけどミステリを普段は読まれていない方にも充分に受け入れられる出来だと思います。で、ストーリーはというと・・・。 カリフォルニア州北西部に位置する、広大な森に寄り添う町コヴェントリー。半径30km以内には携帯の中継塔もなく、現代の文明に毒されずこの町には独特の時間(?)が流れている。物語は主人公のオーレンが20年ぶりに父の住むコヴェントリーの家に帰るところから始まる。幼い頃に死んだ母の代わりにオーレンと弟ジョシュアを育ててくれた住み込み家政婦ハンナから乞われて帰郷したオーレンだが、彼を待ち受けていたのは20年前に忽然と姿を消したままのジョシュアの”骨”だった。何者かが何ケ月にもわたって、ジョシュアの骨を玄関に骨を置き続けているのだ。オーレンは陸軍の犯罪捜査をしていた関係で、ジョシュアの骨は長い間、埋められていたものだった事が解るのだが、同時にこの骨は少なくとも二人分だという事も見抜き・・・という展開です。20年前、森に入ったまま帰ってこなかったジョシュアは、当時は失踪として処理されていたのですよね。そのジョシュアが骨になって帰って来た事によって、失踪は殺人事件として再捜査される事になるわけです。そんでもって同時に、ジョシュアの骨と一緒にあった別人の骨は女性であることがわかるんですよね。町中の人が顔見知りという小さな小さな町で失踪した女性などおらず、謎は深まるばかりという状況の中、オーレンは調査に深くかかわる事になるのですが、この町の住人って変人ばっかなんですよね(笑)。オーレンの父親は精神的な苦痛からか夢遊病で苦しんでいるんですよね。それに家政婦のハンナはコヴェントリーに来るまでの経歴が丸っきり謎な人物なわけです。あとは〜幼女のころから寄宿学校に入れられて育ち、両親を恨んでいる鳥類学者や、その母親で塔に半ば幽閉(?)されているアルコール中毒者。元作家だけど小説が書けなくなったゴシップライター、元警察官の障がい者などなど、これが犯人だろうなと思わせる怪しい人物ばかり出て来るんですよね。ですが、犯人はだれかというミステリ部分より、なぜ愛くるしい少年ジョシュアが殺される事になったのか?という謎を突き詰めようとする兄オーレンの愛情が胸に迫り、謎解き以外の部分の奥の深さを堪能した作品だと思います。何が言いたいのかわからんごとなって来たので、これで終わりますが、最後に『騙されたと思って読め』と言って終わろうっと(笑)。 |