シャーロット・マクラウド名義 ウーザック沼の死体

アリサ・クレイグ名義 潮の騒ぐ家/山をも動かす/キルトは楽しい/芝居も大変/レシピに万歳

シャーロット・マクラウド(アリサ・クレイグ)作家略歴

1922年、ニューブランズウィック生まれ(カナダ)。マサチューセッツ州ウェイマスで育つ。図書館勤めをした後、かなり長くコピーライターの仕事をしていた。処女作はヤングアダルト向けの『白騎士の謎(1964年)』。1978年に本格的なミステリ作家に転身し、シャーロット・マクラウド名義&マティルダ・ヒューズ名義&アリサ・クレイグ名義で執筆活動を続ける。この他にノンフィクションも2冊ある。
1923年にアメリカへ移住し1951年に米国市民になる。

日本でもマニアックなファンが多いコージーミステリー作家です。アメリカの作家なのですが不思議とイギリスの香りが漂います。管理人が読んだ限りでは『巻き込まれ型ミステリ』が多い作家のようです。コージーミステリと呼ばれていますが文章の明るさ、キャラクターのおかしさが際立っている、残虐な描写が無いだけの普通のミステリという印象です。ピーター・シャンディ教授シリーズ&セーラ・ケリング シリーズがマクラウドの人気シリーズ。 別名義での著作も多数あります。シャーロット・マクラウド&アリサ・クレイグ名義でミステリーを執筆しマティルダ・ヒューズ名義で普通小説を執筆しています。ヒューズ名義の作品が翻訳されているのかは不明です。

2005年1月14日。米メーン州ルイストンの老人医療施設でご逝去されたそうです(82歳)。死因などは不明との事。管理人がコージーミステリというジャンルを知ったのはシャーロット・マクラウドさんが切っ掛けでした。心よりご冥福をお祈り致します。有難う御座いました。

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↓は死亡記事です。

Mystery writer Charlotte MacLeod dies
The Associated Press
Published Sunday, January 16th, 2005
LEWISTON, Maine (AP) - Mystery writer Charlotte MacLeod, whose specialty was the "cozy" mystery and whose protagonists were often amateur sleuths, has died at the age of 82.
MacLeod's more than 30 novels sold in excess of 1 million copies in the United States and also drew followings in Canada and Japan.
MacLeod died Friday in a Lewiston nursing home, said her sister, Alexandria Baxter of Richmond.
Her books eschewed graphic violence, sex, gore and vulgar language.
"She wrote specifically for people who did not want blood and guts, at least not a whole lot of it anyway," said Baxter. "Everybody drank tea and ate molasses cookies. It was that kind of thing."
MacLeod's Peter Shandy series described the adventures of a college professor, and the Sarah Kelling and Max Bittersohn mysteries were about a couple from Boston's Beacon Hill area. She also wrote a couple of series under the pen name Alisa Craig that were set in her native Canada.
Baxter described her sister as a true lady with white gloves, hat and impeccable grammar.
Highly disciplined, she usually began work at 6 a.m., writing through the morning and devoting the afternoon to rewriting.
She would only start a new book on a Sunday morning and she would stay in her bathrobe while writing to ward off any temptation to run out of the house for an errand or otherwise get distracted, said Baxter, who typed and proofread her sister's manuscripts and served as her business manager.
"She has said to me many times that she would continue to write her books even if nobody read them, because she really enjoyed doing them," Baxter said. "It was a very exciting and satisfying thing for her to produce a novel."
MacLeod is survived by her sister and a brother.
シャーロット・マクラウド(Charlotte Macleod)名義 作品感想
ウーザック沼の死体
(The Corpse In Oozak's Pond)

シャンディ教授シリーズ6
扶桑社 文庫 初版1989年8月25日
あらすじ 2月2日は、グラウンドホッグデー。ここマサチューセッツ州のバラクラヴァ農業大学では、ウーザック沼の土手に住む冬眠中のグラウンドホッグ(リス科の動物)をたたき起こして、春の到来をうらなう真冬のお祭りの騒ぎの一日だ。しかしこの日、沼の土手に集まった野次馬とシャンディ教授がみたものは―なんとウーザック沼の氷の間に浮かぶ水死体だった。これだけでも大事件なのに、時を同じくして、大学創立者の家系につらなるバギンズ家の末裔、トレヴェリアンとベアトリスの老夫妻がこれまた死体で発見される。病死かと思われたが、じつは四塩化炭素による毒殺らしい。時らぬ事件の連続に乗り出すのはバラクラヴァ農業大学のピーター・シャンディ教授。

 
感想 コージーミステリです。子供さんにでも安心して読ませられるミステリって少ないですがシャーロット・マクラウドはその代表作家かもですね。水死体が発見され、後に毒殺で二人死ぬワケですが全く血生臭くない。こういうのもマクラウドの持つユーモアのお陰なんだろうなぁ。とにかく笑いながら読めるミステリです。
 謎解きについて言えばイマイチだなぁと思います。あまりにも唐突に犯人が分かっちゃって拍子抜けしてしまう。でも私はマクラウドの作品を謎解きを楽しむ為に読んでいないのですよね。この人の描く可笑しなキャラクターを味わいたくて(息抜き?)読んでいるので十分に楽しめました。マクラウド ファンで純粋にトリックや謎解きに期待して読んでいる方は少ないんじゃなかろうか?。ホノボノした登場人物に逢う為に読んでいる方が多いんじゃないかな。
追記・・・現在品切れ(絶版)です・・・。
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アリサ・クレイグ(Alisa Craig)名義 作品感想
潮の騒ぐ家
(The Terrible Tide)
創元推理文庫 初版1992年4月24日
あらすじ ホリーは21歳で過去の人、か。ひょんなことから迷いこんだモデル業だったが、撮影中事故にあい、引退を余儀なくされた。あのニューヨークの街並みから、風光明媚な水差しの町へ―。だが、静養がてら岬のお屋敷で働き始めた時から、ホリーは不思議な事件に巻きこまれることになった…。

 
感想  殺人事件が起こらないミステリーです。これがホントのコージーミステリというかアガサ賞対象作品という感じでホノボノしたミステリでした。
 この作品はシリーズ物ではない単発作品です。舞台はカナダのジャグタウン(水差しの町)。主人公ホリーはモデルとして成功していたのですが突然の事故で顔面と体に傷を負い、田舎に住む兄夫婦の下へ。兄の家で静養したかったホリーですが家具職人の兄にこき使われ逃げるように住み込みのメイドとして岬のお屋敷に。このお屋敷で幽霊が出るとか色々な不思議な事が起こり・・・という物語です。マクラウド名義であるセーラ・ケリング シリーズの雰囲気に近い作品でした。この作品は安心して子供にもお勧めできます。疲れないし読後感が良いので、私は読書に疲れた時にマクラウドやクレイグの作品を読みたくなります。
追記・・・こちら品切れ、絶版です・・・。がるるるる。 作家名INDEXホームへ戻る
ディタニー シリーズ

山をも動かす
(THE GRUB-AND-STAKERS MOVE A MOUNTAIN)
ディタニー シリーズ第一作
創元推理文庫 初版1994年1月28日
あらすじ  ここロベリア・フォールズではアーチェリーが盛んで、弓矢を持たずに出歩く者は滅多にいない。その朝、秘書代行サービス業を営むディタニー・ヘンビットも矢筒を背負って散歩に出かけたが突如一本の矢が風を切り、目の前の木に深々と突き刺さった。発射されたあたりに行ってみると、町の水道課長が矢で地面に串刺しになっている。ディタニーは、ぼやきながらも素人探偵を始めるが…。

 
感想  アリサ・クレイグらしい作品で愉しめました。今まで読んだマクラウド&クレイグの作品群の中で一番気に入った作品です。冒頭で弓矢で串刺しにされた死体が出てくるのですが、それ以降は殺人は起こらずホノボノとした雰囲気が続くので血生臭いミステリは嫌だと言う方に特にお勧めです。
舞台はカナダ、オンタリオ州周辺の小さな町。歩いてどこへでも行けそうな小さな町に変人愉快な住民が沢山住んでいる。その町の、貴重な野草が生い茂る山を住宅地として開発しようという動きに主人公ディタニーと町の住民たちが立ち上がる・・・というストーリーです。話は単純だし、犯人もすぐに分かってしまうのですが、なぜか面白いのですよね。これがクレイグの巧さなのでしょうが、主人公や登場人物の描写だけで充分に楽しいんですよね。中でもディタニーが変装するシーンはクスクス笑いながら読み進みました。そして犬好きの方にも楽しい本だと思います。馬鹿犬のエセルの造詣&描写がいい味を出しています。相変わらず料理の描写が多いので涎を垂らしながらの読了でした。
追記・・・シリーズの第一作品目なのに本作は品切れという名の絶版です・・・。著者が2005年1月に亡くなられたので、これを期に復刊されると良いなぁと思っています。
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キルトは楽しい
(THE GRUB-AND-STAKERS QUILT A BEE)
ディタニー シリーズ第二作
創元推理文庫 初版1995年1月27日
あらすじ  開館の準備が進む博物館で、任命されたばかりの館長さんが墜死するという椿事が発生した。あやまって屋根裏部屋から落ちたのかと思いきや、窓が小さくてそれは無理。ならば屋根に登って飛び降り自殺を決行したのか。ところがどっこい、故人は高所恐怖症だったらしく…。

 
感想  相変わらず明るいミステリで笑えました。ですが本作の面白さを理解するのは、第一作を読んでいないと無理かもです。第一作の『山をも動かす』が、登場人物全員の人物紹介本みたいになっているので、第一作を読まれた方じゃないと笑える場所で笑えないという哀しい結果になりそうです。
 このシリーズの愉しみは主人公ディタニーと隣人たちの面白さに尽きると思います。歩いて回れるような小さな町の住人たちは全員が顔見知り。なので、この小さな町で殺人事件が起これば、今まで出てきた事のない登場人物が犯人だとスグに分かってしまう。冒頭から犯人が分かってしまうのに、それでも本作が楽しいのはアリサ・クレイグの人物造詣&描写の巧さだと思います。何度も言うけれど、コージーミステリの評価が低い日本で翻訳されているコージー物は希少です。コージーって何ぞや?と思われる方にこのシリーズをお勧めしたいです(是非、第一作からどうぞ♪)。そして家族全員で読める数少ないミステリです。
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芝居も大変
(THE GRUB-AND-STAKERS PINCH A POKE)
ディタニー シリーズ第三作
創元推理文庫 初版1996年7月19日
あらすじ  当地で演劇祭が開催される運びになった。カナダ人の不撓不屈の精神を描いた戯曲が上演され、最優秀の団体には演劇史上の貴重なコレクションが贈られる。『まさか、そんな大仕事にまたみんなで首を突っ込もうというんじゃ・・・』ヘイゼルの悲鳴もむなしく、ディタニー達は芝居作りを始めた。オズバートが書き上げた脚本は秀逸だったが、胡乱な輩が横行する成り行きに心配の種は尽きない。タランチュラによる暗殺未遂にはじまって、なかなか成功しない変な殺人・・・。

 
感想  殺人未遂事件が立て続けに起こるけれど、相変わらず血生臭さは全く感じない健康的な(?)ミステリです。町の住民たちが本作でも大活躍で、この住人達の会話や食事のシーンを読んでいるだけでホノボノ致しました。
 今回の主人公はアレシューザ(ロマンス作家)とアンディー(実業家)でしょうか。アレシューザのドタバタは相変わらずで笑わせてくれます。アンディーは第一作では悪役として登場したのですが、本作では心を入れ替え(?)おちゃめぶりを発揮しています。それと作中で古い映画や映画俳優について沢山触れられているので映画ファンにお勧めしたいです。(支離滅裂だな・・・かたじけないっ)
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レシピに万歳
(THE GRUB-AND-STAKERS SPIN A YARN)
ディタニー シリーズ第四作
創元推理文庫 初版1998年3月27日
あらすじ  「ほどいた袖だ!」コートの襟を立てフェルト帽を目深に被ったその男は、人気の無い朝の毛糸店からよろめき出るや、そう言い残してくずおれた。背中には弾痕。町の毛糸店を血に染めた暗黒街の殺人・・・かと思われたが、まもなくミンスミート(注・下部に意味があります)業界の立役者マザー・マティルダが現れ、被害者が自分の夫であること、彼はナツメグ担当副社長の要職にあり、ミンスミート秘伝のレシピを狙い社内に出没していた悪漢連中に狙われた挙句、命を落としたのだと告げた・・・。

 
感想  冒頭、銃で撃たれた死人が出ますが、それ以降はいつもの通り、死体は無しのコージーミステリで相変わらず楽しいミステリです。本作にも食べ物の描写が多くて涎を垂らしながら読み進みました。今回は珍しく銃殺される人が出てきますが、それ以降はホノボノとしているので安心して子供さんにもお勧めできます。それと本作では若妻ディタニーが身重の身なのですがこの後、どうなったのかが気になります。このシリーズの第五作が1993年に発表されているのですが、邦訳されていません(THE GRUB-AND-STAKERS HOUSE A HAUNT)。何としても読んでみたいですね。
追記・・・作中に出てくるミンスミートとは、イギリスでクリスマスシーズンに贈られる「ミンスパイ」の中身で、ドライフルーツやりんごがふんだんに入ったフルーツ漬けの事です。日本でも瓶詰めが市販されているので入手可能です。他にも謎の食べ物が沢山出てきてカナダの料理に興味を持ちました。



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