氷姫/説教師


カミラ・レックバリ(Camilla Lackberg)作家略歴&著作の感想
作家名 カミラ・レックバリ(Camilla Lackberg)
生年月日 1974年8月30日
生誕地  スウェーデン フィエルバッカ
処女作  『氷姫』
デビュー年 2002年
公式サイト http://www.camillalackberg.com/index.html

作家略歴

 1974年スウェーデン・フィエルバッカ生まれ。エコノミストとして数年働く。デビュー作エリカ&パトリックシリーズ『氷姫』がヒット、続く『説教師』で大ブレイク、2005年SKTF賞「今年の作家」賞、06年度国民文学賞受賞。1970年代世界的ベストセラーとなった同国のマルティン・ベックシリーズを凌ぐとも評され、海外でも25カ国以上で刊行、テレビドラマ化もされて、映画化も決定。人口880万人のスウェーデンでシリーズ4作400万部を売り上げるメガヒットとなっている。

Series Patrik Hedstrom(エリカ&パトリック シリーズ) (*は米国での題名と出版年度)

1.Isprinsessan (2002) (*The Ice Princess (2008))『氷姫』
2.Predikanten (2004) (*The Preacher (2008))『説教師』
3.Stenhuggaren (2005) (*The Stone Cutter (2009))
4.Olycksfageln (2006)
5.Tyskungen (2007)
6.Smaker fran Fjallbacka ? kokebok (2008)
7.Sjojungfrun (2008)
8.Fyrvaktaren (2009)


氷姫
(Isprinsessan)
集英社文庫 初版2009年8月25日
あらすじ  海辺の古い邸で凍った美しい女の全裸死体が見つかり、小さな町を震撼させた。被害者が少女時代の親友でもあった作家エリカは、幼馴染の刑事パトリックと共に捜査に関わることに。20年以上疎遠だった親友の半生を辿ると、恐るべき素顔が覗く。画家、漁師、富豪…町の複雑な人間模様と風土に封印された衝撃の過去が次々明らかになり、更に驚愕の…。

 
感想  今まで、日本で読める限りの北欧産ミステリを追って来ましたが、この作家は『マルティン・ベック シリーズ』の著者マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーに一番雰囲気が近い作家かもしれません。ミステリとしての出来の良さは勿論ですが、登場人物たちが好いんですよね。物語では3人の男女の悲劇が描かれていて、救いが無く哀しい物語なのですが、その物語の重さに潰されない登場人物の明るさ可笑しさがあるんですよね。本を手にした時は”エリカ&パトリック事件簿”というダサダサの副題に怯えたのですが杞憂でした。何度も言いますが、北欧ミステリの質の高さには驚くものがあります。というか、人口880万のスウェーデンで4作400万部も売れたという事実もスゴイですが、それだけのミステリの読み手がいることの方に驚きます。まぁ、読み手が多いからこそ、書き手の水準も上がるのだろうなと納得ですが・・・。で、物語はというと・・・。
 人口わずか1000人の海辺町フィエルバッカの古い家の浴室で、アレクス・ヴィークネルの全裸死体が凍った状態で発見された。両手首を斬っていた事から自殺かと思われたが検視の結果、薬を飲まされた状態で殺されたことが分かる。発見者である伝記作家エリカ・ファルクは被害者アレクスの幼馴染だったのだが、20年以上も付き合いは無く、なぜアレクスが殺されるような運命を辿ったのか調べ始め、この事件の真相を本にしようと決意。事件を担当する刑事パトリックもエリカの幼馴染で、二人は共にアレクスの死の謎に迫る・・・という展開です。わたしが日本人が書いたミステリではなく海外産ミステリに惹かれる要因の一つは、物語を通して、舞台になった地の風景や、そこに住む人々の価値観、習慣を垣間見れることなのですが、この作家はそういう好奇心を満足させてくれる作家です。ミステリとしての質も高いですが、人や風景を書き込むのが巧い作家です。謎解きよりも人間が描かれている作品を好まれる方に、特にお勧めです。魅力的な主人公エリカとパトリックに、せめて1年後にはまた逢わせてくださいと集英社さんに頼みますっ(笑)。 作家名INDEXホームへ戻る



説教師
(Predikanten)
集英社文庫 初版2010年7月25日
あらすじ  夏の朝、洞窟で若い女の全裸遺体と朽ちた古い遺体が2体見つかった。休暇中のパトリックだったが、妊婦のエリカを気遣いながらも捜査を指揮することに。検死の結果、新旧遺体は二十数年を挟んで全く同じ方法で惨殺されたことが判明、捜査線上に今は亡きカリスマ説教師の呪われた一族が浮上し…北欧の海辺の小さな町を震撼させた猟奇的殺人事件を作家&刑事が解決する大人気シリーズ第2弾。

 
感想  前作ではエリカが主人公でしたが、本作の主人公はパトリックです。作者は、主人公を交互に持ってくるつもりなのでしょうか?(笑)。で、内容はというと、前作よりは随分とミステリ色の濃い作品に仕上がっていました。ですが、万人受けするだろうかという一抹の不安も。何て言えば良いのか悩みますが、海外ミステリ特有のもたつきというか、冗長というか〜ま、とにかく動きが遅いのですよね。若い女性が殺されるんですけど、同時に20数年前に失踪したと思われていた女性二名の遺骨が見つかるんですよね。で、検死の結果、新旧の殺人事件の犯人は同一人物だろうと推測されるのですが、実は20数年前の殺人事件の容疑者と目されていた男はとっくの昔に取り調べを苦にして自殺していたのですよね。ということは〜自殺した男は実は無実だったというわけで、事件は現在と過去を行き来しつつ動いていくのですが・・・。カミラ・レックバリの良さでもあるのですが、人物とその人物の背景を丁寧に描くのですよね。だもんで、本作のように事件にまつわる人々が多くなるとどうしても物語は長く、動きは鈍くなるのだと思われます。だもんで、好きか嫌いか紙一重なんじゃなかろうかと思うんですよね。結末は、ほうぅという終わり方をするのですが、90年代からミステリを読んでいる方なら、いたるところで使われてきた手法なので目新しさはないですし。このシリーズは、どっちかというと謎解き以外の部分も楽しみたいと思われる方向けだと言えるのかもしれません。主人公のエリカとパトリックが好いのですよね(笑)。ワタクシは謎解きの部分を期待しているんじゃなくて、エリカとパトリックの関係を追っているのかもしれません。勿論、次作の邦訳も期待しています。



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